493 / 869
493:父親
しおりを挟む
「まずはお約束のプリンを作りましょうか?
セバスが教えてくれますから。彼は料理がうまいんですよ?」
「では、皆さまこれを。」
愛しい人が用意した前掛けを配る。
フリルは必ず付いている。
テール用にもだ。
しかもプリンの模様入り。上にプニカも乗っている。
子供の興奮というのは伝染するのか、
カーチも楽しそうだ。
「カーチ、マーロ!このように作れるようにがんばろうな!」
「ええ。きっとうまくできますよ。」
カーチが声をかける。
父親そのものだと感じる。
マーロも驚きをもってカーチを見た。
セサミナが横で手伝ってくれるが、
自分が教えたいようだ。
ボルタオネから来たもう一人はどうやら料理人の様で、
ラルトルガからも一人料理人が来ている。
専門的なことをあれやこれやと聞いて来たのでその対応をすることになった。
ファンロはプリンづくりに夢中だ。
だが、そんなにも時間がかかるものでもないので、
ほかになにか作ろうということになった。
ドーガーとマーロ、ラルトルガから来ている事務方は
会談の準備ということで大広間に戻っていく。
残ったのはファンロ、テールとカーチ、料理人2人だ。
「では、なにを作りましょうか?テール殿、なにかありますか?」
テールはカーチを見る。答えてもいいのかという問いだ。
「テール様がお好きなものを言っていいのですよ?
といっても作れるものがいいですね。
そうなるとちょっとわかりませんね。」
カーチが答えるとその通りだとばかり頷いた。
「ハンバーグも作れますし。ああ、焼くのは大人が。
クッキー、アップルパイ、フルーツタルトも。」
「フルーツタルト!!」
ファンロが食いつく。
「あれはおいしかった!あれも作れるのですね。」
「そうですね。あれは?」
セサミナが問う。
「作るというより、クッキーで台座を作りカスタードクリーム
その上に果物です。
アップルパイはできた生地に、砂糖で煮込んだリンゴを入れて焼くと。
そうなると、クッキーがよろしいかと。好きな形に作れますから。」
「ではそうしましょうか。
ああ、食事にはアップルパイもフルーツタルトもハンバーグもありますよ。
クッキーは出来上がれば持って帰れますしね。」
キトロスとプニカ、枸櫞の砂糖漬けを刻んで入れたもの。
胡椒や塩味の物。
蜜を入れたもの。
焼いている間に、
ファンロが便所がみたいというので、案内をする。
コットワッツの便所は特殊だという話も、
どこからか聞いたようだ。
天秤院からか。
みなが一緒に行くということになった。
ただ座るだけの便所だ。
が、便座は柔らかいし、あたたか。
手を出せば、水がでる仕組みは押せば、
上にためている水の栓が移動するだけの仕掛けだ。
タオルも置いている。
尻を拭くにおい消しの草も、下に落とせば見えない。
実際は扉が閉まれば移動している。
ドロインの家で彼女が作ったものを
親方に相談して改良している。
一般に普及しても問題は無い仕様だ。
子供は便所が近いから先に済ますことに。
テールは子供なので小さなベンザと足を置く台を
彼女はあらかじめ作ってくれている。
小便は立ってすればいいが、便は座るのだと、
扉を開けて説明するが、やはり不安なのだろう。
「テール様?わたしが傍にいますので。」
「うん。」
少し広めの便所部屋に2人が残った。
外で、そわそわと皆が待っている。
なんなんだ?
出てきて2人はなにかをやり遂げた顔をしている。
子持ちのファンロとセサミナはうんうんと頷いていた。
「では!次はわたしが!」
ファンロが入っていく。
便所なんだがな。
好評のようだ。
料理人たちは水がでる仕組みがいいという。
クッキーは
低温でじっくり焼くのでは、
食事を取りながらの会談ということになった。
準備のために私は台所に残る。
その間に、各領主が事務方に
コットワッツではドーガーのことだが、概要を確認している。
料理人2人、
ボルタオネはウェーブ、
ラルトルガはカムの2人が手伝ってくれるという。
が、大方は出来ている。
盛り付けをドーガーに頼むつもりだったので、
それをカムにしてもらおう。
「この皿に。子供用だがな。
ああ、別にテール殿を侮っているわけではない。
しかし、子供なのは事実。
楽しんでもらえればいいというセサミナ様の考えだ。」
「ええ、もちろん。
なるほど、こうやって少しずつ盛り付ければ食べてくれそうですね。
この頃はよくも細くて。」
「そうか。この器は良ければもらって帰ればいい。」
「あ、ファンロ様も好きそうなのでいいですか?」
「かまわないだろう。大人がうまそうに食べれば、
子供はつられて食べるというからな。
皆同じだ。が、足りないだろうから、大皿にも盛ってほしい。」
「ええ、お任せください。」
「セバス殿は盛り付けは?」
「ああ、呼び捨てで結構。
私はただ、料理ができるだけで、盛り付けまではな。
事務方をしているドーガーに頼むつもりだったんだ。
招待客に手伝ってもらうというのは申し訳ないな。」
「何をおっしゃいますかとても勉強になりましたよ。」
「ええ。こういう交流があってもいですね。
あのおにぎりの米が入っているのはボルタオネ産のカプレですよね?
こういう使い方があるとは知りませんでした。」
「私も詳しくはないんだが、程よく水分が抜けるとか。」
「米はラルトルガ産ですか?」
「あらたにコットワッツに入ったところだな。少し前に収穫した米だとか。」
「ああ、やはり。あの騒ぎは、いえ、騒ぎではないですね。
大笑いの話です。」
「それは大笑いなのですか?ボルタオネにも聞こえていますよ?
決闘で負けたと。」
「娘御は目を覚ましたんだな?」
「ええ。それは。何年前でしょうか?農作物の出来高が少し悪かったんですよ。
そこから何を思ったか、武の強化に。
領民は誰も相手にしませんでしたよ。
ファンロ様の思い付きはろくなことがないと知ってますから。」
「カム、口が悪いな。」
「いえ、うちは皆そうなんですよ。
別に尊敬してないとかじゃないですよ?思い付きはろくなことがないけど、
半分はさすが領主ということなので。」
「半分か。」
「ええ。だけど、ダメなものはすぐにわかりますよ。
なので、武がどうのといいだしたときはダメなほうだと。
次の思い付きはきっと素晴らしいことだなとね。
早く諦めてくれればいいのにと思っていました。
が、長く続いた、武に傾倒する時間が。
ほんと、ロクでもない。」
「あー、カム。それは良くわかる。
聞けば、200人?流れ者の雇ったのか?」
「ええ。ちょう下の娘、その決闘をして負けた娘が、
武に興味を持ったとかで。それも良くなかった。」
ルグと決闘したタナガのことも知っているようで、
彼だけの力ではまとめきれなかったようだ。
それはそうだ。
娘2を褒めるだけでいいのだから、だれも鍛練もしないだろう。
「下の娘が眠っている間はまさしく平和だったよ。
領主もその奥方も上の娘も。
娘が眠り続けている間に領国が傾いたらダメだとか言ってな。
上の娘は血の付いたドレスで夜会に出たそうだ。
笑いながらな。
気がおかしくなったんだとそれから誰も呼ばなくなった。
呼んでいたのはルカリアの貴族連中なんだがな、そうじゃないんだ。
これで余計な見栄を張らなくていいと。
奥方もそうだ。
もともとそんな華やかな場所に行くような人間じゃないんだよ。
ほら!どうだ?」
さすがと言えるだろう。
拍手を送ると真似てウェーブも。
2人で称賛を送った。
あの晩餐会でみた盛り付けだ。
きれいだ。愛しい人にも見せてやりたい。
「そのときの晩餐会も俺が用意したんだよ。
後で聞いた話だが、コットワッツの領主に付いてきた従者か、
役人の弟子かがな、
まるで絵画のようだと褒めてくれたらしい。
取り分けるソースの跡までもが計算されてるとな。
うれしかったよ。わかってもらえたのが。」
「そうか。これを見れば誰もがそうおもうだろう。」
「違うよ、セバス、違うんだ。
思ってもそれを声に出して言うか言わないかだ。
皆の前で言ってくれたんだ。それに皆が頷いたと。
それがうれしいんだよ。」
「なるほどな。では、声に出そう。素晴らしい!」
「ええ。本当に。」
「!!やめてくれ!拍手だけで十分だ。」
「では、さらに拍手も。セバスにも。」
「いいや、ウェーブの手際も良かった。」
「だったら、みんなだ。」
3人で拍手をする。
うむ、なかなかに楽しい。
「セバス?あなた?」
愛しい人が裏口から入ってきた。
「ん?マリー?どうした?追加か?」
「ははは。なんか照れるね。うん、追加。
甘味に入る前にもう少し食べたいと。
協議の結果、ラーメンになりました。」
屋台道具を取りに来たようだ。
麺は湯がいて、スープを入れ、
具を入れればいい。実演しながら作るとか。
「じゃ、これ、持っていってください。」
「「「わかりました!!」」」
「あなたは?もうプリンは作った?あ!クッキーも?
いい匂いだ?ドーガー様は?
あ!!なにこれ!素敵!!!」
作業台に置いてある大皿と馬車を模った皿の盛り付けを見て
愛しい人が目を輝かせる。
「ドーガー?違うな。
あれは、色味のバランスがだけをみるから、
熱いものの横に冷たいものを平気で並べる。
これは味も考慮してるね。うん、うん、いいね!ますますおいしそうだ。
料理の仕上げは盛り付けとはよく言ったものだ!
眼で満足、食べて満足、おなかが満腹。」
「愛しい人、こちらの方々だ。ラルトルガの料理人、カムと
ボルタオネの料理人、ウェーブだ。」
「あら!そうでしたか!さすが本職ですね。とっても素敵。
では、冷めないうちに届けないと。お邪魔しました。
じゃ、わたしはラーメン屋さんしてくるね。
テール様には少しずつ食べるように見ててね。
大人のまねをしないように。
で、子供だからと言わないように。
プリンも食べるのだから、ほんとうに少しでいいはずだからね。
持って帰ることもできると言ってあげて。」
「マリーさーーん!!」
「あ、呼んでる。じゃ!」
「奥方ですか?」
「ええ。そうです。」
「いいですね。よく見てくれている。」
「世界一の嫁なんですよ。」
「ははは!でしょうね。わかりますよ。」
ああ、うれしい。
─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘
「では、この大鍋でスープを温めます。
こっちの大鍋では湯を。
そこに麺を入れて、湯がき、これで湯を切り、
スープを入れた鉢に入れます。
上に乗せるのはちゃーしゅーという豚肉を煮込んだものです。
薬草も入れます。胡椒はお好みで。
では作りまーす。並んで下さーい。」
一度に3人分ずつ。
屋台で数をこなしたから、この人数なら大丈夫。
並んでくれてるしね。
馬のブラッシングが終わり戻ると、
熱い議論が交わされていたのだ。
誰かが、甘味に手を出そうとしたところに、ストップが入ったのだ。
お前はもういらないのかと。
ほとんどの料理は食べつくした。
あとは甘味。
が、追加しますからと言ってくれている。
もう一度食べたいものはたくさんがあるが、
それを頼むのは申し訳ない。
なので、なにか一品これというものを頼もうということになったと。
結局、誰かの、
「ラーメンはまだ食べたことないんだ。」
という一言で、ラーメン。
これがダメなら、時点の肉巻きおにぎりということに。
ラーメンの方がわたしには簡単なので、
じゃ、ラーメンということに。
あっさり鶏ガラスープのラーメンだ。
「伸びちゃいますから、熱いうちに食べてくださいね。」
手際よくできたので、後は甘味も用意していく。
アイスクリームだ。
丸く掬い取り、プリンとプニカ、塩味のクッキーを添える。
あとは食後のコーヒーだ。
そのほかの甘味はタルトやパイもあるので、適当に。
後は適当に。
「あの?マリーさん?」
「はい、何でございましょうか?」
1人声を掛けてくる。
「あの、この裏って呪いの森だというのは本当ですか?」
ボルタオネの人だ。
服で区別しているだけだが。
「ええ。そのように聞いています。
入ってもいつの間にか元来た道を戻っているとか。
わたしもこの館に勤め始めてから聞きましたよ?
その影響か、この館の敷地もまじないがかかっていると言われています。
つい先日も、お迎えに上がった馬車が、わたしの目の前をぐるぐると。
先導して入れば問題なかったのですが、
歩みが遅かったのか、先に行くとおっしゃって。
そしたらどうなったと思います?」
「ど、どうなったんですか!」
「わたしが到着したときには誰もいなかったんですよ!
追い越したとかはないんですよ?主人に聞いても主に聞いても知らないと。
あげくに後で聞いた話んあですが、その馬車は確かに鶏館に到着したんだけど、
呼べど叫べどだれも出てこなかったと。
わたし達はずっと館にいたのに!
たまたま聞こえなかったかもしれませんが、
追い越した覚えはないと断言できるのです。」
「ま、まじない!!」
「ええ。そうだとしか考えられません。」
「ここには前領主イスナ様がいらっしゃたと聞いていますが?」
「ええ、そのようにお聞きしております。
ご縁があるのですね、ボルタオネには。
みなさま、食後は探検に行かれますか?
呪いの森と言っても入って進み、気付くと戻って来ているだけだと。
もしくは、そのまま砂漠に抜けるだけだとか。試されますか?」
食後にみんなで行くそうだ。
みんなと一緒というのがいまどきの風習なのだろうか。
みんなが行くから行く、行かないのならやめておく。
あなたはどうしたいの?と聞こうものなら
みんなと一緒というのだろうな。
セバスが教えてくれますから。彼は料理がうまいんですよ?」
「では、皆さまこれを。」
愛しい人が用意した前掛けを配る。
フリルは必ず付いている。
テール用にもだ。
しかもプリンの模様入り。上にプニカも乗っている。
子供の興奮というのは伝染するのか、
カーチも楽しそうだ。
「カーチ、マーロ!このように作れるようにがんばろうな!」
「ええ。きっとうまくできますよ。」
カーチが声をかける。
父親そのものだと感じる。
マーロも驚きをもってカーチを見た。
セサミナが横で手伝ってくれるが、
自分が教えたいようだ。
ボルタオネから来たもう一人はどうやら料理人の様で、
ラルトルガからも一人料理人が来ている。
専門的なことをあれやこれやと聞いて来たのでその対応をすることになった。
ファンロはプリンづくりに夢中だ。
だが、そんなにも時間がかかるものでもないので、
ほかになにか作ろうということになった。
ドーガーとマーロ、ラルトルガから来ている事務方は
会談の準備ということで大広間に戻っていく。
残ったのはファンロ、テールとカーチ、料理人2人だ。
「では、なにを作りましょうか?テール殿、なにかありますか?」
テールはカーチを見る。答えてもいいのかという問いだ。
「テール様がお好きなものを言っていいのですよ?
といっても作れるものがいいですね。
そうなるとちょっとわかりませんね。」
カーチが答えるとその通りだとばかり頷いた。
「ハンバーグも作れますし。ああ、焼くのは大人が。
クッキー、アップルパイ、フルーツタルトも。」
「フルーツタルト!!」
ファンロが食いつく。
「あれはおいしかった!あれも作れるのですね。」
「そうですね。あれは?」
セサミナが問う。
「作るというより、クッキーで台座を作りカスタードクリーム
その上に果物です。
アップルパイはできた生地に、砂糖で煮込んだリンゴを入れて焼くと。
そうなると、クッキーがよろしいかと。好きな形に作れますから。」
「ではそうしましょうか。
ああ、食事にはアップルパイもフルーツタルトもハンバーグもありますよ。
クッキーは出来上がれば持って帰れますしね。」
キトロスとプニカ、枸櫞の砂糖漬けを刻んで入れたもの。
胡椒や塩味の物。
蜜を入れたもの。
焼いている間に、
ファンロが便所がみたいというので、案内をする。
コットワッツの便所は特殊だという話も、
どこからか聞いたようだ。
天秤院からか。
みなが一緒に行くということになった。
ただ座るだけの便所だ。
が、便座は柔らかいし、あたたか。
手を出せば、水がでる仕組みは押せば、
上にためている水の栓が移動するだけの仕掛けだ。
タオルも置いている。
尻を拭くにおい消しの草も、下に落とせば見えない。
実際は扉が閉まれば移動している。
ドロインの家で彼女が作ったものを
親方に相談して改良している。
一般に普及しても問題は無い仕様だ。
子供は便所が近いから先に済ますことに。
テールは子供なので小さなベンザと足を置く台を
彼女はあらかじめ作ってくれている。
小便は立ってすればいいが、便は座るのだと、
扉を開けて説明するが、やはり不安なのだろう。
「テール様?わたしが傍にいますので。」
「うん。」
少し広めの便所部屋に2人が残った。
外で、そわそわと皆が待っている。
なんなんだ?
出てきて2人はなにかをやり遂げた顔をしている。
子持ちのファンロとセサミナはうんうんと頷いていた。
「では!次はわたしが!」
ファンロが入っていく。
便所なんだがな。
好評のようだ。
料理人たちは水がでる仕組みがいいという。
クッキーは
低温でじっくり焼くのでは、
食事を取りながらの会談ということになった。
準備のために私は台所に残る。
その間に、各領主が事務方に
コットワッツではドーガーのことだが、概要を確認している。
料理人2人、
ボルタオネはウェーブ、
ラルトルガはカムの2人が手伝ってくれるという。
が、大方は出来ている。
盛り付けをドーガーに頼むつもりだったので、
それをカムにしてもらおう。
「この皿に。子供用だがな。
ああ、別にテール殿を侮っているわけではない。
しかし、子供なのは事実。
楽しんでもらえればいいというセサミナ様の考えだ。」
「ええ、もちろん。
なるほど、こうやって少しずつ盛り付ければ食べてくれそうですね。
この頃はよくも細くて。」
「そうか。この器は良ければもらって帰ればいい。」
「あ、ファンロ様も好きそうなのでいいですか?」
「かまわないだろう。大人がうまそうに食べれば、
子供はつられて食べるというからな。
皆同じだ。が、足りないだろうから、大皿にも盛ってほしい。」
「ええ、お任せください。」
「セバス殿は盛り付けは?」
「ああ、呼び捨てで結構。
私はただ、料理ができるだけで、盛り付けまではな。
事務方をしているドーガーに頼むつもりだったんだ。
招待客に手伝ってもらうというのは申し訳ないな。」
「何をおっしゃいますかとても勉強になりましたよ。」
「ええ。こういう交流があってもいですね。
あのおにぎりの米が入っているのはボルタオネ産のカプレですよね?
こういう使い方があるとは知りませんでした。」
「私も詳しくはないんだが、程よく水分が抜けるとか。」
「米はラルトルガ産ですか?」
「あらたにコットワッツに入ったところだな。少し前に収穫した米だとか。」
「ああ、やはり。あの騒ぎは、いえ、騒ぎではないですね。
大笑いの話です。」
「それは大笑いなのですか?ボルタオネにも聞こえていますよ?
決闘で負けたと。」
「娘御は目を覚ましたんだな?」
「ええ。それは。何年前でしょうか?農作物の出来高が少し悪かったんですよ。
そこから何を思ったか、武の強化に。
領民は誰も相手にしませんでしたよ。
ファンロ様の思い付きはろくなことがないと知ってますから。」
「カム、口が悪いな。」
「いえ、うちは皆そうなんですよ。
別に尊敬してないとかじゃないですよ?思い付きはろくなことがないけど、
半分はさすが領主ということなので。」
「半分か。」
「ええ。だけど、ダメなものはすぐにわかりますよ。
なので、武がどうのといいだしたときはダメなほうだと。
次の思い付きはきっと素晴らしいことだなとね。
早く諦めてくれればいいのにと思っていました。
が、長く続いた、武に傾倒する時間が。
ほんと、ロクでもない。」
「あー、カム。それは良くわかる。
聞けば、200人?流れ者の雇ったのか?」
「ええ。ちょう下の娘、その決闘をして負けた娘が、
武に興味を持ったとかで。それも良くなかった。」
ルグと決闘したタナガのことも知っているようで、
彼だけの力ではまとめきれなかったようだ。
それはそうだ。
娘2を褒めるだけでいいのだから、だれも鍛練もしないだろう。
「下の娘が眠っている間はまさしく平和だったよ。
領主もその奥方も上の娘も。
娘が眠り続けている間に領国が傾いたらダメだとか言ってな。
上の娘は血の付いたドレスで夜会に出たそうだ。
笑いながらな。
気がおかしくなったんだとそれから誰も呼ばなくなった。
呼んでいたのはルカリアの貴族連中なんだがな、そうじゃないんだ。
これで余計な見栄を張らなくていいと。
奥方もそうだ。
もともとそんな華やかな場所に行くような人間じゃないんだよ。
ほら!どうだ?」
さすがと言えるだろう。
拍手を送ると真似てウェーブも。
2人で称賛を送った。
あの晩餐会でみた盛り付けだ。
きれいだ。愛しい人にも見せてやりたい。
「そのときの晩餐会も俺が用意したんだよ。
後で聞いた話だが、コットワッツの領主に付いてきた従者か、
役人の弟子かがな、
まるで絵画のようだと褒めてくれたらしい。
取り分けるソースの跡までもが計算されてるとな。
うれしかったよ。わかってもらえたのが。」
「そうか。これを見れば誰もがそうおもうだろう。」
「違うよ、セバス、違うんだ。
思ってもそれを声に出して言うか言わないかだ。
皆の前で言ってくれたんだ。それに皆が頷いたと。
それがうれしいんだよ。」
「なるほどな。では、声に出そう。素晴らしい!」
「ええ。本当に。」
「!!やめてくれ!拍手だけで十分だ。」
「では、さらに拍手も。セバスにも。」
「いいや、ウェーブの手際も良かった。」
「だったら、みんなだ。」
3人で拍手をする。
うむ、なかなかに楽しい。
「セバス?あなた?」
愛しい人が裏口から入ってきた。
「ん?マリー?どうした?追加か?」
「ははは。なんか照れるね。うん、追加。
甘味に入る前にもう少し食べたいと。
協議の結果、ラーメンになりました。」
屋台道具を取りに来たようだ。
麺は湯がいて、スープを入れ、
具を入れればいい。実演しながら作るとか。
「じゃ、これ、持っていってください。」
「「「わかりました!!」」」
「あなたは?もうプリンは作った?あ!クッキーも?
いい匂いだ?ドーガー様は?
あ!!なにこれ!素敵!!!」
作業台に置いてある大皿と馬車を模った皿の盛り付けを見て
愛しい人が目を輝かせる。
「ドーガー?違うな。
あれは、色味のバランスがだけをみるから、
熱いものの横に冷たいものを平気で並べる。
これは味も考慮してるね。うん、うん、いいね!ますますおいしそうだ。
料理の仕上げは盛り付けとはよく言ったものだ!
眼で満足、食べて満足、おなかが満腹。」
「愛しい人、こちらの方々だ。ラルトルガの料理人、カムと
ボルタオネの料理人、ウェーブだ。」
「あら!そうでしたか!さすが本職ですね。とっても素敵。
では、冷めないうちに届けないと。お邪魔しました。
じゃ、わたしはラーメン屋さんしてくるね。
テール様には少しずつ食べるように見ててね。
大人のまねをしないように。
で、子供だからと言わないように。
プリンも食べるのだから、ほんとうに少しでいいはずだからね。
持って帰ることもできると言ってあげて。」
「マリーさーーん!!」
「あ、呼んでる。じゃ!」
「奥方ですか?」
「ええ。そうです。」
「いいですね。よく見てくれている。」
「世界一の嫁なんですよ。」
「ははは!でしょうね。わかりますよ。」
ああ、うれしい。
─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘
「では、この大鍋でスープを温めます。
こっちの大鍋では湯を。
そこに麺を入れて、湯がき、これで湯を切り、
スープを入れた鉢に入れます。
上に乗せるのはちゃーしゅーという豚肉を煮込んだものです。
薬草も入れます。胡椒はお好みで。
では作りまーす。並んで下さーい。」
一度に3人分ずつ。
屋台で数をこなしたから、この人数なら大丈夫。
並んでくれてるしね。
馬のブラッシングが終わり戻ると、
熱い議論が交わされていたのだ。
誰かが、甘味に手を出そうとしたところに、ストップが入ったのだ。
お前はもういらないのかと。
ほとんどの料理は食べつくした。
あとは甘味。
が、追加しますからと言ってくれている。
もう一度食べたいものはたくさんがあるが、
それを頼むのは申し訳ない。
なので、なにか一品これというものを頼もうということになったと。
結局、誰かの、
「ラーメンはまだ食べたことないんだ。」
という一言で、ラーメン。
これがダメなら、時点の肉巻きおにぎりということに。
ラーメンの方がわたしには簡単なので、
じゃ、ラーメンということに。
あっさり鶏ガラスープのラーメンだ。
「伸びちゃいますから、熱いうちに食べてくださいね。」
手際よくできたので、後は甘味も用意していく。
アイスクリームだ。
丸く掬い取り、プリンとプニカ、塩味のクッキーを添える。
あとは食後のコーヒーだ。
そのほかの甘味はタルトやパイもあるので、適当に。
後は適当に。
「あの?マリーさん?」
「はい、何でございましょうか?」
1人声を掛けてくる。
「あの、この裏って呪いの森だというのは本当ですか?」
ボルタオネの人だ。
服で区別しているだけだが。
「ええ。そのように聞いています。
入ってもいつの間にか元来た道を戻っているとか。
わたしもこの館に勤め始めてから聞きましたよ?
その影響か、この館の敷地もまじないがかかっていると言われています。
つい先日も、お迎えに上がった馬車が、わたしの目の前をぐるぐると。
先導して入れば問題なかったのですが、
歩みが遅かったのか、先に行くとおっしゃって。
そしたらどうなったと思います?」
「ど、どうなったんですか!」
「わたしが到着したときには誰もいなかったんですよ!
追い越したとかはないんですよ?主人に聞いても主に聞いても知らないと。
あげくに後で聞いた話んあですが、その馬車は確かに鶏館に到着したんだけど、
呼べど叫べどだれも出てこなかったと。
わたし達はずっと館にいたのに!
たまたま聞こえなかったかもしれませんが、
追い越した覚えはないと断言できるのです。」
「ま、まじない!!」
「ええ。そうだとしか考えられません。」
「ここには前領主イスナ様がいらっしゃたと聞いていますが?」
「ええ、そのようにお聞きしております。
ご縁があるのですね、ボルタオネには。
みなさま、食後は探検に行かれますか?
呪いの森と言っても入って進み、気付くと戻って来ているだけだと。
もしくは、そのまま砂漠に抜けるだけだとか。試されますか?」
食後にみんなで行くそうだ。
みんなと一緒というのがいまどきの風習なのだろうか。
みんなが行くから行く、行かないのならやめておく。
あなたはどうしたいの?と聞こうものなら
みんなと一緒というのだろうな。
14
あなたにおすすめの小説
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった
仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。
人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)
葵セナ
ファンタジー
主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?
管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…
不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。
曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!
ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。
初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)
ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる