いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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皆が下りてきた。
扉を開いて最初に入って来たのはマティスだ。


「お帰り~。」
「愛しい人!」
「うん、うん。」
「・・・・。」
「んー。いいよ。くっついといて。
あ!ルビス君、チュラル君!お疲れ。悪いけど手伝ってくれる?」
「はい!最近で一番おなかがすきました!え?なに?塩?」
「ああ、ちょっとこぼしてね?片付けるよ。」
「いえ。」

『塩』

「あ!すごいね!見えてる物?知ってる物?だったら問題なし?」
「あと軽いものですね。」
「自分でもち上げれる量と比例するみたいだね。鍛錬あるのみだね。」
「はい!」
「ふふ。それね、ご飯をどんぶりに入れて、そこのお肉と玉ねぎのね、かけて?
その籠の開いてるところいれてカップ君に届けてね。」
「はい!」



「・・・・ねーちゃん?それはいいの?」
「いいんよ。気にしないで?みんな何も言ってないでしょ。
これは普通だから、わたしたちは。
どう?お醤油!いいでしょ?」
「うん!うまいよ!匂いがいい!これは持ってきた奴?前の?」
「前のだね。あれから少し寝かせたというか、暗いところに置いといたんだ。
で、絞って、火を入れて。
今日持ってきてもらったのはちょうどいい感じだね。だいぶ前から作ってくれてたの?」
「うん。豆はたくさんあるから。」
「あー、賢いね。計算も早いって聞いたよ?学校?」
「がっこう?なにそれ?」
「勉強したの?」
 「勉強じゃないけど、本を読むのが好きなんだ。
あの金で本を買った。」
「おお!初めて見るよ。稼いだお金で本を買うのっての。
ああ、マティスは大人でしょ?
子供でだよ。漫画は別として。」
「まんが?」
「ふふ。さ、もっとお食べ。もういいの?お風呂気持ちよかった?」 
「風呂!すごいね!」
「姉さん、そろそろいいですか?」
「うん、いいよー。師匠も、ニックさんも。
決めるのはソヤだ。
ソヤ?みんなね、ソヤと一緒に働きたいって言ってんだけど、どうかな?」
「ねーちゃんは?」
「ん?わたし?わたしはこのお醤油が定期的に供給されることを望んでいる。
セサミンはのところで作ってくれたらうれしいな。」
「ふーん。」
「ああ、もちろん、ここではなくて、ソヤの村の特産品にしてもいい。
隠匿は生産院でかけてくれる。
これだけだとただ辛い水なんだけど、お料理で使うことで幅が広がる。
その料理にかけることは反対だけどね。もとになるものはいいと思うよ?」
「売れる?」
「売れるね。わたしが買うもの。焼肉のたれを作ればもうウホウホ。
めんつゆもいいし、ポン酢も売れる。」
「ふーん。」
「ふふふふ。よく考えて。
師匠と、ニックさんは別のことでソヤと仕事をしたいと思ってるみたい。
なんでも聞いてみ?嘘を言ってるか、ソヤならわかるでしょ?」
「・・・そこまでは分からない。」 
「そうか。ドーガー!ソヤの立場で助けてあげて?」
「わかりました。」
「大前提はソヤのこれからだ。
お醤油は身内だけなら何とでもなるからね。
さ、みんなは眠くない?大丈夫なのね?
悪いけど、マティスとちょっと家に帰るね。」
「兄さんは?」
「うん。原因は分かってるから心配しないで?」

マティスは戻ってから、何も食べずにわたしにへばりついているのだ。
反動があったか。

できたものを盛り付けるだけだから
ルビス君たちに頼んだ。
あっというまに食べて終えてたのだ。

有意義なプレゼンとなるだろうから聞きたいけど、マティスのことが先だ。
ああ、戻る前にコクと話をしておこう。



「コク!いる?」


なんだ?



外に出て呼ぶとすぐに表れた。
チャーたちは裏手に廻ってしまう。
黒馬ではなく香馬だからなのだろう。



それはどうした?



こちらのことを聞いてくるのは珍しいが、
マティスがおんぶおばけだからだ。



「うん、大丈夫。
それよりね、呪いの森がボルタオネの領土になったの。
この区画も。
あのカーチは匂いを遮断している間は良き父親だったんだ。
外で顔色が悪くなったらお茶を飲んだら落ち着いたみたい。
お茶ってすごい?
それと、ボルタオネは人の手で香木を採取するみたい。
森を伐採するのかな?その過程で探すのか、
探すために伐採するのか。
そこまでは聞いていない。聞けなかった。」

茶は緑のままのほうがいい
裏手の森はもともとボルタオネの領土だ
それも問題ない
森が望むものを受け入れるだけだ
カーチ、あの男も、マーロもイスナもそれぞれに問題があるな
テールか?あれはこれからだ
人の手で見つけれるのならそれでいい
できるのならな
かまうことはない



「そうなん?
それぞれに問題ね。問題があるのが人でしょう?
あとで来るよ?会ってみる?」

呼んでくれるか?

「もちろん。じゃ、ちょっと帰るね。」


香人よ
あの香木はどうした?


「まだマティスが飾りを考えてるよ?」

身に付けておけ


「ん、わかった。ああ、この言葉知ってる?
クリーテ・カネリトリア・トメリタロっていうの。」

誰に言った?

「言ってないよ。言われた方だね。
名前を付けてってこと?」


そうだ
誰に言われた?


「砂蜘蛛のクーとトリヘビのビャク、
それと人間に言われた。」

名を付けたのか?その人間に?

「うん。もしかして問題?」


いや
名前を付けてという意味なだけだ
これからそう言われたら付けてやればいい
気に入らなければ付けなければい


「わかった。」

わたしもいいか?


「ん?コクっていう名前嫌だった?」


はははは!
気に入ってる
が、もう一度付けてほしい

「違うのがいい?」

なんでも
クリーテ・カネリトリア・トメリタロ



「コクは黒王号のコクだ。
あなたの名前は、コクオーゴ。
漆黒の馬。
誇り高き香馬。
英知の馬。
全ての称賛があなたにある。
そしてわたしの友人だ。
コクオーゴ。
これからもよろしくね。」


コクは気に入ったとばかりに嘶いた。















─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘










館に入ると、愛しい人を一人にしなければと思った。
どうして?
1人になりたいのか?
違うな。なんだろうか?

皆で風呂に入ってこいという。
これだけの人数で?
私は愛し人の傍にいたい。
なのに、一緒に行ってこいという。
そうだな。上にも行こう。最後だしな。男共のなかに愛し人はいられない。
そうだ。愛しい人が言うのだから。




風呂を喜ぶソヤ。
背が完全にチュラルと並び、肉も付き始めたルビス。
が、ガイライたちと比べれば比較にもならない。

ニックの肉の付き方もきれいだ。
セサミナもそれなりに付いている。
あれからできる鍛錬はしているようだ。
ツイミは、必要ないしな。
エデト達と風呂に入ったような騒がしさだ。
そうだな、男同士はこんな感じなのだろう。





上に行く。
ジャグジーとトランポリン。
裸ではなんなので、軽い服に着替える。
これはいいな。被るだけだから。
流石、セサミナだ。きちんと置いてある。

「兄さん、さすがですね。大きさもいろいろある。」

ん?セサミナが用意したのではないのか?
ま、いいか。

水分は取らなければいけないな。
この管は酒?こっちは水か?
ツイミとニックが酒を飲み始めた。
飯はまだ食べていないのに。
呑み過ぎるなよ?
飯はなんで食べていないんだ?
ルビスたちも腹が減ったというくせに、食べに行こうとも言わない。
ワイプもだ。
いつもなんかないんですか?とうるさいくせに。
私も作る気は起きない。作らなくてもいいから?
どうして?






ん?腹が減ったな。
下に降りてなにかつくろうか?
いや、作らなくてもいいんだ。
ん?

台所の扉を開ければ人がいた。

「お帰り~。」



あの泡がはじける感覚。

「愛しい人!」


あなたがいなかった!!
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