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506:現金払い
しおりを挟む妖精が体半分になった時、王の表情は変わらなかった。
が、目線だけわたしに動いたのだ。ほんの一瞬。
もともと正面を向いて、空を見つめていた。
その焦点があった気がしたのだ。
思い違いだと、その時は思った。
見たのだ。わたしを。
「うまい。そして驚いた。」
「みんなそういうね。で、別に毎日食べたいとは思わない。だろ?」
「ああ、まさに。」
「忘れたころに、ああ、そういえばあったね。
あるんなら食べよっかっていう程度だ。」
「思うに。」
「ん?」
「会話の中に人がいるのだな。面白い話し方だ。」
「・・・帰れ!塩まくぞ!!」
「うむ。その表現も面白い。塩をまいてどうする?」
「・・・いいよ。それを説明するのは面倒だ。」
「そうか?では、話を戻そう。100万リングで売ってほしい。」
「よく考えろ。その100万をどうやってわたしに渡すんだ?
資産院経由か?資産院を使えば金の流れはバレバレだ。
じゃ、ここに運ぶか?どうやって?王が命令するのか?
何のためにコットワッツの雇われ護衛に100万リングを払う?
人の口に扉はつけられないぞ?すぐに噂になる。
それすらも望めば問題ないのか?
が、わたしが困る。その金をどこから調達したかが問題なる。
夫婦間で隠し事はない。が、この話はマティスにはできない。
理解できないだろ。使えば疑問だけが残る。
だから使えない。まさに絵に描いた餅。
だから100万リングはいらんな。」
「金を出せと言ったのはそっちだ。」
「そうだ。では10リングだ。」
「10!」
「いま、ここで。ニコニコ現金払いだ。」
「え?笑うの?」
「ああ!そうじゃない!」
「難しい。が、今は持ってない。」
「だったらダメだ。今ここで出せるものと交換か?
でも、その服をもらってもいらんな。
わたしの趣味でもないし。
・・・それはあなたのお気に入り?」
「服?」
「ちょっと、両手を広げてくれる?」
「?こうか?」
「ウィン ディズ ブロ ウィンフロム ディ エーイ ジャーン!」
「?」
「いや、服はいらん。」
「え?今のは?」
「気にするな。なんか、価値あるっぽいもんで、いいもの。
それと交換だ。おばあちゃんの知恵袋的なものでもいいし、
笑える小話でも。ああ、王様あるあるでもいい。」
「すまない。意味が分からない。」
「・・・あのさ、わたしの話、みんなもわかんないのかな?」
「いや、わたしの理解不足だと思う。気にするな。」
「そう?」
「わからなければわからないと聞くだろう。」
「そうだね。そこらへんは国民性なのか遠慮なく聞くよね。
空気読めって言うのもあるくらいに。」
「また分からない。」
「ああ、こういうのが分からんのか。いいよ。こっちは分かったから。
んー、じゃ、価値あるお話ありますか?」
「ああ、なるほど。そうだな。
悪いが先に、酒をくれないか。それと交換だ。」
「おお!それもそうだ。
話を聞いてから面白かったのに却下されたら話損だものね。
が、ほんとにくだらなかったら、鼻毛の呪いをかけるから。」
「だから、それが伸びるのがどうして呪い、よくないこととなるのだ?」
「わかった!おでこが広くなる呪いにしよう!」
「おでこが広く?顔が大きくなるのか?」
「ぶはははははは!!!違うわ!!髪の毛の生え際が後退するんだよ!
要は禿げになるという呪いだ!」
「やっとわかった!それは、呪いだな。困るな。」
「だろ?あとは禿げ散らかすというのもある。
禿げが散らかっている。
つまり、髪がまばらに少なくなっているという状況だ。」
「・・・!あはははははは!禿げ散らかす!!!あはははははは!!!」
「禿げネタは鉄板だな。じゃ、この密封容器にいれるね。
日持ちすると思うから。プニカもいる?」
「プニカ? 」
「あの赤いの。」
「ああ!欲しいな!」
「水煮は日持ちしないから早めに食べてね。こっちの砂糖漬けは持つよ。
リンゴもつけてやろう。これね。お菓子セット。」
「これはいくらだ?」」
「ん?いいよ。お裾分けだね。」
「それは分けてくれるのに、酒は金、対価を要求するのか?」
「そりゃそうでしょ?ご飯を食べてあなた、喜んだでしょ?
持って帰って、食べれることがあなたうれしいんでしょ?
わたしはそれがうれしいから、それ以上の対価はいらない。
でも、お酒はうれしくない。だから対価を要求するだけの話だ。」
「確かにわたしは喜んだし、持って帰れるのがうれしい。
が、それでどうしてあなたがうれしいのだ?」
「ふふふ。それが分かるようになればいいね。」
「なるのか?」
「さぁ?」
「・・・・。」
「じゃ、これね。よし!面白話カモン!」
「かもん?わからんな。
鼻毛はいいが、禿げ散らかしたくはないな。プっ。
いかん。笑いがこみ上げるな。」
「いいから!それは腹筋の鍛練だと思えばいい。 」
「腹筋!やめろ。また違う笑いが来る。ん、ん。いいか?」
「おうよ!」
「クリーテ・カネリトリア・トメリタロ。」
「ん?それ鉄板ネタ?クーちゃんもビャクもそういったよ?」
「なんと!わたしは3人目か。」
「そうだね。人は初めてだけど。」
「え?その二人は?」
「砂蜘蛛とトリヘビ。んー、これは微妙だ。2人の時は笑ったけど、
3回目はなぁ。」
「砂蜘蛛とトリヘビ。・・・そうか。で、名前は?」
「ああ、やっぱり名前を付けてってことなんだね。
ふふふ。なるほど。おもしろあだ名をつけてやろう。」
「・・・それを呼ぶのはあなただぞ? 」
「ハゲーって呼ぶのは嫌だし、教育上よろしくないね。」
「・・・。」
「では、ラーフィングだ。笑い上戸だからね。エルビーとジュディーも捨てがたいけど。
うん、あなたの名前はラーフィング。だ。」
「らあふぃんぐ。いいな。わたしの名はラーフィング。」
「そそ。ラーフィング。笑い上戸のラーフィング。
あなたが笑うと楽しい気持ちになる。ムカつくこともあるけれど。
笑いのツボが似てるんだろうね。
さ、早く帰りな。
上のみんながおなかをすかしている。
このことを話しても理解を拒否するのだろ?」
「分からないな。必要なら受け入れられるだろう。」
「んー。無駄に心配さすだけだな。今はいいか。」
「・・・わたしには食が細いからと心配する従者はいない。」
「あたり前だ。自分の仕事を
妖精のお世話だと言い切る王を誰が心配するか。」
「それもそうだ。わたしの変わりはいくらでもいるからな。」
「は!悲しいことをいう。しかたないな、わたしが心配してやろう。
よく食べ、良く寝て、よく笑う。人生で必要なことだ。」
「ああ、それだけで十分。」
「いや、ちゃんとしろっていってんだけど?」
「そうなのか?」
「そうでしょ?ほら!早く帰っておくれ!腹ペコ軍団がのぼせ上がる。」
「では、失礼しよう。いずれまた。」
「二度と来るな!塩まくぞ!」
「やはりわからんな!あはははははは!」
一応、扉から出ていった。
お酒とお菓子の入った瓶を抱えて。
どう帰っていったかは知りたくもない。
猫なんか被ってなんかいられない。
扉に向かって塩をぶちまけておいた。
ふらふらでのぼせ上がったみんなは、
床にこぼれている塩に首をかしげていた。
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