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537:バスツアー
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旧王都から、投票が行われる館は、
都下から王都を抜けていくことになる。
都下は王都で働く人の街。
皆が馬車を見ているが、笑われてはいないのでいいだろう。
窓を開けて、
あの看板かっこいいとかそんな話をしながら抜けていく。
王都内に入ると、さすが格式が違う。
ここにアンテナショップ、
コットワッツの商品を先行でお披露目するお店出したいですねとか、
ハンバーグ屋さん以外のお店にも行こうとか、
バスツアーをしているみたいで楽しい。
ハニカさんもあすこはどうだと説明してくれる。
いろいろな場所の荷物を載せて運ぶから、街のことには詳しいのだ。
ハンバーグ屋さんも食べたことはないけど、評判はいいと教えてくれた。
「しかし、同じようなものを出す店が増えたとか。
だから、今度新しいものを売り出すって噂ですよ?」
きっとチーズインだ!
「服も頂いたし、収入もあったんで行ってみようかと思っています。」
「そうか?ではちょっと寄ってくれるか?」
「?わかりました。」
店の前に付けると、まだ客が入る時間ではない。
豪華な馬車が止まったんで、誰かが知らせたのだろう、
あの店主が慌てて出てきた。
「店主!」
「セサミナ様でしたか!これはなんと素敵な馬車でしょうか!」
「そうか?ハニカの馬車だ。滞在館が旧王都の地になったのでな、
迎えに来てもらったんだ。
今度新しい味のハンバーグを出すらしいな。」
「もうお耳に入りましたか。ええ。あれですよ!あれ!
ぜひ食べに来てください!」
「楽しみだな。帰りに寄ろうか。
かまわないだろうか?」
「ええ、ぜひお越しください。」
やった!チーズインハンバーグだ!
初めて見る馬車の形。
中を見れば、豪華な装飾、見目のいい男たちが乗っている。
あれは?
コットワッツの領主だと噂している。
セサミンかマティスの顔を知っているものだろう。
馬車にコットワッツのマークを入れればよかったかな?
いや、そこまでアピールすることもないだろう。
向かう館は、会合の館、謁見の館、その横の建物だ。
審判の館だそうだ。
天秤院が管轄。いろんなことを決める館だそうだ。
「わたしは初めてですよ。投票で何かを決めるなんて
はじめてなんじゃないかな?」
「そうだよね。えらいさんが決めてくれればいいのに。
そしてもっと大事なことを投票させてほしいね。
軍部隊長が大事なことは分かるけど、結局は
どっちに誰が付くか公言するようなもんだ。」
無投票は許されるが、
それを言わないといけない。
誰に誰を入れるかを宣言するのだ。
力関係丸わかりなので、領国はほとんど無投票だろうとのこと。
コットワッツは一番最後に到着。
だって一番遠いし、お茶したし、改造もしたし。
ゆっくり街中を案内してもらった形になったし。
ハニカさんを手配した人だって、
最後に到着させて笑いものにしたかったんだろ?
皆がそろうまで館には入れないそうな。
なので、皆が馬車たまりで待っている。
そこに白い馬車がやってくる。
違う馬車を手配すれば用意した馬車を断ったということでそれはそれで問題。
馬車の上に幌をかけるぐらいはいいだろう。
元は一緒なんだから。
馬車が止まり。
わたし達が先に降りる。
片側の幌をすべて巻き上げ、中が丸見えの状態にする。
くつろぐセサミン。
階段を用意し、下りてもらう。
わたし達は頭を下げて並んだ。ハニカさんもだ。
「ご苦労。帰りも頼む。」
「はっ。」
「申し訳ないですね。一番最後だったようだ。
やはり遠いですね。これからはもっと早めに迎えに来ていただこう。」
中央院の誰だろう?
たぶん、馬車を手配した人だ。
「こちらで用意した馬車に乗っていただければ遅れることはなかったのでは?
それに中央院の手配馬車を断るとは、不敬になりますよ?」
「どなたで?」
「中央院、副院長カメフルだ。」
「ああ、あなたが!カメフル殿?この馬車はそちらが手配してくれたもの。
御者はハニカですよ?あなたがお声をかけたのでは?
お陰で、王都見物もゆっくりできました。
田舎者なんでね、楽しめましたよ。ありがとうございます。」
「な!」
服は違うけど、わたしと違うんだ、顔は覚えられるだろう。
ハニカさんはこの人を見て、また、深々と頭を下げた。
「御者も馬もそのままだし、荷台は買い取って少し改良しましたけどね。
皆が乗りたいというもので。馬車に弱いうちの護衛もよろこんでいましたよ。」
うん、喜んだ。
バスツアーって行ったことないんだ。酔うから。
だからニコニコしている。
そうするとマティスもニコニコだ。
「・・・・。」
「遅れたのは申し訳ない。では、行きましょうか?」
ものすごく何か言いたそうだけど言えんよね。
「マリー!!」
この男が離れるのを待って、テール君が飛び込んできた。
「テール様、昨日ぶりですね。」
「そうだ、昨日ぶりだ。やはり、あのまま会にいればよかった!
マリーが歌を歌ったと聞いた。くふふふ。
カーチとマーロがあのように興奮したのを初めて見た。」
「そうなんですか?いや、それよりも王が来たことは?」
「それも聞いたが、わたしは最近、お会いしているからな。
しっかり勤めよというお言葉も直接頂いている。」
「さすが、テール様ですね。」
「マリーの歌の方がいいな。あの眠くなるもの以外で。」
「そうですね。どんな歌がいいでしょうか?
これが終わりましたら、途中まで一緒に帰りましょうか?
その時聞いてくださいますか?」
「ほんと!あの馬車に乗ってもいいの?」
「セサミナ様?」
「かまいませんよ。」
「帰りはマリーと一緒!」
「コクはどうしてますか?」
「館で待っている。」
「そうですか。」
ここには来ていないのか。
護衛は?カーチとマーロはセサミンと話している。
傍にいる男か?
これがマトグラーサの館に入らなかった?
なんで?暗示がかかるのを嫌がったからだ。
コクがそのままにしているのなら、情報を集めているだけか。
テールの身に何かあるのなら排除しているだろう。
「お待たせしました。お入りください。」
天秤院の人の案内で中に入っていった。
講義室のようだ。
扇状に広がり、座席は階段状。
会合の館と違うのは、中央に講義台があるということ。
それぞでの領主が座り後ろに従者、護衛。
各院の院長、副院長と座っている。
オート君とツイミさんはいるが師匠はいない。
カップ君たちの気配は外では感じたのに。
「ここで隠密行動はできないですよ?天秤院の管轄なので、公平です。
姿を隠すことなぞ、許されない。では、始めましょうか。」
わたしがキョロキョロしていたからか、天秤院のランサー殿がそう宣言した。
「今回は、軍部隊長を投票で決めるということ。
なぜそうなったかはこの際省きましょう。
候補に名乗りを上げているのは、
スダウト家とタレンテ家?
個人ではなく家名で?
たしか、スダウト家はエボニカ殿?クラビット殿?
タレンテ家はトウキン殿?
え?」
横でクロモさんが何やら説明をしている。
「勘違いをしていたようだ。
軍部隊長を輩出する一族を決めると?いつの間に。
え?両家の了承済み?そうか。
では、改めて。
今回の投票に天秤院は無投票ではなく不参加です。
公平ではないので。進行は勤めましょう。」
んー、じゃ、中央院の事務方は何を準備したんだ?
天秤院に場所の提供とさっき配られた紙の準備?
でも、宣言するんだよね?
開票するわけでないし。
あのときなんでクロモさんがあんなに青ざめたんだろう?
もっとなんか、御大層なことを準備したんだと思たんだけど。
「先に!」
オート君が手をあげる。
「資産院?どうぞ?」
「我が資産院も不参加で。我が院は皆様の資産を円滑に運用管理するもの。
スダウト家、タレンテ家、双方に資産を預けていただいている。
そのどちらかを選ぶことはできないし、どちらかが不適切だという事もないでしょう。
資産院は皆に平等です。不参加とさせていただく。」
公平と平等か。
確かに、お金関係は平等だ。
公平に税を集めるのではなく平等に集める。
なるほど。
「皆さま、それは良いか?反対がないのでそれは認められました。
では、他に不参加の方は?いませんね。
始めます。ボルタオネから。」
「はい。ボルタオネは白紙です。
どちらを選ぶことなぞ、できません。どちらが軍部隊長になられても
ニバーセルを守り、我らを導いてくれることを確信しております。
皆皆さまの判断にお任せ致します。」
「わかりました。次、コットワッツ。」
「はい。コットワッツも白紙でございます。
理由はボルタオネと同じ。
どちらの方が軍部隊長になられても、ニバーセルを、各領国を守る盾となってくれますことを
確信しております。」
「わかりました。次、ラルトルガ。」
「はい、ラルトルガも同じ、白紙です。
素晴らしき考えをお持ちの両家。
わたしにはとても優劣はつけられない。
皆様のお考えに従います。
どちらの方がなられても、ニバーセルは安泰。
領国の平和を維持してくれることでしょう。」
これは年齢順なのだろうか?
「わかりました。次、フレシア。」
「はい、フレシアはタレンテ家に投票します。
やはり、石使いを多く配するところがよろしいかと。
ニバーセルだけでなく、この大陸は砂漠石があってこそ。
その石をうまく使うことができるというのはいい。
フレシアはタレンテ家が軍部隊長にふさわしいと考えます。」
「うむ。タレンテ家に一票。
次、ルカリア。」
「ルカリアはスダウト家に。
いち早く、銃の有効性を認めた決断力は素晴らしいと考えます。
ルカリアはスダウト家にから軍部隊長が排出されることを望みます。」
決断力って、別にその一族皆に備わってるわけじゃないよね?
なんのかんのでスダウト家のボンクラがなったらどうするんだろう?
それはそれでおいしいのか?
「スダウト家に一票、と。
次はマトグラーサ。」
「マトグラーサは白紙です。」
え?そうなの?
すこしどよめきが起こった。だって。てっきりスダウト家ごり押しだと思っていたのに。
みんなが。
「理由は白紙で投票される方々と同じ。
どちらでもニバーセルは安泰です。お二方のお話を聞きまして、
ますます確信しましたので。」
いや、それは銃の導入が決定されたからどうでもいいってこと?
自分の王になった時のことを考えて両方にいい顔したいってことか?
怖いわー。
「では、領国最後、タフト。」
「タフトはタレンテ家を。
石使いの多さ、情報収集の速さ、
どれにおいてもニバーセルを守るのに重要な要素。
例え、スダウト家が石使いを集めようとも、
偽物か、本物のほとんどがタレンテ家の者でしょう。
だったら、タレンテ家の軍部隊長を望むのが
領国にとって最良の選択と考えます。一族の結束は強いですからね。」
いや、お家騒動起こしてるんでしょ?
結束も何もないと思うけど。
「タレンテ家に一票。
次は院ですね。院長と副院長は配られた紙に書いて
投票を。院長と副院長と意見が違うこともありますから。
理由は延べなくて結構。」
なんじゃ、それ?
だったらみんなそれでいいじゃん。
もしくは最後まで理由をしゃべらせてよ!
「コットワッツが遅れたのでな。あまり時間を取れないからな。」
む!ランサー殿はわたしの心の流れを読んでるのか?
(愛しい人、顔に出ている。目線と。横で見ていて心を読んでもいないのに
考えていることが丸わかりだったぞ?)
(なに!無表情、無表情!)
(はははは!)
気を付けないと。
そこから、みんな記入して投票していった。
で、読み上げ。
結果?同数だよ。領国の票も入れて。
なんだよ!時間返せ!
あ、無表情、無表情。
「同数ということは両家とも軍部隊長ということですな?」
そうなるの?
え?東軍、西軍?紅組白組?
一軍二軍はまた喧嘩になるでしょう?
「名は各自で付ければよろしい。
お互いが競い合えば、より良い軍部ができると思うな。
これぞ、公平だ。」
「素晴らしい!!」
マトグラーサの領主がいち早く賛成の声をあげた。
だって、銃の購入先が2つになったもの。
「お待ちください!」
オート君のストップだ。
「たとえ、軍が2つになったとしても、出せる予算は今まで通り。
年に100万リングです。
それを2つに分けます。年、50万リングずつです。
それ以上は出せません!!」
すごいなコットワッツの2年分の予算が軍の予算と一緒なんだ。
「かまわないのでは?両家は王族だ。資産もあるだろう。
それを各軍につぎ込むのは王族として当然。
その年予算さえ不要というものだ。」
「!そ、そうですね。なるほど!素晴らしい!!」
「院長!オート院長!それはダメですよ。
軍部にはニバーセル国民が数多く働いています。
例え上層部が貴族子息達で給金が不要ということであっても、
働く彼らの給金は国が出さないといけません。彼らは、我々の為に
国を守る仕事をしているのです。
それを王族の方々から給金を出すというのは間違っている。
国が出してこそです。」
「ツイミといったか?素晴らしい考え方だ!それでこそ公平の精神!
軍で働く国民の給金及び必要な予算はこれまで通り資産院が出せばいい。
それでもかなり予算が浮くな。」
「お待ちください!それもおかしい。軍部で働く国民の給与が国で出すというのは
なるほど、その通りだと思います。
いつの間にか、軍部の予算が削減される話になっている。
予算があるだけ軍部の強化はできるということ。
各々のそれぞれが出すのもいいでしょう。が、国としてもある程度出さないと、
この軍はニバーセル軍なのか、王族お抱えの軍なのかわからなくなる!」
これは、天文院だ。
予算削減に敏感だ。
自分のところに余波が来たらたまったもんじゃない。
「それもそうだ。それにここで話すことでもないが、
資産院が出す年予算は、これまで通りで、2つに分け、
従事してくれている国民の給与優先で支給されるということでよろしいか?」
オート君は嫌そうな顔だけ作って、承知と答えた。
これで、予算は増えない、国民の給金は確保できたということか。
大変な仕事だね。
「では双方それでよろしいか?
各家で新しい軍部隊長を決めてほしい。
発表は臨時に会合を開くとしよう。王にも承諾はもらえよう。
混合いはじめの月の日に。では、解散!」
都下から王都を抜けていくことになる。
都下は王都で働く人の街。
皆が馬車を見ているが、笑われてはいないのでいいだろう。
窓を開けて、
あの看板かっこいいとかそんな話をしながら抜けていく。
王都内に入ると、さすが格式が違う。
ここにアンテナショップ、
コットワッツの商品を先行でお披露目するお店出したいですねとか、
ハンバーグ屋さん以外のお店にも行こうとか、
バスツアーをしているみたいで楽しい。
ハニカさんもあすこはどうだと説明してくれる。
いろいろな場所の荷物を載せて運ぶから、街のことには詳しいのだ。
ハンバーグ屋さんも食べたことはないけど、評判はいいと教えてくれた。
「しかし、同じようなものを出す店が増えたとか。
だから、今度新しいものを売り出すって噂ですよ?」
きっとチーズインだ!
「服も頂いたし、収入もあったんで行ってみようかと思っています。」
「そうか?ではちょっと寄ってくれるか?」
「?わかりました。」
店の前に付けると、まだ客が入る時間ではない。
豪華な馬車が止まったんで、誰かが知らせたのだろう、
あの店主が慌てて出てきた。
「店主!」
「セサミナ様でしたか!これはなんと素敵な馬車でしょうか!」
「そうか?ハニカの馬車だ。滞在館が旧王都の地になったのでな、
迎えに来てもらったんだ。
今度新しい味のハンバーグを出すらしいな。」
「もうお耳に入りましたか。ええ。あれですよ!あれ!
ぜひ食べに来てください!」
「楽しみだな。帰りに寄ろうか。
かまわないだろうか?」
「ええ、ぜひお越しください。」
やった!チーズインハンバーグだ!
初めて見る馬車の形。
中を見れば、豪華な装飾、見目のいい男たちが乗っている。
あれは?
コットワッツの領主だと噂している。
セサミンかマティスの顔を知っているものだろう。
馬車にコットワッツのマークを入れればよかったかな?
いや、そこまでアピールすることもないだろう。
向かう館は、会合の館、謁見の館、その横の建物だ。
審判の館だそうだ。
天秤院が管轄。いろんなことを決める館だそうだ。
「わたしは初めてですよ。投票で何かを決めるなんて
はじめてなんじゃないかな?」
「そうだよね。えらいさんが決めてくれればいいのに。
そしてもっと大事なことを投票させてほしいね。
軍部隊長が大事なことは分かるけど、結局は
どっちに誰が付くか公言するようなもんだ。」
無投票は許されるが、
それを言わないといけない。
誰に誰を入れるかを宣言するのだ。
力関係丸わかりなので、領国はほとんど無投票だろうとのこと。
コットワッツは一番最後に到着。
だって一番遠いし、お茶したし、改造もしたし。
ゆっくり街中を案内してもらった形になったし。
ハニカさんを手配した人だって、
最後に到着させて笑いものにしたかったんだろ?
皆がそろうまで館には入れないそうな。
なので、皆が馬車たまりで待っている。
そこに白い馬車がやってくる。
違う馬車を手配すれば用意した馬車を断ったということでそれはそれで問題。
馬車の上に幌をかけるぐらいはいいだろう。
元は一緒なんだから。
馬車が止まり。
わたし達が先に降りる。
片側の幌をすべて巻き上げ、中が丸見えの状態にする。
くつろぐセサミン。
階段を用意し、下りてもらう。
わたし達は頭を下げて並んだ。ハニカさんもだ。
「ご苦労。帰りも頼む。」
「はっ。」
「申し訳ないですね。一番最後だったようだ。
やはり遠いですね。これからはもっと早めに迎えに来ていただこう。」
中央院の誰だろう?
たぶん、馬車を手配した人だ。
「こちらで用意した馬車に乗っていただければ遅れることはなかったのでは?
それに中央院の手配馬車を断るとは、不敬になりますよ?」
「どなたで?」
「中央院、副院長カメフルだ。」
「ああ、あなたが!カメフル殿?この馬車はそちらが手配してくれたもの。
御者はハニカですよ?あなたがお声をかけたのでは?
お陰で、王都見物もゆっくりできました。
田舎者なんでね、楽しめましたよ。ありがとうございます。」
「な!」
服は違うけど、わたしと違うんだ、顔は覚えられるだろう。
ハニカさんはこの人を見て、また、深々と頭を下げた。
「御者も馬もそのままだし、荷台は買い取って少し改良しましたけどね。
皆が乗りたいというもので。馬車に弱いうちの護衛もよろこんでいましたよ。」
うん、喜んだ。
バスツアーって行ったことないんだ。酔うから。
だからニコニコしている。
そうするとマティスもニコニコだ。
「・・・・。」
「遅れたのは申し訳ない。では、行きましょうか?」
ものすごく何か言いたそうだけど言えんよね。
「マリー!!」
この男が離れるのを待って、テール君が飛び込んできた。
「テール様、昨日ぶりですね。」
「そうだ、昨日ぶりだ。やはり、あのまま会にいればよかった!
マリーが歌を歌ったと聞いた。くふふふ。
カーチとマーロがあのように興奮したのを初めて見た。」
「そうなんですか?いや、それよりも王が来たことは?」
「それも聞いたが、わたしは最近、お会いしているからな。
しっかり勤めよというお言葉も直接頂いている。」
「さすが、テール様ですね。」
「マリーの歌の方がいいな。あの眠くなるもの以外で。」
「そうですね。どんな歌がいいでしょうか?
これが終わりましたら、途中まで一緒に帰りましょうか?
その時聞いてくださいますか?」
「ほんと!あの馬車に乗ってもいいの?」
「セサミナ様?」
「かまいませんよ。」
「帰りはマリーと一緒!」
「コクはどうしてますか?」
「館で待っている。」
「そうですか。」
ここには来ていないのか。
護衛は?カーチとマーロはセサミンと話している。
傍にいる男か?
これがマトグラーサの館に入らなかった?
なんで?暗示がかかるのを嫌がったからだ。
コクがそのままにしているのなら、情報を集めているだけか。
テールの身に何かあるのなら排除しているだろう。
「お待たせしました。お入りください。」
天秤院の人の案内で中に入っていった。
講義室のようだ。
扇状に広がり、座席は階段状。
会合の館と違うのは、中央に講義台があるということ。
それぞでの領主が座り後ろに従者、護衛。
各院の院長、副院長と座っている。
オート君とツイミさんはいるが師匠はいない。
カップ君たちの気配は外では感じたのに。
「ここで隠密行動はできないですよ?天秤院の管轄なので、公平です。
姿を隠すことなぞ、許されない。では、始めましょうか。」
わたしがキョロキョロしていたからか、天秤院のランサー殿がそう宣言した。
「今回は、軍部隊長を投票で決めるということ。
なぜそうなったかはこの際省きましょう。
候補に名乗りを上げているのは、
スダウト家とタレンテ家?
個人ではなく家名で?
たしか、スダウト家はエボニカ殿?クラビット殿?
タレンテ家はトウキン殿?
え?」
横でクロモさんが何やら説明をしている。
「勘違いをしていたようだ。
軍部隊長を輩出する一族を決めると?いつの間に。
え?両家の了承済み?そうか。
では、改めて。
今回の投票に天秤院は無投票ではなく不参加です。
公平ではないので。進行は勤めましょう。」
んー、じゃ、中央院の事務方は何を準備したんだ?
天秤院に場所の提供とさっき配られた紙の準備?
でも、宣言するんだよね?
開票するわけでないし。
あのときなんでクロモさんがあんなに青ざめたんだろう?
もっとなんか、御大層なことを準備したんだと思たんだけど。
「先に!」
オート君が手をあげる。
「資産院?どうぞ?」
「我が資産院も不参加で。我が院は皆様の資産を円滑に運用管理するもの。
スダウト家、タレンテ家、双方に資産を預けていただいている。
そのどちらかを選ぶことはできないし、どちらかが不適切だという事もないでしょう。
資産院は皆に平等です。不参加とさせていただく。」
公平と平等か。
確かに、お金関係は平等だ。
公平に税を集めるのではなく平等に集める。
なるほど。
「皆さま、それは良いか?反対がないのでそれは認められました。
では、他に不参加の方は?いませんね。
始めます。ボルタオネから。」
「はい。ボルタオネは白紙です。
どちらを選ぶことなぞ、できません。どちらが軍部隊長になられても
ニバーセルを守り、我らを導いてくれることを確信しております。
皆皆さまの判断にお任せ致します。」
「わかりました。次、コットワッツ。」
「はい。コットワッツも白紙でございます。
理由はボルタオネと同じ。
どちらの方が軍部隊長になられても、ニバーセルを、各領国を守る盾となってくれますことを
確信しております。」
「わかりました。次、ラルトルガ。」
「はい、ラルトルガも同じ、白紙です。
素晴らしき考えをお持ちの両家。
わたしにはとても優劣はつけられない。
皆様のお考えに従います。
どちらの方がなられても、ニバーセルは安泰。
領国の平和を維持してくれることでしょう。」
これは年齢順なのだろうか?
「わかりました。次、フレシア。」
「はい、フレシアはタレンテ家に投票します。
やはり、石使いを多く配するところがよろしいかと。
ニバーセルだけでなく、この大陸は砂漠石があってこそ。
その石をうまく使うことができるというのはいい。
フレシアはタレンテ家が軍部隊長にふさわしいと考えます。」
「うむ。タレンテ家に一票。
次、ルカリア。」
「ルカリアはスダウト家に。
いち早く、銃の有効性を認めた決断力は素晴らしいと考えます。
ルカリアはスダウト家にから軍部隊長が排出されることを望みます。」
決断力って、別にその一族皆に備わってるわけじゃないよね?
なんのかんのでスダウト家のボンクラがなったらどうするんだろう?
それはそれでおいしいのか?
「スダウト家に一票、と。
次はマトグラーサ。」
「マトグラーサは白紙です。」
え?そうなの?
すこしどよめきが起こった。だって。てっきりスダウト家ごり押しだと思っていたのに。
みんなが。
「理由は白紙で投票される方々と同じ。
どちらでもニバーセルは安泰です。お二方のお話を聞きまして、
ますます確信しましたので。」
いや、それは銃の導入が決定されたからどうでもいいってこと?
自分の王になった時のことを考えて両方にいい顔したいってことか?
怖いわー。
「では、領国最後、タフト。」
「タフトはタレンテ家を。
石使いの多さ、情報収集の速さ、
どれにおいてもニバーセルを守るのに重要な要素。
例え、スダウト家が石使いを集めようとも、
偽物か、本物のほとんどがタレンテ家の者でしょう。
だったら、タレンテ家の軍部隊長を望むのが
領国にとって最良の選択と考えます。一族の結束は強いですからね。」
いや、お家騒動起こしてるんでしょ?
結束も何もないと思うけど。
「タレンテ家に一票。
次は院ですね。院長と副院長は配られた紙に書いて
投票を。院長と副院長と意見が違うこともありますから。
理由は延べなくて結構。」
なんじゃ、それ?
だったらみんなそれでいいじゃん。
もしくは最後まで理由をしゃべらせてよ!
「コットワッツが遅れたのでな。あまり時間を取れないからな。」
む!ランサー殿はわたしの心の流れを読んでるのか?
(愛しい人、顔に出ている。目線と。横で見ていて心を読んでもいないのに
考えていることが丸わかりだったぞ?)
(なに!無表情、無表情!)
(はははは!)
気を付けないと。
そこから、みんな記入して投票していった。
で、読み上げ。
結果?同数だよ。領国の票も入れて。
なんだよ!時間返せ!
あ、無表情、無表情。
「同数ということは両家とも軍部隊長ということですな?」
そうなるの?
え?東軍、西軍?紅組白組?
一軍二軍はまた喧嘩になるでしょう?
「名は各自で付ければよろしい。
お互いが競い合えば、より良い軍部ができると思うな。
これぞ、公平だ。」
「素晴らしい!!」
マトグラーサの領主がいち早く賛成の声をあげた。
だって、銃の購入先が2つになったもの。
「お待ちください!」
オート君のストップだ。
「たとえ、軍が2つになったとしても、出せる予算は今まで通り。
年に100万リングです。
それを2つに分けます。年、50万リングずつです。
それ以上は出せません!!」
すごいなコットワッツの2年分の予算が軍の予算と一緒なんだ。
「かまわないのでは?両家は王族だ。資産もあるだろう。
それを各軍につぎ込むのは王族として当然。
その年予算さえ不要というものだ。」
「!そ、そうですね。なるほど!素晴らしい!!」
「院長!オート院長!それはダメですよ。
軍部にはニバーセル国民が数多く働いています。
例え上層部が貴族子息達で給金が不要ということであっても、
働く彼らの給金は国が出さないといけません。彼らは、我々の為に
国を守る仕事をしているのです。
それを王族の方々から給金を出すというのは間違っている。
国が出してこそです。」
「ツイミといったか?素晴らしい考え方だ!それでこそ公平の精神!
軍で働く国民の給金及び必要な予算はこれまで通り資産院が出せばいい。
それでもかなり予算が浮くな。」
「お待ちください!それもおかしい。軍部で働く国民の給与が国で出すというのは
なるほど、その通りだと思います。
いつの間にか、軍部の予算が削減される話になっている。
予算があるだけ軍部の強化はできるということ。
各々のそれぞれが出すのもいいでしょう。が、国としてもある程度出さないと、
この軍はニバーセル軍なのか、王族お抱えの軍なのかわからなくなる!」
これは、天文院だ。
予算削減に敏感だ。
自分のところに余波が来たらたまったもんじゃない。
「それもそうだ。それにここで話すことでもないが、
資産院が出す年予算は、これまで通りで、2つに分け、
従事してくれている国民の給与優先で支給されるということでよろしいか?」
オート君は嫌そうな顔だけ作って、承知と答えた。
これで、予算は増えない、国民の給金は確保できたということか。
大変な仕事だね。
「では双方それでよろしいか?
各家で新しい軍部隊長を決めてほしい。
発表は臨時に会合を開くとしよう。王にも承諾はもらえよう。
混合いはじめの月の日に。では、解散!」
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『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
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