いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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557:主従

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「ええ。わかりました。
では、トックスさんとソヤは姉さんが移動すると。
そうですか、ソヤはあのあいさつを知っているんですね。
あまり知られていません。する人もいませんから。
ソヤの生まれた場所は本当にあらゆる情報、知識が流れ込むようですね。」

一息ついたセサミンは納得してくれた。
王さん関係、ドロインさん、特にタトーロイン卿が絡む話は要注意だ。
そのときは傍にマティスを配置しよう。


「そそ。そんな予定で。」
「では、今から、あの絶壁の家に?」
「うん。上空、地中とね習得したから。
境界石をぐるっと見てくるよ。」
「砂漠側はないでしょうね。もちろん海側も。」
「そうか。じゃ、境界石は?」
「ピクト側とデルサートルですね。ナルーザには接していないはずです。」
「あ!地図だ地図!」

立方体にしたものを天井に設置していたのだ。
わたしの今!という言葉で、真下のもの撮影。
それを引き延ばすのだ。拡大コピーをしても劣化はない。
流石先生!1億画素ぐらいで撮影しているかんじだ。

「これ!大陸地図!」
「やめてーー!!」

セサミンは倒れはしないけど絶叫した。
ここは執務室だからいいけど、他だったら丸聞こえだ。
ルグとドーガーは接待に行ってるからいない。
その気の緩みかな?

「他の人にはダメ!!姉さんが見るだけ!
兄さん!いいですね!」
「そうだな。うむ。こうしてみると、私の書いたものとほぼ同じだな。」
「さすが!」
「え?兄さん?地図がかけるんですか?」
「書けるぞ?軍での作戦開始時に地図での説明があるからな。
何度か見れば覚える。」
「わたしも何度も見ていますよ?しかし、描けない。
覚えていないわけではないんですよ?
頭の中には描ける。が、いざ、それを紙にかき出すことはできない。
いや、違うな。そんなことはしない、できない。」
「あら?意外なところで制限がかかってるね。」
「!制限!」
「そうなるね。まー、マティスは外れてるから。」
「そうですか。」
「見るのはかまわないよね?こことここ?」
「ええ。ピクトは中央西砂漠にも通じていますが、
山脈があるので行き来はしていないですね。権利も放棄しています。」
「じゃ、砂漠の物をとってもいい?」
「もちろん。砂漠の産物は誰のものではない。ただ、協定があるだけです。
新たな土地のピクト側はふどこも権利を主張していませんから。
デルサトール側はもともと風が強くて人も入れません。
境界石はそのギリギリのところで区切っているでしょうね。」
「そうか。とりあえず、一周廻ってみるよ。
これ、ご近所さんに挨拶とかいる?」
「え?」
「今度、新しくここの管理者になりました。これからよろしくお願いしますって。
菓子折り持っていくの。」
「ない!そんなことしない!しないで!!」
「うん。わかった。」

よかった、先に聞いておいて。


「次の臨時会合の時に話は出るでしょうね。
ラーゼムが会合に出るのは新年以降だ。
あの女、リアーナ?驚きましたね。会食での話ですが、
主導は全てあの女性だったとか。」
「領主としてより豊かにするってことになればいい領主さんいなりそうだけど、
己の為だけって感じだからだめだろうね。」
「ええ。」
「教育係ってのは?」
「これも独立した院です。学院ですが。
しきたりなんかを一通り。子供のころから学んでいても、
一からです。さぼることもできない。
とにかく叩き込まれます。」
「礼儀も?」
「もちろん。」
「いいな。それ、わたしも受けたいな。」
「どうして?」
「ん?わたし礼儀作法あってる?食事の作法とか?」
「ええ。素晴らしいですよ?」
「そう?知らないことばかりだから。」
「ああ、それはその都度聞いていただければ。
食事に関してはなにも。」
「そうなの。よかった。」

かーちゃん、外で恥はかいてないよ。
ありがとう!

あとは領主の力が備わっているかどうか確認もするそうだ。
一番分かりやすい浄化の力を見るらしい。
できなければ認められないということだ。
そうなるとどうなるの?と聞けば、
そんなことは今までになかったはずだから知らないとのこと。
ふーん。
知ったことではないね。

ここから、あの土地にいくには、
王都経由のピクトに入国、港町ギーから船でデルサートルのテルニに、
というのが一般的だ。
が、船を使うと時間がかかるので、そのまま、山脈沿いを走るとしておこう。
どちらにしろ移動するからね。
ピクトの山脈沿いは検問がないから、問題はない。
トウミギを頼んだ村、ウダーに寄ってから行こうかな。

ニックさんの特訓期間はいま、カップ兄弟たちだ。
離れはじめの月になれば、ルカリさんことリカの兄貴がやってきて、
ルグたちの特訓が始まる。
合わずの月以降がわたしたちだ。それから、臨時会合、
混合いはじめまで裏街道!楽しみ!

翌月が雨の月。
メイガ、カエル、ナマコ狩りと忙しい。
雨じまいの食料確保は今月中にしておかないと。
冷蔵庫、冷凍庫に使う板状の砂漠石の加工、
制限は既にセサミンと済ませている。
今年度販売数は終了だ。
これで一度様子を見るとのこと。改良も多少出てくるだろう。
タオル、ゴムと順調。
本年度の収益は、今の時点で、
砂漠石が出ていた時よりも3割減で納まっているとか。
雨の日の後2ヵ月あり、それから新年。

生産院のメディングに話したことと同じようなことを
セサミンにも話しておく。

「砂漠石を確保しているというのは公にはなっていません。」
「ばれれば、追徴課税ってやつ?」
「それを見つけれることができればね。
どの領主もそれなりに確保はしている。秘密の場所に。
ナソニールはそれさえもないのでしょうね。」
「あれからなんか動きがあった?」
「特には。雨の日のあと、5日まで猶予が与えられたんだ。
逃げ準備か、金を集めるか。
あの道具屋には何かあれば頼ってほしいとはいってるので、
領民に無茶な課税を駆ける話が出れば知らせてくるでしょう。」
「そうか。わたしも、頼んでいるもものがあるから、
引き取りに行くときにそれとなく見てくるよ。」

たこ焼き器とおろし金、ステーキ皿だ。
今回の会食で出せればよかったけどね。
まずは身内にお披露目がいいからね。


「戻ってくる。」

ルグとドーガーだ。

「では、セサミナ、いや、領主セサミナ様。
かの地の贈与、まことにありがたく。
かの地で豊かさを生み出して見せましょう。」
「我が領民であり、我が兄、マティス。
かの地の繁栄はこのコットワッツも繁栄する。
精進されよ。」
「はっ。」


あん、かっこいい!
わたしは写真を撮ってますよ?
砂漠石を引き延ばせるってわかったからね。あんな大きな板をかざす必要はない!

兄弟で、しかも、弟兄で主従っていいよねー。

「愛しい人?今何をした?」
「姉さん?何をしてました?」
「趣味です!」

ノックがあったので、どーぞーとわたしが声を出した。

「失礼します。奥方様、お元気そうで何より。」
「スビヤンさんも。」
「愛しい人!話をそらすな!」
「姉さん?例のあれですよね?今の?
取り上げないので見せてください。」
「セサミナ!」

『ルグ!ドーガー!マティスを押さえろ!!』

「な!」

「旦那は流石にお目が高い!
これを。あ、スビヤンさんも見る?セサミン?いい?」
「え?これ?はー、いい!すごくいい!
スビヤン?他言無用だぞ?」
「なんでしょうか?
え?はー、いい!すごくいい!
ご立派になられて!!」

感無量だ。

「愛しい人!セサミナ!!」

マティスを押さえることなんぞ、ルグとドーガーにできるわけがない。
だけど、わたしがが言うんだ、マティスが本気で抵抗することもない。
3人で、ワニワニしている。


「これほしい!」
「ん?んー、今度アルバム、いっぱい撮って本みたいにしたのを作るよ。
それをあげるね。じゃないと、どんどんたまっていくよ?」
「いっぱい!それがいい!!」
「うん、楽しみにね。」
「セサミナ様、それわたしにもぜひお見せください。」
「もちろんと言いたいが、厳選したものを見せよう。
姉上のことだから、わたしのよからぬ姿も入るやもしれんからな。」
「モウ様?わたしに直接おみせください。」
「いいよー。」
「愛しい人!」
「姉さん!!」

抜け出したマティスが取り上げようとするが、そんなの貯蔵庫に移動だ。
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