590 / 869
590:個人資産
しおりを挟む
「・・・ガイライ殿は知ってた?なんで平気なんですか?」
「わたしの臣だからね。」
「ああ、そうか。ちょっとまって!マティス君?コーヒー入れてもらえる?」
「あ!わたしもほしいな。その菓子と。ここで食べたい。」
「わがままだな?」
「マティス君!やめて!」
「うむ。ワイプのこの顔をさせたことに免じて入れてやろう。感謝しろ?」
「師匠?わたしから話す?それとも帰ってもらう?
よく考えたら師匠1人が苦労することないもん。わたし砂漠行ってくるよ?」
「私も行くぞ?愛しい人と競争できるからな。」
「まってほんと、大丈夫。すーーーはーーーー。」
深呼吸をする師匠。
話している間、ずっと下を向いていた。
シュークリームをかぶりつくラーフィング。
クリームついてるよ?
手鏡を渡し、自分で拭くように言う。
もちろん熱いおしぼりだ。
さりげなくコットワッツ製品を売り込むのはいいだろう。
コーヒーを一口飲むと顔を上げ、
師匠は話し始めた。
「王、我らが唯一の王よ。
資産院ワイプと申します。財政のことでお願いしたいことがございます。
まず、ニバーセルの資産が、コットワッツの砂漠のように枯渇しているのです。」
「税は上げたな。それでもなお足りぬか?」
「それ以上に砂漠石が値上がりしました。
資産分配で、各院に必要な分だけ分配すれば、新年を待たずに破綻します。」
「いま、我の使える予算はいくらだ?」
「10億です。」
「それを補っても?」
「それはできません。雨の日後の、中央でお過ごしになる予算です。」
「そうだな。いくら足りない?」
「5億。」
「半分で何とかなるのではないか?」
「のちのちに響きます。逆に10億でも多少の我慢が必要なんですよ。」
「そうか。その念押しか?話というのは?」
「いえ。50億を中央から出させてください。」
「どうやって?」
「砂の中に、鉱物があることはご存じですか?」」
「?砂?砂漠にか?砂漠にあるのは砂漠石か海峡石、
あとは岩塩石だ。」
「あるのです。モウ、桶に水を、それにコットワッツの砂を入れて。
別の桶にはマトグラーサの砂を。」
「はい、師匠。」
浅い桶、2つ用意して、水を入れる。
「これはコットワッツの砂漠の砂です。」
入れれば、砂は沈み、金銀は浮く。鉄も、銅もだ。
「これはマトグラーサの砂。金が豊富です。」
こっちの方がキラキラしている。
「中央砂漠も同じように。
間の砂漠にはなぜか有りません。
砂は沈む。鉱物は浮く。これは皆が知っていること。
が、砂に鉱物があることは知らない。
この話、コットワッツ領主はご存じです。
公表しないのは、砂漠の協定があくまでも砂漠石の協定だからです。
争いが起きる。それはいまは誰も望まない。
近い将来戦争があってもだ。
この話を中央に50億で売ってください。
中央が知っていたとしても口止め料として払うでしょう。」
「・・・・中央も知らないだろうな。
それを教えるのか?たった50億リングで?
教えずに、ニバーセルだけで採取すれば?」
「王よ、わたしを試されるのか?
そんなことをすれば、鉱物資源の価格崩壊だ。
リングを流通通貨として使う以上それは得策ではない。
この大陸にニバーセルがあり、リングを使う以上それはできない。
知っていても使えない情報です。」
「それに中央が50億だすかな?」
「だから、口止め料です。中央にすれば、鉱物、特に金の価格を調整できる。
視察で中央が砂漠に入れば、
何らかの理由をつけて砂を持って帰るでしょうね。
もしくは砂の持ち出しを制限することでしょう。
それは今現時点ではだれも困りはしない。
マトグラーサが弾丸を作るとしても砂漠から持ち出すのは、
固まった砂だ。
あの中に金銀は入っていない。砂鉄のみだ。
これは確認済みです。
砂と砂鉄をなにかで固めている。」
「その話ぶりはなにか知っているということか?」
「今、この話はいいでしょう。
中央の視察が、見なくても認め、見ても認めるところでしょう。」
「それが何かでもか。が、だろうな。それで?」
「昨今の砂漠石の値上がりは異常です。
新年を待たずして何らかの調整が入る。
リングの基本価値の値上げ?石の流通制限?
一番に来ることは金の価格調整です。
砂漠石より、金の方に価値を置くようになると。
これは生産院、メディングの見立てです。
金の確保が最優先だと。
今頃中央は金の確保に動いています。
なのに、砂漠には金が豊富にあるとわかれば、
値上げする意味がない。
口止め料として50億、安いはずです。」
「安いな。5000億で話してみよう。が、これはわたし個人の資産になるぞ?」
「では、今ある10億は資産院で使わせてもらいます。
中央にはそこからお支払いを。」
「そうなるな。うむ。素晴らしい話だった。ん?なんだ?」
「いや、もっと出せよって。」
「モウ!やめて!!お願い!!」
「あはははは!そうしたいが、10億が限度だ。
資産院にある分を資産院が使うだけだからな。
それ以上はどこから調達したかが問題になる。
わたしの中央滞在費は、わたしの気まぐれで、どうとでもなる。
それに、予算があればあるほどいいというわけじゃない。
そこは、さすが資産院というところだろう。」
「そうなの?」
「ええ。十分です。」
「これで、師匠はゆっくり眠れる?」
「ええ、眠れますよ。食べ損ねたシュークリームさえ食べることができればね。」
「よかった。特別にチョコ掛けがあるから朝みんなでね。」
「それは素晴らしい。」
「ん?なんだ?別の味があると?食べたいな。」
「うるさいよ!用事は終わった!帰れ!!」
「やめて!ほんとやめて!!」
「話を聞いたからな。今度は話を聞いてもらうぞ?」
「んー、そういったけ?じゃ、どうぞ?」
「その違う味が食べたい。」
「それが話か?」
「いや、話す前に食べたい。」
「ほんとわがままだな?今食べるとおなかがいっぱいで、
もったいないぞ?もって帰れるようにするから、
後で食べろ。」
「それはうれしいな。」
「で?」
「ああ、話しな。雨の夜会な?あれ、行くだろ?」
「わたしたちか?ありがたいことに招待状をもらっている。
タトーロイン卿から。それに愛しい人問題もあるからな。
知ってるだろう?」
「もちろんだ。こっそりモウに賭けている。」
「間抜けめ!胴元を考えろ!自分の娘が勝つと思っているから
胴元なんだろ?それ以外だとうやむやになっておじゃんだ!」
「嘘!!」
「当たり前だろ?・・・いくらかけた?」
「・・・・10。」
「10リングだったら、勉強料だな。二度とするな。 」
「・・・10万リング。を10口。」
「あんぽんたーん!!!!取り返してこい!!」
「えー。」
「財政難だといったろ?そんなムダ金を使ってどうするんだ?」
「いや、わたしの金だから。」
「?個人の資産と王の年間予算と違うと?」
「違いますよ。王の年間予算はこちらで用意します。
そのほとんどが、中央で使う予算なんですよ。」
「10億?それを3ヵ月ほどで使うの?」
「そうなりますね。中央に払うんですよ。」
「なんだそれ。滞在費ってこと?」
「そういうことです。」
「中央舐めてるね。そんなことで稼いでるんだ。」
コットワッツの砂漠石も中央がパクる説が濃厚になるね。
「モウ?」
「個人の資産でも、無駄遣いだ。取り消せるなら取り消しなさい。」
「そうだな。それはやってみよう。」
「その話?」
「いや、違う。雨の夜会な。」
「うん。」
「なにを着ていこうかと。」
「・・・・愛しい人?」
「まって!マティス!確認が先だ!」
「イエス!マム!」
「ん?」
「えーと、なぜにそれをわたしに相談?」
「いまコットワッツでミンクのコートが評判なのだろ?
それぐらいの話は聞こえてくる。
モウもそれを?え?タトーロイン卿も?」
「おそらく出回るコートの中でも一番いい品だと思うよ?」
「そうだろうな。刺繍布も出回っているのだろ?」
「よくご存じで。」
「あの夜会は女性だけではないんだ。見栄の張り合いがな。
着る服は決まっている。あれだ、あの服だ。
あの上に着る上着が欲しい。コットワッツには言えないんだ。
立場がある。逆にな。
だから、あなたに。わたしにもしつらえてもらえないだろうか?」
「お客様!!よくぞモウモウ商会に相談してくださいました。
ね?マティス?」
「ええ、そんなあなた様にピッタリな上着、
特別な上着を我らモウモウ商会がご用意いたしましょう!!」
マッハでごますりだ。
「そうか!!」
「モウ!マティス君!正気ですか?王の上着ですよ?」
「うふふふふ。師匠!トラですよ、トラ!」
「ああ!あれ!」
「なに?トラ?本当か?」
「ええ、お客様!」
「いつ?いつ?」
「混合いはじめの会合のときにお持ちしましょう。
お気に召しましたらご購入を。個人の資産で!」
「わかった!良し!帰ろう!
素晴らしき会であった。ワイプ、招待ありがとう。」
招待したわけではないが、
満面の笑みで師匠に感謝を伝える。
心から。
「・・・・。」
師匠がまた、音もなく倒れた。
まだ疲れてるのかな?
マティスが素早く師匠を抱えて、カウチに寝かせた。
「名を呼んではいけない。」
「ああ、そうだったな。しかし、モウ?マティス?」
「なに?」
「なんだ?」
「呼べるな。」
「それはそうだろ?彼女はあなたの名付け親だ。私も彼女につけてもらった。
で、彼女の名付け親は私だ。なにも縛られないんだよ。」
「ではわたしの名前を呼んでほしい。」
「いいけど、マティスは抵抗あるのよ?長年のすり込みだね。」
「いや、もう大丈夫だ。王に名前を呼ばれて何ともなかったからな。」
「そう?彼の名前はラーフィングだよ。笑い上戸の。」
「ラーフィングか?いい名前だな。」
「よかったね、ラーフィング、いい名前って言われたよ。
名付けたわたしもうれしいよ。」
「ああ、いいな。呼ばれてこその名前だ。」
「そうだね。さ、ラーフィング。お土産持って帰りな。
ガイライが、こっちの気配をさっきから探ってるんだ。王が帰ったかどうかね。
トラの上着はいいのができると思う。楽しみに待ってってね。
外で、ダクツさんも待ってるね。
彼のシュークリームも渡して。カンターウォーマーも。
あ!5リング!資産院で払ってって伝えて。これ最優先ね。
ああ。こっちはチョコ入りだから、これはこっそりね。
内緒だからね。これがもっと欲しいって言うのは年内は無し。
新年あけたらお披露目するから。
お金のことだけちゃっちゃとやってね?師匠にこれ以上心労は厳禁だから。」
「そうだな。よくも、わたしの前であれだけのことが話せたものだ。
褒めていたと伝てほしい。」
「あいあい。さすがわたしたちの師匠だ。」
「ああ、そうだな。」
「ラーフィング?私は便宜上だ?間違えるな?
そして死ね死ね団に入団しないか?10点はもらえるぞ?」
「え?勧誘するの?だったら、すでに甘々団だよ?」
両団体の趣旨を説明後、
結局彼も両団体の名誉会員になった。
しかも、死ね死ね団の最高ポイント保持者だ。
「モウ!」
「ガイライ、お疲れさん。帰ったよ。」
「問題は?」
「師匠が寝た。シュークリーム食べずに。」
「それで済んでいるんですね?」
「うん。モウモウ商会の一番お高い商品が売れるかも!
いい話にまとまったよ?」
「え?商売の話だったんですか?」
「うん。後半はね。あとは師匠に聞いて。
そっちは?ニックさんは?なんか言ってった?」
「ニックは戻りましたよ。王とは気付かなかったようです。
ただ、あれはなんだと。ダクツといろいろ話せました。
王あっての軍なので、その話です。」
「そう、心配することはないのね?
王都のね、ハンバーグ屋さんが、分隊は立場が弱いから、殴られても反撃できないって。」
「はははは!それはそうなりますが、何とでもなりますよ?」
「はは!そうだね。うん。そりゃそうだ。」
「今日は?こちらに?」
「どうしようか?門はもう閉まってるの?
じゃ、泊まろうか?明日はね、朝一番にメジャートに行くの。
で、砂浜に行って海鮮とって、師匠とセサミン連れてタトートに。
ガイライもどうかな?
招待状を出した人を知りたいって言うのがあるだろうけど、
わたしの廻りのひとってどんなのか知りたいぽいよ?
だったらガイライも行こう。で、わたしの擁護をしてください。」
「タトーロイン卿ですよね?
ずいぶんと前から夜会には出ていなかったのに。」
「知ってるんだね?向こうも知ってるっぽかったけど。」
「遠くで見るぐらいですよ?王の警備で付いたとしても、
夜会に出るわけではないので。」
「そうなんだ。じゃ、今回の夜会は楽しみだね。
おいしいもの出るかな?」
「楽しみですか?そうですね。楽しみたいですね。」
ガイライの館で泊まらせてもらう。
かるくお茶漬け。鯛茶漬け!!
お風呂は簡単にシャワーだけにしようとおもったけど、
ブラスの露天風呂を満喫してしまった。
この時点で半分寝ている。
マティスとガイライは話があるようなので、先に休ませてもらうことに。
きっと師匠も合流することだろう。
おやすみなさい。
「わたしの臣だからね。」
「ああ、そうか。ちょっとまって!マティス君?コーヒー入れてもらえる?」
「あ!わたしもほしいな。その菓子と。ここで食べたい。」
「わがままだな?」
「マティス君!やめて!」
「うむ。ワイプのこの顔をさせたことに免じて入れてやろう。感謝しろ?」
「師匠?わたしから話す?それとも帰ってもらう?
よく考えたら師匠1人が苦労することないもん。わたし砂漠行ってくるよ?」
「私も行くぞ?愛しい人と競争できるからな。」
「まってほんと、大丈夫。すーーーはーーーー。」
深呼吸をする師匠。
話している間、ずっと下を向いていた。
シュークリームをかぶりつくラーフィング。
クリームついてるよ?
手鏡を渡し、自分で拭くように言う。
もちろん熱いおしぼりだ。
さりげなくコットワッツ製品を売り込むのはいいだろう。
コーヒーを一口飲むと顔を上げ、
師匠は話し始めた。
「王、我らが唯一の王よ。
資産院ワイプと申します。財政のことでお願いしたいことがございます。
まず、ニバーセルの資産が、コットワッツの砂漠のように枯渇しているのです。」
「税は上げたな。それでもなお足りぬか?」
「それ以上に砂漠石が値上がりしました。
資産分配で、各院に必要な分だけ分配すれば、新年を待たずに破綻します。」
「いま、我の使える予算はいくらだ?」
「10億です。」
「それを補っても?」
「それはできません。雨の日後の、中央でお過ごしになる予算です。」
「そうだな。いくら足りない?」
「5億。」
「半分で何とかなるのではないか?」
「のちのちに響きます。逆に10億でも多少の我慢が必要なんですよ。」
「そうか。その念押しか?話というのは?」
「いえ。50億を中央から出させてください。」
「どうやって?」
「砂の中に、鉱物があることはご存じですか?」」
「?砂?砂漠にか?砂漠にあるのは砂漠石か海峡石、
あとは岩塩石だ。」
「あるのです。モウ、桶に水を、それにコットワッツの砂を入れて。
別の桶にはマトグラーサの砂を。」
「はい、師匠。」
浅い桶、2つ用意して、水を入れる。
「これはコットワッツの砂漠の砂です。」
入れれば、砂は沈み、金銀は浮く。鉄も、銅もだ。
「これはマトグラーサの砂。金が豊富です。」
こっちの方がキラキラしている。
「中央砂漠も同じように。
間の砂漠にはなぜか有りません。
砂は沈む。鉱物は浮く。これは皆が知っていること。
が、砂に鉱物があることは知らない。
この話、コットワッツ領主はご存じです。
公表しないのは、砂漠の協定があくまでも砂漠石の協定だからです。
争いが起きる。それはいまは誰も望まない。
近い将来戦争があってもだ。
この話を中央に50億で売ってください。
中央が知っていたとしても口止め料として払うでしょう。」
「・・・・中央も知らないだろうな。
それを教えるのか?たった50億リングで?
教えずに、ニバーセルだけで採取すれば?」
「王よ、わたしを試されるのか?
そんなことをすれば、鉱物資源の価格崩壊だ。
リングを流通通貨として使う以上それは得策ではない。
この大陸にニバーセルがあり、リングを使う以上それはできない。
知っていても使えない情報です。」
「それに中央が50億だすかな?」
「だから、口止め料です。中央にすれば、鉱物、特に金の価格を調整できる。
視察で中央が砂漠に入れば、
何らかの理由をつけて砂を持って帰るでしょうね。
もしくは砂の持ち出しを制限することでしょう。
それは今現時点ではだれも困りはしない。
マトグラーサが弾丸を作るとしても砂漠から持ち出すのは、
固まった砂だ。
あの中に金銀は入っていない。砂鉄のみだ。
これは確認済みです。
砂と砂鉄をなにかで固めている。」
「その話ぶりはなにか知っているということか?」
「今、この話はいいでしょう。
中央の視察が、見なくても認め、見ても認めるところでしょう。」
「それが何かでもか。が、だろうな。それで?」
「昨今の砂漠石の値上がりは異常です。
新年を待たずして何らかの調整が入る。
リングの基本価値の値上げ?石の流通制限?
一番に来ることは金の価格調整です。
砂漠石より、金の方に価値を置くようになると。
これは生産院、メディングの見立てです。
金の確保が最優先だと。
今頃中央は金の確保に動いています。
なのに、砂漠には金が豊富にあるとわかれば、
値上げする意味がない。
口止め料として50億、安いはずです。」
「安いな。5000億で話してみよう。が、これはわたし個人の資産になるぞ?」
「では、今ある10億は資産院で使わせてもらいます。
中央にはそこからお支払いを。」
「そうなるな。うむ。素晴らしい話だった。ん?なんだ?」
「いや、もっと出せよって。」
「モウ!やめて!!お願い!!」
「あはははは!そうしたいが、10億が限度だ。
資産院にある分を資産院が使うだけだからな。
それ以上はどこから調達したかが問題になる。
わたしの中央滞在費は、わたしの気まぐれで、どうとでもなる。
それに、予算があればあるほどいいというわけじゃない。
そこは、さすが資産院というところだろう。」
「そうなの?」
「ええ。十分です。」
「これで、師匠はゆっくり眠れる?」
「ええ、眠れますよ。食べ損ねたシュークリームさえ食べることができればね。」
「よかった。特別にチョコ掛けがあるから朝みんなでね。」
「それは素晴らしい。」
「ん?なんだ?別の味があると?食べたいな。」
「うるさいよ!用事は終わった!帰れ!!」
「やめて!ほんとやめて!!」
「話を聞いたからな。今度は話を聞いてもらうぞ?」
「んー、そういったけ?じゃ、どうぞ?」
「その違う味が食べたい。」
「それが話か?」
「いや、話す前に食べたい。」
「ほんとわがままだな?今食べるとおなかがいっぱいで、
もったいないぞ?もって帰れるようにするから、
後で食べろ。」
「それはうれしいな。」
「で?」
「ああ、話しな。雨の夜会な?あれ、行くだろ?」
「わたしたちか?ありがたいことに招待状をもらっている。
タトーロイン卿から。それに愛しい人問題もあるからな。
知ってるだろう?」
「もちろんだ。こっそりモウに賭けている。」
「間抜けめ!胴元を考えろ!自分の娘が勝つと思っているから
胴元なんだろ?それ以外だとうやむやになっておじゃんだ!」
「嘘!!」
「当たり前だろ?・・・いくらかけた?」
「・・・・10。」
「10リングだったら、勉強料だな。二度とするな。 」
「・・・10万リング。を10口。」
「あんぽんたーん!!!!取り返してこい!!」
「えー。」
「財政難だといったろ?そんなムダ金を使ってどうするんだ?」
「いや、わたしの金だから。」
「?個人の資産と王の年間予算と違うと?」
「違いますよ。王の年間予算はこちらで用意します。
そのほとんどが、中央で使う予算なんですよ。」
「10億?それを3ヵ月ほどで使うの?」
「そうなりますね。中央に払うんですよ。」
「なんだそれ。滞在費ってこと?」
「そういうことです。」
「中央舐めてるね。そんなことで稼いでるんだ。」
コットワッツの砂漠石も中央がパクる説が濃厚になるね。
「モウ?」
「個人の資産でも、無駄遣いだ。取り消せるなら取り消しなさい。」
「そうだな。それはやってみよう。」
「その話?」
「いや、違う。雨の夜会な。」
「うん。」
「なにを着ていこうかと。」
「・・・・愛しい人?」
「まって!マティス!確認が先だ!」
「イエス!マム!」
「ん?」
「えーと、なぜにそれをわたしに相談?」
「いまコットワッツでミンクのコートが評判なのだろ?
それぐらいの話は聞こえてくる。
モウもそれを?え?タトーロイン卿も?」
「おそらく出回るコートの中でも一番いい品だと思うよ?」
「そうだろうな。刺繍布も出回っているのだろ?」
「よくご存じで。」
「あの夜会は女性だけではないんだ。見栄の張り合いがな。
着る服は決まっている。あれだ、あの服だ。
あの上に着る上着が欲しい。コットワッツには言えないんだ。
立場がある。逆にな。
だから、あなたに。わたしにもしつらえてもらえないだろうか?」
「お客様!!よくぞモウモウ商会に相談してくださいました。
ね?マティス?」
「ええ、そんなあなた様にピッタリな上着、
特別な上着を我らモウモウ商会がご用意いたしましょう!!」
マッハでごますりだ。
「そうか!!」
「モウ!マティス君!正気ですか?王の上着ですよ?」
「うふふふふ。師匠!トラですよ、トラ!」
「ああ!あれ!」
「なに?トラ?本当か?」
「ええ、お客様!」
「いつ?いつ?」
「混合いはじめの会合のときにお持ちしましょう。
お気に召しましたらご購入を。個人の資産で!」
「わかった!良し!帰ろう!
素晴らしき会であった。ワイプ、招待ありがとう。」
招待したわけではないが、
満面の笑みで師匠に感謝を伝える。
心から。
「・・・・。」
師匠がまた、音もなく倒れた。
まだ疲れてるのかな?
マティスが素早く師匠を抱えて、カウチに寝かせた。
「名を呼んではいけない。」
「ああ、そうだったな。しかし、モウ?マティス?」
「なに?」
「なんだ?」
「呼べるな。」
「それはそうだろ?彼女はあなたの名付け親だ。私も彼女につけてもらった。
で、彼女の名付け親は私だ。なにも縛られないんだよ。」
「ではわたしの名前を呼んでほしい。」
「いいけど、マティスは抵抗あるのよ?長年のすり込みだね。」
「いや、もう大丈夫だ。王に名前を呼ばれて何ともなかったからな。」
「そう?彼の名前はラーフィングだよ。笑い上戸の。」
「ラーフィングか?いい名前だな。」
「よかったね、ラーフィング、いい名前って言われたよ。
名付けたわたしもうれしいよ。」
「ああ、いいな。呼ばれてこその名前だ。」
「そうだね。さ、ラーフィング。お土産持って帰りな。
ガイライが、こっちの気配をさっきから探ってるんだ。王が帰ったかどうかね。
トラの上着はいいのができると思う。楽しみに待ってってね。
外で、ダクツさんも待ってるね。
彼のシュークリームも渡して。カンターウォーマーも。
あ!5リング!資産院で払ってって伝えて。これ最優先ね。
ああ。こっちはチョコ入りだから、これはこっそりね。
内緒だからね。これがもっと欲しいって言うのは年内は無し。
新年あけたらお披露目するから。
お金のことだけちゃっちゃとやってね?師匠にこれ以上心労は厳禁だから。」
「そうだな。よくも、わたしの前であれだけのことが話せたものだ。
褒めていたと伝てほしい。」
「あいあい。さすがわたしたちの師匠だ。」
「ああ、そうだな。」
「ラーフィング?私は便宜上だ?間違えるな?
そして死ね死ね団に入団しないか?10点はもらえるぞ?」
「え?勧誘するの?だったら、すでに甘々団だよ?」
両団体の趣旨を説明後、
結局彼も両団体の名誉会員になった。
しかも、死ね死ね団の最高ポイント保持者だ。
「モウ!」
「ガイライ、お疲れさん。帰ったよ。」
「問題は?」
「師匠が寝た。シュークリーム食べずに。」
「それで済んでいるんですね?」
「うん。モウモウ商会の一番お高い商品が売れるかも!
いい話にまとまったよ?」
「え?商売の話だったんですか?」
「うん。後半はね。あとは師匠に聞いて。
そっちは?ニックさんは?なんか言ってった?」
「ニックは戻りましたよ。王とは気付かなかったようです。
ただ、あれはなんだと。ダクツといろいろ話せました。
王あっての軍なので、その話です。」
「そう、心配することはないのね?
王都のね、ハンバーグ屋さんが、分隊は立場が弱いから、殴られても反撃できないって。」
「はははは!それはそうなりますが、何とでもなりますよ?」
「はは!そうだね。うん。そりゃそうだ。」
「今日は?こちらに?」
「どうしようか?門はもう閉まってるの?
じゃ、泊まろうか?明日はね、朝一番にメジャートに行くの。
で、砂浜に行って海鮮とって、師匠とセサミン連れてタトートに。
ガイライもどうかな?
招待状を出した人を知りたいって言うのがあるだろうけど、
わたしの廻りのひとってどんなのか知りたいぽいよ?
だったらガイライも行こう。で、わたしの擁護をしてください。」
「タトーロイン卿ですよね?
ずいぶんと前から夜会には出ていなかったのに。」
「知ってるんだね?向こうも知ってるっぽかったけど。」
「遠くで見るぐらいですよ?王の警備で付いたとしても、
夜会に出るわけではないので。」
「そうなんだ。じゃ、今回の夜会は楽しみだね。
おいしいもの出るかな?」
「楽しみですか?そうですね。楽しみたいですね。」
ガイライの館で泊まらせてもらう。
かるくお茶漬け。鯛茶漬け!!
お風呂は簡単にシャワーだけにしようとおもったけど、
ブラスの露天風呂を満喫してしまった。
この時点で半分寝ている。
マティスとガイライは話があるようなので、先に休ませてもらうことに。
きっと師匠も合流することだろう。
おやすみなさい。
13
あなたにおすすめの小説
唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~
専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。
ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。
【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~
みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】
事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。
神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。
作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。
「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。
※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
草食系ヴァンパイアはどうしていいのか分からない!!
アキナヌカ
ファンタジー
ある時、ある場所、ある瞬間に、何故だか文字通りの草食系ヴァンパイアが誕生した。
思いつくのは草刈りとか、森林を枯らして開拓とか、それが実は俺の天職なのか!?
生まれてしまったものは仕方がない、俺が何をすればいいのかは分からない!
なってしまった草食系とはいえヴァンパイア人生、楽しくいろいろやってみようか!!
◇以前に別名で連載していた『草食系ヴァンパイアは何をしていいのかわからない!!』の再連載となります。この度、完結いたしました!!ありがとうございます!!評価・感想などまだまだおまちしています。ピクシブ、カクヨム、小説家になろうにも投稿しています◇
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる