677 / 869
677:燃費
しおりを挟む「ムムロズ殿?
ガイライは知ってますよね?
彼、ツイミ殿を紹介させてください。
わたしが御大と呼ばせていただいている方です。」
「ああ、モウ様、そのように言われると。」
「いえ、当然のことです。
こちらが、ムムロズ殿です。
ニックさんのご友人で、この中門街の顔役です。
此度、カリク殿から引き継いだとか。」
「そうでございますか。わたくし、資産院副院長代理のツイミと申します。」
「ムムロズです。カリクが顔役時には補佐の立場だったので、
資産院に対しては何も言えなかったが、これからは良く話し合いの上で
いろいろと取り組んでいきたい思います。
わたしも、若き頃資産院い在籍していたことがありますので。」
「ええ。そのようで。
が、此度はモウ様の補佐ということで。
資産院だということはお気になさらずに。」
それは嘘だ。
がっちり把握するつもりだ。
が、それをムムロズさんが見せるはずはない。
ん?ということは、モウモウ商会のことはがっちり把握するということか。
んー、それはいいんよ、後払いがなければ。
多くとられて還付されるっていうのは気持ち的にはうれしんだけどね。
そういう仕組みはないんかな?
後で聞いてみよう。
2人で当たり障りのない、いや、ある意味恐ろしい税金の話をしている。
こわい。
「モウ?」
「税金怖いなって。ガイライはどうしてたの?」
「?」
「お給料もらうでしょ?あとから国にお金取られなかった?
商人が売り上げに対して1割の税を納めるみたいな。
天引きされてたのかな?」
「ああ。新年に1年分をいただいて、年末に使わなったものを返します。」
「なにっ!え?じゃ、使わないと損じゃない!
もちろん100%使ってたよね?」
「ええ。」
「よかった。返してたっていったら、
昔のことだとしても、説教しちゃうところだったよ。」
「・・・・。」
「ん?」
「その、大抵は足らないので、追加で申請するんですよ。」
「・・・。どれぐらい?」
「副隊長以上は年に2回申請が許されています。なので、3倍?」
「・・・・・。」
「モウ?」
「それはもとから、その3倍が正規の給料だ。
あんたは1/3の給金で仕事をしてたんだよ!!」
「いえ、十分すぎるほどなんですよ?」
「だけど!!そんなのダメだ!ちゃんと請求しないと!
自信をもって請求するべきだったんだ!!
報酬無しで仕事をすることが偉いんじゃないんだよ!
対価としてのお金なんだ。そういう仕組みなんだよ。
街の人の感謝だとか、自分の満足感が報酬とかいうなよ?
それは別だ。
要求できないほど手を抜いてたわけじゃないんだろ?」
「!それはもちろん。」
「そのときの状況が分からないから、これ以上は言わないけど、
これからはきちんと要求しなさい。
ああ、でも、わたしも同じ立場だったら、請求してないな。
うん、わかるよ。それで、仕事は当然、請求してもいいくらいのことを
していたはず。でも、それは自分で評価してるだけなんだ。
しかも自己満足の何者でもない。
そして組織の中での評価はない。
組織で働く以上、成果を出すのではなく、見せないと。
そして評価してもらわないと。
うん。我が息子、よく頑張ったね。
そして、我が臣よ。
これからは、わたしに目に見えての成果を見せておくれ?
それを評価する報酬もきちんと与えよう。」
「はっ。」
「ん?でも、ガイライとニックさんが分隊になって
財政が助かったって師匠が言うくらいだから、
その3分の1のお給料でもすごかったと?」
「ええ。」
「ちなみにおいくら万円?」
「10万リングです。」
コットワッツ出の価値は1リング1万円。
王都では1000円ぐらいだと思っていた。
1億、2回追加して合計3億円。
5億リング足らないというのは、
5000億円足らないということ。
「うん。高給取りだ。
うん、ガイライの感覚は正しい。
庶民はそれ以上請求できない。
それを全部使いきるだけでも偉いよ。
うん、偉そうなこと言ってごめん。
ちなみに住んでたところの家賃は?借りてたんだよね?」
「わたしの借りていたところは、年1万リングです。」
「んー?32番地の10倍?部屋数は?」
「1部屋です。」
「・・・・。それって、その収入はどなたに?」
「屋敷の持ち主ですね。王族ですね。
軍部に一番近いところだったんですよ。」
「なるほど、人気の物件ってことか。んー。
いや、もう、この話はやめておこう。金銭感覚がおかしくなる。」
「それは、わかります。」
わたしもガイライも庶民なのだ。
ガイライも対軍となればいいのだが、
自分の生活のことになると、かなり遠慮が出てします。
それが軍再編成で言葉は悪いが、
よく動く燃費のかからない人材が無くなったんだ。
そして指導力がある人材も。
組織として成り立たなくなるのは現場で働くものが困るけど、
馬鹿な上層部だけが困ればいい。
資産院は大変だな。
部屋に入るとカリクさんは出来上がっていた。
テンレさんもだ。
後継者は決まり、孫は素直になった。
娘も自分の夫の実力をやっと公表できる。
婿の、その手腕は認めている。売り上げも伸びるだろう。
憂うことはないもない。
好好爺だ。
しかし、そこまで変化するのは早くない?
傍らにはいかにも装飾華美の筒があった。
ザスだ。
2人ともザスを吸っている。
多幸感があるという、その作用?
室内にはその匂いもしないし、マティスもなにも言わない。
待っている間にタバコを吸っていた、という感じか?
そんな短時間も我慢できないのか?
「さ、どうぞお座りください。」
円座にすわり、次々と料理が運ばれてくる。
もちろんキャムロンとスーリムは外してもらっている。
18番門内で食べたものの豪華というか、豪快版。
ダイナミックだ。
豚が丸ごと出てくるのだが、
肉は食べやすいようになっている。
さっそくマティスが運んできてくれる給仕に話を聞いている。
料理人も呼びだしたようだ。
女将を呼べ!という奴か?
順番なんて関係ないようでどんどん食べていく。
ニックさんとムムロズさん、そしてツイミさんとガイライは
そうそうに酒にシフトしている。
カリクさんとテンレさん酒プラスザスだ。
わたしとクインタはがっつり食べている。
「これ、おいしいですね。」
豚の丸焼き。
北京ダックのように表面がカリカリで、少し甘いのだ。
「18番門でのポットは有名ですが、
ここでは豚の方がおいしいんですよ。」
「そうなんですね。特別に育ててるとか?」
「油実、エカーナの実ですね。その油をとった残りです。」
「やっぱり食べ物なんだよね。うん、おいしいな。」
「あの。」
「はい?」
「あの、食事会でたべた甘味はどうやって作ればいいんでしょうか?」
「アイス?うふふ。好きなお味でした?」
「ええ!」
「あれの作り方はコットワッツで販売中の冷凍庫についてるの。
冷凍庫買う?」
「買います!」
「ま、それはコットワッツと取引して。
いまは、持っているものを出すよ。バニラと抹茶と、プニカね。
鍋ごと出すから、食後に出してもらって。
わたしたちからの手土産ということで。
食後に出してもらえればうれしいな。
背負子に冷凍庫ごと入れてるから
取りに行こう。」
「はい!」
「どこへ?」
「手土産を出すのを忘れていましたので、それを。」
「モウちゃん、俺も手伝うよ。」
「お願いします。」
なんだろう?
ニックさんが立ち上がった時に、
カリクさんとテンレさんが眠ってしまった。
13
あなたにおすすめの小説
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
異世界からの召喚者《完結》
アーエル
恋愛
中央神殿の敷地にある聖なる森に一筋の光が差し込んだ。
それは【異世界の扉】と呼ばれるもので、この世界の神に選ばれた使者が降臨されるという。
今回、招かれたのは若い女性だった。
☆他社でも公開
R・P・G ~女神に不死の身体にされたけど、使命が最低最悪なので全力で拒否して俺が天下統一します~
イット
ファンタジー
オカルト雑誌の編集者として働いていた瀬川凛人(40)は、怪現象の現地調査のために訪れた山の中で異世界の大地の女神と接触する。
半ば強制的に異世界へと転生させられた凛人。しかしその世界は、欲と争いにまみれた戦乱の世だった。
凛人はその惑星の化身となり、星の防人として、人間から不死の絶対的な存在へとクラスチェンジを果たす。
だが、不死となった代償として女神から与えられた使命はとんでもないものであった……
同じく地球から勇者として転生した異国の者たちも巻き込み、女神の使命を「絶対拒否」し続ける凛人の人生は、果たして!?
一見頼りない、ただのおっさんだった男が織りなす最強一味の異世界治世ドラマ、ここに開幕!
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
コンバット
サクラ近衛将監
ファンタジー
藤堂 忍は、10歳の頃に難病に指定されているALS(amyotrophic lateral sclerosis:筋萎縮性側索硬化症)を発症した。
ALSは発症してから平均3年半で死に至るが、遅いケースでは10年以上にわたり闘病する場合もある。
忍は、不屈の闘志で最後まで運命に抗った。
担当医師の見立てでは、精々5年以内という余命期間を大幅に延長し、12年間の壮絶な闘病生活の果てについに力尽きて亡くなった。
その陰で家族の献身的な助力があったことは間違いないが、何よりも忍自身の生きようとする意志の力が大いに働いていたのである。
その超人的な精神の強靭さゆえに忍の生き様は、天上界の神々の心も揺り動かしていた。
かくして天上界でも類稀な神々の総意に依り、忍の魂は異なる世界への転生という形で蘇ることが許されたのである。
この物語は、地球世界に生を受けながらも、その生を満喫できないまま死に至った一人の若い女性の魂が、神々の助力により異世界で新たな生を受け、神々の加護を受けつつ新たな人生を歩む姿を描いたものである。
しかしながら、神々の意向とは裏腹に、転生した魂は、新たな闘いの場に身を投じることになった。
この物語は「カクヨム様」にも同時投稿します。
一応不定期なのですが、土曜の午後8時に投稿するよう努力いたします。
召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる