いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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691:属国

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少し遅めの起床。軽く朝食。

ルカリさんとの手合わせは上出来だと、ニックさんから褒められてる。
もちろん、ルカリさんも褒められていた。
が、2人とも課題はたっぷりもらってしまった。
朝食後それのおさらい。
やはり鍛錬は毎日の積み重ねだ。

月無し石たちが騒いでる。
これはどこ?
思い当たる場所を聞いていけば、ナソニール、ルションさんのところだ。
なにか動きがあったのか?
すぐに移動した。


街が騒がしい。
活気があるというわけではない。
あわただしいのだ。
馬車がひっきりなし通り過ぎていく。

ルッションさんだけが、店の前をうろうろしていた。

「ルッションさん!どうしたんですか?」
「あんた達!!よかった!トリヘビもいないし、
どうやって連絡とろうかと思っていたんだよ。」

緊急は分かるが、何かあれば、コットワッツ領主に
ヘビを飛ばしてくれとは言っていたのだ。


「領主一族が逃げた。」
「え?お知らせが来たの?」
「そんなの来るわけないだろ?
月が沈む前に、フレシアに向けて何十台と馬車が抜けていったそうだ。
館はもぬけの殻だ。
ほかの州も同じようだったと早馬で確認してきたものが言ったんだ。」
「それらもみなフレシア方面に?」
「そうだ。フレシアから、ナルーザに逃げるんだろう。
領主代理になったダボールの奥方がナルーザ出身だって話だったから。」
「じゃ、領主一族もついていったの?」
「いや、それは違うだろう?迂回してマトグラーサだろ?
頻繁に出入りしていたらしいから。
領主の奥方の何人かはマトグラーサだ。」
「つながってるんだね。」
「領主なんてそんなもんだ。
ああ、そんなことはどうでもいい!ここはマトグラーサの属国になる!」
「なにそれ?」
「何もかも後回しになるんだよ!
俺のひいじーさんはスパイル出身だ。
その時のみじめさは散々聞いた。
スパイルはデジナの属国だったからな。」
「属国っていうのがあまりよろしくないのね?
でもね、資産院預かりになったあと、
競売になるって。領主が逃げなきゃそうなるって聞いたよ?
領民にはなにも変わらないって。
だから何も言わなかったのに!」
「知ってたんだな?
だが、こういう話はそこに住んでいるもんの情報のほうが早い。
そうか、だから、前金で仕事を出してくれたのか。
ありがとうな。
ここは属国になる。
ここにいるものの大半は、そのことを知っている。
属国がどんなものか、
そのことを散々聞かされて育ったんだよ。
ほとんどがスパイルの出身だからな。
王都から役人が来て門を閉める前に、ここを出る。
属国になるんなら、ルカリアかスパイルに行ったほうがいい。
俺はスパイルに行く。
今から行けば雨の日前には落ち着ける。
あんたにもらった前金を返したかったんだよ!!」
「そうか。そうなるのか。
そうはならないっていい切れないな。
それだけマトグラーサは本腰ってことなんだね?」
「そうだ。競売になって、マトグラーサは属国宣言をするんだ。
同じ産業を持っているんだ、
ここで、安い金額で物を作らせ、高い税を取るんだよ!」

ツイミさんが承諾しなくても別の手を出してくるか。
どうするかの返事の期限は雨の日あの後でよかったはずなのに、
かなりの前倒しだ。
雨の日を迎えるとなると、食料の配布もある。
それができないのなら早めに手を打ったということか?
最後の最後で領主の仕事をしたということ?

いや、臨時会合で何もかも決めたいマトグラーサが援助したか?


「ごめん。大丈夫だとは言えない。
セサミナ様に頼んでも、まずは今の自分の領民を守る。
しかも、いまやっと砂漠石以外の産業が軌道に乗り出したところだ。
マトグラーサが買い取る以上のお金は出せないだろう。
時期が悪い。
数年先ならきっとこの街と砂漠側をすべて買っていた。
ごめん。何もできない。」
「あんたが謝ることはない。ただ、領地替えをするだけだ。
鉄の馬車も何も考えれなかった。これは返すよ。」
「あー、これは口止め料として納めて?
あの話、スパイルにいっても誰にも話さないで。
頭の中で考えておいて?
スパイルの技術を習得してきて?
その習得費用として、900リング出す。
雨の日が終わったら、スパイルに行く予定があるの。
その時ゆっくり話をしよう。
物にならなくてもいい。
頭の中で考えていて。
スパイルはなんでも隠匿するって聞いた。
考えを盗まれないで。
このお金はその環境づくりに使って?
何度もいうけど、物にならなくていい。
ただ、盗まれないで。
これぞっていうのが出来たら隠匿を掛けて。
あなたの名前個人で。
そして、いずれニバーセルに帰ってきて?」
「・・・・。戻れるだろうか?」
「あなたが望めば。」
「わかった。この金は、ありがたく使わせてもらう。」
「うん。
まぁ、あれだよ、そのお金で毎日ぐうたらして仕事もしてなかったら、
コキュッとな、だから。」
「あはははは!!!それは恐ろしい!
そうだ、ここで作ったものを置いていく。工房の道具もだ。
よかったらもらってくれ。
身軽なほうがいいんだ。
資金ができた。もう行くよ。」
「うん。」
「これを。道中の腹の足しにしてくれ。」


マティスがお弁当を出してくれる。
おにぎりと唐揚げが入ったものだ。


「ありがとう!ありがとう!!」

小走りにいまから出発する馬車に飛び乗っていった。

『気を付けて。道中何事もないように。
かの地に付いたら、落ち着いて仕事ができるように』









「工房全部収納しようか?」
「そうだな。」
「うん。良い買い物だね。」
「そうだな。」
「マティス?」
「大丈夫だ。間違っていない。」
「うん!」

─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘



この話をすぐに、マティスは師匠に。
わたしはセサミンに。



「属国?」
「属国っていうのがよくわからないけど、
領民にとっては良くないの?」
「何とも言えませんね。
属国よりも領国の方がいいとされますが、
王都はニバーセルの属国とも言えます。
独立性が強い。
自国の中に別の国があると考えればいいかな?
法も何もかも独自に決めることができる。
優遇できるし、虐げることもできる。
スパイルは確かにデジナの属国でした。
虐げるというか、
なにもしなかったと言うほうがいいでしょう。
援助がなかったんでしょうね。
砂漠石の供給も浄化もなかったと聞いた記憶があります。
そのかわり、何もかも自由だったはず。
納税もなかったと。
コットワッツでいう、ラーゼム草原ですね。
もちろん、砂漠石の供給と浄化は行っていましたよ?
スパイルの話は、昔の話だ。
文献で残ってはいない。あったとしても他国には流れないでしょう。
ルッションの身内の方の話が正しいかどうかもわかりません。
確定的な話ではないのに、
噂の段階で皆が動いたんですね。
それもおかしい。」
「そうだよね。止めることもできなかった。
門が閉められる前にって。
前から不安だ、不安だって言ってたよね?
なにが考えられる?
人が流れる。わたしたちが街を出るときはほとんどいなかった。
死んだ街だよ。
誰もいなくなったところで何かを作る?
実験をする?
マトグラーサが土地を求めているのは確かだ。
あの白磁の土地よりも広大な土地が手に入る。
だったら競売でいる分だけ買えばいい。」
「姉さん。
いまは何も。率先して買うことは控えましょう。」
「そうなるね。
ああ、先発馬車と合流するのは半分前?
ここを出るときに声かけてくれる?
それまでに馬車を仕上げておくから。」
「ありがとうございます。
それと、あの絵!スビヤンに自慢していいですか?」
「自慢になるの?いいと思うけど。ね?マティス?」
「コクに騎乗している分だけならいいぞ?」
「やった!姉さんのはないんですか?」
「マティスが撮ってたよ。
わたしは見てないけど。」
「ふふん。セサミナ?見たいか?」
「見たい!見たい!」
「見るだけだからな?」

マティスを挟んでセサミンと2人、
小袋から出した若干大きめの写真を覗き込んだ。


「ほわぁー!」
と、セサミン。
「うーわー。」
と、わたし。

なんていうのだろう。
ファンタジーだ。
わたしではない。
50手前の人間がこんなことをしてはいけない。
それに、
なんか飛んでない?虫じゃないよね?


「マティスさんや?この廻りのキラキラしたものは何ぞ? 」
「コクにな、少し廻りがさびしいといえば、こうなったぞ?
気付かなかったか?」

まったく。



「姉上のは見るだけのですね。
あまりにも幻想的で美しい。兄上の絵は飾ってもいいですか?」
「どこに?」
「資料室です。歴代の領主の絵が飾っています。」

前にマティスに館を案内してもらった時に
見せてもらった部屋だ。

「ああ。セサミンのも飾ってるの?」
「わたしのはまだですね。
変動を乗り切らないと領主と、胸を張って言えませんでしたから。
今は言えますよ。姉さんと、兄さん、ええ、皆のおかげです。
なので新年明けに飾れればと。」
「そうなんだ。専属の絵師がいるとか?」
「いえ?皆が好き勝手に。父上は自分で描いてましたし。」
「あはははは!自画像か!すごいな!
セサミンはどうするの?」
「できれば、このシャシンがいい。」
「そう?じゃ、わたしが撮ったげる。
新年前に撮ろうね。みんなの一緒のも。」
「楽しみです!!」




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