いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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食事後、皆さんはご就寝。
セサミンとドーガーは新しい馬車の中で。
寝台列車のようにベットになり、
6人は余裕で寝ることができる。

モリトとベルケは先発馬車の荷台だ。
そこは、まだまだ修行中ということで。

荷台と言ってもきちんとした箱だ。
中身は空っぽで、寝るには十分。
プカプカクッションシートは支給しているので
道中は快適だったはず。

護衛は交代で寝ずの番らしい。普通は。

砂漠石の膜を張っているから、
侵入者は入ってこれない。
なので、外で地べただが、寝袋の中で2人くっついて寝る。


それを荷台の窓から見ている2人。

(ほんとに強いのならいいのにね)
(強くてもダメだろ?あれではセサミナを任せられない)
(そうだよね。カップ君と手合わせするって言ってたけど、合流したらするの?)
(それを見せるのもいいな。しかし、カップはなんで遅れてくるんだ?)
(ん?単独で来たコットワッツの従者にどんな輩が寄ってくるかの確認と
雨の日のための追い込みですよ)
(ああ!)
(マティスも押せ押せで来る?)
(もちろん!!)
(きゃー!!)

バカップルとなってしまった。




月が沈む、その一瞬が合わずの月の日の次に暗い。
そこから少しずつ明るくなる。
この時間が好き。

皆が起き出し、
身支度をして、コーヒーだけ飲む。
わたしは、着替えるからと簡易テントを出して、
扉君の家に帰り身支度をした。



では、出発という時になって、
マティスが声を上げた。

「来るぞ!ドーガーはセサミナ様の傍に!
2人はそこから動くな!」


(モウ!マティス!許せ!)
(ラーフィング!なにやらかしたの!)
(決して悪いようにはならないから!)
(当たり前だ!
セサミナとコットワッツに少しでも不利な状況にでもなってみろ!
ハゲチラカシの刑だからな!!)
(だ、大丈夫だ!!)
(それはこちらが判断することだ!お前は自分の頭髪の心配をしとけ!!)
(2人の立場をはっきりさせるから!)
(仕方がないな。時間はかかるよ。ご飯食べるし)
(え?今から?)
(おなかすかして待ってろ!)
(わかった!)


「ワイプもガイライも知らないようだな。
ああダクツだな。わざと気配を出している。」
「おお!わかるよ!」
「セサミナ様!
院です。あれは問題ないと。どうされますか?」
「あれ関係の院ですか?え?連絡できるんですか?
ええ。大丈夫。大丈夫。」

セサミンは深呼吸をしつつ、自己暗示をかけるように、
大丈夫だと呟いている。

「セサミナ様!大丈夫ですよ。わたしたちの立場がはっきりするようです。」
「良いようになるんですね?
では、利用できるなら利用しましょう。」
「さすがセサミナ様です。
だけど、館について、朝ごはん食べてからですよ?」
「あははは!そうですね。」


5人だ。


「モウ殿!」


ダクツのみ馬を降りた。
マティスに目礼をしてからわたしに声をかけてくる。

「おや、これはダクツ殿。こんな早くから何用で?」
「我らが王がお呼びです。お迎えに上がりました。」
「んー、それね。
今回こちらに寄せてもらってから2回ほどあったんですよ。
我らが王を出しにして。ああ、口実にして。
1回目は中央院のサブコ殿って方が、わたしの服を脱がして持っていきました。
みなの面前でですよ?犯罪にならないのが不思議です。
2回目は横門で。
名乗っていただけないのにつれていこうとしました。
誘拐?人さらいですよね?
ちょっと、王都の治安はどうなってるんでしょうか?
軍部の隊長がまだ決まってないから?
どうなんでしょうね?で、ダクツ殿?
あなたはモウモウ商会のお得意さんだ。
それ以外は知らない。追加でカンターウォーマーお買い上げですか?」
「モウ殿!」
「筋は通してください。」


「わたしの名は、中央院衛生部ダクツロセスと申します。
我らが王がコットワッツ領セサミナ殿護衛モウ殿をお呼びです。
御同行願います。」
「わかりました。が、わたしはセサミナ様の護衛。
まずはセサミナ様を滞在館までお連れしないといけません。
その後いろいろ先にすることがございます。
我らが王がお呼びと言えど、優先すべきは我が主の安全ですから。」
「王が、我らが王の呼び出しよりも優先すべきことがあると?」
「もちろん。王を守るべき筆頭護衛の方がここにいらっしゃるのは、
我らが王が王都にいらっしゃるからだ。
我が主も安全な場所にお連れしないといけない。
当然でしょう?
もうひとり護衛がいるだろ?というのもなしですよ?
1人であろうが、100人であろが、わたしが護衛なんだ。
護衛の仕事しなくてはいけない。
守れる、守れないと判断するのも護衛だ。
それが護衛だ。
守るべきを者を守ってこその護衛。
我らが王は崇拝すべき方だが、それは主を守ってこそ。
違いますか?」

ダクツさんは掌を後ろに向けた。
黙れということなのかな?

「では、いまから滞在館までご一緒に。」
「ええ。
ところで、なんとお呼びすれば?
ダクツ殿?ロセス殿?」
「・・・・ロセスとお呼びください。」
「わかりました。ロセス殿。」



「じゃ、行きましょうか?」

先頭が王の護衛隊。
その後ろが、2連の馬車を曳くテンたち。
で、最後尾がわたしたち。
歩きます。

テンたちに酔わない走りをしてもらえば馬車でも酔わない。
が、2連結だとだめ。
あの香木、青りんごの香りのするラベロを入れた匂い袋を持っていてもダメ。
マティスの左鎖骨に頭を置いてもダメ。
浮くのは今はダメ。
最初の荷台をチャー、持って来た馬車をテンとロクで曳いてもらってもいいが、
3頭以上でないと曳けない重さだとしておきたい。
で、速さも出ない。

「モウ殿?その、もう少し急げませんか?」

後ろを見て、ゆっくりついてくるコットワッツ組。
慌てて、ロセスが戻ってきた。


「いやー、この馬車重いんですよ。
この速さがいっぱい、いっぱいなんで。」
「では、我々の馬も一緒に曳きます。」
「あー、そうなると、馬車は早く動けますが、
わたしは走りになるだけですよ?」
「え?どうして?」
「ここだけの話、酔うんですよ、馬車に。」
「タフトの馬車では酔わなかったはずですが?」
「ああ、ご存じで?ゆっくり進んでましたからね。
この速さと変わらないですよ?」
「では、この馬にお乗りください。
わたしたちは、2人乗りをしますから。」
「そうですか?
しかし、セサミナ様の乗る馬車はコットワッツの馬で
曳いてもらいたい。これは安全を確保するためです。
別に彼らを信用していないわけではないですよ?
もしもの時の責任の所在をはっきりしておかないと。
彼ら、馬さんたちのことね。
で、それに3頭当てましょう。
もう一台のために2頭お借りできます?
で、1頭お借りして、わたしが乗ります。
マティスとロセス殿は一緒に馬車に乗ってください。」
「ええ。それで。」
「ふふ。ロセス殿?馬情報も集めないといけませんよ?」
「え?どういうことですか?」


衛生部が乗ってきた馬、5頭が喧嘩をしたのだ。
わたしを誰が乗せるかでだ。

「おい!落ち着け!止めろ!」
「どうしたんだ!」
「待て!噛むな!ダメだ!!」



こっちに来てから初体験ばかりだ。

やめて!わたしの為に争わないで!!
なんてね。

テンたちはそんなことはしない。
だって、十分遊んでいるから。
ブラッシングもしたしね。

逆に煽ってる。
もう!

「どうやらご機嫌が悪いようですね。
月入りすぐだったもの。まだ、眠いんですよ。
もう少しだけ、速く進んでもらいますから。
ほら!お前たち!みなが困ってるよ!!
ああ、そうだね、ごめん、ごめん。
え?ああ!
こら!テン!お前がいらぬことを言うからだ!
え?スー兄とホー姐も?
リグナもか!
あははは!うん、そうだね。
いいよ。少しくらい時間が取れるだろ?
その時にどうぞ?ああ、時間があればブラッシングも。
もちろんだ。
うん、行こう!行こう!」

彼ら曰く、機嫌が悪いわけでも、眠いわけでもない!
テンのうまいもの自慢大会で、
コットワッツのことは聞いているし、スーやホーも
ブラッシングはわたしが一番だというし、
リグナはコットワッツ滞在館内の茶畑が素晴らしいと言っていたそうだ。
昨日横門に駆り出された者たちは
うまいものを食べたという。
それも欲しいが、ブラッシングをしてほしいし、
それよりも、あなたを乗せて走りたい!!


「あの?」
「さ!時間がもったいない!
セサミナ様!
申し訳ない!出発しますね!」
「かまわないですよ。」
「テン!いつもより少し速く進もう!
わたしも頑張るよ!
みなも悪いが合わせてくれ!
足並み揃えて!リズムよく、パレードだ!」



ロセスは馬車から顔を出したセサミンに軽く会釈する。
セサミンもそれに返した。
てっきり無視を決め込むかと思ったけど違うんだね。


(姉さん?)

疑問に思った感情が臣であるセサミンにいったのかな?
月無し石君たちを通して聞いて来た。

(いや、護衛だから挨拶とかしないと思ってた)
(彼は5年ほどコットワッツに派遣されていましたから。
わたしが領主になってすぐぐらいですね。
領主に対してではなく、知人対してという感じですよ?)
(へー)

なにで派遣されたんだ?知人?それこそ草だよ。
コットワッツの内部事情は王都は把握しているということか?
セサミンもマティスも疑いを持っていないのが不思議だ。

(彼いくつ?)
(それが分からないんですよね)
(セサミンでわかんなかったら、わたしはますますわからんね。
じゃ、ちょっと早めに移動しよう。
いらんことで時間をくってしまったからね)
(わざとでしょ?)
(ふふ。怒んないね、彼。何もできないや。)
(そりゃそうだろ?ニックがいう感情の訓練を受けている)
(そこらへんは、マティスもわたしもまだまだだね。駄々洩れだ)
(私は愛しい人ほどではないと思うぞ?)
(そうかな?マティスも駄々洩れだよね?)
(そうですね。昔より感情豊かですよ?)
(そうか?)
((ふふふ))

わたしとセサミンの前ではいつも満面の笑みだからね。

かなりの速さで到着できたと思う。
途中マティスがスキップもどきを始め、
笑いながらになったからか、さらに早く着いたと思う。
ロセスさんも絶対笑いをこらえていたと思うよ。

中央院関係と一緒なら大門の問答はない。
そのまま入ることができた。

「このまま館まで!馬もこちらで管理します!」

館まで到着すれば、
すぐに王城に移動すると思ったら大間違いだ。
まず、馬は動かない。

荷台から出したように荷物の搬入。
馬の世話、ブラッシング、その間にマティスは朝食の用意。


「いまから向かうんですよね?えっと、どこに?」
「中央院です。そこで王がお待ちです。」
「わたしだけですか?」
「そうです。」
「我が夫も同伴でいいですよね?」
「どうして?」
「夫あるものが、他の殿方のいる場所に単独で行くなんてありえない。
それは王だからと言っても同じです。わたしの名誉にかかわります。
そして王の名誉にも。
正式な呼び出しなら、書面で我が主に出して下さい。
どういった理由かも書いて。それにまた書面で返事を出しましょう。
んー、来年になりますね?書面のやり取りって時間がかかるから。」
「モウ殿!」
「だったら、我が夫は同伴で。あ、おかわりは?
そちらの方々も?」
「わかりました。えっと、そのサラゴハンと肉そぼろで。あと、汁も。」
「わたしは、あまいパンで。」
「この焼いている米がいいです。」

焼きおにぎりは人気商品となりそうだ。

「はいはい。少し持って帰りますか?たくさん焼いてますから。」
「あ!わたしも欲しいです。」
「はいはい。」

みなで朝ごはんだ。
師匠も、ガイライ達もここには今はこれない。
資産院の立場でコットワッツに肩入れすることは出来ない。
ガイライもだ。
分隊ならまだしも、
第3軍とやらになるのではますますここには出入りはできない。
それに、中央院ダクツ隊が出張ってきた。
師匠にはかならずマティスと同行するようにだけ言われている。

「では、セサミナ様。ちょっと行ってきますね。
すぐに戻りますから、ゆっくりしてくださいね。
この滞在館、敷地内は安全ですから。
ドーガー!後は頼んだぞ?
ああ、あの2人と鍛錬するのもいいかもしれんな。」
「モウ様!あのマティス様の動きはなんですか?
マティス様は教えてくれないし。
新しい鍛錬?」
「ん?そうだね。うん。あれは正解ではないからね。
こうね。あれ?ちょっと待って?ん?」

わたしもできなくなってる!!
いや、まて、落ち着け!
ツーステップじゃない、スキップだ。

ん!

「これね!」


かなり時間をとってしまったけど、仕方がない。
庭でスキップを披露してやっと出発です。


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