いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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696:匂い玉

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合流場所には結構な集団が野営をし、
月の入りとともに入都するわけだ。

そこにセサミンが移動で合流。

ドーガーとマティスもセサミンの移動で行く。
そして馬車も。
所有物という考え方で移動ができるとしたほうがいいだろう。

人の移動は己の命に係わるからできる。
なので、お傍付き筆頭と次席、及び護衛はできる。
物の移動は己の所有物かどうかだ。
そうすれば、お偉いさんを移動してくれというのは無理になる。
己の命にかかわらないからだ。
本当にかかわるのなら、当然護衛のわたしたちがいる。


物の移動ができるということを公開するのはよろしくはないので、
一応麻布と木材で仮囲いはしてもらっている。
なので、一番外れの場所だ。







わたしは先に入都しているから、一度こっそり戻って、
横門から外にでることになった。

名前を言えばそれでいい。

「コットワッツ領国、セサミナ様が護衛モウ、
退都する。」


なのに、ここでストップがかかった。
門番が少しお待ちをというのだ。

相手はお仕事なので、
素直に待つことにする。
その間に、大門の戸車の話をしていた。
かなり改良されているようだ。




やっとお偉いさんがやってきた。
総勢14人ほど。
皆が馬に乗っている。


わたしは馬からすれば、いわばアイドルなのだ。
みながそわそわしているのが分かる。

(遅い時間にお疲れ様です)
(え?そうなの?うれしいな)
(あー、なんとなく口開けれます?)
(2番茶です)


馬さん用におやつは常に持ち歩いている。
みなさんばれないようにもぐもぐ食べている。
かわいいな。

すこし笑顔になったのか、
相手は、にこやかに話しかけてきた。

「護衛モウ殿ですね?
少しお話がありますので、こちらに。」

「わたしにはない。失礼する。」

断わらないとでも思ったのだろうか?
驚いている。

「いえ、王がお持ちですので。」
「あれか?またわたしの服を脱がすのか?
半分前なのにこの大人数の前で?サブコ殿と同じか?
おんなの服を面前で脱がすのがはやりなのか?
言いたくはないが、それは人としてどうなのだ?
いや、犯罪だろ?」

トックス式に大声で話した。

「!なにを!わたくしどものはサブコのような恥さらしではない!」
「なるほど。サブコ殿は恥さらしなのか。それは知らなんだ。」
「!
王が!あなた、護衛モウ殿をお呼びです。
こちらに。」

しつこいな。

「我が名はコットワッツ領国、セサミナ様が護衛モウだ。
貴殿の名は?」
「名乗る必要がない!」
「?では失礼する。だって、名前も名乗れない方が、
我らが王が呼んでるって嘘を言ってるに違いないから。
門番殿?取り押さえるか?不審者だろ?
なんなら手伝うが?」

軽く棒を構える。
わたしはワイプ流棒術使いなのだ。

「無礼者!」
「だから、名乗ってくれないとわからんと言ってるだろ?
子供にも親が教えるだろ?知らない人にはついていくなって!
わたしは、子供じゃないからな!もちろん、ついていかない!!」

いい大人が何を自慢げに言ってるのか恥ずかしいけど、
仕方がない。

ここで、笑いが起こる。
良し!

「・・・・。」

ものすごくにらまれる。


「門番殿?いいのか?不審者だぞ?
というか、誘拐犯だ。
わたしの師匠を呼ぼうか?
拘束と同時に資産を召し上げだな。
そうなると、わたしは弟子としてお褒め頂けるかもしれんな!
うん!呼ぼう!呼ぼう!
資産院ワイプ師匠を!!」

「!!モウ殿!ここは我らが納めますので!
どうぞ、退都を!」

これ以上騒がれたら困るのか、
資産院ワイプが嫌なのか、
門番さんが終わりにしようとしている。

「そうか?遅くに迷惑をかけたようだな?
これな、貰い物だが、みなで食べてくれ。」

なかなかに好評なフルーツパウンドケーキを2つほど渡す。
焼き立てもいいが、1日置いてしっとりしているのもまたうまい。
紅茶にもコーヒーに合う。

「紅茶かコーヒーと御一緒に。
あ!カンターウォーマーは資産院で取り扱ってますので!
ではでは!失礼いたしますぅ。」


ものすごく、名無しの権兵衛さんににらまれているが仕方がない。
後ろに控えていた者たちに指示を出しているのか?
門番さんにはおとがめはないだろう。
師匠には、会話するな、ついていくなと言われているしね。

外に出て、スキップしながら進んでいく。
もちろん、笑いながら。

大門の前は広場があり、
少し外れると野営ができる場所が数カ所ある。
コットワッツ先発隊はそれの一番外れで待機している。



なんとしても拘束したい護衛モウ。
サブコは失敗。
次の手も横門で大恥をかいた。

やっぱりお約束として囲まれるよね。

わざと人気のないところに歩いて行ってるのは
気付てくれているのだろうか?

ここでわたしが襲われるとする。
拘束できれば万々歳。
というか、するつもりだ。
逆に拘束されても、これだけの人数だ、
わたしが急に襲ってきたというのだろう。
なんで、そんなことをわたしがしないといけないんだ?
といっても、向こうは思い込まされた真実がある。
どういう真実なんだろうな。
拘束された時点で発動する真実なのだろうか?
簡易裁判をしてもダメなんだろうな。
服装も商人風だし。
でも、そんな風に団体で尾行はないよね?




「あれ?みんないないじゃん?ん?待ち合わせ場所間違えたかな?」

これを大声で言う。
うん、たぶん、ひとりならほんとうに迷子になる自信がある。

ひとりで歩くのことはめったにない。
マティスと常に一緒か、鍛錬しているかだから。
横門では師匠とマティスが気配を消して傍にいたし、
今はマティスだけが傍にいる。

「かかれ!!」

「忍法変わり身の術!!」

十字に組んだ木の棒に、
軍部の鍛錬服を着せて、マティスに抱きつき上空待機。

え?っとなったタイミングで煙も出る仕掛け。
その煙はお肉が焼ける煙にした。
砂漠石の膜の中にためておいたのだ。
匂い玉だ。

この辺りはシシがいるらしい。
シシがひとを襲わないのは人から肉の匂いがしないからだと、
シートが教えてくれた。
シシを狩るときは焼いた肉で呼び寄せる。
自分たちの縄張りに人が入ってくればシシは出てこないが、
肉の匂いがすればやってくる。
野営する場所はもともとシシの縄張りではない。

(あれがシシだ)
(シシ!!カバだね。でかい!
近くにミウもいるのかな?)
(向こうにいるだろ?)
(おお!犬っぽいね。へー)


シシとミウを見ることができたので、
セサミンのところに合流だ。

この10人ほどは強いのだろう。
一応わたしを拘束しようというぐらいなんだから。
シシの大群が200ほどだが。



うん、がんばれ!シシ!!




─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘



(さすが一番弟子ですね!褒めてあげますよ!)
(資産院の仕事を愛しい人にしてもらうのなら金を払え!)
(ええ、もちろんです)
(で?あれは誰だ?)
(天文院ですね。ノトン殿ですね。天文院もかなり強引なってきましたね)
(天文院はなぜ?)
(変動の時期を読み違えたことがかなり立場を悪くしています)
(しかし、それはわざとなんだろ?)
(そうなんですが、まさか、砂漠石がすべてなくなるとは思っていなかったようで。
セサミナ殿の報告書の中にこれから2年かけて王都に迷惑が掛からないように
大々的に採取する予定だったとその計画書が添付されていました。
採取量は通年の300倍だと)
(そんなことは可能だったのか?)
(あははは!紙の上の数字、尚且つ、どうやっても
出来ないできないんですから言い出したもの勝ちですよね。
さすがセサミナ殿だ)


「・・・・
ではでは!失礼いたしますぅ。」



(私はこのまま愛しい人に付く、お前は?)
(この後の動きを確かめます)
(わかった)
(会話せず、殺さず、かかわらず、でお願いしますね)
(面倒な)
(後始末の方が面倒ですよ!)




(愛しい人?そっちじゃないぞ?向こうだ)
(え?こっち?ふふ、楽しいね。)
(え?その動きなに?)

愛しい人が飛び跳ねる?ん?知らない動きで進んでいく。

(スキップ!できる?)
(ん?ん??)

あはははは!!!


思いっきり笑われてしまった。
なぜできないんだ?あれ?

その練習をしながら教えてもらったシシの群生地に向かった。



─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘






「セサミナ様!お待たせしました!」
「姉さん!ん?兄さんはどうしたんですか?」

「スキップの練習?」
「?鍛錬ですか?」
「そうだね。で?この2人は?」

スキップの練習をしているマティスは置いておこう。
わたしも説明しようとしたが、釣られてできなくなった。
1人ならできる。
見られていると思うとできなくなるのだ。



「ああ、紹介しましょう。
モリトとベルケです。従者ですが、鍛練にも参加していますよ。」
「護衛モウです。よろしく。」
「モリトです。」
「ベルケです。」
「マティスの紹介は終わってるんですね?」
「ええ。」
「わたしたちはセサミナ様を守る護衛だ。
お前たちまでは守らない。己の命が危なくなったら、
まず逃げろ。セサミナ様をお守りするのは従者の務めだが、
護衛が付いているときはわたしたちに任せろ。」
「「はい。」」

(えらいの連れて来たね)
(どこにも繋がりはないと確認済だったんですが)
(マティスは何と?)
(なにも。ただ、うまく使えとだけ)
(だよね)


かなりの野心家のようだ。
わたしたちに殺気を放っている。
わたしたちを殺したい。
わたしたちの地位にとって代わりたい。
それだけの自信がある。
空の荷台を運んでいるが、道中強盗は出たようだ。
それは2人で処理で来ている。
相手は本当の強盗か、
荷台の中身を確かめに来た輩だ。
中身がなければ、襲う必要はない。
始末したら、コットワッツは地の果てまで追ってくるだろう。
賢領主セサミナが大体的に王都に反抗しないのは、
こちら側に人的被害がないからだ。
あればこんなのんびり、のらりくらりと躱してていないだろう。
コットワッツ、セサミナは攻撃はしないがされれば容赦ないのだ。


では、2人が目指すのが、筆頭や次席とならないのは、
あんな多忙なことはしたくはないのだろう。
ただ、護衛職というのになりたいと。
気の調節はできない。
読み取りも表面だけ。
わたしたちの今の気は一般人だ。
護衛なのでそれなりのものをまとうほうがいいが、
今回の臨時会合で、襲ってくるものはみな始末したい。
コットワッツ内からも来るとは思わなかったが。

ん?ドーガーは?

テンたちの世話をしているが、
あ!それなりにまとってる。

自分たちより、ルグ、ドーガーは強い。
己も鍛錬で強くなった。
でかい顔している護衛はたいしたことない。
王にも礼を取らなくていい立場。
女はたいしたことはない。
男の方は、だんまりで、どこか行って帰ってきたら、
スキップの練習。

・・・・そうおもうわな。



「マティス!夜食食べよう!
明日早いし、朝ごはんは館についてからになるからね。
寒いから鍋焼きうどんにしよう!!」


お前たちは料理だけ作っておけ、そんな顔もされた。
よろしい!
二度と食べられないとわかった時に絶望するがよい!!


唐揚げ、エビ天、カニ、ミーキ、そして卵!
赤粉をちょっとかけるのがいい。

1人鍋でほふほふ食べたよ。
白いおにぎりも。
昆布だしで炊いたお米で一番塩で握っている。

それも大量に作っているし、
焼きおにぎりも作っている。

うまい!
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