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701:茶番
しおりを挟むまだ誰も話さない。
妖精がぐるぐる飛んでいるだけだ。
長期戦になるなら、
クイックマッサージの椅子のように空気でクッションをつくろうか。
デルサトールの砂漠の端で
マティスと3人娘の従者と対話したときのようだ。
ん?あれは従者だったのか?
結構えらいさんだったよね?
(ワイプの話ではそれなりで、わがままだと
他国で面倒を起さないようについていたとか)
(なるほど。それをするな、
と注意できないほどにはそれなりにえらいさんだと)
(そうだろうな。なのに、結婚相手もだれもいないそうだ)
(あはははは!それは、みなさん、見る目有るね。
それを押し付けようとしたんだ。マティスに)
(迷惑な)
(そこから、コットワッツ、
ニバーセルにも手が出せるとでも思ったのかな?)
(それが今度はダカルナ王が、愛しい人狙いに?)
(うぬぼれないけど、そうだよね?いやん!モテモテだ!)
(ものすごく悪い顔をしているだろ?見なくてもわかるぞ?)
(くふふふふ。あれだよ。
2人は愛し合ってますって奴を見せつけるんだよ)
(いいのか!!)
(もちろん!下品なのはダメだけどね)
(楽しみだ!)
(マティスはいまいやらしい顔してるよね。見なくてもわかるよ)
(ふふふふふ)
エアクッションにもたれながら、
マティスとずっとおしゃべり。
口の廻りは息ができるようになっている。
これがなんだか、たのしかった。
いつも一緒だけど、
ご飯作ってるか、いちゃいちゃしているか、
鍛錬しているか、ごそごそしているか。
話だけっていうのはない。
セサミンをはじめ、師匠やガイライも話しかけてくる。
予約をしているかのように順番に。
マティスと師匠の掛け合い漫才はおもしろかった。
途中、わたしの鍛錬方法の話になった時は、
聞いているだけで、翌日は寝たきり状態だとおもった。
そこまでの体力、筋力はないよ?
そしてその間、妖精はわたしたちの廻りをぐるぐる回るだけ。
お茶の匂いが効いているのか、半径3m内には入ってこなかった。
「面を上げろ。」
王の前にいる1人がやっと声を上げた。
だけど、わたしたちは動かない。
「「・・・・。」」
「聞こえないのか!!」
「これは独り言だ。
わたしたちは我らが王に呼ばれてやって来た。
ダクツ殿の案内で。
しかも、わたしたちは護衛。
護衛対象はこの王都にいる、コットワッツ、領主セサミナ様だ。
セサミナ様のお傍を離れるのは、王が呼んでいると聞いたからだ。
本来ならば、我らが王さえにも礼を取る必要のない護衛職。
が、我らが主より、領地を賜った。
我らはニバーセル国、コットワッツ領国の繁栄を担うもの。
それすなわち、ニバーセルが王に忠誠を誓う者となった。
我らが主のお命を守ることを第一に、
我らが王にも忠誠を。
その最中に名乗りも上げない輩から声を掛けられても
動かないのは当たり前だ。
この独り言すら不敬になるやもしれぬ。
が、そんなことをすれば、この茶番、
茶番ってわかる?お間抜けな劇というか、
落ちが見えるお芝居というか。
要はいい笑いものになるだろう。
我らが王の廻りはろくなものがいないのか?
いや、それはないな。
たまたまだな。
なんせよ、我らに声を掛けることができるのは、
我らが王のみ。もしくはダクツ殿だけだ。」
「無礼者!!この者たちを捕えよ!!!」
この面談が始まる前と同じことを言われる。
先ほどと違うのは、会話はしていないが、すでに面談中だということ。
『この面談中に我らとロセツに降りかかる不利益及び理不尽な命令は
全てその命令を唱えしものに降りかかり、自ら遂行する』
両脇に控えていた衛兵が、叫んだ人を捕えようとする。
が、そこまできつい言霊ではないので、え?っとなって固まる。
そして叫んだ本人は自ら遂行しようとする。
これは失敗だな。
自分を捕えようとし、自分で遂行しようとする。
それはおかしいと思うから、固まってしまった。
微妙に体が前後に動いているのが鶏のようで、
それが、下半身しか見えない。
たぶんドレスの中で、ツーステップをしているのだろう。
ここに来てまた腹筋に力を入れることになる。
呼吸法も指示されているのでかなりの鍛錬だ。
「ディープ殿?この者たちは王が面会したいと望んだ者たちです。
あなたの一存でとらえることはできない。
聞こえてきた独り言のようなものは誰が言ったかもわからない。
そうですね?衛兵も下がれ。
モウ殿、マティス殿、面を上げてください。」
これでやっと腰が伸ばせる。
ストレッチがしたい。
ディープとやらは、前後に体を動かすのみ。
それを皆が笑いをこらえてみているが、誰も何も言わない。
ツッコミ不在というのはつらいな。
「2人とも、よく来た。」
ラーフィングがやっと声を出した。
「ご尊顔を拝し、恐悦至極に存じます。」
もう一度礼を取る。
これは軽くで。
で、ラーフィングを見るとやはり目はうつろだ。
心を閉ざしているのか。
妖精がいるから。
いや、疲れているのかな?
おなかすかして待っとけっていったのにね。
「コットワッツ領国が新しく習得した領地を
そなたたち、2人で管理すると聞いた。
それはニバーセル国の新たなる領地を習得したことと同じ。
頼もしくおもう。
これからも、コットワッツ、
ひいてはニバーセルのために精進してほしい。」
応えるのはマティスだ。
ニバーセルはやはり男性優位。
「はっ。我らが王が統治せし、このニバーセル国、
我らが主が納めしコットワッツ領国のため、
私、マティスと私が唯一の伴侶、愛しい人とともに邁進してまいります。」
「うむ。期待している。」
「ありがたきお言葉。
我らが主もお喜びいただけましょう。」
これで、わたしたち2人の立場は王が認めたということだ。
2人を呼んだのは我らが王。
その2人はマティスとマティスの唯一の伴侶愛しい人だ。
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