いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

文字の大きさ
701 / 869

701:茶番

しおりを挟む




まだ誰も話さない。
妖精がぐるぐる飛んでいるだけだ。
長期戦になるなら、
クイックマッサージの椅子のように空気でクッションをつくろうか。

デルサトールの砂漠の端で
マティスと3人娘の従者と対話したときのようだ。
ん?あれは従者だったのか?
結構えらいさんだったよね?

(ワイプの話ではそれなりで、わがままだと
他国で面倒を起さないようについていたとか)
(なるほど。それをするな、
と注意できないほどにはそれなりにえらいさんだと)
(そうだろうな。なのに、結婚相手もだれもいないそうだ)
(あはははは!それは、みなさん、見る目有るね。
それを押し付けようとしたんだ。マティスに)
(迷惑な)
(そこから、コットワッツ、
ニバーセルにも手が出せるとでも思ったのかな?)
(それが今度はダカルナ王が、愛しい人狙いに?)
(うぬぼれないけど、そうだよね?いやん!モテモテだ!)
(ものすごく悪い顔をしているだろ?見なくてもわかるぞ?)
(くふふふふ。あれだよ。
2人は愛し合ってますって奴を見せつけるんだよ)
(いいのか!!)
(もちろん!下品なのはダメだけどね)
(楽しみだ!)
(マティスはいまいやらしい顔してるよね。見なくてもわかるよ)
(ふふふふふ)

エアクッションにもたれながら、
マティスとずっとおしゃべり。
口の廻りは息ができるようになっている。

これがなんだか、たのしかった。
いつも一緒だけど、
ご飯作ってるか、いちゃいちゃしているか、
鍛錬しているか、ごそごそしているか。
話だけっていうのはない。

セサミンをはじめ、師匠やガイライも話しかけてくる。
予約をしているかのように順番に。

マティスと師匠の掛け合い漫才はおもしろかった。
途中、わたしの鍛錬方法の話になった時は、
聞いているだけで、翌日は寝たきり状態だとおもった。
そこまでの体力、筋力はないよ?


そしてその間、妖精はわたしたちの廻りをぐるぐる回るだけ。
お茶の匂いが効いているのか、半径3m内には入ってこなかった。


「面を上げろ。」

王の前にいる1人がやっと声を上げた。
だけど、わたしたちは動かない。


「「・・・・。」」
「聞こえないのか!!」


「これは独り言だ。
わたしたちは我らが王に呼ばれてやって来た。
ダクツ殿の案内で。
しかも、わたしたちは護衛。
護衛対象はこの王都にいる、コットワッツ、領主セサミナ様だ。
セサミナ様のお傍を離れるのは、王が呼んでいると聞いたからだ。
本来ならば、我らが王さえにも礼を取る必要のない護衛職。
が、我らが主より、領地を賜った。
我らはニバーセル国、コットワッツ領国の繁栄を担うもの。
それすなわち、ニバーセルが王に忠誠を誓う者となった。
我らが主のお命を守ることを第一に、
我らが王にも忠誠を。
その最中に名乗りも上げない輩から声を掛けられても
動かないのは当たり前だ。
この独り言すら不敬になるやもしれぬ。
が、そんなことをすれば、この茶番、
茶番ってわかる?お間抜けな劇というか、
落ちが見えるお芝居というか。
要はいい笑いものになるだろう。
我らが王の廻りはろくなものがいないのか?

いや、それはないな。
たまたまだな。

なんせよ、我らに声を掛けることができるのは、
我らが王のみ。もしくはダクツ殿だけだ。」


「無礼者!!この者たちを捕えよ!!!」

この面談が始まる前と同じことを言われる。
先ほどと違うのは、会話はしていないが、すでに面談中だということ。



『この面談中に我らとロセツに降りかかる不利益及び理不尽な命令は
全てその命令を唱えしものに降りかかり、自ら遂行する』


両脇に控えていた衛兵が、叫んだ人を捕えようとする。
が、そこまできつい言霊ではないので、え?っとなって固まる。
そして叫んだ本人は自ら遂行しようとする。

これは失敗だな。
自分を捕えようとし、自分で遂行しようとする。
それはおかしいと思うから、固まってしまった。
微妙に体が前後に動いているのが鶏のようで、
それが、下半身しか見えない。
たぶんドレスの中で、ツーステップをしているのだろう。

ここに来てまた腹筋に力を入れることになる。
呼吸法も指示されているのでかなりの鍛錬だ。




「ディープ殿?この者たちは王が面会したいと望んだ者たちです。
あなたの一存でとらえることはできない。
聞こえてきた独り言のようなものは誰が言ったかもわからない。
そうですね?衛兵も下がれ。
モウ殿、マティス殿、面を上げてください。」



これでやっと腰が伸ばせる。
ストレッチがしたい。

ディープとやらは、前後に体を動かすのみ。
それを皆が笑いをこらえてみているが、誰も何も言わない。

ツッコミ不在というのはつらいな。


「2人とも、よく来た。」


ラーフィングがやっと声を出した。

「ご尊顔を拝し、恐悦至極に存じます。」

もう一度礼を取る。
これは軽くで。
で、ラーフィングを見るとやはり目はうつろだ。
心を閉ざしているのか。
妖精がいるから。
いや、疲れているのかな?
おなかすかして待っとけっていったのにね。


「コットワッツ領国が新しく習得した領地を
そなたたち、2人で管理すると聞いた。
それはニバーセル国の新たなる領地を習得したことと同じ。
頼もしくおもう。
これからも、コットワッツ、
ひいてはニバーセルのために精進してほしい。」

応えるのはマティスだ。
ニバーセルはやはり男性優位。

「はっ。我らが王が統治せし、このニバーセル国、
我らが主が納めしコットワッツ領国のため、
私、マティスと私が唯一の伴侶、愛しい人とともに邁進してまいります。」
「うむ。期待している。」
「ありがたきお言葉。
我らが主もお喜びいただけましょう。」

これで、わたしたち2人の立場は王が認めたということだ。
2人を呼んだのは我らが王。
その2人はマティスとマティスの唯一の伴侶愛しい人だ。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

処理中です...