いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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ガイライがにやりと笑った。


「信用しようとしまいとこちらはどちらでもかまわない。
ただ、最初にこちらの商品を値切りもせずに
買ってくださったお客様は信頼ができると、
商売の師匠がおっしゃるのでね。
この話をしたまで。
儲かる話は誰にもしない。自分ですればいいことだ。
が、今回の話はもちろん、我々もきんを今から買っていくんですが、
資産は限りある。
話せば価値が落ちるのは、
資産がない者たちに対してだ。
そしてあまりに多くに拡がると価値が落ちる。
勝負は雨の夜会前だ。
この日に主要な者たちが集まる。
そこで、砂漠石の話、きんの話が出るでしょうね。
そして雨の日後、統治者が集まる。
そこで、どうするかということが、中央主導で決定する。
砂漠石の流通の制限、安価での没収、
そして金の価値の底上げ。
砂漠石より金の方に価値を置く。
資産を砂漠石で持っているなら安価で買いあげられる。
ドルガナは検問でそのようにしている。
いま、大陸全体で見ても砂漠石不足だ。
それはコットワッツの砂漠から砂漠石が消えてから。
が、ここから出ていたものは大きなものではない。
日常に使うものは多少の値上げはあるが、
安定しているだろう。
中央砂漠でも本格的に採取しだした。
ピクトも子供までもが合わさりの日に砂漠に入っているらしい。
リリクもルポイドと契約した。
外部に出せるほどの砂漠石を収穫出来ているということだ。
すぐにでも砂漠石の高騰は納まる。
いま、手持ちの資産で砂漠石を買いあさっているものもいるようだが、
それは遅い。
買うなら金だ。
ニバーセルはコットワッツの砂漠石がなくても、
マトグラーサがある。
合わさりの石は確保できるだろう。

砂漠での作業もできるようになる。
が、これも問題だな。
それは、砂漠石の採取か、銃弾製作か。
月が出るまでに戻れるのか?
欲望におぼれないのか?
月の光を浴び、欲におぼれ、街に紛れ込み、
よからぬことをしないと言い切れるのか?
領主の力で押さえるのか?
毎日?
月が出るまで戻るから大丈夫だと?
だったら、広範囲では無理だな。
そんな話は出なかった。
どういうことか?
領国内の問題だ。
理不尽なことが起きれば、王都が出る。
まさか王都、中央院も黙認はできない。

ああ、きんの話だな。
砂漠石の異常な高騰。
それをどうにかするのが中央。
砂漠石が急に増えるわけではない。
リングの普及率を考えるとこれの価値をどうにかするのは
危険が伴う。
では、調整ができ、価値があるもの。
それが金だ。
いつか?新年前だ。
踊らず考えればその答えが出る。
仕込みではない。」

(お前、胡散臭いぞ?)
(だよな。練習したんだが)
(やっぱり。モウちゃんの仕込み?)
(当たり前だ)



悪徳商人になってる。





ヒガスがイスナペンで、紙に今の話を
簡潔に書きながら話始める。


「ここで、話すことではないとは思う。
が、これもわたしから聞いたとは言わないでいただきたい。
リーズナ殿がここにいて、
ガイライ殿、ニック殿がいる。
リーズナ殿が言うように、急遽この会合に出るように言われた。
スダウト家、センボ殿、タレンテ家、リギン殿も同じ立場だ。
予算のことを確約してこいと。
それはいい。
第3軍はすべて放棄したと報告できる。
タトーロイン卿の話を持ち帰れば、
わたしたちの評価はあがる。
個人的にあの木組みの遊びと、
カンターウォーマーも買えたことで、満足だ。
これ以上のものはいらない。
わたしは常に対等な取引を心がけてきた。
過剰な報酬は身の破滅だ。

今の話は、相手を選んで話してくれたものだ。
その礼にタフトの話をしよう。

街道で、豪遊した3人組がいるらしい。
かなりの田舎者だったらしい。
が、場数を踏んでいると。
馬車を新調し、あらゆるものを買っていったそうだ。
そして支払いは砂金。
使った金額は100万リング以上になるそうだ。
どこかで砂金の鉱脈を見つけたのだろうと、
研究院に砂金についていた土の検査を依頼してきた。
その場所は外には漏れない。
わたしも掴めなかった。
研究院は即、中央に報告したそうだ。
そしてこの話は誰もしない。

が、3人で掘りあてて、100万リング。
まだまだあるだろう。
なので、雨の日前にきんが大量に出るはず。
そうなるとはきん高騰しない。」


サギョウグミの名前は出ないが、目的は達したということだな。

「・・・・。」

ガイライがうつむいている。

(モウが用意した砂金、すべて使ったのか?)
(当然だ)
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