いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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変動の話を向こうからしてきた。

「?おかしいというのは、それ、セサミナ様の言う言葉ですよね?
だって、2年も間違えたんだから。」
「違う。逆に考えろ。
セサミナ殿はこのニバーセル、いや、グラシオル大陸で一番の
賢領主だと言われているんだぞ?
彼が次期領主を拝命したのは5歳。
領主になったのは成人してすぐだ。
そこから20数年。
いや、次期になってから42年。
なにをしていた?
2年の読み違えがなければ、これからの2年で、
砂漠石を600年分採取する予定だったと中央院に報告しやがった!!
変動があるのは視えていたが、
それがこの先600年も石が出ないなんて視えなかった!!
だが、コットワッツ領主は知っていたと。
領主の力として引き継がれていたとな!
こっちは知らない!!」


よくわからない。
かなりお怒りだということは分かるんだが。
それに、

「いや、領主の力は公開しないものだろ?」

ラートはこちらが思っていることを代弁してくれた。


「そうだ!誰も知らないことだ。
だが、セサミナ殿は知っていた。
コットワッツ領主はだ。
砂漠石が取れる200年、なにをしていた?
セサミナ殿はいいとして、これまでの領主はなにをしていた?
セサミナ殿もだ。メディングの資産を受け取ったからいいようなものの、
石が取れない、産業はこれから探す?
余りにも愚かだ。遅いんだよ。
ああ、不敬だというなよ?ここは管理地外だ。
で、気の合う友人同士で話しているだけだ、いいな?」
「友人ができるなんて!感激です!!」
「カップ殿、いや、カップ、少し声を押さえてくれ。」
「あ!はい。」
「それで?」

「ラート、といっていいな?
ラートもおかしいと思わないのか?
この際だから言うが、マトグラーサもおかしい。
石が10年前から取れてないだと?
よく言うな!そんな兆候は視えていない!
俺が砂漠の観視にまわって、20年。
マトグラーサ砂漠に変化はない!
取れていないというのなら、20年前以上だ!!
俺の観視に間違いはないんだよ!」
「・・・・マトグラーサとて試行錯誤している。
20年以上前から採れていなかったとして何が問題だ?
だから次の産業を確立させているんだろ?
コットワッツと違ってな!ああ、なるほど、これは確かにおかしい。
が、それを視るだけで、
何もしない天文院に文句を言われたくはないな、フーサカ?」
「なにぃ!!」
「え?え?えーっと、ら、ラートもフーサカも声を小さく。
これ、うちの村の特産品、
リンゴの実の酒漬けです。友達だから、特別ですよ?」

今一番お気に入りの菓子を出す。
話の流れでも、今だけでも、友達ができたのはうれしい。

「「!」」

2人は黙って、味わうようにして食べた。
嬉しそうだ。
はは。
モウ様が食事を、おいしいものを振舞ってくれる気持ちが分かるな。
俺たちがうまそうに食べるのがうれしいといつも言ってくれる。
これだな。

「コットワッツの振る舞いはうまいものばかりというのは本当だな。
しかし、これは、カップの?」
「ええ。マトグラーサですよ。」
「わたしははじめて食べるぞ?」
「ああ。コットワッツの食の祭りで、リンゴが売れに売れて、
もっとなにかできないかって開発したらしいですよ?
日持ちもするから、送って来てくれたんですよ。」
「へー。いいな。これ。
さっきのジュグラムもうまかったな。まだあるか?
できれば買って帰りたいな。」
「友達なんだから、もらって帰ってください。
次回から買ってくれればいいんで。」
「あ、俺も欲しい。」
「いいですよ。あとで、もってきますね。」
「ありがとう。
ああ、はなしが食い物に行ってしまう。
そう、マトグラーサだ。
だいたい、コットワッツに何の用事だ?」
「それは、天文院もだろ?
知ってるぞ?わざわざ、こんな王都のはずれに追いやったのは
天文院だ。水も枯れているところにな。
なのに、気付けば、領国管理地として2番目に豪華になっている。」
「え?一番は?」
「我がマトグラーサだ。」
「そうなんだ!」
「ははは!その地位が脅かされそうだから、
コットワッツを調べに来たのか?」
「銃弾開発でこれからますます躍進するマトグラーサがか?
コットワッツのことではないんだ。
隠すこともないか。
ツイミ殿のことで聞きたいことがあったんだ。
ナソニールの一族が逃げたことはもう耳に入っているだろう?」

頷くフーサカ。
これは、正式に連絡があった。
なにか知っていることがあれば報告するようにと。
俺も最近までナソニール民だ。
が、全ての手続きはツイ兄がしてくれているので何も知らないとだけ。
報告は済ませている。
チュラル達もワイプ様を通してそう言っているはずだ。
で、一番捕まえたい人物、ツイ兄だ。

「最近まで事務官筆頭だったのがツイミ殿だ。
資産院に行ったのは当然だとおもうが、
話を聞こうにも病気だという。
資産院オート院長が完全に囲い込んでいるな。
少し話がしたいんだ、どこにいるか知らないかと思ってな。」
「あー、家で寝込んでるんじゃないのかな?
結構病弱なんですよ。体力もないしね。
素直に自宅を尋ねたほうがいいんじゃないんですか?
ぼくも訪ねてみますよ?」
「いないんだ。どこにも!!」
「ツイミ様になにが聞きたいんです?
コットワッツに仕えることになってから忙しくてあんまり会ってないんですが、
顔見たら聞いときますよ?」
「・・・・。そんな軽い話ではない。
彼、ツイミ殿はナソニールの長子だ。」
「?ちょうし?」
「領主の子供で最初の男子、相続権があるんだよ!ナソニールの!
だから、競売に入る前に宣言すれば、ツイミ殿がナソニール領主だ。」

調べた?知っていた?
調べてわかるような処理をツイ兄がするはずがない。
知っていたんだ。

「はぁ?ふ、ぶははははははは!!!!!」
「カップ!静かに!!」
「そんなわけがない!
ツイミ様、ツイ兄は俺たちを呼んでから、
いや、呼ぶ前からロクなものを食べてないんだ!
俺たちにもすまない、すまないっていつも謝ってた!
道端に生えてる草も食べていたんだぞ!!
シシの群れを見つけて彼らが食べる草を覚えて、
自分が先に食べて味がする、おいしいっていうものだけ、
俺たちに食べさせてくれてたんだ!
会食に出ても、こっそり残して肉とか持って帰ってくれてたんだ!
そんな目にあってる人が、ナソニールの、あの領主の子供?
そんなわけがあるか!!」

そんなこと認めない!
あれと俺たちとが血がつながっているなんてこと認めない!
どれだけ苦労したと思っているんだ。
どれだけ俺たちのために苦労したと思っているんだ。
どれだけ、母さんのことを守ろうとしたのか!
どれだけ、チュラル、ルビスが泣いたと思っているんだ!

ツイ兄があの時ワイプ様に引き抜かれていなかったら、
あの男は雨の日に死んでいたんだよ!
ずっと計画していたのに!!

いや、今はいい。
あいつは死ぬより辛い目に合っているはずだ。
そうでなければ、俺が許さない!!


「カ、カップ?落ち着け?な?
コーヒーはまだあるか?フーサカ、入れてやって。」
「そうだ、カップ、ちょっと落ち着け。蜜も入れようか?
泣くな、な?」

え?泣いてるの?
俺が?
あ、本当だ。
あははははは。
なんでだろ?


フーサカが入れてくれたコーヒーには、
テオブロマの蜜がこれでもかというくらい入っていた。


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