いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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「セサミナ!」



抱きかかえることができるんだ、骨に異常はないし、
呼吸も落ち着いている。


セサミナの気が初めて赤い塊と対峙した時以上だ。
鍛錬の成果だな!


「セサミナ!落ち着け!鍛錬だ!大丈夫だ!治せるから!
気を練るな!!

良し!やってこい!!」

愛しい人を腕の中に移動させて、ざっと打ち身は治す。
細かい傷と。
後は治せないな。これは2日ほど寝床だな。

「ヤーーー!!!!」

「ちょっと、マティス君!ほんと勘弁して!
セサミナ殿!!落ち着いて!!!
ギャーーー!!!」


おお!素晴らしい!!


立っているのもやっとなワイプの懐に入り、
愛しい人から教わった柔術で投げ飛ばした。

「さすが、我が主にて、私の自慢の弟だ!!」


シャシンだ!
抱きかかえてシャシンをするのは難しいが、
セサミナもいい顔だ。そしてワイプも。


「ふーーーー。

兄さん!姉さんは?大丈夫なんですね?」
「もちろんだ。満足そうに眠っているだろ?
使った筋肉の疲労は取れないからな。
細かな傷と、打ち身は治した。
後はゆっくり風呂に入って、ゆっくり寝て、
うまいものを食べればいい。」
「・・・・。」
「?」

セサミナは下を向いてしまった。
ああ、初めてか。


臣にて主。
臣の立場の方が強いのだろう。
主が傷つけば、冷静ではいられない。
しかし、鍛錬だ。
主の立場だとしても、配下の者が、
ここまで傷つくこともなかったか。



「セサミナ?
泣くな?鍛錬なんだよ?
みなが同じに、いや、これ以上に鍛えているんだ。
お前を、主を守るためにな。
それは、ルグも、ドーガーも、カップも同じだ。
留守の間、コットワッツを守っているもの、みなそうだ。
もちろん、奥方たちも、娘たちもだ。
戦があるんだ。
その感情はもう出すな?それで最後だ。いいな?」
「はい。はい。」
「おいで?私の頼れる主、私のかわいい弟。
ありがとう。」

片腕で愛しい人を抱きかかえ、
もう片方でセサミナを抱き寄せた。

戦が始まれば、一番傷つくのが、領主セサミナだ。
そうなると愛しい人が嘆き悲しむ。
守らねば。


─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘


「ルグだけ呼んでくれるか?」
「はい。」


(ルグ!手が空いていたらこちらに来てくれ!)
(はっ!)


「セサミナ様!!なにがありましたか!!
マティス様が動くなとおっしゃるので、動けませんでした。
あれは、言霊?
え?モウ様は?」
「寝ているだけだ。大丈夫だ。
言霊?少し入っていたかもしれないな。
すまない。」
「寝ていたんだろ?奥方とローチは?」
「はい。わたしが飛び起きてしまったので、2人とも起きました。
目の前の問題となりますと、妻の足がむくみでつったようで、
その、まっさーじを。」
「ああ、そうなるのか。兄上?なにか、ローチが喜びそうなものありますか?」
「ああそうだな。ココアとチョコクッキーを喜んでいたな。
だったら、これを。」
「ありがとうございます。これをもって、一度戻れ。
少し事務仕事が出てしまったとな。
ローチがいれば安心だろうと、呼寄せたと。
これはその詫びだ。」
「喜びますね。すぐに戻ります。」

ポットに入ったココアと、チョコクッキーを渡すと、
すぐに戻ってきた。


「ワイプとの鍛錬で愛しい人が疲れて眠っているんだ。
4階の部屋に寝かすが、傍にいたい。
セサミナの護衛を頼めるか?」
「それはもちろん。
ドーガーとカップは?」
「客の相手をしている。
ドーガーの相手は館内、鍛練場に入ってきた。
腕はドーガーより上だ。対処してやってくれ。
カップの方は外だが、問題は無いだろう。
どちらも殺すな。」
「承知。」
「兄さん?ワイプ殿は?」
「寝かせておけ。起きたら、これを売りつけろ。
それは、ただ疲れて寝ているだけだ。安全なここでな。」

小瓶に入った呪いの森の水を渡す。
合わさりの月の光の下で集めたものだ。

「ははは!わかりました。」
「あの?ワイプ殿は?」
「ルグ!お前に頼んでいることを先に、お前の主が成し遂げたぞ?
セサミナ?自慢しておけ。」
「はい!兄さん!」
「え?」




─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘

「愛しい人?頑張ったな?
得るものがあったのか?いいよ、起きなくても。
体はきれいにした。切り傷と打ち身だけだ、治したのは。
明日は筋肉痛で動けないからな。
全てをやらしてもらうぞ?」
「んー、うん。んー?マティ?ん?戻った?」
「そうだ。滞在館の4階だ。
ワイプはな、お前の姿を見て激高したセサミナに投げ飛ばされて、
下で寝ているぞ?くくくく。」
「んんー、セサミンつおいね。うん。
コテンパンのけちょんけちょんだったの。
でね、でね、新年はみんなで商売繁盛なんだ。」
「ん?みなでか?」
「うん。あ、あ、あ。頭動かしたい。」
「こうか?ん?乗せるの?」
「ん。ん。うん。
あれ?お仕事は?」
「ルグに来てもらった。カップの相手は問題ないし、
ドーガーの相手は、ま、死にはしないだろう。ルグがいるしな。」
「ん。やっぱり、お風呂はいってもいい?」
「いいよ。いっしょにはいろう。」
「うん。」



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