いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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746:肩書

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「あの人は?」
「帰りましたよ?」
「そうなんだ。楽しい人でしたね。
フーサカとラートはどうする?
ツイミ様のことと、変動のこと?先に済まそうか?
それとも手土産は渡せたし、いったん家に帰る?」
「ああ。悪いんですが、このまま一緒に行動してください。
死にたくないのであれば。」
「「!」」
「さっき来た彼が眠らせたみたいですね。
今のうちに、ツイミのところに行きましょう。」
「あ、じゃ、俺はセサミナ様に報告を。
何かあれば呼んでください。」
「わかりました。」
「フーサカ?ラート?
2人は俺の友達なんだ。はじめての。
何かあれば駆けつける。
ここに来て、俺に拘束された時点で見捨てられている。
それはわかってるんだろ?

様子見だというなよ?俺は殺気は出していたんだよ?

あとは、ワイプ様がうまく処理してくれる。
納得したら、コットワッツに来て?」

「「・・・・・。」」

「モウ様もセサミナ様もそのつもりだから。
ワイプ様、お願いします。」
「はいはい。では行きましょうかね。」

そういうとワイプ様は2人を手刀で眠らせた。

「ひどい!」
「抱えるほうが早いでしょ?
これ、あなたから見てどうなんですか?」
「野心はあるようです。フーサカは天文院での立場を失くしています。
変動の読み違えはあり得ないと訴えているみたいなんですが、
実際に変動が起こっているので、誰も相手にしなかったみたいですね。
彼が言うにはマトグラーサの砂漠の変異も20年は起きていないはずだと。
砂漠石が採れていないのなら20年前以上だと。
20年前から砂漠の観視というのですか?それに携わったそうです。
そこから変異はないと。」
「20年ですか。」
「ええ。それとラートの方はツイ兄をナソニールの領主にしたいそうです。
あれの最初の男の子供だと知っていました。
だから、今名乗りを上げれば、いいと。
母方の方がマトグラーサの村、俺の村だということを押さえています。
あの領主の子を産んだ女性が村の出身者だと。
話の感じでは祖母がツイ兄の母って感じですね。」
「母君に連絡を。イリアスのフェルトナ、櫓宿に逗留してください。」
「わかりました。しかし、悪い感じはしませんでした。
モウ様の基準です。
うまそうに食べる。
土産として買って帰りたいといい、
持って帰ってくれと言えば、喜ろこぶ、というのですが。
領民のことを思えば、実質運営していたツイ兄が戻るほうがいいだろうと。
ナソニールの製鉄技術をマトグラーサに渡したくはないようで。
銃製造とは別に製鉄の技術を発展させたいみたいですね。
なにか隠しているとは思うのですが。」
「でしょうね。」
「2人のこと、お願いします。」

3人分の荷物は小袋に。
2人は両脇に抱えて移動していった。
完全に意識がなく、抱えれるものなら、生きている人でも移動できるとか。
試してみたが俺には出来なかった。


「死んだら肉の塊で、死んでもいいと思えばいいんじゃないですか?」

ワイプ様もあれだ。
うん、あの人が言うようにあれに気を付けよう。
あの人?ん?どんな風体だったっけ?
ダメだな。食べ物のことで興奮しすぎたか?
隠密としてまだまだだな。
精進せねば。しかし、楽しかったな。

彼が眠らせたんだよな?
寝ている?2人?
寝ている方が気配が分かる。
顔を確認するか?
いや、目が覚めれば死んでしまうだろう、俺が。
母さんのことが先だ。
それからチョコを隠さないと。

優先順位は間違えない!





─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘




(ツイミ?今から行きますがいいですか?)
(ええ。どちらで?)
(マトグラーサ関係で、ナソニール問題ですから、ツイミで)
(わかりました)



ツミールと言われたら声を出してはいけないし、
着替えないといけない。
着替える前でよかった。

扉から入ってきたワイプ様は、両脇に死体?を抱えている。


「どうしたんですか?これ?」
「天文院の方はいいんですが、こっち、マトグラーサの執行部?だそうで、
見たことないんですがね。
カップのところにツイミがどこにいるか知らないかと聞きに来ました。
処分してもいいんですが、カップが友達だというんでね。
話をしたいそうですよ?あなたと。友人の頼み事なので聞いてくれと。
で、ここに。」
「カップの友達!うれしいですね。
結婚も決まり、本当によかった。」
「そうですね。ドーガーの妹君を裏切ることはしないでしょう。
それはモウを悲しませることになりますから。」

カップは去年の雨の日前に武器を王都まで買いに行き、
ガイライ殿の目に留まり、軍部に誘われた。

どうしてわざわざ王都で武器を?
領主殺害、血殺しをするためだ。
雨の日に娼婦なんか来ていない。
そもそも娼婦に払う給金を出せていなかった。

その話を聞いたのは、雨の日が終わった日だ。
失敗だったよ、と。
かき集めた金で、一瞬だけ家に来てくれればいい、
見栄を張りたいと、女に頼んだようだ。
それが終われば、その後に自由に動けると。
雨の日に外に出れるわけないのに。

「ただ、雨の音を聞いているだけだった。
ずっと、震えてたんだ。間抜けだね。だけど、次は大丈夫だ。
安心して?ツイ兄。」

その笑顔が悲しかった。

少ないが、給金を出し、
娼婦通いを勧めた。
そんなことはしてはいけないと。
気がそちらに行けばいいと。
なんの楽しみもなく、過酷な隠密業だ。
そこまで追いつめていたんだ、兄であるわたしが。

ガイライ殿に弟たちを預けるために帳簿には細工はしなくなり、
会合前にモウ様、ワイプ様と巡り合うことができた。

この件もワイプ様には話してある。
だから、カップをできるだけナソニールから遠ざけくれたのだ。
感謝しかない。

わたしは、モウ様、ワイプ様、マティス様の為に動けばいい。
ガイライ殿にも感謝だ。
モウ様がおっしゃる通りだな。
全てに、感謝を。


─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘


ワイプ様が指示した調べ物を持ってきたチュラルは、
昨日の樽便はすごかったと興奮気味に報告している。


「ふふふふ、わたしもすごかったんですよ
余計な客はいましたが。」

ワイプ様もなぜか嬉しそうだ。

ルビスは先にソヤと一緒に院に向かっている。

なにかあると2人だけで、双子だからと悩んでいたこともあったようだが、
なんのことはない、皆同じということが分かったようだ。

兄二人に話しても、ただ心配さすだけ、
もしくは慰めているだけと思われていたんだな。
ソヤも人生経験は豊富だ。

同い年の自分たちと違う者。
その彼も同じなんだと。

ソヤにも感謝だ。

「オート院長に少し遅れると伝えてください。」
「わかりました。」

見送ってから防音を施す。


「ある意味優秀ですね。わたしたちの関係をある程度把握していると?」
「カップの話ではあなたの祖母があなたの母親だと思っているそうで。
同じ村の出身、仕事を紹介してもらっている。
そのあたりでまでですね。 
念のため母君にはイリアスの櫓宿に避難してもらいます。」
「ありがとうございます。では、起しますか?
断ればいいだけの話だと思うのですが?」
「なにか、隠しているようですよ?」
「それはそうでしょ。」


ゲボッツ

2人に活を入れ強引に起される。


「大丈夫ですか?
何かに攻撃されたんでしょうね?急に気を失って。
死ななくてよかったですね?お守り出来て良かった。
で、なんとか、ツイミのいるところに運んだんですよ。」
「え?あ、ツイミ?殿?」
「あー、天文院のかたは関係ないとは思うんですが、
一緒にいてくれますか?」
「・・・・・。」
「明日は臨時会合だ。
その後の方が時間は取れるでしょう?
それまで一緒に行動してください。
しかし、あなた、天文院を辞めてるんですね?
給金の清算伝票があがってますよ?」
「・・・・・。」
「で、マトグラーサの?えーと、ラート殿?
あなたは解雇通知だ。」
「!」
「ツイミを次の領主に引き立てればそれが取り消しになると?
なにをやったんです?」
「・・・・・。」
「皆だんまりですね。あれの前では皆饒舌だったのに。
どうしましょうかね。」
「ワイプ様?カプの友人です、処分はやめてください。」
「あなた、甘いですね。
仕方がないですね。モウにも知れていることでしょうし。
ひとつずつ片付けていきましょう。
どうぞ?ツイミに領主の話をするのでしょう?」
「・・・・。」


かなり沈黙があってから話始める。
マトグラーサ、執行部?ラート?
わたしも記憶にないな。


「マトグ・・・、ラートだ。
ご自身の出自は当然ご存じのはずだ。
だから、ナソニールの実質運営者と言われていても、
元領主、領主兄弟からも反発は出ていない。
いい様に使われていたんだろ?
それが皆いなくなったんだ。
本来の肩書になるだけだ。
ナソニール領主とな。
領主の子息として生まれたんだ、その義務はある。
名乗り出てほしい。」
「ごもっともなお話。
しかし、わたしは何もかもの権利を成人前に放棄している。
その時石の誓いもしています。
決して領主にならないとね。だからなりたくないというのではなく、
なれないんですよ。」
「!」
「それ、話してもいいんですか?」
「彼は、カップの友人ですから。はっきり諦めてほしいのでね。」
「その時の契約石以上の物を出してくれば?」
「ふふ。それが出てくればお願いします。
カップもあきらめるでしょう?」
「わかりました。で?どうします?」
 「しかし!領民は?ナソニールの製鉄技術は?
競売になればマトグラーサは買う!全て!
ナソニールはマトグラーサの属国となり、銃生産だけになるんだぞ?
それで領民が潤えばいいが、属国だ。
安い単価で作らせ、高い税金を取る。
資産院としてもどうすることも出来ないんだぞ!!」
「それね。
ナソニールの腕に自信がある職人達はそのことを先に察して皆出ていってますよ?
ルカリアか、スパイルに。
ほとんどすべてですね。」
「本当か!」
「遅い情報ですよ?知らなかった?
伝えてなかったということでしょうか?
あなた?マトグラーサでなにをしてたんです?
ああ、時間がないですね。ツイミ?登院の準備を。
わたしも行きます。」
「わかりました。彼らは?」
「天文院の方、えーと、フーサカ殿とラート殿の清算手続きをしないと。
買い物袋はあとでわたしますよ。それを振り回されたら、
そちらに気が行ってします。守れないですから。」
「すぐに準備します。」



今日は少し明るい色を着ていこう。




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