いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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月が沈んで半分の半分。
感覚的には始業時間前?

それくらいにあの2人はしれっと起きてきた。

軽く食べるものを用意して今日の予定を打合せ。
朝食会議という奴か?


「カップは故郷に戻った。」
「それは、昨日の?
俺たちは完全に寝入っていて知らないんですが、
どうなったんですか?」


気絶させられたってことに疑問を持って質問することもない。

ドーガーたちに気絶させられて、そのまま寝入ったということらしい。
なんでそんな嘘を言うのだろうか?

自分たちが盗み見していたことを気付かれないとでも思っているのか?
こちらの出方を探っているのか?
いや、カップ君のことは知らないか。



なるほど、嘘は言っていないということだな。


「カップを引き抜きと言うより、コットワッツのことが知りたかったようだな。
コットワッツはいいも悪いも注目されている。
聞かれるままに、コットワッツの話と、故郷の話をしたようだ。
里心でもでたのだろうな、結婚もきまったこともあって、
故郷に報告をしに戻った。
早馬を借りたので、滞在中には戻るだろう。」
「それでルグさんが?」
「そうだ。」
「そ、その、セサミナ様が呼寄せたと?」
「ん?そうだ。領主の力の一つだな。
だれでも呼寄せができるということはないぞ?
お互いの信頼関係が重要なのだろうな。」
「スビヤンさんは?」
「ああ。あれはわたしに忠誠を、心からの忠誠心はある。
だが、本人が頑なに拒否しているからな。
ほら、高いところがダメとか、暗闇がダメとかそういうものだろうな。
傍付きだからできる、忠誠心があるからできるということでもない。
口外するなよ?王都も把握はしているが、詳しくは知らんはずだ。
コットワッツ内でも知っているものは傍付きとお前たちだけだからな。」
「カップにも呼寄せができるのですか?」
「ああ、確かに傍付きになったが、今はダメだ。」
「今?」
「そうだ。浮かれすぎてる。それもあるから、故郷に戻ったんだよ。
母君に報告もすれば、落ち着くだろう?」
「「ああ!」」
「ルグに来てもらったからな。
逆に忙しくなる。事務仕事をここでするからな。
お前たちも傍付きがどういったものかよくわかるだろう。」
「「・・・・。」」
「どうした?」
「あの!カップが故郷に戻ったのはいわば、休暇のようなものでしょ?
俺たちもここで休暇が欲しい!」
「コットワッツから出て、野盗と蹴散らして、王都まで来ました。
その褒美としてここで、休暇をください!」
「なるほど。それもそうだな。
ルグもいるしな。護衛もいるからかまわないかな?
モウ?どう思う?」
「いいんじゃないですか?
わたしも休暇が欲しいな。
ドーガーを借りてもいいですか?」
「え?モウ様?何用ですか?」

『ん?胸に手を中て考えろ。
許しはしたが忘れはしないということだ。
分かるな?』

ここは赤い塊の声で威嚇する。

「は、はい!」
「はははは!いいでしょう。マティスは?
なにかあるか?」
「私も休暇が欲しいな。」
 「「え?なんで?」」

マティスがそんなことを言うなんて。
驚きで、セサミンと2人聞き返してしまった。

「ん?愛しい人はドーガーとする用事だろ?
その間、少し料理を仕込んでおきたい。
材料調達もしたいからな。」
「そちらですか。
そうなると皆、休暇ということだな。
が、月が昇る前までだ。それまで自由に。
2人は外に出るのか?だったら、少しリングを渡しておこうか。
ここの物価はコットワッツの10倍だと思えばいい。
臨時手当だ。」

2人に200リングほどだろうか?
袋に入れて渡している。
臨時手当と言うより餞別になるんじゃないのかな?



「何度も言うが、コットワッツの従者として
いろんな誘いがあるかもしれない。
それは自分で判断してほしい。
相談はいつでもいいからな。
そして、コットワッツに少しでも悪意があるものは、この敷地には入れん。
なにかあったら、逃げてこい。
悪意があれば入れないから。」
「ああ、セサミナ様?それちょっと違うようですね。
悪意があってもこちらが対応できれば入れるようです。」

シクロスちゃんが入れたのはそういうことだ。

「ん?では、対応できれば、だれでも入ってくる?」
「そうなりますね。
わたしか、マティスがいれば、ほぼ皆入ってこれるでしょう。
セサミナ様だけだと、力押しの輩は入ってこれないですが、
頭脳戦ではほぼ入ってくるのでは?」
「そうなるのか。」
「油断だけはしないでください。」
「あれ関係は?」
「勝手には来ないですね。来るなら正式にでしょうし、その場合は
わたしたちは何もできません。逆にわたしに用事で、
こっちに直接来ることはないです。
そんなことをすれば、どうなるかあれは理解しているから。」
「わかりました。
なんにせよ、あからさまにお前たちに何かしようということはないだろう。
ここは王都だからな。その辺は問題ない。
が、お前たちが少しでも同意すれば、助けようがない。
言葉巧みに騙そうとするかもしれない。
それだけは気を付けろ。
カップにしたように話がしたい、話を聞きたいというのなら、
ここに連れてこい。それを向こうが嫌がったら、
そんな奴の話を聞く必要はない。
いいな?」
「「・・・はい。」」


2人はリングが入った袋をもらうと、さっそく身支度をして出ていった。
持ってきた荷物を全てを持って。


見送りはしておこうか。


「なんですか?」
「ん?見送りだ。」

2人にそういうと鼻で笑われた。


「不思議か?うちの故郷の風習なんだ。
わたしの一族は、赤い塊と言うのだが、まじないごとに長けているんだ。
3日殺し、望郷の呪い、知ってるだろ?
そういう物騒なものだけでなく、
常に行なっているものなんだよ。挨拶とかな。」
「?それもまじないなんですか?」
「そうだろ?行ってらっしゃいって言う言葉の後には、
気を付けて、無事にお戻りくださいって思って言っている。
それは相手のことを思ってのまじないだ。
だから、出かける人には声をかける。
行ってらっしゃいってな。」
「・・・・。」
「お前たちは言わないよ?だって、戻ってこないだろ?」
「「!」」
「お前たちがコットワッツを見限ったんだ。
それを引き留めることはしない。余計なお世話だろ?
が、セサミナ様は常に逃げ道を作ってくれている。
何かあれば、相談しろ、何かあれば、ここに逃げてこいってな。
領主で、お前たちはまだ、領民だからだ。
だが、わたしは違う。護衛だ。
セサミナ様に降りかかる煩わしいことは事前に排除したい。」



「「あはははははは!!!!!」」



2人は大爆笑だ。
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