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827:モモンガ
しおりを挟むできた。
が、問題大ありだ。
バラバラになって降ってくる。
ニックさんも最初はそうだったんだけど、
すぐにかたまりとして手元に来た。
オーロラは安定しない。
袋に入れても、袋と中身。
バラバラになる。
どんな風にこっちに来るか想像するんだと教えても、
いまいち理解できていない。
物の名前単位でバラバラになる。
空中に舞うポテチ。
これがなかなか良い。
ふわふわと浮いて、ゆっくり落ちてくる。
落ちてくるのを口を開けて食べようとしたら、
ルグの恐ろしい視線で止められた。
下に落ちる前にルグが一つ、一つ回収するので、
糸が付いていて、それを引っ張って回収するというイメージで
呼寄せればいいよと教えた。
ああ!とすぐに習得してしまう。
さすがルグだ。
移動のチャレンジはかなり躊躇した。
もしかして、体が本当にバラバラになるかもしれないから。
先に移動で傷つくことはないと言霊を使う。
いいよね?
やはり問題ありだった。
部屋の隅から隅へ。
空中で浮いてしまう。
そしてバラバラ。
服と体がだ。
レディと同じだ。
ん?
もしかして、本当に自分で移動できたのかな?
じゃ、あの4隅にあった砂漠石はなんだったんだ?
移動の後なくなったのは間違いない。
まさか体がバラバラにならないため?
そうなるかもって思ったってこと?
知っていたってこと?
実験した?
・・・・・。
師匠に報告だな。
浮いているオーロラを見上げる。
・・・・・。
もっと食べないと!
そのことを考えていたが、
ルグのまた恐ろしい視線で、
そこは見るなと止められた。
いやいや、見てないよ?
いや、見てるか。
こどもだなーって。
なんていうの?小さい?
そのままで小さい。
あかちゃんのではない。
違うんだ。
が、これはこれで喜んでいる。
浮ける。短時間だが。
「その爪の先ほどに移動しようと思ってみ?
半永久的に浮ける。
そうなると、そうなんだって思うからずっと浮ける。
ほら。」
浮いて見せた。
「「おおおおお!!!!!」」
大絶賛だ。
ルグもできてしまった。
2人とも浮いている状態、に近い。
本当に小刻みに移動していたが、
浮けるとわかってしまえば安定している。
しかし、オーロラの移動と呼び寄せはやはり不安定。
マッパはないよね。
浮くたびにルグが隠している。
だめだ、笑いそう。
「なんでだ?
なにかが引っ掛かってるんだよね。
それがなにか?
欲がないのか?
これはわたしのもの!
向こうに行きたい!絶対にだ!!
この感覚が希薄なのかな?
んー?」
彼は大金持ちになりたいと思っていた。
なんでかは聞いていない。
聞いたところでなにもできないから。
いや、違う。しないから。
子供特有の漠然としたものか?
何か欲しいものがあったのかな?
大金持ちになればなんでもできるとおもったとか?
やはり聞いておこうか。
「聞いてもいい?
お金、まー、騙されていたとしても、
結構貯めていたでしょ?
それね、一日一銀貨。
子供の日当って、一日2銅貨だって聞いたの。
仕事内容はおいといて、5倍なんだ。
さっき見習いは安いっていうのは、見習いだからだよ?
でね、子供にしては結構貯めてることになる。
何か欲しいものあったの?」
「・・・・。」
いつもオーロラは答えていいかどうかをよく考える。
ここら辺が、わたしやドーガーと違うところ。
即答するのはよろしくないのだ。
「内緒?」
「・・・金持ちになったら、腹いっぱい食べて、
やわらかい服を着て、あたたかい場所で寝れる。
そう聞いてた。
それで、たくさん話ができるって。」
「そうか。
こっち来てからは、ご飯はちょっとずつ盗って来たり、
服も?で、5日に一度か?」
「うん。」
「モウ様?」
「ああ、これ、読んで。
そいつのところで5回に一度ご飯食べてたって。
5回、一日一度の依頼を聞きに行くときってことね。」
ルグはそれを読んでまた震えていた。
「ああ、それはわたしが処理する。いいね?」
「わたしが!」
「ダメだ。セサミナの傍付き筆頭がする仕事じゃないよ?個人でもだ。
わたしがするから。結果は報告するよ?」
「・・・・わかりました。」
「オーロラ?それで、それでもらったお金ね?
使ったりはしなかったの?」
「しない。使っちゃダメだろ?
袋にいっぱいになったら金持ちなんだ!
まずは、金持ちにならないと!ずっとがまんしてたよ。」
「そっか。んー。ちょっとまってね?」
いくらまでっていう目標があって、
それまでは使わない!という考えは正解だけど、
これはちょっとね。
天引き方式で貯めなさい。
物欲を刺激すればいいかな?
子供が経験するお店屋さんごっこ?
土下座級のお願いだ。
謝っているわけではない。
五体投地に近いか。
かしこみかしこみ
畏怖と感謝を
まさしく魔法だ。
ビビディ・バビディ・ブー
サラダとメンチカツのことではないと知ったのは
かなり大人になってからだ。
「お客様!モウモウ商店の展示即売会にようこそ!!
さぁ!手に取って、いいな!欲しいなとお思いならば、
どうぞ、書いてある金額をお支払いください。
値引き交渉もしますよ?」
2人とも茫然とわたしの趣味満載の店づくりを見ていた。
(モウ様?)
(お店屋さんごっこ。しらんでしょ?欲しがらないと!)
(ああ!)
「オーロラ?
買い物をしよう。ほら、給金も渡す。
使っていいんだぞ?」
「使うの?いいの?」
「全部はダメだよ?ひと月分だからね。
で、家にもお金を入れる。これは常識。
そこらへんはお父さんとお母さんに聞きなさい。」
「「え?」」
「え?そういうのないの?
家賃とか食費とか?
同じ家に住んでいるんだから、みなで出し合うの。
もちろん、一家の大黒柱、この場合ルグが一番多く負担するんだけど?」
「ダイコクバシラ?」
「んー、こう、家でいちばん太い柱?
それで屋根とか支えている。それがないと家が崩れるっての。
石壁でもなんか支えてるのあるでしょ?それ。
それを家族では、一番の稼ぎ頭であり、家を支えてるって意味なんだけど。
だからルグね。
奥さんは縁の下の力持ちとか?
家の土台を支えてるってね。
いや、そんな話はいいよ。
子供が家にお金を入れるってことないの?」
「ないですね。」
「そうなんだ。へー。」
「蓄えるようにはいいますが。」
「ああ!それそれ!
うちっとこは、わたしが稼ぎ頭だったからね。
同僚も家に入れてるって言ってたけど、
結婚したときそれをもらったって言ってたな。
ま、裕福な家だったんだろうね。
それが普通だって言われたけど、
それぞれで家庭の事情が違うってことが、
わからない奴だったな。
あー、話がそれる!
さ、さ!お客様?どうぞ?
まずは、そのお金をいれるお財布、かばんとか?
モクヘビの革シリーズが最新モデルですよ?
それにお揃いの靴!下着類もありますよ?」
「ルグ?」
「モウモウ商会の品はいい商品だぞ?
わたしもいいですか?」
「もちろん!奥方様に人気の商品もありますよ?
甘味も!日持ちする商品も!
さ!」
1から100まで数えられるが、計算ができない。
それを簡単に教えながら、お買い物。
ごっこではない。
悪いが商売をさせてもらった。
なかなかにいいんじゃないの?
ここで何が欲しかったかというと、
電卓だ。
良し!作ろう!
オーロラはかなり興奮していた。
服も手に取って選ぶというのは初めてだそうだ。
いままで、ばれないように、こっそりパクッテたから。
いい服ならばれるから、数のあるものを。
だからサイのお肉を希望した。
パクったらばれるから。
ちょっと余所行き仕様ですべてお買い上げ。
ルグもモクヘビの革シリーズの小物を買ってくれた。
甘味はクッキーと焼き菓子。
日持ちするものは、
魚のほぐし身のオイル漬け、
スーリムの佃煮。
密封容器に入れてるので日持ちはするだろう。
いいね!
「ちょこは?」
「それは新年から発売だよ?それまで待ってね?
そうだ!
こういうのもあるよ?」
忍法ムササビで作った服だ。
モモンガスーツ。
熊の毛皮をベースに軽量化を図るため、
豚の毛皮、魚の毛皮を部分的に使っている。
豚はウサギで、魚はトドだが。
なんせ獣の毛皮。
裏地は絹だ。
ムササビとモモンガはどう違うのだろうか?
なんせかわいいということ。
フードに耳をつけ、しっぽもつけた。
砂漠石の芯入りで動く。
おなかに大きなポッケ!
うん、かわいい!
これで滑空できるかというと、
かなり強い風が必要だし、わたしたち二人はそもそも飛べる。
高いところから降りていくときに役に立つか?
パラシュート的に?
飛膜には砂漠石を使っているが、
力学的にもっと大きなものではないといけないはずだ。
が、浮けるんだから、移動の応用?
いずれ飛べるだろう。
「・・・それはどうなんでしょうか?」
・・・・。
ルグは大人だ。
そして常識会の会長だ。
ドーガーなら大絶賛なのに!
「・・・・ほしい。」
そうなのだ。
アニマル状態になったセサミンとドーガーを、
笑わずに驚きの顔で見てたから、
食い付くと思ったよ!
「そうでしょ?お客様!
滑空ができるかは鍛錬次第!
一式、3リング!いかがです?」
「や、安くなる?」
覚えた値引き交渉をするようだ。
だが、そんなおどおどしたたら、逆に吹っ掛けられるぞ?
「そうですね~。これ、一点ものなんですよ。
これの名前はモモンガといいます!
ここにしかない。他にもない。
なので、今なら、3リングなんですが、明日にでも、
いえ、すぐにでも、5リングになってしまうような商品なんです!」
「・・・オーロラ?これは少し高い。
それに普段着れるものでもない。
もうすこし、稼いでからにすればいい。」
「そうなりますと、10リングになってるかも?」
「モウ様!!」
「商売とはそういうものなんだよ?
それに普段から着てもおかしくない!
部屋着でもいいよ?
どこで寝転んでも、ほら!毛布をかぶっているみたい!
空気の層があって、あったか保温!
今からの季節にピッタリ!」
夏は暑いだろうけど。
それは言わない。
「ルグ?ダメか?」
「どうしても欲しいなら構わないよ。
お前の稼いだ金だ。好きに使うと言い。」
「うん!」
「あーーー!!!お客様残念!!
いま!タイムセールが終わりました!
ただいまの金額5リング!」
「「え?」」
「早く決めないから値が上がっちゃった!残念!
5リングです!」
「モウ様!」
「うふふふふ。それでもほしい?」
オーロラはものすごく考えている。
あー、かわいい!
「いまだとね、あの服のポッケにチョコが入ってる。
今だけ限定だよ?」
「ちょこ!!ほしい!!」
「買う?」
「買う!!」
「お買い上げありがとうございます!
ただ、この商品、あ!向こうに行っちゃった!
呼寄せでこちらに。
そうしていただきますと、3リングで結構ですよ?
わたしが向こうに行く手間がなくなりましたから。
それに、ポッケに入っているチョコ。
バラバラになると、床に落ちちゃう。
地面に落ちたものは食べちゃダメだよ?
これはもったいないね。
買ってくれるなら、
あれは、オーロラのものだ。
大丈夫。呼寄せれるよ?」
ものすごく真剣に呼び寄せた。
『ももんが!来い!』
ほらできた。
「来た!やった!!ありがとう!俺のだ!はい!3リング?3枚!」
「3リングね。はい、確かに。」
「やわらかい!あ!ちょこ!これ?たべてもいい?」
「いいよー。」
ポッケのなかみは、小さな油紙の袋に入れた、
チョコクリスピー。
サクサクがおいしい。
「これは、こう食べる。
行儀が悪いことはない。こういうものだから!」
口を開けてがばーっと。
一口サイズだから大丈夫。
ルグにも1袋。
これは、オーロラがあげていた。
ボリボリ!
「溶けて固まっても、そのまま食べればいい。
大きな塊もうまい。
温かい乳に溶かしてもいい。
おいしいよ?」
「乳!大きくなる?」
「なるよ?肉と乳とチーズ。で、お野菜も。
よく噛んで食べなさい。」
自分のものという意識が必要。
大人は狡いから、誰のものでもなくて、
必要だから仕方がないよね?ってなる。
子供は甘いお菓子いっぱい来い!ってなっても、
犯罪だからダメ、わたしの常識、いわば故郷の当たり前が入る。
オーロラは自分のものっていう感覚が希薄だったからだ。
例の銀貨がいっぱいのベストは、
銀貨と紙類は来たが、ベストは来なかった。
移動は自分で買った服のみ一緒に移動ができた。
モモンガスーツで浮いているのがかわいい!!
滑空もできてる!!
忍者だよ!
走るの早いし、飛ぶのも高い!!
「服と下着類は自分で買いなさい。
とりあえずそれで、ターミネーター登場にならないから。」
「?」
「あるのよ、やっぱり移動では体一つだけっていうのが。
だからべつに不思議でも何でもない。
そうなったとしても、モモンガスーツを呼び寄せればいい。
でもね、さっき着ていた服は、それはコットワッツ支給だから。
いうなれば、自分で買ったものだ。」
「そうなの?」
「そうでしょ?支給品も報酬の一部だ。」
ほら、納得すれば大丈夫。
フルヌードでの移動はなくなった。
「どこにでも行ける?」
「その場所に自分がいるってことを想像できればね。
知らない場所には行けないよ?」
「そうか。」
「まずね、シクロストのいる場所やオオイのいる場所を、
正確に思い描ける?」
「もちろん。」
「行く?」
「どうして?」
え?行かないの?
ちょっと驚いた。
「行ってどうする?
シクロストに会いたいとも思わない。
オオイも、今はいい。」
「そうか。あのね、行ってもいいし、そこで何してもいい。」
「モウ様!」
「ん?わかってるよ。
だけどね、すでに、オーロラはコットワッツ従者で、ルグの家族だ。
コットワッツに迷惑を掛けてはいけないし、ルグたちを悲しませてはいけない。
それはわかるよね?」
「うん。モウも悲しませないよ?」
「ほんと?うれしいな。
ああ、優先は家族だよ?カルーチさん、悲しませたくないでしょ?」
「うん!モウみたいに柔らかかった!」
「そう!抱きしめてくれたの?いいよねー!」
「ローチはな?ドーガより強いっていったら、なんだろ?
なんか、こう、初めて見る表情で見たんだ。
ちょっとうれしかった。」
「ああ!尊敬のまなざし?
すごい!って表情かな?」
「あ!そうかな?うん、そうだと思う。
で、俺は兄だから、弟のお前を守るよって言ったんだ。」
「それで?それで?」
「そしたら、顔真っ赤にして、抱き付いてきた。
俺のことを兄上って!
俺より小さいんだ。守らないとって思ったんだ!」
「そっかー。」
「それで、たくさん話した。カルーチも一緒に!
もっと話したい!
今度、俺の知っていること、教えようとおもうんだ。
報酬無しで!」
「あははははは!それって、人の殺し方とか?」
「うん。」
「それは、まだ早いな。どうしてかわかる?」
「?ローチが子供だから?」
「違うよ?」
「?」
「人を殺めること、傷つけることは悪いことなんだ。」
「・・・・それが俺の仕事だ。」
「そう。わたしの仕事、護衛も傍付きも、それは仕事ですることだ。
じゃ、ローチは?仕事じゃないでしょ?
仕事をするようになって、教えてほしいって言われれば、
教えてもいい。
でも、仕事以外で、人を傷つけることは悪いことなんだ。
悪いことって決めたのは集団生活をしていくうえで、
人が決めた約束事なんだ。
それも覚えていこう。」
「そうかー!集団生活か!」
「ここに、世間の常識とか、そういうのが入る。
難しいんよ?これは教えてもらうしかない!
ローチにも教えてもらえばいい。
そこに兄とか、弟とかはないから!がんばろうね?」
「そうだな!がんばろう!!」
なぜ人を傷つけてはいけないか?
人が決めた集団生活をする上のルールだ。
わたしはそう思っている。
(モウ様)
(わたしから言えることはこれだけ。あとは任せたよ?)
(はい、ありがとうございます)
移動と空中浮遊。
これは問題ない。
モモンガスーツを着て浮いているのがかわいい。
呼寄せは自分のもの限定というのは大きな意味合いで同じだが、
オーロラは自分で買ったものという至極当然のことが条件となっている。
とりあえず、問題はないだろう。
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