いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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850:紐医者

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セサミンの着替えが終わり、
さらにご機嫌なマティスと合流。

とりあえず、にやりと笑っておいた。
ものすごく焦っているのが分かるが、
いま、何を言っても自分に不利なこともわかっているようだ。

ダメ押しにもう一度笑っておこう。

クククク・・・・。

お互いが緑目になってから、
2人の為のなんていうのだろう?
自由度が拡がったような気がする。

マティスはわたしが自分以外のものに対して、
緑目になることを恐れていた。
それが無くなったのだ。

女将さんに話を聞いてもらえれば、
恋の駆け引き、恋愛の極意等に対して
最強になるだろう。

緑目夫婦の死角なし!!


─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘

逃げたことは失敗だったのか?
恐ろしい笑顔を向けられた。

いや、大丈夫だ。
愛しい人が楽しんでいるのだから。
ということは、わたしも楽しいはずだ。

2人で気配を消して、広間に進む。

そしてシャシンを見せられた。

気配を消しているときは、
余程、意識を集中していないと、なにをしていても
たいていは気付かない。
が、音は聞こえるので頭の中での会話だ。

(これ、ルグ)
(え?ルグ?え?)
(で、うちの3人)
(すごいな!)
(マティスにもするからね?)
(・・・・)
(拒否権はないよ?)
(・・・・承知)
(クククク。わたしは男装するから。男の姿ね)
(!!いいな!!)

”うちの”というのが気に入らないが、あの3人だ。
仕方がないだろう。
男の姿?
ほら!
やっぱり楽しい!!




─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘

広間に入ると、
なぜか疲れが出ているドーガーと、
皆がいつもの恰好をして並んでいた。
なんだ、がっかり。
でも、写真撮影済みなので問題ないし、
アバサたちは喜んでいたからね。
それはルグもだ。

広間には、2人のおじさん。
1人は医家でドーガーの父君を診てくれた方だ。
そしてもう一人は医家になりたいという男、
傍から見れば大量殺人者らしい。
藪医者、雀医者、土手医者、筍医者、紐医者。
彼は本当に紐なのか?

セサミンは領主らしく、
医家に礼状を渡した。

「感謝しております。
スダウト家ピーナム殿にもくれぐれもよろしくとお伝えください。
アリン殿のことは、ま、なにも言いません。
が、こうやってピーナム殿と善き関係が築ける切っ掛けを
作ってくれたことには感謝しましょう。それだけです。
本当に感謝すべきはピーナム殿ですがね。
それで、その後どうなりましたか?」

べメールさんが話すには、
まず、都下の広場で囲いを設置。
おおきなテントだな。
そして、今回のことを演説。
だれが?その、ピーナムとやらが?
と思ったが違うようだ。
肝心な時に内弁慶になる、そのスダウト家の人。
メディングのようにノリノリになることはなかったようだ。




─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘

「ここにいらっしゃるスダウト家ピーナム様のご提案により、
これから都下、下町の方々、分け隔てなく、
今現時点での我々の医方法で、みなを診ようと思う。
もちろん、金はいらない!
すべて、ピーナム様が負担してくれる!
ただし、20人のみだ!
順番に!1人ずつ!!
並んで!こちらの指示に従えないのなら、他の人に迷惑だ!
帰ってくれ!!」

─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘


20人だけ?
それは喧嘩になっただろうな。
どこが病人なんだという人が殺到しただろう。
ほんとうに診てほしかった人、診なければいけない人は
診れなかったのでは?
これは藪医者?藪の下の土手医者なんじゃないの?


セサミンも苦笑いだ。

「それは、そう、大変でしたね。
みな、病気で?けがで?」
「いえ、結果的には比較的に元気な方が列に並んでしまって。
少し酒を控えろとか、肉を食べろとかの助言のみで。
胸病を患っているものには薬草を。
それで、あっという間に20人でした。」

ドーガーの父君と同じ病か?
なんだろうな。
話を聞く限りは肺炎?結核?喘息?
たぶん、どれも違うんだろうな。
この知識は全くないからわからん。


「でしょうね。
タレンテ家は逃げたので評価はあがりようがないですが、
スダウト家は?手ごたえはありましたか?」


「あるわけないだろ!!」
紐医者が怒鳴った。

それには同意だ。

「薬草?眠草だろ?
ただ眠るだけではないか!治るわけがない!」
「それで、咳が止まり眠れるんだぞ?
眠ることができないというのは一番つらいんだ!」
「それで食事もできず死ぬ方がよほど辛いだろうが!!」
「だったらどうするんだ?お前が殺した患者のように胸を開くのか?
その傷と痛みで死んでいく!その方がつらいだろうが!!」

(姉さん?どうします?
わたしは、どちらもいらないと判断しますが?)
(はははは!その判断ははやいな。
もう少し聞いてからの方がいいよ?
3日、いや、5日後にカップ君がコットワッツに戻るってことにして、
一緒に来るかって聞いみよう。2人ともね)

「あの?ここでその議論はおやめください。
わたしたちはすぐにでもここを出る予定なのです。
護衛が負傷としたので、ルポイドに治療の手立てを聞きに。
わたしたちは、コットワッツに戻ります。」
「わたしも連れて行ってくれ!!」
「それ、ずっとおっしゃっていたようですね?」
「そ、そうだ。あの女性は連れて行ってくれると言った!」
「報告は全て聞いています。
彼女はそんなことは言っていない!
そのような嘘は二度と言わないように!!」

お!セサミンの圧だ。
いいね。

「ルポイドには強行になるので、連れていけません。
うちの護衛のことを外部に教えることもできない。
ルポイドには貸しがあるのでね。外部に漏らすこともないはず。
が、あなたの話はもう少し聞きたい。
今、外に出ている従者がいるのですが、
彼が戻るまで待っていることはできない。
追って帰ってくるようにと連絡はしますから、
その彼と一緒にコットワッツに来てくれませんか?
招待しますよ?
タミトン殿のおそらく新しい医法のことで出資できるかもしれないですから。」
「ほ、本当か!!ぜひ!!」
「セサミナ殿!!
彼のやることはおかしんだ!
ほんとうに、何十人と死んでいる!!」
「そのことを含めてどういうことか知りたい。
それに、そんな罪を犯しているのなら、
とっくに強制労働者だ。それは?」
「最初に念書を書かせているからだ!死んでも文句はないという!」
「なるほど。最初の1人、2人はそれで免れたんでしょうが、
何十人となると、おかしな話ですよね?
助かった人もいるからでは?」
「そうだ!死んでしまった者もいるが助かった者もいる!」
「よく言う!その助かった連中はお前に感謝しているか?
誰もしていないだろう!別の病気になるからだ!!」
「なるほど。べメール殿?あなたもいらっしゃいませんか?
コットワッツに。あなたの話も聞きたい。
知識のない我々が聞いてもタミトン殿の話の問題点が分からない。
それにタミトン殿?
あなたの医法をべメール殿に詳しく説明したことはないでしょう?
いい機会だ。この際、あなたの知識を披露しては?」

「そんなことはしない!」「そんな話は聞きたくもない!!」

(しかたがないね。まずは紐だけでいい)
(紐?)
(医家の呼び名)
(?)
(かかったら死ぬ)
(?)
(あー、自死ってないのか。首を紐でしめたら死ぬでしょ?それ)
(!)


「わかりました。では、タミトン殿?
連絡先を。あとで、知らせます。
ドーガー?」


紐医者はうれしそうだ。
なにをするにもお金はいるからね。
それをいま話題のコットワッツ領主セサミナが出すと言っている。
これはうれしいはず。
ドーガーに連絡方法を話している。
それは住所なのか?
角のタバコ屋さんに言えばわかる、という感じだ。
それを睨みつける土手医者。

(ついてくるだろうね)
(でしょうね)
(スダウト家の彼も来るんじゃない?)
(あー、それありますね)
(あのね?)
(はい)
(新婚限定バスツアーと買い物ツアーっていうの考えてるの)
(?)

ざっくり説明したが、後で聞くと言われた。
それもそうだ。
プレゼンの用意をしないと。
ん!着物の着付けとか、そういうのもいいよね。
この場合ドレスとか、他の国の衣裳とか。
ジャンクな食べ物に弱い様に、みなが変身願望が強いから!
こっそり男が女に、女が男にっていうのもいいかも!!
で、写真にとって、それを絵描き屋さんに写してもらう!!
いい!!ものすごくいい!!

ククククク・・・・。

─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘

(に、兄さん?)
(どうした?)
(あの、姉さんの笑い声だけが聞こえて怖いんですが?)
(ああ、商売のことだろ?)
(それだけ?)
(お前が女の姿になるように、愛しい人も男の姿になるとか?それもだろ)
(え?なにそれ!)


ああ、また楽しんでいる!
引き締めないと!!
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