いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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852:事前検証

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ルグの怒鳴り声が響く。
出国の手続きを顔見知りの人と済ませた後だ。

最初のお傍付き見習いは退職。
あらたに見習いとなった2人。
いっしょにやってきた、ティスというのは?
と聞かれ、マティスことだと言えばそれで納得した。
あとは、大丈夫なのかと聞かれ、
ま、なんとかな、と答えた。
馬車の中を覗き込まれたが、
それは役目上あたりまえだ。
震えているわたし。顔色は当然悪い。
マティスもわたしに抱き付いている。
このまま外に出れるなと、思ったのに、
お約束のストップだ。

別の門番が走ってやってきた。

王族の方々が、それぞれにセサミナ殿と懇談会を開きたいという。
いや、それは後日ということでと言っているのに、
今すぐにと来た。

「領主が領国に戻ることは、
例え、王といえども阻止することはできない!!
当然、王族でも貴族でもだ!!」

門番も頑張って応戦。
顔見知りの人は、
少し後ろの方から心配そうに見ている。

「しかし!
王族三家、タレント、スダウト、イボンの方々がお呼びなのです!」
「だれがだれを?」
「ですから!タレント家、スダウト家、イボン家の方々、それぞれに!!
領主セサミナ殿を!!」
「だから、王族三家、タレント家、スダウト家、イボン家のそれぞれ、だれ?」
「・・・・・。」
「・・・・此度、領主セサミナ様が護衛モウが負傷。
同じく護衛マティスにモウの治療を優先するようにと厳命。
そうなると、お恥ずかしい話、我らお傍付きだけの守りでは、
臨時会合のことを考えると不安要素しかない!
なので、自領国に戻るだけ!!
なにか話があるというのなら、書面で!!」

そう言われれば、門番は引くしかない。
が、1人が前に出てきた。

「は!本当に恥ずかしい話だな!
己の主を守るのに不安しかないと言い切るのなら、
道中はどうするんだ?
ここ、王都にいるほうが余程安全だろう?
その護衛2人が、ルポイドに行くのなら戻ってくるまで待っておけばいい!!」



「名乗りを!!」
「イボン家ラスチック様が従者、クーヨーだ。
さ、名も名乗った。ラスチック様がお待ちだ。
館にいらしてください。」

名乗った!
嘘の名前は名乗れないはずなのに!!
ソヤがフランと名乗っても、
マティスがティスと名乗っても、
嘘ではない、そう名乗ることもあるのなら、
OKという考えだからだ。
だから、クーヨーはイボン家の従者に間違いがないということ。


あ、トビヘビだよね?
高速で離れる小さな気配がする。
あとの王族の従者たちは名前を出していいかどうか、
連絡し合っているのか?



時間がない。
わたしの顔色が戻ってしまう。


(でるよ!マティス!)
(愛しい人!任せてくれ!!)


片腕で抱きかかえながら
外に出るマティス。こっそり浮いてますよ。
わたしは、肩に顔を押し当て、肩で息をする。
まだ若干震えが残っている。

『コットワッツ領国、領主セサミナ様が護衛マティスだ!!
ここ最近の王族のセサミナ様に対する振舞いは目に余るものがある!
我らが万全な状況なら気にも留めないが、
残念ながら、誰かの画策で同じく護衛モウが負傷した。
彼女はわたしの唯一の伴侶で、私、緑目のマティスの対象!
そして我らが主、セサミナ様が腕を捧げるものだ!!
その治療に一時、セサミナ様の元を離れるだけだ。
護衛不在で、王族の方々と面会されるのは、
護衛として許可できない!!それだけだ。
クーヨー殿か?あなたの主にそう伝えて頂いて結構!
そして、道中のことにも心配無用!
セサミナ様?送ります。』

ここで、ルグの出番。

「マティス様!オーロラをお付けください!
オーロラ!!」
「はい!」

オーロラが大きな背負子を背負って下りてくる。
マティスは少し眉毛をあげる。
これも練習した。
鼻の孔を広げるんじゃないってば!!
薄目で見てしまった。

セサミンは奥で下を向いている。
表情を見せてはいけない。
ん、ルーたちはそれを心配そうにしているね。良しだ!
ドーガーは先程のショックが微妙に続いている。
なので、やたらシリアス顔だ。

「送る?」



送ろう、愛しい者たちを

大いなる流れ!
それは複雑に絡み合う無数の糸!
その流れに揺れる小さな箱舟!
それは我が守る愛しい者たち!
そして我が求めるのは
安全なる航海!
コットワッツ、領主館に行け!



この言葉はわたしが作りました。
あー、はずかしい!
我が守る愛しい者たちというのがポイント、その1。
無理矢理送ってほしいと言われても
愛していないから無理ってことにした。
そしてポイント、その2。
今回の大型移送にはなんとなーく、
キラキラ光る粉が舞って、
なんとなーく、消えていく。
実際は細かな砂漠石が馬車の残像を写しているだけ。
”送ろう”という言葉ですでにコットワッツに移動している。
この間に攻撃されても遅いのだ。
で、残像キラキラ。
これは実験検証済み。
マッパ事故、氷風呂事故は2度とごめんだ。
事前検証大事!絶対だ!!

『我らはルポイドに行く。
門番殿?あとの手続きはお願いしてもいいか?』
「も、もちろん!お任せください!」

『では』


と、いう流れで門外上空、魔法の絨毯に移動。
カップ君が先に乗って門前の偵察をしてもらっていたのだ。
わたしたちが、領国に戻る、護衛2人はルポイドに行くという話は、
皆が知る話で、何組かは
林の中で待機しているとか。
ご苦労なこってす。

「じゃ、カップ君?後お願いね。」
「わかりました!」

くるりと回転して、着地。
「いいな!かっこいいな!!」

オロちゃんはかっこいいものにあこがれる年頃みたいだ。
8歳だもんね。そんなお年頃だね。

「マティスもかっこよかった!!
あの光ってるの?キラキラっていうの?いいな!!」

これでご満悦マティスだ。

「そうだろ?ふふふふふ。では、ルポイドに行こうか?」

「「はい!!」」

顔色はまだ悪いが、
震えも止まり、絨毯ごとルポイド砂漠の入り口手前に移動した。



─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘

馬車は裏庭の一角に移動している。
セサミナ様の視線が痛い。


「ドーガー?」
「あれはどうしようもなかった!!しかし、反省しています!!」
「そうだな。あれは仕方がない。だが、いいな、あの言霊は。
ドーガーだけ?」
「モウ様の言霊、呪いは限定的です。
オーロラの時もそうですが、あの言葉をマティス様が言っても起きなかった。
すでにわたしのオーロラになっていたので。
素早く元の姿に戻る言葉ですよね?きゅーてぃードーガーは。
これ、わたしが言ってもならないですよ?」
「そうなるな。
きゅーてぃールグ?
きゅーてぃーセサミナ?もしくはセサミン?
こう言えば?
だいたい、きゅーてぃーってなんだ?」
「あの?」
「なんだ?アバサ?」
「おそらく、その言葉ではなく、最初の

しかしてその実体は!

が必要な言葉では?」
「そうなのか?」
「ええ。演技指導の時に話してくれましたよ?
オーロラに敵に寝返ったように見せかけて、
それがばれたときの演技指導で。
あるときは、なんとかで、また、ある時は何々。
しかしてその実体は!っていいながら、
正体をあかすんだって。
この時にすでに言霊が成立しているのでは?」
「なるほど!」
「アバサ!すごいな!!」
「モウ様の話は面白い。異国の話も楽しい。
わたしも移動、呼寄せを習得すればもっと楽しいだろうと想像しますが、
気配消しができない。
それが残念です。」
「そうか、そうだな。しかし、気配消しは鍛錬でできる。
モウ様もまずはそれからだとおっしゃっていた。
アバサ?ルー?本格的に頑張ってみるか?」
「「ぜひ!」」
「セサミナ様?よろしいですか?」
「樹石の研究、カレーの研究、それにくわえて鍛錬か。
頑張ってほしいが、無理はするな?」
「「はい!」」

(ドーガー?)
(はい?)
(おまえはすでに4回だ)
(?)
(銃の件、天井の件、重さという暴言、そして今回だ)
(あ!)
(どれだけ兄上と姉上に可愛がられているかを自覚しろ!そして精進しろ!!)
(はい!!)


アバサ殿とルー殿もすぐに力をつけるだろう。
オーロラに追いつくことももちろん、話を集める手段も確立しないと!
正に、日々精進!
頑張らねば!!

まずは医家のことだな。
ペリとフーネにも変装の手伝いをしてもらおう!
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