いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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854:気合せ

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馬車から下りるときはマティスが抱えてくれた。
ほんと、気分悪い。
だって、おじい様の香りがいい匂いだったんで、
こっそりクンカクンカしてたら、
マティスからのクレームが入ったからだ。
なので、浅い息、口呼吸。苦しい。
本格的に酔っている。吐きたい。
というか、馬車から降りたら、吐いた。

マティスが慌てて背中をさするが、
うぎゃー再び。

もう勘弁してください。
オロオロするうちの2人。

テルマがすぐに、部屋に案内してくれた。
館ではない。ちょっと小ぶりな屋敷。
しかし、調度品はなかなかに素敵である。
香水関連のお客様用かな?


今回はテルマの知り合いがやって来ただけということ。
だったら、テルマの家でいいのでは?
となるが、コットワッツ赤い塊のモウだからだ。
警戒されている。


長椅子に横たわり、やっとひと心地。
テルマが従者を外に出すと同時に、マティスが膜を張った。


「テルマ?
愛しい人の国の防音を施した。
扉の向こうで聞き耳を立てている連中には
内容はわからない。気の流れもだ。
愛しい人?」
「ごめん!もう一回、吐く!
トイレどこ?外?
あ、桶!!お、おげぇ!!」

あー、気持ち悪い!
なにも出ないけど、吐きたい。飲んだ水だけが出る。
マティスが背中をさすってくれる。
氷は冷凍庫にご帰還だ。

「あー、申し訳ない。
おじい様?ん?」

テルマとオーロラが対峙している。
オーロラが気をあげているのだが、
テルマは屁でもない。
あ、これは下品な表現だね。

マティスはお茶の用意を始めた。
お手伝いしなくっちゃ!

「お茶にしよう!」

わたしの声で、テルマがドンと床を踏み鳴らした。
それを合図にオーロラが離脱。
わたしのそばに。

「オーロラ?お疲れ様?
頑張った?」

ガイライに教えてもらった鍛錬の一種だったと思う。
メンチギリみたいな?気合せだったかな?

「・・・なにもできなかった。」
「ん?オーロラはそれでも頑張った?」
「え?う、うん。頑張った、よ?」
「そっか!えらいね!頑張ったね!」
「うん!」

オーロラは褒められて伸びるタイプだ。

「オーロラ?いい感じだったぞ?
もっと、腰を落として腹に力をいれればもっといい。」
「うん!」

アドバイスはマティスがしてくれる。

「はー、疲れた。
それで?どういうことだ?」
「おじい様?申し訳ない。
臨時会合で背中を撃たれたんですよ。
だから、背中を触られると声をあげる仕様で。
あたりはしなかったんですが、寝不足で倒れてしまって。
関わりたくないので、このまま撃たれたふりで、逃げようかと。
それで、エデト殿が赤い塊、曾祖父ですね、わたしの。
彼に治療してもらったと聞いてますので、
どうやって連絡とったのか、どうやって治療をしたのかを、
それを聞きに来たという設定です。
領主の護衛が私事で動けるのかというのは、
わたしもマティスも緑目で対象がお互いで、
セサミナ様から腕もらっているのがわたしなので、
セサミナ的立場だと、はよ治療してもらって来て!となるので、
それは問題ないです。
いまは、緑目に見えました?
緑目で問題ない人と緑目に気付いた人には緑目に見えます。
で、これが表向きの訪問理由なんですね。
ほんとの理由は、ザスとリリクの興奮剤と、
リリクの名の守りという風習について、
ちょっと聞きたいことがありまして。
これ、ここまでのことでなにか問題があれば、そう言ってください。
一番聞きたいことは、名の守りという風習のこと。
あたらしく入ってきたザスがわたし的に全面拒否の対象だということ。
どうしてそうなのか、
友人のテルマに先にはなしたかったってだけなんですよ。」
「・・・・・。先に茶をのんでもいいか?」
「ええ。もちろん。
オーロラも食べよう!
気を練るとおなかがすくからね。
コーヒーはわたしがいれるね。」

~どうしておなかがへるのかな?
~鍛錬するーとへるのかな?
~おさぼりしててもへるもんなーぁ

~おなかとせなかがくっつくぞ!


と歌いながらコーヒーを。
振り返れば、3人が痙攣を起していた。
これもか。

そして誰もしゃべらず、お茶会。
コーヒーとお茶請け、ロールケーキが
どんどんなくなる。
プリンパフェもでた。シュークリームも。
わたしもがっつり食べる。

「ああ、コットワッツの商品ももってきてますから、
良かったらお買い上げください。
カレーの元も有りますよ?」

長い沈黙。

「モウ?」
「はい。」
「名の守りのことを教える対価は?」
「なにを求めますか?」
「あの糸がほしい。」
「それから?」
「ドルガナ公が来る。会食に同席してほしい。」
「それから?」
「・・・・シモーネの話を聞いてやってほしい。」
「あー、それ、あっち方面?」
「そうだ。」
「ここにいる女官とかじゃだめなの?」
「おそらく。」
「産婆さんとかいるよね?そういう人は?」
「元首の妻がいまさら聞くことはできない。」
「そうか。うちの身内も同席してもいい?」
「なぜ?」
「わたしの知識が偏っているから。
この大陸にあったものに調整できるものがいたほうがいい。
でないと、マティスが言うところの羞恥心がおかしい仕様が、
彼女の標準になるから。」
「そ、それはそうだな。身内とは?」
「わたしの妹たち。」
「セサミナ殿の奥方だな?そうだな。お願いできるか?」
「都合のいい日を連絡してください。何日か候補をあげてね。
妹たちの都合も聞かないといけないから。」
「わかった。」
「あとは?」
「・・・・・。」
「どうぞ?」
「彼がほしい。」
「ふふ。オーロラってばモテモテだね。
彼が望めばいいけど、おそらくダメですね。
いま彼はコットワッツの従者です。
それにわたしの組織の団員でもある。
いわばわたしのものだ。あげることはできない。
それ以外では?」
「・・・・・。」
「疲れてますね?どっか旅行でも行く?
ピクニックでもいいよ?お弁当もって。
ピクニックって、お外で食べるご飯みたいなかんじね。
そしておもいっきり遊ぶ!」
「2人で?」
「マティスもいっしょだよ?」
「・・・・・。」
「ん?」
「2人がいい。」
「テルマ!!表に出ろ!!!」

マティスはプンスカと怒っているがその程度だ。
テルマは、マティスをちらりと見るだけで、
ため息をついた。

「マティス以外ならいい?」
「だれ?」
「うちの姪っ子たち。今度楽しいことしようって約束してるの。
それに付き合う形になるけど、それだとマティス抜きになるよ?」
「姪?2人?
・・・・それで。」
「以上?」
「ああ。」
「マティス?どうだろうか?」
「糸はある。
会食はなぜドルガナが出て来たかその話次第。
これはもちろん私も一緒に出る。
エデトの奥方と話をするのは、奥方たちにもそうだが、
セサミナにも許可を取れ。
私は妹たちが同席するならかまわない。
オーロラのことはもちろんダメだ。
ピクニックか。姪っ子たちと?
これもセサミナの許可を取れ。
弁当は期待しておけばいい。」

以外だった。
ピクニックの許可を出すなんて。
どこでばれたんだろう?お姫様ごっこをするって。


「糸は用意できます。
会食はいつ?」
「モウ次第だ。」
「向こうが指名した?
それとも人身御供?」
「なに?」
「なにかの矛先はわたしにいくようにしたい?生贄?」
「名指しだ。モウを呼べるかどうか試している。」
「それはいつきました?」
「3日前。」
「呼べなければ会食はなくていい、しなくていいってこと?」
「そうなる。」
「したいの?」
「しなければいけない。」
「なんで?」
「砂漠石の取引だ。」
「ん?ドルガナから買うの?」
「リリクの1/3の値段を提示してきた。」
「それはお買い得。」
「その条件にモウとの会食だ。」
「コットワッツか、ニバーセルに言えばいいのに。」
「そうなると、ルポイドは関係なくなる。
各国に話が行っているはず。
モウと会食したい、紹介してくれれば砂漠石は相場の1/3の値段だと。」

(マティス?)
(ワイプは知らない話だ。断れ)

「会食の話は無理だな。
これは、どの国、どの領国が依頼してきても断ろう。
ルポイド国、テルマ殿の依頼は断ったのだからと。
それでどうですか?」
「いや。是非に。」
「おかしくないか?
ほんとうに、この前の食事会であっただけの小娘に会いたいのなら、
それこそコットワッツにいえばいい。
ニバーセルでもだ。ま、わたしの耳に入る前にそんな話は断るだろうけど。
だから、わたしがおじい様と呼んでいるテルマに依頼してきた。
そこまではいい。
その条件に相場の1/3の値段で砂漠石を売る?
どれだけの量を?どれだけの期間?
1年分を1/3の価格?
それとも1年分の値段で3倍?
確認した?してない?
ドルガナの外砂漠でいまは石がでない。出たという話は、聞かない。
出ていても、そんな安値で売る必要もない。
わたしも相場の1/10の値段で売ろうか?
これ、一個だけ。」

小さな砂漠石を出した。
テルマは顔色が悪い。
詐欺だな。






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