859 / 869
859:繊細さ
しおりを挟む「マティス?降ろして?」
「まだいいだろう?」
「いや、着替えないといけないし。」
「あれか?ドーガーに教えたやつ?」
「ああ、それでいいか。ん!」
愛しい人は私から離れると同時に、
いつもの服に変わった。
顔に塗ったものもとれている。
「・・・・。」
「どうした?」
「やっぱり声出ししないとダメだよ。」
「そうか?」
「うん。んー、いまは緊急事態だからいいか!」
「ああ、そういうことだな。」
自分が納得できればいいんだ、愛しい人は。
「え?モウ?」
「早着替えですよ!さ、これらは、おじい様が責任をもって面倒見てね。
当方ではなにも致しません。いいですね?」
「わしもしない。」
「あ、そうなん?んー、べつにいいけど。ほんと何もしないよ?」
「かまわない。それで?ここは?」
「ウダーっていうとこ。ルンバの村!
あれ?ルンバがいないな。あ!トウモロコシ畑か!!
呼んでくるね。マティスは待ってて!
オーロラ!行くぞ!!」
「おう!」
─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘
オーロラと2人で走っていった。
追わないと!いや、先にテルマに念押しだな。
(オーロラ?頼むぞ?子供のふりもしなくていいからな!)
(わかってる!)
オーロラは本当にいいな!
「テルマ?」
「これはマティスが移動させたんだな?」
「そうだ。ここはピクトだ。」
「ピクト!の、ウダーか?」
「そうだ。知っているか?この山はいい鍛錬場なんだ。
その向こう、海と砂漠の間に私と愛しい人が管理する領地がある。」
「テルマ様!!どういうことですか!!」
「何もない!ここはどこですか!!」
2人が騒いでいる。
「テルマ?これはなんだ?」
「管理者だ。」
「?」
「ルポイドの管理者だ。」
「エデトではなく?」
「何もしないがな。管理者と呼ばれるものだ。」
「お前の国のことだ。関わり合いはしないが、
愛しい人を悲しませるな。
友人として、お前の元気がないから連れ出しただけだからな。」
「ありがたいな、友人というのは。」
「それを悲しませるな?」
「わかっている。」
─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘
ん?
ルンバが子供たちを家に帰してる?
もうお仕事終わりなの?
「おーい!!」
子供たちにお菓子あげたいから、
慌てて声をあげた。
「モウ、さんか!」
なんでさんづけなんだろ?
呼び捨ててでいいのに。
「ルンバ!ご無沙汰です!元気ですか?
で、わたしのこと、呼び捨てでお願いします。」
「いや、さん付けだ。俺の繊細さが際立つからな。
モウさんだ。マティスは、ま、マティスだな。」
「なんか、わたしだけが悪徳商人っぽくなるね。」
「それが狙いだな。」
「・・・ムカつく!」
「それで、なにを連れてきたんだ?」
「いや、ちょっと友達とその見張り?」
「見張りな。で?それは?こっちを威嚇してるんだが?」
「え?こりゃ!オーロラ!
この人はそんなに悪い人じゃないから!
ルンバ、自称20歳のムカつく村長だよ?」
「ひどい紹介の仕方だな。」
「そう?彼はオーロラ。コットワッツ領国、領主セサミナ様の
傍付き見習いだよ。筆頭ルグの息子だ。
ほら、挨拶を。」
「・・・・オーロラです。」
「ウダー村村長のシェジェ、シェジェフカルンバだ。」
「シェジェ、シェジェフカルンバっていうのでひとくくり?」
「そうだが?」
「長い名前だ。やっぱりルンバだね。」
「・・・・・。」
「・・・・・。」
気合せではないが、2人でけん制し合ってる?
「なに?」
「いや。それで?行商か?コーヒーの奴か?」
「ちょっと食料調達の旅?
また、山に入らしてもらおうと思って。
コーヒーの、カンターウォーマーはあるよ。」
「商売はしないのか?」
「マティスがすると思う。」
「お前は?」
「ちょっと、戻んないといけないの。」
「1人で?」
「うん。それで、子供たちにお土産はあるんだ。
それ、あげてもいい?」
「お前たちが来れば、なにかもらえると思ってしまうぞ?
毎回渡せるのか?」
「あー、そうか。そうだね。じゃ、ルンバに預けておくよ。
ご褒美っていうお菓子でもないけど、
甘いお菓子は疲れも取れるからね。
畑仕事頑張ってるからね。」
「それが仕事だからな。」
「ご褒美はいるよ?」
「それはお前たちが高値で買いあげてくれればいい。」
「ごもっともで。」
クッキーの詰め合わせと干しダルク、
飴玉セットを渡す。
クッキーは固めだが、結構日持ちはするものだ。
「山に入るのは今から?月が沈むぞ?野宿か?」
「うん。」
「入山料、1人30リングだ。」
「2人で30じゃなかったけ?」
「値上がりした。」
「あっそ。」
「爪靴は1つ15な。2つだから30。
合せて60リングだ。」
「・・・・。」
「なんだ?」
「爪靴はいらない。」
「だったら、山には入れないな。」
「ひどくない?」
「そうなんだよ、今は。」
ザ!インフレ!!
「そうか。うん。トウミギ栽培、頑張ってください。」
これは、あたると思う。
トウモロコシ粉も考えるか?粉類が少ないから。
そう言えば、
小麦って何処で作ってるんだろう?
一応、わたしの分と、
見張りの分も入れての金額を払う。
入り口で待ってろと言われた。
戻る道中また、オーロラが声を飛ばす。
(モウ?)
(ん?遠慮なくどうぞ?)
(あれ、王族だぞ?)
(らしいね)
(知ってるの?)
(本人から聞いたよ)
(エデトとか爺より扱いが雑だな)
(だって、ルンバだもの!)
(尊敬してないの?)
(どこに尊敬する余地がある?)
(じゃ、爺は?年?)
(んー、そうだね、年齢だけではないんだけど、あとどこだろ?)
(王族だから尊敬してるわけじゃないの?)
(いや、王族とかは関係ないよ?年齢も。
年配の方は基本、敬うよ?人生の先輩だから。
あとは、んー?エデトも、テルマも友人だ。
そうなるとルンバも友人だね)
(みんなか?言葉遣いが違うけど?)
(集団生活をするにおいて、礼儀は必要だよ?
エデトは、あの時は元首として来てくれたから。
おじい様は、いつもあんな感じかな?
膜張ってたし。外には聞こえないからね。
わたしだって、ルンバの廻りに人がいて、
村長として応対してくれてるんだったら、
ルンバの立場を尊重するよ?)
(難しいな)
(ね?わたしもそう思う)
考え込むオーロラ。
わたしも考えるよ。TPOが大事なんだと思う。
何の略だ?
時と場所と場面ってのは覚えてるんだけど。
(60リングって600銀貨?)
(そうだよ。じゃ、6人分だといくらでしょうか?)
(60が6個だろ?だから、7,8,9・・・・)
(ふふふ。あとで九九を教えてあげるね)
(?)
「お待たせ~。
ルンバが爪靴もってきてくれるよ!」
戻ると、テルマは従者もどき2人とおしくらまんじゅうをしていて、
マティスはその周りをスキップしていた。
「なに?楽しそう!!」
「マティス!その動き何?技か?」
「いや、スキプのおさらいだ。
テルマは知らん。あれらが管理者だそうだ。」
「「え?」」
もどきがか?
普通の人ではないとは思っていたけど、
管理者?
なんか思ってたんと違う、って奴だ。
でもなんでおしくらまんじゅう?
「おじい様?それら、その、連れてきてよかったの?」
「付いてきたいと言ったのはこれらだろ?」
「でも、こんな遠くに来るとはおもわなかったとか?
荷物もないし。うーん。なんか、悪いことしちゃったね。
帰そうか?」
「・・・・。帰りたいか?」
テルマの腰を押している?
いや、しがみついている管理者達に聞いている。
いや、なんで管理者なの?
なんか翻訳間違い?
「「帰りたい!!」」
「わしはまだ戻らんぞ?」
「「ダメです!一緒に!!」」
「だったら一緒だ。そのつもりだったんだろ?」
「なにもないから、聞こえない!!」
「山を超えているから、届かない!!」
「「荷物がないから!!なにもできない!!」」
聞こえない?届かない?
電波?
ナソニール側だといいのかな?
荷物があればいいの?
アンテナ?
「その持ってこようと思ってた荷物、
持ってこようか?」
「荷があればいいのか?」
見上げて頷く2人。
そう数えていいのだろうか?
人ではないのだ。たぶん。
姿かたちは人なんだけど。
ルポイドで見たときよりも、
違和感が大きい。
「マティス?どう思う?」
振り返れば、オーロラと2人で、スキップの練習?
すでになんだかわからない、踊りを躍っていた。
完全にリンクしている。
2人で楽しそうだから、そっとしておこうか。
「モウ?頼めるか?」
「かまいませんよ?
これはおじい様だからするんですよ?
おじい様?その2人?としっかり取引してくださいね?」
「!」
権力者は取引、契約というものを
忘れることがある。
権力者に従って当然だと息を吸うことのように当然だと思っているから。
当然とすら思っていないな。
テルマの場合、力押しで従えさせてることはできるが、
駆け引きは不得手か?
「取引だ。
ルポイドに戻るまで、わしの指示に従え。
そうすれば、荷を取り寄せてもらおう。」
渡したら、いまちょっと涙目でパニクってる2人が、
ルポイドにいるときのように小生意気になったら?
めんど臭くならない?
それに、
取り寄せるけど、渡さないってなったらどうするんだろう?
「おじい様?それだと取引にはならない。
わたしは、おじい様に頼まれて、あのとき、馬車に乗せようとしていた、
荷物を取り寄せる。
が、それをおじい様に渡すとは言ってない。
それに、あんた達?
おじい様もあんた達に渡すとは言ってないよ?
大丈夫?」
「「「!!!」」」
だめだこりゃ。
15
あなたにおすすめの小説
唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~
専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。
ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。
文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~
カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。
気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。
だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう――
――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。
【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~
みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】
事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。
神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。
作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。
「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。
※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
社畜のおじさん過労で死に、異世界でダンジョンマスターと なり自由に行動し、それを脅かす人間には容赦しません。
本条蒼依
ファンタジー
山本優(やまもとまさる)45歳はブラック企業に勤め、
残業、休日出勤は当たり前で、連続出勤30日目にして
遂に過労死をしてしまい、女神に異世界転移をはたす。
そして、あまりな強大な力を得て、貴族達にその身柄を
拘束させられ、地球のように束縛をされそうになり、
町から逃げ出すところから始まる。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
異世界へ行って帰って来た
バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。
そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる