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58 次の仕事
夏が深くなるにつれて、ベッポの店は少しずつ手狭になった。
店そのものが狭いのではない。もともと細長く、棚と棚のあいだも広いとは言えない。けれどそういう狭さとは別に、セリーヌの手の届き方が、店の器より先へ伸び始めていた。
貸し本の戻りは前よりずっと揃うようになった。紙束の補充の順も、ベッポが迷わなくなった。
売れ筋の帳面と、説教集の需要の波も、今ではセリーヌのほうが先に掴む。字の整わない客には、ごく自然に代筆を勧め、短い手紙や注文控えの清書も少しずつ頼まれるようになった。
それはいいことだった。実際、セリーヌはようやく「いてくれると助かる手」ではなく、「いないと困る手」になり始めていた。
それでも、八月の熱が町へ居座るようになる頃には、別のことも見えてきた。
――この店は、あまりに小さい。
ベッポは善い人だ。紙も本も好きで、客にもやさしい。
だが善い人であることと、仕事の器が広いことは別だ。ここでは、セリーヌが一段先を読んでも、その先がすぐ棚の端へぶつかる。
貸し本の帳面を整え、代筆を増やし、受け渡しを滑らかにしたところで、店そのものの広がりは限られている。
セリーヌはそれを少し前から感じていた。
感じてはいたが、自分から口にする気にはなれなかった。せっかく得た居場所を、「ここでは足りない」と言うほどには、まだ自分を信じきれない。
そんな中で、先にそのことを口にしたのはベッポのほうだった。
その日の午後は、陽がひどく白かった。通りの向こうの壁まで熱を返し、店の戸口へかけた布が風もないのに重たそうに垂れている。
客足も昼のあいだは細く、ベッポは珍しく帳場机へ肘をついて、目の前の注文控えを見ていた。
「リーネ」
不意に呼ばれて、セリーヌは貸し出し札の整理から顔を上げた。
「何でしょう」
「君、ここじゃ少し勿体ないな」
あまりにそのまま言われて、セリーヌは一瞬だけ目を瞬いた。ベッポは続ける。
「別に、うちが困るからそう言うんじゃない。困るのは困るけど」
「……」
「でも、困るから囲っておくほど、私は悪い店主でもないつもりだ」
そう言ってから、自分で少しだけ照れたように鼻を鳴らす。セリーヌはすぐには返せなかった。
――勿体ない。
その言葉を、まるで当然みたいに店主の口から聞く日が来るとは思っていなかったからだ。
「何を、もって」
ようやく言う。
「帳面。客の顔。言葉の選び方」
ベッポは指を折るように言った。
「紙を売るだけなら、ここまで要らない。貸し本の札だけなら、もう少し不器用でも回る。けど君は、誰が何を欲しがってるかを、品の前に先に見てる」
「……」
「それでいて、出すぎない。そこが大きい」
褒められているのだと、頭では分かる。だが、まっすぐ受け取るには少し重かった。
こういうことを、セリーヌはあの家ではほとんど言わたりしなかった。
気が利く。分別がある。落ち着いている。
そういう言い方へ変わるばかりで、それが「もっと活かせる手」だとは誰も言わなかった。
「一つ、話があるんだ」
ベッポが声を少し落とす。
店の外には誰もいない。それでも声を落とすのは、ただの癖ではないのだろう。
「広場の向こうの、古い旅籠を知ってるかい」
「石の門のところですか」
「そう。今は旅籠というより、巡礼や小商いの者が泊まる宿と、荷の取次ぎを半分ずつやってるあそこだ」
「ええ」
「そこの女主人が、この秋から帳場をきちんと立て直したいらしい」
「帳場を」
「そう。人の出入りも荷の預かりもあるのに、今までは家族の頭だけで回してきた。けれど、もうそれではもたないと」
セリーヌは静かに聞いていた。
石の門の旅籠は知っている。表通りから少し外れたところにあり、教会町へ来る巡礼者や、川筋から上がってくる小商人たちが泊まる場所だ。
宿だけではなく、小口の荷の受け取りや、帰りの便へ乗せる品の一時預かりもやっている。
つまり、人も品も金も、すべて少しずつ動く場所。たしかに、活かせる幅はベッポの店より広い。
「女主人は私の妻の従姉なんだ」
ベッポが言う。
「気は強いけど、頭は回る。今、手が欲しいのは針仕事でも給仕でもなく、帳面と客あしらいの分かる人間だ」
「……」
「最初はもちろん大きな顔は出来ない。けれど、うちよりはずっと広い」
「どうして、私に」
「向いてるからだよ」
それが、あまりに当たり前の声で言われたので、セリーヌはすぐ返事を出来なかった。
向いてる。その言葉を、今度は仕事として言われる。
静かにしていることや引くことではなく、もっと別のものに対して。
「考えてみるかい」
ベッポが言う。
「すぐに移れという話じゃない。話を聞いて、それからでも」
「……ええ」
セリーヌはようやく答えた。
「聞いてみたいです」
「よろしい」
ベッポは満足そうに頷いた。
「それと、これはただのついでだけど」
「はい」
「旅籠の裏手には、小さな菜園と庭があってね。秋前に、そっちも少し手を入れたいらしい」
「そうなんですか」
「ええ。だから帳場だけじゃなく、庭の手も欲しいってぼやいてた」
「……」
「今すぐどうこうじゃないけど、君の知り合いに、土と木の分かる男がいたら喜ぶだろうな」
その一言で、セリーヌの指先が紙の端へ少しだけ止まった。
知り合い。土と木の分かる男。
ベッポは気づいたのかどうか分からない顔のまま、インク壺の蓋を閉じる。
「まあ、そういうのは先の話だ」
「ええ」
「夏が少し引いてからでも遅くない。今は君のほうが先だ」
それはそうだ、とセリーヌも思う。
今すぐそこへジュリアンを重ねるのは違う。けれど、心のどこかでその絵が一瞬だけ浮かんだのも本当だった。
夏の終わり。教会町へ戻る彼。学校の世話も終わり、次の仕事を考えねばならない時。
そこへ、土と木の分かる男が欲しい場所がある。
それはまだ、ただの影だ。でも影としてあるなら、持っていてもいい気がした。
その日の夕方、セリーヌはルチアの家へ戻ってから、その話をした。
ルチアは針を持つ手を止め、しばらく黙って聞いていたが、話し終えると短く言った。
「悪くないわ」
「そう思いますか」
「ええ。旅籠兼取次ぎなら、人も荷も金も動く。あなたの手の向きに合う」
「でも、今の店を離れるのは」
「離れると言っても、明日ではないでしょう」
「ええ」
「なら十分よ。段取りをつけて移ること。それだけの話」
そう言われると、少しだけ気が楽になる。
旅籠。帳場。客と荷の取次ぎ。
自分の手が、もっと広く使える場所。
それに比べると、ベッポの店はやはり少し小さかったのだと、今さら認めざるを得ない。
小さいからこそ、最初の居場所にはちょうどよかった。けれど、ずっとここに縮こまっているのもまた違う。
「見に行くなら」
ルチアが言う。
「暑さが少しだけ落ちる頃がいいわ。今は皆いらいらしてる」
「分かります」
「夏の盛りは、人も品も熱を持つから」
その言い方に、セリーヌは少しだけ笑った。本当に、その通りなのだ。
南の倉の噂もそうだった。暑さの中で、皆少しずつ苛立ち、焦り、根性で無理をする。
秋の入口の風が来てからのほうが、物事は輪郭を取り戻す。
その夜、机の紙に、セリーヌは新しく一行を書き足した。
――秋までに、移る先を決める。
そして少し迷って、その下にさらに細く書いた。
――庭の手も要る。
書いたあとで、自分でも何だかおかしくなった。
約束でも何でもない。ただの覚え書きだ。
それでも、その一行だけが妙に先の風を含んで見えた。
今はまだ、自分が先だ。ベッポの紹介を聞き、旅籠の女主人と会い、ここで生きる次の場所を自分で決める。
その上で、夏の終わりにジュリアンが戻ってきたなら。
その時、やっと言えるのかもしれない。
――ここに、次の仕事があるの。全部終わったら、来る?
そこまで考えたところで、セリーヌは紙を閉じた。
まだ早い。でも、早すぎるわけでもない。
夏の夜は深い。
けれどその底のどこかに、少しずつ秋へ向かう気配も混じり始めている。
セリーヌは窓の外の暗さを見ながら、初めてその先の季節を、少しだけ楽しみに思った。
店そのものが狭いのではない。もともと細長く、棚と棚のあいだも広いとは言えない。けれどそういう狭さとは別に、セリーヌの手の届き方が、店の器より先へ伸び始めていた。
貸し本の戻りは前よりずっと揃うようになった。紙束の補充の順も、ベッポが迷わなくなった。
売れ筋の帳面と、説教集の需要の波も、今ではセリーヌのほうが先に掴む。字の整わない客には、ごく自然に代筆を勧め、短い手紙や注文控えの清書も少しずつ頼まれるようになった。
それはいいことだった。実際、セリーヌはようやく「いてくれると助かる手」ではなく、「いないと困る手」になり始めていた。
それでも、八月の熱が町へ居座るようになる頃には、別のことも見えてきた。
――この店は、あまりに小さい。
ベッポは善い人だ。紙も本も好きで、客にもやさしい。
だが善い人であることと、仕事の器が広いことは別だ。ここでは、セリーヌが一段先を読んでも、その先がすぐ棚の端へぶつかる。
貸し本の帳面を整え、代筆を増やし、受け渡しを滑らかにしたところで、店そのものの広がりは限られている。
セリーヌはそれを少し前から感じていた。
感じてはいたが、自分から口にする気にはなれなかった。せっかく得た居場所を、「ここでは足りない」と言うほどには、まだ自分を信じきれない。
そんな中で、先にそのことを口にしたのはベッポのほうだった。
その日の午後は、陽がひどく白かった。通りの向こうの壁まで熱を返し、店の戸口へかけた布が風もないのに重たそうに垂れている。
客足も昼のあいだは細く、ベッポは珍しく帳場机へ肘をついて、目の前の注文控えを見ていた。
「リーネ」
不意に呼ばれて、セリーヌは貸し出し札の整理から顔を上げた。
「何でしょう」
「君、ここじゃ少し勿体ないな」
あまりにそのまま言われて、セリーヌは一瞬だけ目を瞬いた。ベッポは続ける。
「別に、うちが困るからそう言うんじゃない。困るのは困るけど」
「……」
「でも、困るから囲っておくほど、私は悪い店主でもないつもりだ」
そう言ってから、自分で少しだけ照れたように鼻を鳴らす。セリーヌはすぐには返せなかった。
――勿体ない。
その言葉を、まるで当然みたいに店主の口から聞く日が来るとは思っていなかったからだ。
「何を、もって」
ようやく言う。
「帳面。客の顔。言葉の選び方」
ベッポは指を折るように言った。
「紙を売るだけなら、ここまで要らない。貸し本の札だけなら、もう少し不器用でも回る。けど君は、誰が何を欲しがってるかを、品の前に先に見てる」
「……」
「それでいて、出すぎない。そこが大きい」
褒められているのだと、頭では分かる。だが、まっすぐ受け取るには少し重かった。
こういうことを、セリーヌはあの家ではほとんど言わたりしなかった。
気が利く。分別がある。落ち着いている。
そういう言い方へ変わるばかりで、それが「もっと活かせる手」だとは誰も言わなかった。
「一つ、話があるんだ」
ベッポが声を少し落とす。
店の外には誰もいない。それでも声を落とすのは、ただの癖ではないのだろう。
「広場の向こうの、古い旅籠を知ってるかい」
「石の門のところですか」
「そう。今は旅籠というより、巡礼や小商いの者が泊まる宿と、荷の取次ぎを半分ずつやってるあそこだ」
「ええ」
「そこの女主人が、この秋から帳場をきちんと立て直したいらしい」
「帳場を」
「そう。人の出入りも荷の預かりもあるのに、今までは家族の頭だけで回してきた。けれど、もうそれではもたないと」
セリーヌは静かに聞いていた。
石の門の旅籠は知っている。表通りから少し外れたところにあり、教会町へ来る巡礼者や、川筋から上がってくる小商人たちが泊まる場所だ。
宿だけではなく、小口の荷の受け取りや、帰りの便へ乗せる品の一時預かりもやっている。
つまり、人も品も金も、すべて少しずつ動く場所。たしかに、活かせる幅はベッポの店より広い。
「女主人は私の妻の従姉なんだ」
ベッポが言う。
「気は強いけど、頭は回る。今、手が欲しいのは針仕事でも給仕でもなく、帳面と客あしらいの分かる人間だ」
「……」
「最初はもちろん大きな顔は出来ない。けれど、うちよりはずっと広い」
「どうして、私に」
「向いてるからだよ」
それが、あまりに当たり前の声で言われたので、セリーヌはすぐ返事を出来なかった。
向いてる。その言葉を、今度は仕事として言われる。
静かにしていることや引くことではなく、もっと別のものに対して。
「考えてみるかい」
ベッポが言う。
「すぐに移れという話じゃない。話を聞いて、それからでも」
「……ええ」
セリーヌはようやく答えた。
「聞いてみたいです」
「よろしい」
ベッポは満足そうに頷いた。
「それと、これはただのついでだけど」
「はい」
「旅籠の裏手には、小さな菜園と庭があってね。秋前に、そっちも少し手を入れたいらしい」
「そうなんですか」
「ええ。だから帳場だけじゃなく、庭の手も欲しいってぼやいてた」
「……」
「今すぐどうこうじゃないけど、君の知り合いに、土と木の分かる男がいたら喜ぶだろうな」
その一言で、セリーヌの指先が紙の端へ少しだけ止まった。
知り合い。土と木の分かる男。
ベッポは気づいたのかどうか分からない顔のまま、インク壺の蓋を閉じる。
「まあ、そういうのは先の話だ」
「ええ」
「夏が少し引いてからでも遅くない。今は君のほうが先だ」
それはそうだ、とセリーヌも思う。
今すぐそこへジュリアンを重ねるのは違う。けれど、心のどこかでその絵が一瞬だけ浮かんだのも本当だった。
夏の終わり。教会町へ戻る彼。学校の世話も終わり、次の仕事を考えねばならない時。
そこへ、土と木の分かる男が欲しい場所がある。
それはまだ、ただの影だ。でも影としてあるなら、持っていてもいい気がした。
その日の夕方、セリーヌはルチアの家へ戻ってから、その話をした。
ルチアは針を持つ手を止め、しばらく黙って聞いていたが、話し終えると短く言った。
「悪くないわ」
「そう思いますか」
「ええ。旅籠兼取次ぎなら、人も荷も金も動く。あなたの手の向きに合う」
「でも、今の店を離れるのは」
「離れると言っても、明日ではないでしょう」
「ええ」
「なら十分よ。段取りをつけて移ること。それだけの話」
そう言われると、少しだけ気が楽になる。
旅籠。帳場。客と荷の取次ぎ。
自分の手が、もっと広く使える場所。
それに比べると、ベッポの店はやはり少し小さかったのだと、今さら認めざるを得ない。
小さいからこそ、最初の居場所にはちょうどよかった。けれど、ずっとここに縮こまっているのもまた違う。
「見に行くなら」
ルチアが言う。
「暑さが少しだけ落ちる頃がいいわ。今は皆いらいらしてる」
「分かります」
「夏の盛りは、人も品も熱を持つから」
その言い方に、セリーヌは少しだけ笑った。本当に、その通りなのだ。
南の倉の噂もそうだった。暑さの中で、皆少しずつ苛立ち、焦り、根性で無理をする。
秋の入口の風が来てからのほうが、物事は輪郭を取り戻す。
その夜、机の紙に、セリーヌは新しく一行を書き足した。
――秋までに、移る先を決める。
そして少し迷って、その下にさらに細く書いた。
――庭の手も要る。
書いたあとで、自分でも何だかおかしくなった。
約束でも何でもない。ただの覚え書きだ。
それでも、その一行だけが妙に先の風を含んで見えた。
今はまだ、自分が先だ。ベッポの紹介を聞き、旅籠の女主人と会い、ここで生きる次の場所を自分で決める。
その上で、夏の終わりにジュリアンが戻ってきたなら。
その時、やっと言えるのかもしれない。
――ここに、次の仕事があるの。全部終わったら、来る?
そこまで考えたところで、セリーヌは紙を閉じた。
まだ早い。でも、早すぎるわけでもない。
夏の夜は深い。
けれどその底のどこかに、少しずつ秋へ向かう気配も混じり始めている。
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