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49 一丸となる家族
バーナード様からの手紙を読み終えたあと、部屋の中にはしばらく静かな余韻が残った。
誰もすぐには立たなかったし、軽い感想で流す者もいなかった。
暖炉の火が小さく鳴って、キャサリン姉様の膝の上の便箋が、灯りの加減で少しだけ黄ばんで見える。
私はその色を見つめながら、さっき読まれた文の一つひとつを、胸の中でまだ反芻していた。
――見立てを誤るな。
――善意で窓を開けるな。
――少し冷たいくらいでちょうどよい。
どれも、今の私には必要な言葉だった。
最初に口を開いたのは、お父様だった。
「ひとつ、先にしておくことがあるな」
低い声だった。
私は顔を上げた。
お母様も、キャサリン姉様も、すぐにそちらをご覧になる。ハロルド兄様だけは、もう同じことを考えていたらしく、目も動かさなかった。
「グランヴィル家へ抗議を入れる」
その一言は、ひどく静かだった。
でも、あまりにも迷いがなくて、私は一瞬だけ息を止めた。
ジョン兄様が真っ先に反応する。
「だよね」
珍しく軽くなかった。
「リチャードの手紙の件ですか」
ハロルド兄様が確認すると、お父様は頷かれた。
「それだけではない」
そのあとに続いた言葉で、私は膝の上の指をそっと握った。
「リチャード・グランヴィルから、わが家と縁のある者へ直接手紙を回したこと。さらに、エミリー嬢が外でイブリンを捕まえて、実質的に引きとめ、婚約の話へ触れたこと。この二つは、もう“偶然”でも“若い者の不器用さ”でも済まさん」
お母様が静かに言われる。
「ええ。ここで言わなければ、向こうはまだ“少し行き過ぎた程度”に思うでしょうね」
「そうだ」
お父様の返事は短かった。
「面談を控えているからといって、そこまで黙って受ける理由はない。むしろ面談の前だからこそ、こちらの認識をはっきりさせておく」
私は、そこでようやく本当に、今日までの出来事が“家の仕事”になったのだと感じた。
嫌だったこと。怖かったこと。疲れたこと。
それらが今、きちんと抗議すべき筋として置かれている。
「お父様」
気づけば、私は声をかけていた。
「何だ」
「……エミリー様の件まで、入れてくださるのですか」
お父様はまっすぐ私をご覧になった。
「当然だ」
その言葉は、少しも揺れなかった。
「外で偶然会った相手にお茶を求め、体調の不安を口実に断りにくくし、その場で婚約の話へ触れる。しかも代金までこちらの娘が持たされたとあれば、これはもう常軌を失している」
ジョン兄様が、そこで嫌そうに口を曲げる。
「ほんと、そこ地味に腹立つよね」
「地味ではないわ」
キャサリン姉様がすぐに言われた。
「十分に腹立たしいわよ」
その言い方に、少しだけ空気がやわらいだ。でも、話の芯は少しもぶれない。
ハロルド兄様が口を開く。
「文面は二つに分けたほうがいいでしょう。ひとつは、面談の前提としての抗議。もうひとつは、今後の接触制限の再確認です」
「そうだな」
お父様は頷かれた。
「リチャード氏の行為については、すでに“直接の接触は控えるように”と伝えている。その上でなお、わが家と関わりのある人物へ回り込んだ」
「つまり」
ハロルド兄様は続ける。
「こちらの意向を理解したうえで、別口なら構わないと判断したことになります」
お父様は、それを受けて静かに言われる。
「看過できん」
その四文字に、私は少し背筋を伸ばした。まるで冷たい刃みたいな言い方だ。
でも、それが必要なのだとも思えた。
リチャードはきっと、自分では慎重になったつもりだったのだろう。
押しかけない。騒がない。だから、丁寧な手紙を。
そういう理屈だったに違いない。
けれど、それはもう“分かっていない”で済ませる段を越えている。
お母様が、そこで私のほうを見られる。
「イブリン、今日のこと、あらためて文に起こせる?」
「私が、ですか」
「ええ。長くなくてよいの。事実だけを」
私は少し考えてから、頷いた。
「できます」
「よろしい」
お母様は落ち着いた声で言われる。
「感想ではなく、順に書いてちょうだい。どこで会い、何を言われ、どう断りきれず、何を頼まれ、最後にどこまで話を向けられたか」
その言い方が、ひどく頼もしかった。
感情ではなく、事実として置く。
そうすれば、また私ひとりが“嫌だった”“怖かった”と訴えているだけの形にはならないのだ。
「では、わたくしはリチャード様の手紙の件を整理します」
キャサリン姉様が、バーナードの手紙をたたみながら言われた。
「こちらにどう書いてきたのか、その中身を必要な範囲で写しておけばよろしいのでしょう?」
「頼む」
お父様はそう答えられた。
ハロルド兄様も、すでに頭の中で段取りを組み始めている顔だった。
「抗議は書状で先に出すべきですね。面談はそのあとでもよい」
「ええ」
お母様が頷かれる。
「向こうに“会えば何とかなる”と思わせたまま席を設けるより、先に不快の筋を明文化したほうがいいわ」
「同感だ」
お父様は言われた。
「面談は、謝罪を聞く場でも説得を受ける場でもない。こちらの結論を、向こうへ最終的に理解させる場だ。その前に、今回の件については別に抗議しておく」
私はその言葉を聞いて、胸の内が少しだけ軽くなるのを感じた。
次の面談で今日のことまでひとまとめにしてごまかされることはない。
“たまたま外で会っただけでしょう”とか、“若い娘同士のささいな行き違い”とか、そういう言い換えに滑り込まれる前に、こちらが先に向こうに対し釘を刺しておくのだ。
ジョン兄様が、椅子の背に肘をかけたまま言う。
「で、抗議の中身ははっきりさせたほうがいいよ」
「もちろんだ」
お父様は短く返される。
「特にエミリー嬢の件については、“娘を一人で捕まえたうえ、体調不安を口実に拘束し、婚約問題へ触れた”と明記する」
私は、少しだけ目を伏せた。
――拘束。
その言葉は強い。
でも、あの時の嫌さを、家として言葉にするなら、それはたしかに近い気がした。
「お父様」
キャサリン姉様が、少し考えるように言われる。
「“体調不安を口実に”は、向こうから食いつかれるかもしれませんわね」
「構わん」
お父様は言い切られた。
「本当に不調であろうとなかろうと、あの場でこちらの娘が引き受ける筋ではない。その一点だけでも十分だ」
ハロルド兄様が静かに続ける。
「むしろそこは、曖昧にしないほうがいいでしょう。“具合が悪いと訴えたため、相手はその場で断りにくくなった”と」
お母様が、それに賛成される。
「ええ。その書き方なら、事実だけで足りるわ」
私はそのやりとりを聞きながら、だんだん、自分の中のざらついたものが整っていくのを感じていた。
あの人は怖かった。
でも、その怖さはもう、正体の分からないものではなくなりつつある。
相手の良心を前提にして席を作らせること。弱り方を使って断りにくくすること。話題を静かに滑らせて、本題を差し込むこと。
そういうものだと分かれば、こちらも気をつけられる。
「イブリン」
お父様が私を呼ばれる。
「はい」
「抗議のための文に、お前の感想は要らん」
私は小さく頷いた。
「はい」
「だが、お前が不快であったこと、困惑したこと、その結果として今後一切こうした接触を望まぬことは、こちらの責任で明記する」
その言葉に、胸の中がじんわり熱くなった。
私が全部言わなくていい。家全体が言ってくれる。
それが、ひどくありがたかった。
「ありがとうございます」
「礼は要らん」
お父様はそう言って、すでに机の上の紙へ視線を落としていらした。
仕事の顔だ、と私は思った。
でも今は、その“仕事の顔”が、ちゃんと私を守る方向へ向いている。
お母様が立ち上がられる。
「では、今夜のうちにまとめてしまいましょう。イブリンはわたくしと来なさい。短く書けばいいのだから」
「はい」
「キャサリンは、リチャード様からバーナードへ行った書状について整理を」
「ええ」
「ハロルドは、お父様と文面の骨を」
「分かりました」
家の中が、その場で自然に動き出した。
ジョン兄様だけが、ちょっと不服そうに眉を上げる。
「僕は?」
「あなたは余計なことを言わない」
キャサリン姉様が即答された。
「ひどい」
「ひどくないわ」
でもそのあとで、お母様が少しだけ笑って言われる。
「ただし、今日の段階で聞いている若い方たちの話は、あとでまとめて聞かせてちょうだい。抗議文そのものには使わないけれど、見立ての補強にはなるもの」
ジョン兄様は、そこでようやく少し満足した顔になった。
「それならやる」
私はそのやりとりを見て、少しだけ笑ってしまった。
不思議だった。
さっきまであれほど嫌だったのに、いまはただ嫌なだけではない。
家の中で、それがちゃんと受け止められて、言葉にされて、次の手へ変わっていく。
そうなると、少しずつ怖さの居場所が変わってくる。
私はお母様のあとに続いて立ち上がった。
抗議を入れる。それは、怒鳴ることでも、感情をぶつけることでもない。
ただ、ここを越えてくるなと家として告げることだ。
それでいいのだと思えた。
誰もすぐには立たなかったし、軽い感想で流す者もいなかった。
暖炉の火が小さく鳴って、キャサリン姉様の膝の上の便箋が、灯りの加減で少しだけ黄ばんで見える。
私はその色を見つめながら、さっき読まれた文の一つひとつを、胸の中でまだ反芻していた。
――見立てを誤るな。
――善意で窓を開けるな。
――少し冷たいくらいでちょうどよい。
どれも、今の私には必要な言葉だった。
最初に口を開いたのは、お父様だった。
「ひとつ、先にしておくことがあるな」
低い声だった。
私は顔を上げた。
お母様も、キャサリン姉様も、すぐにそちらをご覧になる。ハロルド兄様だけは、もう同じことを考えていたらしく、目も動かさなかった。
「グランヴィル家へ抗議を入れる」
その一言は、ひどく静かだった。
でも、あまりにも迷いがなくて、私は一瞬だけ息を止めた。
ジョン兄様が真っ先に反応する。
「だよね」
珍しく軽くなかった。
「リチャードの手紙の件ですか」
ハロルド兄様が確認すると、お父様は頷かれた。
「それだけではない」
そのあとに続いた言葉で、私は膝の上の指をそっと握った。
「リチャード・グランヴィルから、わが家と縁のある者へ直接手紙を回したこと。さらに、エミリー嬢が外でイブリンを捕まえて、実質的に引きとめ、婚約の話へ触れたこと。この二つは、もう“偶然”でも“若い者の不器用さ”でも済まさん」
お母様が静かに言われる。
「ええ。ここで言わなければ、向こうはまだ“少し行き過ぎた程度”に思うでしょうね」
「そうだ」
お父様の返事は短かった。
「面談を控えているからといって、そこまで黙って受ける理由はない。むしろ面談の前だからこそ、こちらの認識をはっきりさせておく」
私は、そこでようやく本当に、今日までの出来事が“家の仕事”になったのだと感じた。
嫌だったこと。怖かったこと。疲れたこと。
それらが今、きちんと抗議すべき筋として置かれている。
「お父様」
気づけば、私は声をかけていた。
「何だ」
「……エミリー様の件まで、入れてくださるのですか」
お父様はまっすぐ私をご覧になった。
「当然だ」
その言葉は、少しも揺れなかった。
「外で偶然会った相手にお茶を求め、体調の不安を口実に断りにくくし、その場で婚約の話へ触れる。しかも代金までこちらの娘が持たされたとあれば、これはもう常軌を失している」
ジョン兄様が、そこで嫌そうに口を曲げる。
「ほんと、そこ地味に腹立つよね」
「地味ではないわ」
キャサリン姉様がすぐに言われた。
「十分に腹立たしいわよ」
その言い方に、少しだけ空気がやわらいだ。でも、話の芯は少しもぶれない。
ハロルド兄様が口を開く。
「文面は二つに分けたほうがいいでしょう。ひとつは、面談の前提としての抗議。もうひとつは、今後の接触制限の再確認です」
「そうだな」
お父様は頷かれた。
「リチャード氏の行為については、すでに“直接の接触は控えるように”と伝えている。その上でなお、わが家と関わりのある人物へ回り込んだ」
「つまり」
ハロルド兄様は続ける。
「こちらの意向を理解したうえで、別口なら構わないと判断したことになります」
お父様は、それを受けて静かに言われる。
「看過できん」
その四文字に、私は少し背筋を伸ばした。まるで冷たい刃みたいな言い方だ。
でも、それが必要なのだとも思えた。
リチャードはきっと、自分では慎重になったつもりだったのだろう。
押しかけない。騒がない。だから、丁寧な手紙を。
そういう理屈だったに違いない。
けれど、それはもう“分かっていない”で済ませる段を越えている。
お母様が、そこで私のほうを見られる。
「イブリン、今日のこと、あらためて文に起こせる?」
「私が、ですか」
「ええ。長くなくてよいの。事実だけを」
私は少し考えてから、頷いた。
「できます」
「よろしい」
お母様は落ち着いた声で言われる。
「感想ではなく、順に書いてちょうだい。どこで会い、何を言われ、どう断りきれず、何を頼まれ、最後にどこまで話を向けられたか」
その言い方が、ひどく頼もしかった。
感情ではなく、事実として置く。
そうすれば、また私ひとりが“嫌だった”“怖かった”と訴えているだけの形にはならないのだ。
「では、わたくしはリチャード様の手紙の件を整理します」
キャサリン姉様が、バーナードの手紙をたたみながら言われた。
「こちらにどう書いてきたのか、その中身を必要な範囲で写しておけばよろしいのでしょう?」
「頼む」
お父様はそう答えられた。
ハロルド兄様も、すでに頭の中で段取りを組み始めている顔だった。
「抗議は書状で先に出すべきですね。面談はそのあとでもよい」
「ええ」
お母様が頷かれる。
「向こうに“会えば何とかなる”と思わせたまま席を設けるより、先に不快の筋を明文化したほうがいいわ」
「同感だ」
お父様は言われた。
「面談は、謝罪を聞く場でも説得を受ける場でもない。こちらの結論を、向こうへ最終的に理解させる場だ。その前に、今回の件については別に抗議しておく」
私はその言葉を聞いて、胸の内が少しだけ軽くなるのを感じた。
次の面談で今日のことまでひとまとめにしてごまかされることはない。
“たまたま外で会っただけでしょう”とか、“若い娘同士のささいな行き違い”とか、そういう言い換えに滑り込まれる前に、こちらが先に向こうに対し釘を刺しておくのだ。
ジョン兄様が、椅子の背に肘をかけたまま言う。
「で、抗議の中身ははっきりさせたほうがいいよ」
「もちろんだ」
お父様は短く返される。
「特にエミリー嬢の件については、“娘を一人で捕まえたうえ、体調不安を口実に拘束し、婚約問題へ触れた”と明記する」
私は、少しだけ目を伏せた。
――拘束。
その言葉は強い。
でも、あの時の嫌さを、家として言葉にするなら、それはたしかに近い気がした。
「お父様」
キャサリン姉様が、少し考えるように言われる。
「“体調不安を口実に”は、向こうから食いつかれるかもしれませんわね」
「構わん」
お父様は言い切られた。
「本当に不調であろうとなかろうと、あの場でこちらの娘が引き受ける筋ではない。その一点だけでも十分だ」
ハロルド兄様が静かに続ける。
「むしろそこは、曖昧にしないほうがいいでしょう。“具合が悪いと訴えたため、相手はその場で断りにくくなった”と」
お母様が、それに賛成される。
「ええ。その書き方なら、事実だけで足りるわ」
私はそのやりとりを聞きながら、だんだん、自分の中のざらついたものが整っていくのを感じていた。
あの人は怖かった。
でも、その怖さはもう、正体の分からないものではなくなりつつある。
相手の良心を前提にして席を作らせること。弱り方を使って断りにくくすること。話題を静かに滑らせて、本題を差し込むこと。
そういうものだと分かれば、こちらも気をつけられる。
「イブリン」
お父様が私を呼ばれる。
「はい」
「抗議のための文に、お前の感想は要らん」
私は小さく頷いた。
「はい」
「だが、お前が不快であったこと、困惑したこと、その結果として今後一切こうした接触を望まぬことは、こちらの責任で明記する」
その言葉に、胸の中がじんわり熱くなった。
私が全部言わなくていい。家全体が言ってくれる。
それが、ひどくありがたかった。
「ありがとうございます」
「礼は要らん」
お父様はそう言って、すでに机の上の紙へ視線を落としていらした。
仕事の顔だ、と私は思った。
でも今は、その“仕事の顔”が、ちゃんと私を守る方向へ向いている。
お母様が立ち上がられる。
「では、今夜のうちにまとめてしまいましょう。イブリンはわたくしと来なさい。短く書けばいいのだから」
「はい」
「キャサリンは、リチャード様からバーナードへ行った書状について整理を」
「ええ」
「ハロルドは、お父様と文面の骨を」
「分かりました」
家の中が、その場で自然に動き出した。
ジョン兄様だけが、ちょっと不服そうに眉を上げる。
「僕は?」
「あなたは余計なことを言わない」
キャサリン姉様が即答された。
「ひどい」
「ひどくないわ」
でもそのあとで、お母様が少しだけ笑って言われる。
「ただし、今日の段階で聞いている若い方たちの話は、あとでまとめて聞かせてちょうだい。抗議文そのものには使わないけれど、見立ての補強にはなるもの」
ジョン兄様は、そこでようやく少し満足した顔になった。
「それならやる」
私はそのやりとりを見て、少しだけ笑ってしまった。
不思議だった。
さっきまであれほど嫌だったのに、いまはただ嫌なだけではない。
家の中で、それがちゃんと受け止められて、言葉にされて、次の手へ変わっていく。
そうなると、少しずつ怖さの居場所が変わってくる。
私はお母様のあとに続いて立ち上がった。
抗議を入れる。それは、怒鳴ることでも、感情をぶつけることでもない。
ただ、ここを越えてくるなと家として告げることだ。
それでいいのだと思えた。
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