10 / 14
第9話 条件違反
しおりを挟む
文化祭前日。
教室は段ボールと装飾でぐちゃぐちゃだ。
「朝比奈、テーブル運んで」
「了解」
汗だくになりながら動く。
理央はレジの最終確認中。
クラスメイトと普通に笑っている。
その横に、三宅がいた。
「ここ、こうしたほうがよくない?」
距離が近い。
必要以上に。
胸がざわつく。
どくん。
落ち着け。
これはクラス行事だ。
「朝比奈ー!」
呼ばれて振り向く。
一瞬目を離した間に、理央と三宅が並んで笑った。
小さなこと。
なのに。
胸が締まる。
作業が一段落し、廊下で休憩する。
理央が水を持ってきた。
「顔色が悪い」
「暑いだけ」
「心拍不安定?」
「……違う」
嘘だ。
「三宅と楽しそうだったな」
言ってしまった。
理央は瞬きをする。
「作業していただけ」
「必要以上に近かった」
「主観」
苛立ちがこみ上げる。
「俺といるときより笑ってた」
「比較データなし」
「そういう問題じゃない」
声が少し強くなる。
廊下の窓から夕日が差し込む。
「朝比奈」
「何」
「嫉妬?」
「……そうだよ」
言い切った瞬間、鼓動が跳ねる。
「契約違反の可能性」
「分かってる」
「本気禁止」
「分かってるって!」
沈黙。
空気が重い。
「私が三宅くんと付き合うと言ったら?」
心臓が強く打つ。
どくん、どくん。
「嫌だ」
即答だった。
「理由」
「理屈じゃない」
理央は俺をじっと見る。
「それは本気に近い」
「じゃあどうすればいい」
苛立ちと焦りが混ざる。
「好きにならないように努力すればいいのか?」
「努力で制御できるなら問題はない」
「できないから困ってる」
初めて、言葉がぶつかる。
理央は視線を落とす。
「私は」
小さな声。
「実験を壊したくない」
「実験より大事なものは無いのか?」
問いが出た瞬間、自分でも驚く。
理央は答えない。
教室から「集合ー!」と声がする。
空気が途切れる。
「後で話す」
彼女はそう言って戻る。
*
片付けが終わる頃には、外は暗くなっていた。
校門前。
人影はまばら。
「さっきの続き」
理央が言う。
「私は合理的に考えたい」
「無理だろ、もう」
「まだ判断できない」
「俺は」
息を吸う。
「多分、条件違反してる」
理央の肩がわずかに揺れる。
「どの条件」
「本気禁止」
言葉にした瞬間、胸が熱くなる。
「あなたは」
「分からない。でも」
鼓動が速い。
「三宅と笑ってるの見て、苦しかった」
沈黙。
街灯の光が二人を照らす。
「私も」
小さな声。
「あなたが他の女子と話すと、少し不快」
「それって」
「分析不能」
風が吹く。
「朝比奈」
「何」
「契約を続けるには、感情を制御する必要がある」
「できると思うか?」
数秒。
「難しい」
正直だ。
「じゃあどうする」
理央は空を見上げる。
「文化祭が終わるまで、保留」
「逃げか?」
「猶予よ」
どくん。
不安定な鼓動。
「残り五十八日」
彼女が言う。
「実験を壊すか、守るか」
「二択?」
「現時点では」
沈黙。
俺は気づく。
もう戻れない。
最初の軽い契約には。
理央が一歩近づく。
「朝比奈」
「何」
「今、心拍は?」
「速い」
「私も」
視線が絡む。
近い。
キスできる距離。
でも。
彼女が一歩引く。
「条件違反は、まだ確定しない」
そう言って背を向ける。
「明日、文化祭」
振り返らずに続ける。
「そこで判断する」
夜の風が冷たい。
俺はその場に立ち尽くす。
本気禁止。
でも、もう。
ほとんど越えている。
文化祭が、分岐点になる。
教室は段ボールと装飾でぐちゃぐちゃだ。
「朝比奈、テーブル運んで」
「了解」
汗だくになりながら動く。
理央はレジの最終確認中。
クラスメイトと普通に笑っている。
その横に、三宅がいた。
「ここ、こうしたほうがよくない?」
距離が近い。
必要以上に。
胸がざわつく。
どくん。
落ち着け。
これはクラス行事だ。
「朝比奈ー!」
呼ばれて振り向く。
一瞬目を離した間に、理央と三宅が並んで笑った。
小さなこと。
なのに。
胸が締まる。
作業が一段落し、廊下で休憩する。
理央が水を持ってきた。
「顔色が悪い」
「暑いだけ」
「心拍不安定?」
「……違う」
嘘だ。
「三宅と楽しそうだったな」
言ってしまった。
理央は瞬きをする。
「作業していただけ」
「必要以上に近かった」
「主観」
苛立ちがこみ上げる。
「俺といるときより笑ってた」
「比較データなし」
「そういう問題じゃない」
声が少し強くなる。
廊下の窓から夕日が差し込む。
「朝比奈」
「何」
「嫉妬?」
「……そうだよ」
言い切った瞬間、鼓動が跳ねる。
「契約違反の可能性」
「分かってる」
「本気禁止」
「分かってるって!」
沈黙。
空気が重い。
「私が三宅くんと付き合うと言ったら?」
心臓が強く打つ。
どくん、どくん。
「嫌だ」
即答だった。
「理由」
「理屈じゃない」
理央は俺をじっと見る。
「それは本気に近い」
「じゃあどうすればいい」
苛立ちと焦りが混ざる。
「好きにならないように努力すればいいのか?」
「努力で制御できるなら問題はない」
「できないから困ってる」
初めて、言葉がぶつかる。
理央は視線を落とす。
「私は」
小さな声。
「実験を壊したくない」
「実験より大事なものは無いのか?」
問いが出た瞬間、自分でも驚く。
理央は答えない。
教室から「集合ー!」と声がする。
空気が途切れる。
「後で話す」
彼女はそう言って戻る。
*
片付けが終わる頃には、外は暗くなっていた。
校門前。
人影はまばら。
「さっきの続き」
理央が言う。
「私は合理的に考えたい」
「無理だろ、もう」
「まだ判断できない」
「俺は」
息を吸う。
「多分、条件違反してる」
理央の肩がわずかに揺れる。
「どの条件」
「本気禁止」
言葉にした瞬間、胸が熱くなる。
「あなたは」
「分からない。でも」
鼓動が速い。
「三宅と笑ってるの見て、苦しかった」
沈黙。
街灯の光が二人を照らす。
「私も」
小さな声。
「あなたが他の女子と話すと、少し不快」
「それって」
「分析不能」
風が吹く。
「朝比奈」
「何」
「契約を続けるには、感情を制御する必要がある」
「できると思うか?」
数秒。
「難しい」
正直だ。
「じゃあどうする」
理央は空を見上げる。
「文化祭が終わるまで、保留」
「逃げか?」
「猶予よ」
どくん。
不安定な鼓動。
「残り五十八日」
彼女が言う。
「実験を壊すか、守るか」
「二択?」
「現時点では」
沈黙。
俺は気づく。
もう戻れない。
最初の軽い契約には。
理央が一歩近づく。
「朝比奈」
「何」
「今、心拍は?」
「速い」
「私も」
視線が絡む。
近い。
キスできる距離。
でも。
彼女が一歩引く。
「条件違反は、まだ確定しない」
そう言って背を向ける。
「明日、文化祭」
振り返らずに続ける。
「そこで判断する」
夜の風が冷たい。
俺はその場に立ち尽くす。
本気禁止。
でも、もう。
ほとんど越えている。
文化祭が、分岐点になる。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが
akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。
毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。
そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。
数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。
平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、
幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。
笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。
気づけば心を奪われる――
幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!
俺が宝くじで10億円当選してから、幼馴染の様子がおかしい
沢尻夏芽
恋愛
自他共に認める陰キャ・真城健康(まき・けんこう)は、高校入学前に宝くじで10億円を当てた。
それを知る、陽キャ幼馴染の白駒綾菜(しらこま・あやな)はどうも最近……。
『様子がおかしい』
※誤字脱字、設定上のミス等があれば、ぜひ教えてください。
現時点で1話に繋がる話は全て書き切っています。
他サイトでも掲載中。
私に姉など居ませんが?
山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」
「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」
「ありがとう」
私は婚約者スティーブと結婚破棄した。
書類にサインをし、慰謝料も請求した。
「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」
SSS級の絶世の超絶美少女達がやたらと俺にだけ見え見えな好意を寄せてくる件について。〜絶対に俺を攻略したいSSS級の美少女たちの攻防戦〜
沢田美
恋愛
「ごめんね、八杉くん」
中学三年の夏祭り。一途な初恋は、花火と共に儚く散った。
それ以来、八杉裕一(やすぎ・ゆういち)は誓った。「高校では恋愛なんて面倒なものとは無縁の、平穏なオタク生活を送る」と。
だが、入学した紫水高校には《楽園の世代》と呼ばれる四人のSSS級美少女――通称《四皇》が君臨していた。
• 距離感バグり気味の金髪幼馴染・神行胱。
• 圧倒的カリスマで「恋の沼」に突き落とす銀髪美少女・銀咲明日香。
• 無自覚に男たちの初恋を奪う、おっとりした「女神」・足立模。
• オタクにも優しい一万年に一人の最高ギャル・川瀬優里。
恋愛から距離を置きたい裕一の願いも虚しく、彼女たちはなぜか彼にだけ、見え見えな好意を寄せ始める。
教室での「あーん」に、放課後のアニメイトでの遭遇、さらには女神からの「一緒にホラー漫画を買いに行かない?」というお誘いまで。
「俺の身にもなれ! 荷が重すぎるんだよ!」
鋼の意志でスルーしようとする裕一だが、彼女たちの純粋で猛烈なアプローチは止まらない。
恋愛拒否気味な少年と、彼を絶対に攻略したい最強美少女たちの、ちょっと面倒で、でも最高に心地よい「激推し」ラブコメ、開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる