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第10話 好きの定義
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文化祭当日。
教室は満席だった。
「いらっしゃいませー!」
エプロン姿の理央は淡々と注文を取っている。
俺はトレイを運びながら、何度も彼女を見る。
笑っている。
クラスメイトとも、客とも。
でも俺には分かる。
少しだけ緊張している。
昼過ぎ。
ピークが落ち着き、ようやく休憩。
教室の外に出る。
「売上、予測超過」
理央が言う。
「よかったな」
「協力の成果」
風が涼しい。
「今日で判断するって言ったよな」
「言った」
理央は真顔に戻る。
「質問」
「またか」
「あなたにとって“好き”とは何」
直球だ。
「一緒にいたいって思うこと」
「理由は?」
「理由いるか?」
「定義には必要」
俺は少し考える。
「その人が笑うと嬉しい。取られたくない。触れたい。守りたい」
「欲望の集合」
「悪いか」
「悪くない。ただ主観的」
「好きなんて主観だろ」
理央は腕を組む。
「私の定義は違う」
「どう違う」
「合理的選択」
「は?」
「将来性、相性、安定性。長期的利益」
「恋愛を投資みたいに言うな」
「事実でしょ」
苛立ちがこみ上げる。
「じゃあ俺は?」
「現時点では実験対象」
胸が痛む。
どくん。
「でも」
理央は続ける。
「あなたといると、思考が乱れる」
「それ、悪いことか?」
「効率は落ちる」
「でも楽しいだろ」
沈黙。
「……退屈ではない」
「それが好きの入り口だろ」
理央は視線を逸らす。
「私は、感情で判断したくない」
「怖いのか?」
その言葉に、彼女の指先がわずかに震える。
「リスクが高い」
「何の」
「失敗」
初めて聞く弱さだった。
「過去に何かあったのか」
「関係ない」
即答。
でも、目は揺れている。
教室から歓声が上がる。
時間が動き出す。
「俺はさ」
息を吸う。
「命のために告白した」
「事実」
「でも今は違う」
鼓動が速い。
「一ノ瀬がいなくなったら、困る」
「命が?」
「違う」
はっきり言う。
「俺が」
沈黙。
風が強く吹く。
「それは依存」
「違う。選択だ」
理央がゆっくりこちらを見る。
「選択?」
「命のためじゃなく、俺が一ノ瀬を選びたい」
言い切った。
心臓が暴れている。
どくん、どくん。
理央はしばらく何も言わない。
「私の定義では」
静かな声。
「好きとは、相手を優先する決断」
「なら?」
「あなたは、優先すると言える?」
「言える」
迷いはない。
理央の目が揺れる。
「私はまだ言えない」
正直だ。
「でも」
小さく続ける。
「あなたが三宅を拒否してほしいと言った時、私は優先した」
胸が強く打つ。
「それは合理性では説明できない」
「じゃあ何だ」
「……好きの初期症状かもしれない」
その瞬間。
鼓動が一気に跳ね上がる。
過去最高に近い。
「理央」
名前を呼ぶ。
彼女は一歩引く。
「確定じゃないから」
「逃げるな」
「分析中」
それでも、頬は赤い。
教室から「ラスト一時間!」と声がする。
「文化祭終了後、最終判断する」
理央が言う。
「実験か、恋愛か」
「二択か」
「現時点では」
俺は息を吐く。
「じゃあ最後までやろう」
「何を」
「全力で」
理央は小さく頷く。
教室に戻る直前。
「朝比奈」
「何」
「今、心拍は?」
「やばいくらい速い」
「私も」
その言葉だけで十分だった。
文化祭はまだ終わらない。
でも。
俺たちの関係は、もう実験だけでは済まないところまで来ている。
教室は満席だった。
「いらっしゃいませー!」
エプロン姿の理央は淡々と注文を取っている。
俺はトレイを運びながら、何度も彼女を見る。
笑っている。
クラスメイトとも、客とも。
でも俺には分かる。
少しだけ緊張している。
昼過ぎ。
ピークが落ち着き、ようやく休憩。
教室の外に出る。
「売上、予測超過」
理央が言う。
「よかったな」
「協力の成果」
風が涼しい。
「今日で判断するって言ったよな」
「言った」
理央は真顔に戻る。
「質問」
「またか」
「あなたにとって“好き”とは何」
直球だ。
「一緒にいたいって思うこと」
「理由は?」
「理由いるか?」
「定義には必要」
俺は少し考える。
「その人が笑うと嬉しい。取られたくない。触れたい。守りたい」
「欲望の集合」
「悪いか」
「悪くない。ただ主観的」
「好きなんて主観だろ」
理央は腕を組む。
「私の定義は違う」
「どう違う」
「合理的選択」
「は?」
「将来性、相性、安定性。長期的利益」
「恋愛を投資みたいに言うな」
「事実でしょ」
苛立ちがこみ上げる。
「じゃあ俺は?」
「現時点では実験対象」
胸が痛む。
どくん。
「でも」
理央は続ける。
「あなたといると、思考が乱れる」
「それ、悪いことか?」
「効率は落ちる」
「でも楽しいだろ」
沈黙。
「……退屈ではない」
「それが好きの入り口だろ」
理央は視線を逸らす。
「私は、感情で判断したくない」
「怖いのか?」
その言葉に、彼女の指先がわずかに震える。
「リスクが高い」
「何の」
「失敗」
初めて聞く弱さだった。
「過去に何かあったのか」
「関係ない」
即答。
でも、目は揺れている。
教室から歓声が上がる。
時間が動き出す。
「俺はさ」
息を吸う。
「命のために告白した」
「事実」
「でも今は違う」
鼓動が速い。
「一ノ瀬がいなくなったら、困る」
「命が?」
「違う」
はっきり言う。
「俺が」
沈黙。
風が強く吹く。
「それは依存」
「違う。選択だ」
理央がゆっくりこちらを見る。
「選択?」
「命のためじゃなく、俺が一ノ瀬を選びたい」
言い切った。
心臓が暴れている。
どくん、どくん。
理央はしばらく何も言わない。
「私の定義では」
静かな声。
「好きとは、相手を優先する決断」
「なら?」
「あなたは、優先すると言える?」
「言える」
迷いはない。
理央の目が揺れる。
「私はまだ言えない」
正直だ。
「でも」
小さく続ける。
「あなたが三宅を拒否してほしいと言った時、私は優先した」
胸が強く打つ。
「それは合理性では説明できない」
「じゃあ何だ」
「……好きの初期症状かもしれない」
その瞬間。
鼓動が一気に跳ね上がる。
過去最高に近い。
「理央」
名前を呼ぶ。
彼女は一歩引く。
「確定じゃないから」
「逃げるな」
「分析中」
それでも、頬は赤い。
教室から「ラスト一時間!」と声がする。
「文化祭終了後、最終判断する」
理央が言う。
「実験か、恋愛か」
「二択か」
「現時点では」
俺は息を吐く。
「じゃあ最後までやろう」
「何を」
「全力で」
理央は小さく頷く。
教室に戻る直前。
「朝比奈」
「何」
「今、心拍は?」
「やばいくらい速い」
「私も」
その言葉だけで十分だった。
文化祭はまだ終わらない。
でも。
俺たちの関係は、もう実験だけでは済まないところまで来ている。
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