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第11話 過去の傷
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文化祭は成功で終わった。
片付けも終わり、校舎は静まり返っている。
「屋上」
理央が言う。
俺は黙ってついていく。
扉を開けると、夜風が強い。
「最終判断だろ」
「その前に」
理央はフェンスに手をかける。
「質問」
「またか」
「あなたは失敗したことがある?」
「何の」
「恋愛で」
「ない」
「なぜ」
「本気でやったことないから」
理央は小さく息を吐く。
「私はある」
初めて聞く。
「中学二年」
視線は街の灯りへ向いたまま。
「好きだった人がいた」
胸がわずかに痛む。
「告白した」
「……うん」
「断られた」
短い。
でも重い。
「理由は?」
「重い、だって」
風が吹く。
「私は計画を立てた。将来の話もした。勉強の話も。真剣だった」
「それの何が悪い」
「彼は“怖い”と言った」
沈黙。
「感情が重いと、相手は逃げる」
理央の声は静かだ。
「それ以来、非効率だと判断した」
「逃げたのは向こうだろ」
「結果は同じ」
彼女は振り返る。
「感情に比重を置くと、失敗のリスクが高い」
「だから合理主義?」
「そう」
胸が締まる。
「でも俺は違う」
「何が」
「重いなら受け止める」
理央の目が揺れる。
「簡単に言う」
「簡単じゃない」
俺は一歩近づく。
「俺は命のために告白した。でも今は違う」
鼓動が速い。
「一ノ瀬が重くても、面倒でも、選ぶ」
沈黙。
夜の空気が冷たい。
「保証は?」
「ない」
「将来性は?」
「分からない」
「非合理」
「それでもいい」
理央の指がわずかに震える。
「怖くない?」
「怖い」
「それでも?」
「それでも」
言葉に迷いはなかった。
どくん、どくん。
安定して速い。
「……私も」
小さな声。
「あなたといると、怖い」
「嫌だから?」
「違う」
数秒。
「失いたくないと考えてしまうから」
胸が強く打つ。
「それ、好きだろ」
「断定は早い」
「逃げるな」
理央は目を閉じる。
「私はまた重くなる」
「なればいい」
「逃げられたら?」
「逃げない」
「証明は?」
「今ここにいる」
沈黙。
風が止む。
「朝比奈」
「何」
「あなたは命が治ったら、私を選ばない可能性は?」
核心だ。
「ない」
即答。
「なぜ」
「もう命関係ないから」
理央の目が大きくなる。
「最近、家で一人でも心拍が安定してる」
「……それは」
「多分、好きだから」
自分で言って、鼓動が跳ねる。
どくん。
理央は数秒、動かない。
「それは」
「何」
「条件違反確定」
苦笑い。
「契約破棄か?」
理央は首を振る。
「まだ判断しない」
「なんで」
「怖いから」
正直だ。
「少し時間が欲しい」
「どれくらい」
「二週間」
残り四十四日。
「その間、距離を置く」
胸が冷える。
「置かないと判断できない」
「逃げてる」
「整理」
風がまた強くなる。
「二週間だけ」
理央が言う。
「連絡は最低限。接触なし」
「それで心拍落ちたら?」
「それもデータ」
笑えない。
でも。
「分かった」
言うしかない。
理央は小さく頷く。
「ありがとう」
「何で」
「重くてもいいと言ったから」
夜の屋上。
距離が少し空く。
触れたい。
でも触れない。
「二週間後」
「うん」
「答えを出す」
彼女はそう言って、階段へ向かった。
俺は一人、夜風の中に残る。
心拍は速い。
でも。
この二週間で、何かが変わる。
良くも悪くも。
片付けも終わり、校舎は静まり返っている。
「屋上」
理央が言う。
俺は黙ってついていく。
扉を開けると、夜風が強い。
「最終判断だろ」
「その前に」
理央はフェンスに手をかける。
「質問」
「またか」
「あなたは失敗したことがある?」
「何の」
「恋愛で」
「ない」
「なぜ」
「本気でやったことないから」
理央は小さく息を吐く。
「私はある」
初めて聞く。
「中学二年」
視線は街の灯りへ向いたまま。
「好きだった人がいた」
胸がわずかに痛む。
「告白した」
「……うん」
「断られた」
短い。
でも重い。
「理由は?」
「重い、だって」
風が吹く。
「私は計画を立てた。将来の話もした。勉強の話も。真剣だった」
「それの何が悪い」
「彼は“怖い”と言った」
沈黙。
「感情が重いと、相手は逃げる」
理央の声は静かだ。
「それ以来、非効率だと判断した」
「逃げたのは向こうだろ」
「結果は同じ」
彼女は振り返る。
「感情に比重を置くと、失敗のリスクが高い」
「だから合理主義?」
「そう」
胸が締まる。
「でも俺は違う」
「何が」
「重いなら受け止める」
理央の目が揺れる。
「簡単に言う」
「簡単じゃない」
俺は一歩近づく。
「俺は命のために告白した。でも今は違う」
鼓動が速い。
「一ノ瀬が重くても、面倒でも、選ぶ」
沈黙。
夜の空気が冷たい。
「保証は?」
「ない」
「将来性は?」
「分からない」
「非合理」
「それでもいい」
理央の指がわずかに震える。
「怖くない?」
「怖い」
「それでも?」
「それでも」
言葉に迷いはなかった。
どくん、どくん。
安定して速い。
「……私も」
小さな声。
「あなたといると、怖い」
「嫌だから?」
「違う」
数秒。
「失いたくないと考えてしまうから」
胸が強く打つ。
「それ、好きだろ」
「断定は早い」
「逃げるな」
理央は目を閉じる。
「私はまた重くなる」
「なればいい」
「逃げられたら?」
「逃げない」
「証明は?」
「今ここにいる」
沈黙。
風が止む。
「朝比奈」
「何」
「あなたは命が治ったら、私を選ばない可能性は?」
核心だ。
「ない」
即答。
「なぜ」
「もう命関係ないから」
理央の目が大きくなる。
「最近、家で一人でも心拍が安定してる」
「……それは」
「多分、好きだから」
自分で言って、鼓動が跳ねる。
どくん。
理央は数秒、動かない。
「それは」
「何」
「条件違反確定」
苦笑い。
「契約破棄か?」
理央は首を振る。
「まだ判断しない」
「なんで」
「怖いから」
正直だ。
「少し時間が欲しい」
「どれくらい」
「二週間」
残り四十四日。
「その間、距離を置く」
胸が冷える。
「置かないと判断できない」
「逃げてる」
「整理」
風がまた強くなる。
「二週間だけ」
理央が言う。
「連絡は最低限。接触なし」
「それで心拍落ちたら?」
「それもデータ」
笑えない。
でも。
「分かった」
言うしかない。
理央は小さく頷く。
「ありがとう」
「何で」
「重くてもいいと言ったから」
夜の屋上。
距離が少し空く。
触れたい。
でも触れない。
「二週間後」
「うん」
「答えを出す」
彼女はそう言って、階段へ向かった。
俺は一人、夜風の中に残る。
心拍は速い。
でも。
この二週間で、何かが変わる。
良くも悪くも。
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