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第12話 空白の温度
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距離を置いて五日。
教室では普通に会う。
でも、隣には座らない。
放課後も一緒に帰らない。
連絡は最低限。
《資料ありがとう》
《了解》
業務連絡みたいだ。
最初の二日は、落ち着かなかった。
心拍が下がるんじゃないかと不安で、何度も胸に手を当てた。
でも。
どくん。
ちゃんと打っている。
少し速いくらいで。
「朝比奈、最近元気ないな」
三宅が言う。
「別に」
「一ノ瀬とケンカ?」
「違う」
説明できない。
昼休み。
理央は窓際で本を読んでいる。
目は合わない。
それが逆に意識を強くする。
触れない。
話さない。
でも。
視界に入るだけで、心拍は少し上がる。
どくん。
放課後。
俺は一人で歩く。
駅前を抜け、歩道橋を上る。
夕焼けが広がる。
「……寂しいな」
口に出してしまう。
命のために始めた。
なのに今は。
命より。
理央がいない時間のほうがきつい。
スマホを取り出す。
連絡したい。
でも、約束だ。
我慢。
その時。
メッセージが届く。
《今、時間ある?》
心臓が跳ねる。
どくん。
《ある》
即答。
《歩道橋の上》
見られていたらしい。
振り向くと、階段を上がってくる姿が見えた。
距離五メートル。
近いのに遠い。
「約束違反ではない」
理央が言う。
「偶然を装うのも合理的ではない」
相変わらずだ。
「どうした」
「確認」
彼女は俺の前に立つ。
「心拍は安定?」
「してる」
「接触なしで?」
「うん」
理央は少しだけ安堵した顔をする。
「私も」
「え?」
「あなたと話していない間、落ち着かなかった」
胸が強く打つ。
「でも、倒れそうにはならなかった」
「うん」
「つまり、依存ではない」
「そうだな」
沈黙。
夕焼けが赤い。
「寂しかった?」
理央が聞く。
「……ああ」
「私も」
その一言で十分だった。
「じゃあ戻るか?」
「まだ」
理央は首を振る。
「もう少し必要」
「何が」
「確信」
彼女は俺を見る。
「あなたは、私がいなくても生きられる」
「多分な」
「でも、それでも選ぶ?」
「選ぶ」
即答。
鼓動が安定して速い。
「私は」
理央は一瞬、視線を落とす。
「あなたがいなくても生きられる」
「知ってる」
「でも」
数秒。
「あなたがいないと、つまらない」
笑いそうになる。
「それ、好きだろ」
「まだ断定しない」
でも、声は柔らかい。
風が吹く。
距離は一歩分。
「触れていい?」
俺が聞く。
理央は少し考える。
「五秒」
「短い」
「条件」
俺は手を伸ばす。
彼女の指に触れる。
温かい。
どくん。
強く、でも安定。
「五秒経過」
名残惜しく離す。
「二週間後」
理央が言う。
「答えを出す」
「分かった」
「それまで」
「うん」
「好きという言葉は禁止」
「……きついな」
「整理のため」
彼女は階段へ向かう。
途中で振り返る。
「朝比奈」
「何」
「空白は、嫌いじゃない」
「なんで」
「あなたの輪郭がはっきりするから」
そう言って去っていく。
俺は歩道橋に残る。
心拍は安定している。
倒れない。
でも。
理央を選びたい気持ちは、距離を置いても消えない。
むしろ。
はっきりしてきた。
残り三十九日。
二週間後。
答えが出る。
教室では普通に会う。
でも、隣には座らない。
放課後も一緒に帰らない。
連絡は最低限。
《資料ありがとう》
《了解》
業務連絡みたいだ。
最初の二日は、落ち着かなかった。
心拍が下がるんじゃないかと不安で、何度も胸に手を当てた。
でも。
どくん。
ちゃんと打っている。
少し速いくらいで。
「朝比奈、最近元気ないな」
三宅が言う。
「別に」
「一ノ瀬とケンカ?」
「違う」
説明できない。
昼休み。
理央は窓際で本を読んでいる。
目は合わない。
それが逆に意識を強くする。
触れない。
話さない。
でも。
視界に入るだけで、心拍は少し上がる。
どくん。
放課後。
俺は一人で歩く。
駅前を抜け、歩道橋を上る。
夕焼けが広がる。
「……寂しいな」
口に出してしまう。
命のために始めた。
なのに今は。
命より。
理央がいない時間のほうがきつい。
スマホを取り出す。
連絡したい。
でも、約束だ。
我慢。
その時。
メッセージが届く。
《今、時間ある?》
心臓が跳ねる。
どくん。
《ある》
即答。
《歩道橋の上》
見られていたらしい。
振り向くと、階段を上がってくる姿が見えた。
距離五メートル。
近いのに遠い。
「約束違反ではない」
理央が言う。
「偶然を装うのも合理的ではない」
相変わらずだ。
「どうした」
「確認」
彼女は俺の前に立つ。
「心拍は安定?」
「してる」
「接触なしで?」
「うん」
理央は少しだけ安堵した顔をする。
「私も」
「え?」
「あなたと話していない間、落ち着かなかった」
胸が強く打つ。
「でも、倒れそうにはならなかった」
「うん」
「つまり、依存ではない」
「そうだな」
沈黙。
夕焼けが赤い。
「寂しかった?」
理央が聞く。
「……ああ」
「私も」
その一言で十分だった。
「じゃあ戻るか?」
「まだ」
理央は首を振る。
「もう少し必要」
「何が」
「確信」
彼女は俺を見る。
「あなたは、私がいなくても生きられる」
「多分な」
「でも、それでも選ぶ?」
「選ぶ」
即答。
鼓動が安定して速い。
「私は」
理央は一瞬、視線を落とす。
「あなたがいなくても生きられる」
「知ってる」
「でも」
数秒。
「あなたがいないと、つまらない」
笑いそうになる。
「それ、好きだろ」
「まだ断定しない」
でも、声は柔らかい。
風が吹く。
距離は一歩分。
「触れていい?」
俺が聞く。
理央は少し考える。
「五秒」
「短い」
「条件」
俺は手を伸ばす。
彼女の指に触れる。
温かい。
どくん。
強く、でも安定。
「五秒経過」
名残惜しく離す。
「二週間後」
理央が言う。
「答えを出す」
「分かった」
「それまで」
「うん」
「好きという言葉は禁止」
「……きついな」
「整理のため」
彼女は階段へ向かう。
途中で振り返る。
「朝比奈」
「何」
「空白は、嫌いじゃない」
「なんで」
「あなたの輪郭がはっきりするから」
そう言って去っていく。
俺は歩道橋に残る。
心拍は安定している。
倒れない。
でも。
理央を選びたい気持ちは、距離を置いても消えない。
むしろ。
はっきりしてきた。
残り三十九日。
二週間後。
答えが出る。
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