武神大公は元妻のストーカーがやめられない。〜元夫に敵視されていると思っている元妻の令嬢と、その元妻をストーキングしている元夫の大公のお話〜

百百百百

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新しいお家はストーカー邸

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大公の屋敷に拉致されて数時間後、私は身支度を早々に済ませ、再び屋敷の門を叩いた。
 罰として言い渡されてしまっては、嫌だと拒むこともできない。
 24時間の監視体制で、随分と自由のきかない立場になってしまった。

 苦肉の策として、ハジメ以外の戦闘キャラは、家に残してきたが……。
 あの二人はもとが不真面目野良猫だから、放牧したら最後、野山を駆け回って戻ってこないかも知れない……。


「アダム達は大丈夫かな?」
「訓練を受けた者達です。心配はご無用かと?それより問題は我々ですよ。」


 溜め息を吐いて、ハジメは屋敷を見上げた。


「懐かしい?」
「俺がいたのは西洋館ではなく和様でしたから、それに待っているのは歓迎ではなく、軟禁です。」
「……お仕事以外、出かけちゃダメなの?」
「当たり前でしょう。何のための監視なんですか。」


 ちぇっと口に出せば、ハジメのチョップが脳天目掛けて飛んできた。
 どうやら、あの二人の100倍真面目な彼は、私にきっちり罰を受けさせるつもりらしい。
 お前はいったい、誰に雇われてるんだ……。


「主人は貴方ですが、以前大公を騙していたのは事実ですし、この程度で済むなら安いものでしょう。」
「罰せられるの私なんだけど……。」
「だから、こうしてお付き合いしてるじゃありませんか。」


 主人の罪は俺の罪です。
 胸を張って言う姿はなんとも凛々しいが、これからのことを考えると不安である。


「立場上、また裏切らないとは言い切れないんだけど?」
「その時は、腹切って共に詫びましょう。」
「やなんだけどこの子、なんでこんなに腹くくれるの。」


 経験値の違いで、ギャップを感じることはしばしばあるが、ハジメは残り二人とは少し違う。
 二人は戦闘狂、もといケンカ大好き人間だが、ハジメは戦うことがあまり好きじゃないらしい。

 もちろん、命の危険や私の身に何か起これば戦うこともやむなしとしている。
 だが、本人は料理をしたり裁縫が得意で、ぶっちゃけ私よりも女子力というものは上かも知れない。
 重厚な扉が開き、ババロくんが軽い笑みを浮かべて招き入れてくれた。


「改めまして、お久しぶりです。モモラ嬢」
「やめてよ。私、もうただの商人だから、嬢で呼ばれる身分じゃ無いわ。」


 クスリと笑って、私から荷物を取ろうとしたババロくんを制した。
 少しババロくんは眉をしかめたが、ハジメの顔をチラリと見てわかりましたと一歩下がった。


「荷物は俺が持ちます。それと、こちらは大公陛下への心ばかりの品物です。」
「陛下は大変酒豪ですものね。」


 私が笑うと、ババロくんは引きつった笑みを浮かべた。
 大公は酒豪ではあるものの、酒癖も相当に悪いのだ。
 彼の酒での武勇伝はまたのお話。


「……大公がお酒を嗜まれるのは、嫌いじゃなかったですか?」
「だって、酔った勢いで手挙げられるのは怖いもの。」


 その言葉に、身体を硬直させたババロくんは、ビーくんを呼びつけて酒を厨房の方へ下げさせてしまった。
 ババロくんもお酒好きだし、せっかく喜んで貰えると思ったのだが、禁酒でもしてるのだろうか?
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