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ストーカー敵現る
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しおりを挟む午後。
さらに雲行きが怪しくなった空は、遠くの方でゴロゴロと音を立てている。
「雨、降ってきそうだね。」
私の言葉に続くようにアダムは外を眺める。
大公は変わらず手元の書類を見ながら、時々横目で私達を見ていた。
監視とは大変である。
「今日はお店休みだし、お外でご飯食べたかったのに。」
昨晩、ハジメと立てた計画はおじゃんになり、アダムは少し寂しそうだ。
「晴れたら、今度こそ行こうね。」
「俺は誘ってくれねぇのか。寂しいねぇ。」
はぁとため息を吐く大公。
私が行きたいの?と問いかけると、大公は顎を触りながら私を見る。
「夫婦の時も、お前とは出かけたことなかったからな。」
「必要以上に仲が良いと思われると、王妃に何されるかわからなかったから。」
貴方も、あのおばさんに噛みつかれるの嫌でしょ?
茶化すような笑みで言えば、口の端を上げて笑った大公。
私は王妃の傀儡だったし、情が移ったと思われたら危険だった。
傀儡のままでいるのは、大公に情報を渡すのにも利用できたし。
私の立ち位置は当時、最も有用な位置だったのかもしれない。
そんなことを思って鼻で笑った。
コンコンと扉を叩く音が聞こえると、きっちりと制服に身を包んだビー君が入ってきた。
「失礼します。大公、お客様がいらっしゃいました。」
ビー君の言葉に客?と首を傾げる大公に、私が行ってらっしゃいと声をかけた。
見知った中とは言え、こうも一日中見張られたんじゃ流石に息が詰まる。
私が次はお菓子でも食べようかと思案する中、言いづらそうにビーくんが私を呼んだ。
「大変申し訳ないのですが、モモラ様も是非一緒にとのことです。」
その言葉に、思わず熱いお茶が喉の奥で逆流しそうになった。
大公邸に来て私を呼ぶ人なんて、限られた人間しかいない。
例えばハロルド、例えばエリザベス嬢。
そしてもう一人、心当たりのある人物がいた。
「レイチェルは元気?」
「はい、客間にお通ししてます。」
「そ、元気でねって伝えて。」
私がそう言い放つと、ピシリと石のように固まるビーくん。
彼を困らせるのは忍びないけど、こちらとしても色々考えがあるのだ。
彼女との再会はまださきの予定。
「フローレンスなら俺もパスだ。」
「ちょっと、仮にも当主が居留守使ってどうするのよ。ちゃんと用件ぐらい聞いてきたら?」
「お前、俺とあいつがそり合わないの知ってるだろ。」
確実に口喧嘩になると言い切る彼は、腰を上げるどころか脚を組み直して太い両腕を背もたれに乗せた。
私も知る限り、大公とフローレンスが仲の良いなんて話聞いたことはない。
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分別をつけてお付き合いしてもらうしかない。
「大公もこうおっしゃってます。どうか後生です。会っていただけませんか?」
ビーくんは深々と頭を下げた。
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私が結婚してから、メイドのいないこの屋敷で幼いながらも私の側にずっといてくれた子だ。
しかし、彼がここまで言うなんてレイチェルはよっぽど彼を脅したのだろうか?
確かめるにも彼女に会ってみないことにはわかるまい。
私は予定よりも早い、彼女との再会を心に決めた。
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