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番外編 元妻とストーカーの馴れ初め。
危険と書いて、冒険と読む
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「妃殿下、もうそろそろ戻られた方がよろしいかと。」
「あのね、あんまり大きな声でそんな呼び方するものじゃないわ。」
さらりと呆れたように私が言うと、ビーくんは眉をしかめて、口を閉じた。
「それに、どうせ家には誰もいないのだから、遅くなったって構わない。」
「夕飯をメイド達が運んでくるはずです。」
「計画があるって言ったでしょう?」
「それは、アナタが王妃の息のかかった者達を操れると言うことですか?」
「だから、大きな声で言うんじゃないってば。」
私より幾分か低い位置にある頭を、拳で小突いた。
ムッとした顔で私を見るビーくん。
解放した子供達と別れ、私たちは王宮とは反対方向にある市街地に来ていた。
「……あの子供達はどうなるんですか?」
「親切な人が拾ってくれるわ。」
「それも計画のうちですか。」
「そうでないなら、ここまでした意味がないでしょう。」
歩いてきた方向で、黒い煙が上がるところを指差すと、ビーくんはため息を吐いた。
オークション会場は、きっと今頃ボヤ騒ぎで人集りが出来てるに違いない。
商品もなくなり、今日のオークションは続行不可能だろう。
願わくば、警備隊達が違法オークションを取り締まってくれればいいのだが。
「警備隊は、きっと買収済みね。」
「オークションの主催者にですか?」
「当然でしょ。こそこそとは言え、あんな王都のど真ん中でするなんて。」
トコトコと石造りの道を歩けば、後ろから聞こえていたはずの可愛らしい足音が途絶えた。
「アナタのやっていることは良いことです。ですが、それが報告しない理由にはなりません。」
「そう言うと思った。君、忠実そうだから。」
ヘラヘラと笑って見せると、ビーくんは帰りましょうとまた言い放った。
彼の言葉に、私はうーんと考えるふりをして、顎に手を当てた。
「じゃあ、最後に見せたいものがあるの。それだけ見てから、考えてくれる?」
ビーくんはしばらく押し黙った後、見たらすぐ帰りますからねと、私に念を押して隣に歩み寄った。
私は彼の手を引いて、すぐ側の路地に入ると早く早くとビーくんを急かす。
彼は握られた手が気まずいのか、やや遠慮がちに握り返すと困ったように眉尻を下げた。
路地を抜けた先には、古びた教会が建っていた。
「昔、東の皇帝と友好の証として建てた教会よ。」
「知っています。前皇帝の御代に、東の帝国シン皇帝と不可侵協定を結ばれた時のものですね。」
「そう。今の皇帝になってから、交流はないに等しいけどね。」
この教会も売りに出されていたし。
そう言って、教会の入り口の横に掲げられた石碑を叩いた。
現皇帝の母、皇太后の弟はシン皇帝に処刑されている。
皇太后が存命の間は、東の帝国との国交は事実上断絶のままだろう。
ビーくんは、ここがどうしたのかと言いたげな顔で、教会をキョロキョロと見回している。
「まぁ、その皇帝がこの教会を放置してくれたおかげで、私はここを安く買い上げたんだけど。」
はぁ?と、語尾の上がった声を出したビーくんに、教会の窓を指さした。
中には参拝用の長椅子。
だがその背もたれには、長い机が備え付けられている。
「この国は、貴族や金持ちの商人は家庭教師を雇って、勉学に励む。でも、それじゃダメ。知識を独占していては、真の発展にはならないわ。」
私がいた世界では、みんなが平等に教育を施された。
それでみんながみんな成功すると言うわけではないけれど、貴族や商人達に虐げられることは少なくなるはずだ。
「私は自由が好き。けれど、裕福な人間ばかりが上にいては、私のような下級貴族や平民は虐げられるばかりよ。」
黙って私の言葉に耳を傾けながら、教会の中を小窓から覗くビーくん。
「ここは、さっき解放した子供達や、スラムの子供、教育を受けられない平民の子供を受け入れてるの。」
決して綺麗事だけで、出来ることではないけどねと、付け加えると困ったように私の顔を覗き込んだ。
どこからともなく、数人の子供達がキャッキャと声を立てて教会の机に座った。
「王子に言うのなら止めない。でも、私がもし援助できなければ、この教会を持続するのは不可能よ。」
私がそう言い切れば、ビーくんはまた小窓から中を除いて触れ合う子供達を眺めた。
「あのね、あんまり大きな声でそんな呼び方するものじゃないわ。」
さらりと呆れたように私が言うと、ビーくんは眉をしかめて、口を閉じた。
「それに、どうせ家には誰もいないのだから、遅くなったって構わない。」
「夕飯をメイド達が運んでくるはずです。」
「計画があるって言ったでしょう?」
「それは、アナタが王妃の息のかかった者達を操れると言うことですか?」
「だから、大きな声で言うんじゃないってば。」
私より幾分か低い位置にある頭を、拳で小突いた。
ムッとした顔で私を見るビーくん。
解放した子供達と別れ、私たちは王宮とは反対方向にある市街地に来ていた。
「……あの子供達はどうなるんですか?」
「親切な人が拾ってくれるわ。」
「それも計画のうちですか。」
「そうでないなら、ここまでした意味がないでしょう。」
歩いてきた方向で、黒い煙が上がるところを指差すと、ビーくんはため息を吐いた。
オークション会場は、きっと今頃ボヤ騒ぎで人集りが出来てるに違いない。
商品もなくなり、今日のオークションは続行不可能だろう。
願わくば、警備隊達が違法オークションを取り締まってくれればいいのだが。
「警備隊は、きっと買収済みね。」
「オークションの主催者にですか?」
「当然でしょ。こそこそとは言え、あんな王都のど真ん中でするなんて。」
トコトコと石造りの道を歩けば、後ろから聞こえていたはずの可愛らしい足音が途絶えた。
「アナタのやっていることは良いことです。ですが、それが報告しない理由にはなりません。」
「そう言うと思った。君、忠実そうだから。」
ヘラヘラと笑って見せると、ビーくんは帰りましょうとまた言い放った。
彼の言葉に、私はうーんと考えるふりをして、顎に手を当てた。
「じゃあ、最後に見せたいものがあるの。それだけ見てから、考えてくれる?」
ビーくんはしばらく押し黙った後、見たらすぐ帰りますからねと、私に念を押して隣に歩み寄った。
私は彼の手を引いて、すぐ側の路地に入ると早く早くとビーくんを急かす。
彼は握られた手が気まずいのか、やや遠慮がちに握り返すと困ったように眉尻を下げた。
路地を抜けた先には、古びた教会が建っていた。
「昔、東の皇帝と友好の証として建てた教会よ。」
「知っています。前皇帝の御代に、東の帝国シン皇帝と不可侵協定を結ばれた時のものですね。」
「そう。今の皇帝になってから、交流はないに等しいけどね。」
この教会も売りに出されていたし。
そう言って、教会の入り口の横に掲げられた石碑を叩いた。
現皇帝の母、皇太后の弟はシン皇帝に処刑されている。
皇太后が存命の間は、東の帝国との国交は事実上断絶のままだろう。
ビーくんは、ここがどうしたのかと言いたげな顔で、教会をキョロキョロと見回している。
「まぁ、その皇帝がこの教会を放置してくれたおかげで、私はここを安く買い上げたんだけど。」
はぁ?と、語尾の上がった声を出したビーくんに、教会の窓を指さした。
中には参拝用の長椅子。
だがその背もたれには、長い机が備え付けられている。
「この国は、貴族や金持ちの商人は家庭教師を雇って、勉学に励む。でも、それじゃダメ。知識を独占していては、真の発展にはならないわ。」
私がいた世界では、みんなが平等に教育を施された。
それでみんながみんな成功すると言うわけではないけれど、貴族や商人達に虐げられることは少なくなるはずだ。
「私は自由が好き。けれど、裕福な人間ばかりが上にいては、私のような下級貴族や平民は虐げられるばかりよ。」
黙って私の言葉に耳を傾けながら、教会の中を小窓から覗くビーくん。
「ここは、さっき解放した子供達や、スラムの子供、教育を受けられない平民の子供を受け入れてるの。」
決して綺麗事だけで、出来ることではないけどねと、付け加えると困ったように私の顔を覗き込んだ。
どこからともなく、数人の子供達がキャッキャと声を立てて教会の机に座った。
「王子に言うのなら止めない。でも、私がもし援助できなければ、この教会を持続するのは不可能よ。」
私がそう言い切れば、ビーくんはまた小窓から中を除いて触れ合う子供達を眺めた。
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