性剣セクシーソード side story

cure456

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彼女の森

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「……いつの間にか、寝てたんだ」
 目を覚ました時、部屋の明かりは消えていた。
 大方、ドミィが蝋を消しに来たのだろう。
 蝋を焚いたまま寝ないようにといつも言われているが、寝てしまうのだから仕方ない。
 明日の小言は覚悟しておかないと。

 着たままのドレスから部屋着に着替え、寝支度をするために部屋を出た。
 そういえば、ユーリアは部屋に来なかった。
 来たけど寝ていたから遠慮した――そんな気の利いた性格ではないし、あの様子だと戻った後も飲み続けたのだろう。多分今頃は客室で寝息を立てているはず。
 そんな事を思いながら廊下を歩いていると、目の前の扉が開き、部屋の中から誰かが出てきた。
 その部屋は、父オルガニックの寝室。
 出てきたのは、父ではない。


「ユーリア?」
「っ!」
 身体を隠すように、手を胸の前で交差させたユーリアは、アミルを拒絶するように視線を外した。 アミルは小走りで駆け寄って、その身体に手を伸ばす。
「ユーリア、貴女どうし――っ!」
 差し出した手は、思わぬ衝撃にはねつけられた。
「……さわら……ないで……」
 かすれたか細い声。蒸気した赤い肌。癖のついたドレス。
 何より違うのは、その匂い。
 ユーリアの全身から漂う、新鮮な花弁を煮詰めて抽出した様な、甘くて、淫靡な香り。
「ごめんなさい。私……帰るから……」
 そう言い残して去っていく彼女に、手を再び伸ばす事は出来なかった。
 振り向き様に見えた、頬から流れた一筋の雫に、声をかける事もかなわなかった。
 何があったかを訊ねる事なんて――出来なかった。
 
  
 あの夜から、半月が過ぎた。
 婚姻に向けて周囲は忙しさを増していたが、アミルの時間はあの夜で止まっていた。
 何度も手紙を書こうと筆を取ったが、何を書いていいのか分からなかった。
 真実を知りたい。
 でも、知るのが怖い。
 知ってしまったら、全てが崩れてしまいそうな気がした。
 求めている『幸せ』が、遠ざかっていってしまいそうで。
 そんなモノは、とうの昔に無くなっていたとしても。


 あの夜から、半月が過ぎた。
 婚姻に向けて周囲は忙しさを増していたが、アミルの時間はあの夜で止まっていた。
 何度も手紙を書こうと筆を取ったが、何を書いていいのか分からなかった。
 真実を知りたい。
 でも、知るのが怖い。
 知ってしまったら、全てが崩れてしまいそうな気がした。
 求めている『幸せ』が、遠ざかっていってしまいそうで。
 そんなモノは、とうの昔に無くなっていたとしても。

「アミル様」
 それは、庭園で花の水やりをしていた時だった。
 声をかけたドミィの様子は、明らかに普段の彼女とは違う。
 その手には手紙が握られており、封蝋の紋章には、見覚えがあった。
「ユーリア様が、お亡くなりになりました」
 手に持った水瓶の重さが増した。
「身投げされたと――」
 地面に落ちた水瓶と同様、世界は簡単に壊れていく。


 暗い部屋の扉には、しっかりと閂がかけられて。
 部屋に閉じこもって、もう何日になるのだろうか。それすらも分からない。
 全ては、自分が悪いのだ。
 あの時、手を差し伸べていれば。
 あの時、声をかけていれば。
 すぐに手紙を出していれば。
 こんな事にはならなかったはず。
 アミルはそう思い込んでいた。

 自分の弱さが憎い。
 自分の臆病さが怖い。
 私は知っていた。私は気づいていた。あの夜、父の部屋で何が起こったのかを。
 気づいていながら、見て見ぬ振りをした。
 些細な事だと思っていたのかもしれない。
 いや、些細な事だと思っていた。
 彼女がソレをどれほど大切にしていたのか知っていたのに。
 ソレを無くした自分は無意味だと。自分は無価値だと。
 命を捨て去る程のモノだとは思っていなかったのだ。

 自分の浅はかさが虚しい。
 自分の愚かさが恥ずかしい。
 全ては私の所為。
 幸せになる資格などない。
 愛される理由などない。

 光など、何処にも見当たらなかった。
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