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二章
おわりのはじまり
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人生とは――幸せとは何か。そんな事ばかりを考えていた。
自分が生きている意味。
生きていく意味。
生きていく理由。
六畳の部屋でソレを見つけるのは、難解な迷路を目隠しで彷徨うのに等しい。
だが、そんな事に気づけるほど聡明でもなく。
小さな箱で繋がる世界が正しいと勘違いしていた。
全ての情報は其処に在り、求める答えを見つけた気になって。
勝手に絶望して。
たった十八年と言う、短い人生を終わらせる事を選んだ。
自分自身を――殺した。
今思えば、何て馬鹿な事をしたんだと自分を情けなく思うけど、もしその場所に、その瞬間に、今の自分が戻れたとしても。
前の自分をぶん殴ってでも止めるかと聞かれても。
多分――それはしない。
だって、僕の人生はソコで終わりじゃなかったから。
目を覚ました場所は、まるで天国と見紛うような、美しい森の中だった。
死んだら『無』になるものだと思っていたから、僕は意識がある事に驚き、そして困惑した。
これからどうなるのか。
いや、どうすればいいのか分からなかったから。
でもそんな時。天使の声が聞こえたんだ。
「ん? 人間か? 何でこんな所に人間がおるのだ」
光を吸い上げ、輝き放つような白銀の髪。
高価な宝石を彷彿とさせる紫の瞳。
すらりと伸びた手足に、その扇情的な身体を包む黒のドレス。
冷静に思い返してみると、僕がイメージしている天使とはまるで正反対なんだけど、死後の世界に現れた、人智を超越したような美貌を備えた彼女を、僕は天使だと思ってしまったわけだ。
「天使? 余が天使だと? あっはっは。これは愉快な話だ」
笑われた。
真っ白な歯を覗かせ、心の底から楽しそうに、可笑しそうに、彼女は笑い飛ばした。
「ガジガラ……? 魔界……?」
女性の言った話は、まるで理解出来なかった。
天国だと思っていた此処は、『ワーワルツ』と呼ばれるこの世界の、ガジガラと言う名の『魔界』
突然そんな事を言われて、素直に受け入れられるほど純粋な子供じゃない。
だけど、冷静に熟考出来るほど聡明な大人でもなく。
僕の口から無意識に零れ落ちたのは、
「そうだ。もう一回死んでみればいいのかもしれない」
安易で。
後ろ向きで。
僕らしい結論だった。
「一度死んでもまだ足りぬと言うのか。哀れな人間だな」
彼女はそう言って、すらりと伸びた手を真っ直ぐに上げ、振り下ろす。
何が起きたかを知るのは、地面に落ちた右腕と、鮮血と共に牙を剥いた、恐ろしい程の激痛が走ってからだった。
――殺される。と思った。
死んだはずなのに。
死ぬのを望んでいたはずなのに。
肉が千切れ、骨が砕ける音を聞きながら感じた恐怖。
何も出来ず、ただ命が奪われていく恐怖。
六畳の部屋で感じたものとは違う。
本当の絶望。
そして、僕は願った。薄れ行く意識の中で。
「助……けて……」
生きたいと願った。
目を覚ました時には、僕の身体には傷一つなかった。
傷どころか、身に着けていた服すらなかった。
――全裸だった。
そして、彼女に膝枕をさせていた。
その時の心境と言ったら、完全にパニックである。
全裸で、女性の膝に頭を乗せているのだ。もはやわけが分からない。
それどころか、あろうことか、僕の右手が、彼女の豊満な胸を鷲掴みにしていたのだ。
余りにも魅力的すぎてついつい、などと言う事はなく。いつの間にか寄生獣にとりつかれた、なんて事もない。
僕は本当に、完全に気を失っていたのだから。まさしく無意識なのだから。
全裸で、膝枕で、知らない女性の胸を揉んだ。
ファーストタッチだ。
あの瞬間の事は、今でもはっきりと覚えている。
もちろん、柔らかい胸の感触も。
だが、彼女と目が合った瞬間に、そんなものは消し飛んだ。
どうしてこんな状況になっているのかは理解出来なかったが、確かな事が一つだけあった。
彼女は、僕を殺そうとしたのだ。
腕を切り落とし、骨を砕き。
絶望的なまでの暴力によって、僕の命を奪おうとした事実。
全身を流れる血液が全て凍りついてしまうような恐怖心。
命乞いの台詞より先に、涙が溢れた。号泣と言ってもいい。
そんな僕を見て、自分の胸を鷲掴んだ男を見て、彼女がとった行動は意外なものだった。
優しげな笑みを浮かべ、「すまなかったな」と僕の額を撫でる。
不思議な感覚だった。
彼女の手が動くたびに、恐怖心が流され、硬直した身体がほぐれていく。
この瞬間。ここは天国で、まさに彼女は天使だった。
そして、僕は気づいたんだ。
自分でも見ないフリをして閉じ込めてた『生きたい』と言う感情に。
そして、感謝した。
その感情を引き出してくれた彼女に。
一度死んで生き返ったのに、尚も死を選択した僕を、
――生まれ変わらせてくれた事に。
彼女と話しているうちに、此処が僕の住んでいた世界とはまるで違う事を理解した。
重傷を負ったはずの身体は癒え、彼女が手をかざしただけで大樹が燃える光景を目の前で見て、空想上のモノだった魔法が存在する事を知った。
彼女のちょっとしたイタズラで、胸の柔らかさを再確認したのも忘れてはいけない。
結局の所、どうしてこの世界に来てしまった理由は全く分からないが、僕はこの世界で生きていこうと決めた。
決して初めて触れた女性の肌(主に胸)の柔らかさに心変わりしたわけではない。確かに魅力的で、もっともっとと欲する中毒性はあったが。
何か――意味があるんじゃないかと思ったんだ。
そんな僕に、彼女が餞別としてくれたモノ。
彼女の髪の色にも似た白銀の鎧と刀身の存在しない剣『セクシーソード』だった。
命名したのは僕じゃないという事を、自己保身のために付け加えておこう。
セクシーソードは『魔装具』と呼ばれる、魔力で作られた特別な装備で、その効果は『女性の精気を力に変える』というなんとも呪われた? 装備だった。
何しろ僕はそれまで女性とは無縁の人生を送ってきたわけで。剣を持った事も初めてだというのに、さらに女性の精気が必要となれば、そのハードルは雲より高い。
持っているスキルは賢者タイムと、使えそうな魔法と言えば『ドウテイン』だ。前者は自身のやる気を奪うデバフスキルだし、後者はもう意味が分からない。きっとろくな効力はないだろう。
別れ際、彼女は名前を教えてはくれなかった。
――もう一度会えたら教えてやろう。
そう言って笑った彼女を見て、僕は必ず生きてまた会おうと決めた。
もしかしたら、彼女に恋心を抱いていたのかもしれない。
彼女の名前はパララ・アミル。
僕が彼女の命を奪う事になるなんて、まだこの時は知らなかった。
そして見知らぬ異世界で、凶暴な魔物と戦いながら旅を――なんて始まれば格好がつくんだろうか。
残念だが、そんな事はなかった。
アミルとの別れ際、「人間界に送ってやる」と彼女が僕に使った魔法は、転移魔法や移動魔法の類ではなく、
『対象を吹き飛ばす』
と言う何とも大雑把な魔法で、猛スピードで落下した時は、三度目の死も覚悟してしまったり。落ちたのが池じゃなかったら、多分完全に死んでいたんだろうけど。
でもそこで――彼女達に出会った。
今でも鮮明に思い出す事が出来る。というか、多分一生忘れる事はない。しっかりと大脳皮質に永久保存済みだ。
第一印象は――おっぱいだった。
大小さまざまな六つのおっぱい。「あ、おっぱいがいっぱいだ」なんて下らないことを考えていた事も覚えている。
誤解なきように言っておくけれど、別に僕はおっぱいフェチなわけじゃなく、出逢った女性の顔より先に胸を凝視するほど失礼なわけでもない。
では何故か。
何故第一印象がおっぱいだったのか。
答えは簡単だ。
彼女達は全裸だった。
生命力に溢れた木々の緑が周囲を染め、差し込んだ木漏れ日が水面に反射して輝く中。
彼女達三人は――全裸だった。
何故全裸だったかと言うと、それは彼女達が沐浴をしていたわけで、いくら異世界だとは言え、服を着たまま水に浸かる風習はないわけで。当然と言えば当然なんだろうけど、そんな状況など瞬時に把握できるはずもなく。
――あれ? もしかして僕はまた死んでしまったんだろうか? 実は地面に激突して三度目の死を迎え、天国に召されてしまったのではないか。そして目の前にいる彼女達は今度こそ本当の天使なんじゃないだろうか――。
何て一瞬考えたりもしたが、全裸の天使が発したのは讃美歌などではなく、
「へ、へ、へ、変態だあああああああああああああ! 死にさらせええええええ!」
完全なる誤解と、向けられた敵意――殺意だった。
そんな一悶着(一悶着と言う生易しいモノではなかった)ありながらも何とか誤解を解くことに成功し、彼女達と言葉を交わした。
見る者を威圧するような真っ赤な髪をした少女の名前はニーヤ。
口調も荒く、(叫び声を上げたのは彼女だった)躊躇なく人の額に向けて短剣を投げつけてくるような凶暴さを持ちながらも、実は情に厚く、仲間思いの女の子。
おっぱいは中。
ほんわかとしたオーラが全身を包む、絹のようなブロンドヘアーの女性はモミさん。
三人のお姉さん的存在で、知的で、優しくて、全ての罪を許し、包み込んでくれそうな雰囲気のある女性。
(後日判明するのだが、戦闘時はその限りではない)
おっぱいは堂々の大。
そして最後の一人。
傍から見ればまだランドセルを背負っていても不思議じゃない程小さく、静寂をその身に宿したような青い髪が印象的な幼女、ペロ様。
彼女は神の末裔で、神の力を持った神の子。いや、神様そのものだと言ってもいいのかもしれない。口数は少なく、表情も豊かではないが、誰よりも素直で、純粋な子。
おっぱいは微乳にして美乳。
抑揚のないつるぺたボディはまさに神が与えたもうた聖なる器のようでさえある。
大中はともかく、小はダメだろう、犯罪だろうという声が聞こえてこなくもないが。
彼女達は僕と同じ十八歳で、この世界ではお酒も嗜める立派な大人なのだ。だから法的に(この世界に青少年保護育成条例のようなモノが存在するのかは不明だが)は多分セーフなんじゃないかと思う。人としてどうかと問われれば返す言葉はないけれど。
少し脱線したが話を戻そう。
生まれ育った村を魔物に滅ぼされ、魔王を討伐せんと魔界に向かう彼女達は、異世界から来て(この時は名前も知らない)アミルに会いに魔界に行きたいなどと口走る、素性の分からない僕を旅に同行させてくれたのである。
こうして、ワーワルツという異世界で、彼女達との旅が――僕の二度目の人生が始まった。それは三ヶ月程前の話だ。
まるで勝手の違う世界では困難も沢山あったけれど、楽しかった。
本気で笑って、本気で泣いて。
何度も死にそうになりながらも。
日々『生きてる』って事を実感した。
パソコンのディスプレイだけが照らす暗い部屋で過ごしている何倍も。
生きて朝を迎えられる事に感謝した。
明日は何が起こるんだろう。
この道の先には何があるんだろう。
毎日わくわくしていた子供時代に戻ったような。そんな感覚。
本当に楽しかった。
もう思い残す事は――。
自分が生きている意味。
生きていく意味。
生きていく理由。
六畳の部屋でソレを見つけるのは、難解な迷路を目隠しで彷徨うのに等しい。
だが、そんな事に気づけるほど聡明でもなく。
小さな箱で繋がる世界が正しいと勘違いしていた。
全ての情報は其処に在り、求める答えを見つけた気になって。
勝手に絶望して。
たった十八年と言う、短い人生を終わらせる事を選んだ。
自分自身を――殺した。
今思えば、何て馬鹿な事をしたんだと自分を情けなく思うけど、もしその場所に、その瞬間に、今の自分が戻れたとしても。
前の自分をぶん殴ってでも止めるかと聞かれても。
多分――それはしない。
だって、僕の人生はソコで終わりじゃなかったから。
目を覚ました場所は、まるで天国と見紛うような、美しい森の中だった。
死んだら『無』になるものだと思っていたから、僕は意識がある事に驚き、そして困惑した。
これからどうなるのか。
いや、どうすればいいのか分からなかったから。
でもそんな時。天使の声が聞こえたんだ。
「ん? 人間か? 何でこんな所に人間がおるのだ」
光を吸い上げ、輝き放つような白銀の髪。
高価な宝石を彷彿とさせる紫の瞳。
すらりと伸びた手足に、その扇情的な身体を包む黒のドレス。
冷静に思い返してみると、僕がイメージしている天使とはまるで正反対なんだけど、死後の世界に現れた、人智を超越したような美貌を備えた彼女を、僕は天使だと思ってしまったわけだ。
「天使? 余が天使だと? あっはっは。これは愉快な話だ」
笑われた。
真っ白な歯を覗かせ、心の底から楽しそうに、可笑しそうに、彼女は笑い飛ばした。
「ガジガラ……? 魔界……?」
女性の言った話は、まるで理解出来なかった。
天国だと思っていた此処は、『ワーワルツ』と呼ばれるこの世界の、ガジガラと言う名の『魔界』
突然そんな事を言われて、素直に受け入れられるほど純粋な子供じゃない。
だけど、冷静に熟考出来るほど聡明な大人でもなく。
僕の口から無意識に零れ落ちたのは、
「そうだ。もう一回死んでみればいいのかもしれない」
安易で。
後ろ向きで。
僕らしい結論だった。
「一度死んでもまだ足りぬと言うのか。哀れな人間だな」
彼女はそう言って、すらりと伸びた手を真っ直ぐに上げ、振り下ろす。
何が起きたかを知るのは、地面に落ちた右腕と、鮮血と共に牙を剥いた、恐ろしい程の激痛が走ってからだった。
――殺される。と思った。
死んだはずなのに。
死ぬのを望んでいたはずなのに。
肉が千切れ、骨が砕ける音を聞きながら感じた恐怖。
何も出来ず、ただ命が奪われていく恐怖。
六畳の部屋で感じたものとは違う。
本当の絶望。
そして、僕は願った。薄れ行く意識の中で。
「助……けて……」
生きたいと願った。
目を覚ました時には、僕の身体には傷一つなかった。
傷どころか、身に着けていた服すらなかった。
――全裸だった。
そして、彼女に膝枕をさせていた。
その時の心境と言ったら、完全にパニックである。
全裸で、女性の膝に頭を乗せているのだ。もはやわけが分からない。
それどころか、あろうことか、僕の右手が、彼女の豊満な胸を鷲掴みにしていたのだ。
余りにも魅力的すぎてついつい、などと言う事はなく。いつの間にか寄生獣にとりつかれた、なんて事もない。
僕は本当に、完全に気を失っていたのだから。まさしく無意識なのだから。
全裸で、膝枕で、知らない女性の胸を揉んだ。
ファーストタッチだ。
あの瞬間の事は、今でもはっきりと覚えている。
もちろん、柔らかい胸の感触も。
だが、彼女と目が合った瞬間に、そんなものは消し飛んだ。
どうしてこんな状況になっているのかは理解出来なかったが、確かな事が一つだけあった。
彼女は、僕を殺そうとしたのだ。
腕を切り落とし、骨を砕き。
絶望的なまでの暴力によって、僕の命を奪おうとした事実。
全身を流れる血液が全て凍りついてしまうような恐怖心。
命乞いの台詞より先に、涙が溢れた。号泣と言ってもいい。
そんな僕を見て、自分の胸を鷲掴んだ男を見て、彼女がとった行動は意外なものだった。
優しげな笑みを浮かべ、「すまなかったな」と僕の額を撫でる。
不思議な感覚だった。
彼女の手が動くたびに、恐怖心が流され、硬直した身体がほぐれていく。
この瞬間。ここは天国で、まさに彼女は天使だった。
そして、僕は気づいたんだ。
自分でも見ないフリをして閉じ込めてた『生きたい』と言う感情に。
そして、感謝した。
その感情を引き出してくれた彼女に。
一度死んで生き返ったのに、尚も死を選択した僕を、
――生まれ変わらせてくれた事に。
彼女と話しているうちに、此処が僕の住んでいた世界とはまるで違う事を理解した。
重傷を負ったはずの身体は癒え、彼女が手をかざしただけで大樹が燃える光景を目の前で見て、空想上のモノだった魔法が存在する事を知った。
彼女のちょっとしたイタズラで、胸の柔らかさを再確認したのも忘れてはいけない。
結局の所、どうしてこの世界に来てしまった理由は全く分からないが、僕はこの世界で生きていこうと決めた。
決して初めて触れた女性の肌(主に胸)の柔らかさに心変わりしたわけではない。確かに魅力的で、もっともっとと欲する中毒性はあったが。
何か――意味があるんじゃないかと思ったんだ。
そんな僕に、彼女が餞別としてくれたモノ。
彼女の髪の色にも似た白銀の鎧と刀身の存在しない剣『セクシーソード』だった。
命名したのは僕じゃないという事を、自己保身のために付け加えておこう。
セクシーソードは『魔装具』と呼ばれる、魔力で作られた特別な装備で、その効果は『女性の精気を力に変える』というなんとも呪われた? 装備だった。
何しろ僕はそれまで女性とは無縁の人生を送ってきたわけで。剣を持った事も初めてだというのに、さらに女性の精気が必要となれば、そのハードルは雲より高い。
持っているスキルは賢者タイムと、使えそうな魔法と言えば『ドウテイン』だ。前者は自身のやる気を奪うデバフスキルだし、後者はもう意味が分からない。きっとろくな効力はないだろう。
別れ際、彼女は名前を教えてはくれなかった。
――もう一度会えたら教えてやろう。
そう言って笑った彼女を見て、僕は必ず生きてまた会おうと決めた。
もしかしたら、彼女に恋心を抱いていたのかもしれない。
彼女の名前はパララ・アミル。
僕が彼女の命を奪う事になるなんて、まだこの時は知らなかった。
そして見知らぬ異世界で、凶暴な魔物と戦いながら旅を――なんて始まれば格好がつくんだろうか。
残念だが、そんな事はなかった。
アミルとの別れ際、「人間界に送ってやる」と彼女が僕に使った魔法は、転移魔法や移動魔法の類ではなく、
『対象を吹き飛ばす』
と言う何とも大雑把な魔法で、猛スピードで落下した時は、三度目の死も覚悟してしまったり。落ちたのが池じゃなかったら、多分完全に死んでいたんだろうけど。
でもそこで――彼女達に出会った。
今でも鮮明に思い出す事が出来る。というか、多分一生忘れる事はない。しっかりと大脳皮質に永久保存済みだ。
第一印象は――おっぱいだった。
大小さまざまな六つのおっぱい。「あ、おっぱいがいっぱいだ」なんて下らないことを考えていた事も覚えている。
誤解なきように言っておくけれど、別に僕はおっぱいフェチなわけじゃなく、出逢った女性の顔より先に胸を凝視するほど失礼なわけでもない。
では何故か。
何故第一印象がおっぱいだったのか。
答えは簡単だ。
彼女達は全裸だった。
生命力に溢れた木々の緑が周囲を染め、差し込んだ木漏れ日が水面に反射して輝く中。
彼女達三人は――全裸だった。
何故全裸だったかと言うと、それは彼女達が沐浴をしていたわけで、いくら異世界だとは言え、服を着たまま水に浸かる風習はないわけで。当然と言えば当然なんだろうけど、そんな状況など瞬時に把握できるはずもなく。
――あれ? もしかして僕はまた死んでしまったんだろうか? 実は地面に激突して三度目の死を迎え、天国に召されてしまったのではないか。そして目の前にいる彼女達は今度こそ本当の天使なんじゃないだろうか――。
何て一瞬考えたりもしたが、全裸の天使が発したのは讃美歌などではなく、
「へ、へ、へ、変態だあああああああああああああ! 死にさらせええええええ!」
完全なる誤解と、向けられた敵意――殺意だった。
そんな一悶着(一悶着と言う生易しいモノではなかった)ありながらも何とか誤解を解くことに成功し、彼女達と言葉を交わした。
見る者を威圧するような真っ赤な髪をした少女の名前はニーヤ。
口調も荒く、(叫び声を上げたのは彼女だった)躊躇なく人の額に向けて短剣を投げつけてくるような凶暴さを持ちながらも、実は情に厚く、仲間思いの女の子。
おっぱいは中。
ほんわかとしたオーラが全身を包む、絹のようなブロンドヘアーの女性はモミさん。
三人のお姉さん的存在で、知的で、優しくて、全ての罪を許し、包み込んでくれそうな雰囲気のある女性。
(後日判明するのだが、戦闘時はその限りではない)
おっぱいは堂々の大。
そして最後の一人。
傍から見ればまだランドセルを背負っていても不思議じゃない程小さく、静寂をその身に宿したような青い髪が印象的な幼女、ペロ様。
彼女は神の末裔で、神の力を持った神の子。いや、神様そのものだと言ってもいいのかもしれない。口数は少なく、表情も豊かではないが、誰よりも素直で、純粋な子。
おっぱいは微乳にして美乳。
抑揚のないつるぺたボディはまさに神が与えたもうた聖なる器のようでさえある。
大中はともかく、小はダメだろう、犯罪だろうという声が聞こえてこなくもないが。
彼女達は僕と同じ十八歳で、この世界ではお酒も嗜める立派な大人なのだ。だから法的に(この世界に青少年保護育成条例のようなモノが存在するのかは不明だが)は多分セーフなんじゃないかと思う。人としてどうかと問われれば返す言葉はないけれど。
少し脱線したが話を戻そう。
生まれ育った村を魔物に滅ぼされ、魔王を討伐せんと魔界に向かう彼女達は、異世界から来て(この時は名前も知らない)アミルに会いに魔界に行きたいなどと口走る、素性の分からない僕を旅に同行させてくれたのである。
こうして、ワーワルツという異世界で、彼女達との旅が――僕の二度目の人生が始まった。それは三ヶ月程前の話だ。
まるで勝手の違う世界では困難も沢山あったけれど、楽しかった。
本気で笑って、本気で泣いて。
何度も死にそうになりながらも。
日々『生きてる』って事を実感した。
パソコンのディスプレイだけが照らす暗い部屋で過ごしている何倍も。
生きて朝を迎えられる事に感謝した。
明日は何が起こるんだろう。
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