43 / 154
二章
フラグを立てるだけの簡単なお仕事
しおりを挟む
デカフグリ。
僕達が一週間彷徨い続け、辿り着いた町の名前だ。
それ程大きくはないのだが、どうやら主要都市を結ぶ道の中間地点らしく、町は商人をはじめ、多くの人で溢れていた。
中間地点――デカフグリ。
デカフグリ……。何だかとてもソワソワするのは何故だろうか。
空耳かと思いつつ、モミさんに確認をする。
「名前ですか? デカフグリですよ?」
念のためニーヤにも確認する。
「え? デカフグリだってば」
念には念を。ペロ様にも言わせてみる。
「デカフグリ」
どうやら間違いはなさそうだ。
わざわざ三人に聞いて(言わせて)謎の満足感に満たされていると、モミさんが口を開いた。
「これだけ人が居ると、お仕事もそれなりにありそうですね」
そう、僕達は無一文だ。
本当は前の町で路銀を稼いでおくのが正しい選択だったんだろうが、その選択肢は無かった。
あの悪夢のような出来事を一刻も早く忘れたかったから。
「アタシ楽なやつがいいな。一時間金貨一枚くらいで」
両手を頭の後ろで交差させながら、ニーヤが気だるそうに呟く。
金欠の原因が自分だとは微塵も思っていない様子。
そのメンタルの強さを少し分けて欲しい。
まぁ、僕にニーヤを責める資格はない。
そもそも僕はこの旅で、一銭たりともお金を払っていないのだ。
異国のお金など持って無い――無い袖は振れないと言ってしまえば身も蓋も無い話だが、気にしなくていいと言ってくれる彼女達に、それでも負い目を感じていたのは正直なところ。
異世界でヒモ生活――決して理想的ではない。
であるからして。
僕はここらで恩返しをしておこうと決めていた。
僕達が向かった先は、町の酒場だった。
とは言っても酒を飲みに来たわけではなく。
大抵の酒場には、外に看板が立てられている。
そこには色々な紙が貼られているのだが、その内容は仕事に関するモノが多い。
人が集まる場所に、自然と情報は集まる。
言ってみれば、酒場がハローワークのような役割を果たしているわけだ。
「ん~。何かパッとした仕事はないね。これとか安すぎでしょ。誰がやんのよ」
「でも、こっちではどうでしょうか? ニーヤにもってこいのお仕事だと思いますよ」
僕も負けじと貼られた紙に目を通すが、残念な事にこの世界の文字には馴染みが無く、当初よりマシにはなったものの、僕の識字率は未だ底辺を彷徨っている。
「何か僕に出来そうなのあるかな? 単純な仕事とか、えっと――力仕事とかでも」
単純な仕事。
僕はそれを、昔は何よりも毛嫌いしていた。
効率化された社会で、そんな職業に就くのはみっともない事だと思っていた。
どんな仕事でも、誰かの役に立っている事なんて考えもしなかった。
『職業に貴賎なし』なんて言葉を知ってはいても。
自分に何が出来る訳でもないのに、思い上がって、勘違いして。
出来る事をやる。
そんな単純な事さえも出来なかった。
だから、今はやるんだ。
優れた頭脳も腕力も無い、何にも出来ない僕にも出来る事を。
「――特にないわね」
「ええっ!?」
切って捨てるような言葉に、思わず声が漏れた。
いや、そこは何かしらあろうよ!? 何かさせようよ!?
めっちゃ意気込んでた僕が馬鹿みたいじゃないか!
「残念ですが、あるのは技術職ばかりですね。単純な仕事となると職人の下働きなどがありますが、とても一日二日で終わるようなモノではありませんし――」
そう言って、モミさんが一枚の紙に視線を写す。
「これしかないかな……」
「みたいですね……」
二人が浮かない顔で眺めている紙。
その紙に書いてある字を、現代風に訳せばこんなところだろうか。
『急募! 女性限定! 簡単で稼げるお仕事です!』
僕達が一週間彷徨い続け、辿り着いた町の名前だ。
それ程大きくはないのだが、どうやら主要都市を結ぶ道の中間地点らしく、町は商人をはじめ、多くの人で溢れていた。
中間地点――デカフグリ。
デカフグリ……。何だかとてもソワソワするのは何故だろうか。
空耳かと思いつつ、モミさんに確認をする。
「名前ですか? デカフグリですよ?」
念のためニーヤにも確認する。
「え? デカフグリだってば」
念には念を。ペロ様にも言わせてみる。
「デカフグリ」
どうやら間違いはなさそうだ。
わざわざ三人に聞いて(言わせて)謎の満足感に満たされていると、モミさんが口を開いた。
「これだけ人が居ると、お仕事もそれなりにありそうですね」
そう、僕達は無一文だ。
本当は前の町で路銀を稼いでおくのが正しい選択だったんだろうが、その選択肢は無かった。
あの悪夢のような出来事を一刻も早く忘れたかったから。
「アタシ楽なやつがいいな。一時間金貨一枚くらいで」
両手を頭の後ろで交差させながら、ニーヤが気だるそうに呟く。
金欠の原因が自分だとは微塵も思っていない様子。
そのメンタルの強さを少し分けて欲しい。
まぁ、僕にニーヤを責める資格はない。
そもそも僕はこの旅で、一銭たりともお金を払っていないのだ。
異国のお金など持って無い――無い袖は振れないと言ってしまえば身も蓋も無い話だが、気にしなくていいと言ってくれる彼女達に、それでも負い目を感じていたのは正直なところ。
異世界でヒモ生活――決して理想的ではない。
であるからして。
僕はここらで恩返しをしておこうと決めていた。
僕達が向かった先は、町の酒場だった。
とは言っても酒を飲みに来たわけではなく。
大抵の酒場には、外に看板が立てられている。
そこには色々な紙が貼られているのだが、その内容は仕事に関するモノが多い。
人が集まる場所に、自然と情報は集まる。
言ってみれば、酒場がハローワークのような役割を果たしているわけだ。
「ん~。何かパッとした仕事はないね。これとか安すぎでしょ。誰がやんのよ」
「でも、こっちではどうでしょうか? ニーヤにもってこいのお仕事だと思いますよ」
僕も負けじと貼られた紙に目を通すが、残念な事にこの世界の文字には馴染みが無く、当初よりマシにはなったものの、僕の識字率は未だ底辺を彷徨っている。
「何か僕に出来そうなのあるかな? 単純な仕事とか、えっと――力仕事とかでも」
単純な仕事。
僕はそれを、昔は何よりも毛嫌いしていた。
効率化された社会で、そんな職業に就くのはみっともない事だと思っていた。
どんな仕事でも、誰かの役に立っている事なんて考えもしなかった。
『職業に貴賎なし』なんて言葉を知ってはいても。
自分に何が出来る訳でもないのに、思い上がって、勘違いして。
出来る事をやる。
そんな単純な事さえも出来なかった。
だから、今はやるんだ。
優れた頭脳も腕力も無い、何にも出来ない僕にも出来る事を。
「――特にないわね」
「ええっ!?」
切って捨てるような言葉に、思わず声が漏れた。
いや、そこは何かしらあろうよ!? 何かさせようよ!?
めっちゃ意気込んでた僕が馬鹿みたいじゃないか!
「残念ですが、あるのは技術職ばかりですね。単純な仕事となると職人の下働きなどがありますが、とても一日二日で終わるようなモノではありませんし――」
そう言って、モミさんが一枚の紙に視線を写す。
「これしかないかな……」
「みたいですね……」
二人が浮かない顔で眺めている紙。
その紙に書いてある字を、現代風に訳せばこんなところだろうか。
『急募! 女性限定! 簡単で稼げるお仕事です!』
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる