98 / 154
二章
力の意味
しおりを挟む
「いたたた……」
拘束を解かれた僕は、うっ血した上半身に恐怖を感じながらも、腕輪状態になっていたセクシーアーマーを展開させる。
「ところで――どうなってるの?」
未だ状況が把握出来ない。
周囲には簡素な家らしき物が沢山あって、ここがエルフの集落である事は分かった。
でも、どうしてこんな所にいるのか、何で僕が縛られていたのか。セクシーアーマーが解除されていたのか。分からない事が多すぎる。
「どうなってるのって。こっちが聞きたいわよ。覚えてないわけ?」
「ミドリさんに殺されたって事は覚えてるけど――あれ? 何で生きてるんだ? もしかしてペロ様が?」
ペロ様の魔法は、死者を生き返られる。
だけど、ペロ様は首を振った。
「ケンセイさんは突然生き返ったんですよ。そして、生き返った後のケンセイさんは、変態していました」
――変態していた。
変態するって何だ……? 変態行為に及んだって事か?
ゾンビのように生き返り、変態行為に及んだと言うのか?
「あ、いえ。その変態ではなくてですね。魔装具が変態していたんですよ。強力な魔力を注いだ魔装具はその形を変態させるんです。伝説の類《たぐい》で、知識として知っていた程度ですが。確かにあの時は変態していました」
変態――変態《メタモルフォーゼ》か。
セクシーアーマーが、その形態を変えた。
だから僕は裸だったのか。
一つ謎が解けた。何にせよ、変態行為に及んだわけではないというだけで救われた。
「いや、その後変態行為してたわよ」
「何だって!?」
「アンタ。片っ端から乱暴しようとしてたのよ。実際に酷い事をしたわけじゃないけど。ってか本当に覚えてないわけ……?」
ニーヤの責めるような瞳。
意識を失ったまま暴走していたのか?
セクシーソードの呪いは完全な無意識下でも発動すると言うのか?
ダメだ。全然覚えてない。
「それで……どうなったの……?」
「アタシも分からないけど、ペロが止めたみたいよ。ペヌスリンを使ったんだって」
魔力を抑える秘薬ペヌスリン。
それをペロ様が使ったのか。
「ありがと――あれ?」
お礼を言おうと振り向くと、さっきまでいたペロ様の姿はなく、遠くでミドリさんと話をしていた。
彼女が自分から他人と接する場面を見たのはこれが初めてで。
神の血を引く者同士が並んでいる姿は、何処か神秘的で。
少しだけ、彼女が遠くに感じた。
「ペヌスリンも手に入った事だし、さっさと帰ろうよ。早くお風呂入りたいしさ。じゃ、アタシ馬車戻ってるから、運転よろしく~」
言うだけ言って、そのままスタスタと馬車に向かうニーヤ。
「人が生死の境を彷徨ったって言うのに、ずいぶん軽いな……」
まぁ、ニーヤらしいといえばそうなんだけど。
「そうでもないんですよ」
モミさんが悪戯に微笑む。
「もう半狂乱で凄かったんですから」
「え。ホントですか?」
「モミ! 余計な事言ったら許さないからね!」
その距離で聞こえるのかよ。地獄耳すぎるだろ。
「では、私も馬車に戻ってますね」
ニーヤの後を追うように、モミさんも馬車に向かった。
「おいお前」
背後から聞こえた声に振り返ると、ミドリさんが立っていた。身体の前で組んだ腕が、胸部を強調している。
「っ! お前! また胸を触るつもりかっ!?」
「えっ!? い、いや違います違います!」
視線に気づいたミドリさんが警戒感をむき出しに構える。
『また』って事は暴走中に揉んだのか……。
くそっ! 何で覚えてないんだ! これじゃあ揉み損じゃないか!
「ふん。まぁいい。お前に一つ忠告しておこう」
ミドリさんの真剣な表情。
何を告げられるのか、思わず身構える。
「その力――」
力? 暴走した時の事か?
「――やっぱ止めた」
「ええっ!?」
何で止めるの!? 生殺しはセクシーソードだけで十分だよ!?
「冷静に考えたら、なぜ胸を揉まれた挙句助言までくれてやらねばならんのだ」
そう言われると返す言葉もない。
「ほら、さっさと帰れ。人間などにいつまでもいられては迷惑だ」
手で追い払う仕草をする。
「あ、はい……。あ、あの、ミドリさん。ペヌスリン、ありがとうございまし――!?」
言い終わる前に――首を締められた。
「ミルドルドトーリだ! 人の名前を色みたいに略すな!」
「す、すいません……でした……」
舌打ちと共に僕を突き放し、背中を向ける。
「――お前の力、それが何なのか。『何の力』なのか、よく考えるといい」
「え?」
振り向いたときには、既に彼女は歩き出していた。
止まる気配もなく、あっと言う間に距離が離れていく。
「僕の――力?」
一人残された僕は、彼女の言葉の意味を考えていた。
拘束を解かれた僕は、うっ血した上半身に恐怖を感じながらも、腕輪状態になっていたセクシーアーマーを展開させる。
「ところで――どうなってるの?」
未だ状況が把握出来ない。
周囲には簡素な家らしき物が沢山あって、ここがエルフの集落である事は分かった。
でも、どうしてこんな所にいるのか、何で僕が縛られていたのか。セクシーアーマーが解除されていたのか。分からない事が多すぎる。
「どうなってるのって。こっちが聞きたいわよ。覚えてないわけ?」
「ミドリさんに殺されたって事は覚えてるけど――あれ? 何で生きてるんだ? もしかしてペロ様が?」
ペロ様の魔法は、死者を生き返られる。
だけど、ペロ様は首を振った。
「ケンセイさんは突然生き返ったんですよ。そして、生き返った後のケンセイさんは、変態していました」
――変態していた。
変態するって何だ……? 変態行為に及んだって事か?
ゾンビのように生き返り、変態行為に及んだと言うのか?
「あ、いえ。その変態ではなくてですね。魔装具が変態していたんですよ。強力な魔力を注いだ魔装具はその形を変態させるんです。伝説の類《たぐい》で、知識として知っていた程度ですが。確かにあの時は変態していました」
変態――変態《メタモルフォーゼ》か。
セクシーアーマーが、その形態を変えた。
だから僕は裸だったのか。
一つ謎が解けた。何にせよ、変態行為に及んだわけではないというだけで救われた。
「いや、その後変態行為してたわよ」
「何だって!?」
「アンタ。片っ端から乱暴しようとしてたのよ。実際に酷い事をしたわけじゃないけど。ってか本当に覚えてないわけ……?」
ニーヤの責めるような瞳。
意識を失ったまま暴走していたのか?
セクシーソードの呪いは完全な無意識下でも発動すると言うのか?
ダメだ。全然覚えてない。
「それで……どうなったの……?」
「アタシも分からないけど、ペロが止めたみたいよ。ペヌスリンを使ったんだって」
魔力を抑える秘薬ペヌスリン。
それをペロ様が使ったのか。
「ありがと――あれ?」
お礼を言おうと振り向くと、さっきまでいたペロ様の姿はなく、遠くでミドリさんと話をしていた。
彼女が自分から他人と接する場面を見たのはこれが初めてで。
神の血を引く者同士が並んでいる姿は、何処か神秘的で。
少しだけ、彼女が遠くに感じた。
「ペヌスリンも手に入った事だし、さっさと帰ろうよ。早くお風呂入りたいしさ。じゃ、アタシ馬車戻ってるから、運転よろしく~」
言うだけ言って、そのままスタスタと馬車に向かうニーヤ。
「人が生死の境を彷徨ったって言うのに、ずいぶん軽いな……」
まぁ、ニーヤらしいといえばそうなんだけど。
「そうでもないんですよ」
モミさんが悪戯に微笑む。
「もう半狂乱で凄かったんですから」
「え。ホントですか?」
「モミ! 余計な事言ったら許さないからね!」
その距離で聞こえるのかよ。地獄耳すぎるだろ。
「では、私も馬車に戻ってますね」
ニーヤの後を追うように、モミさんも馬車に向かった。
「おいお前」
背後から聞こえた声に振り返ると、ミドリさんが立っていた。身体の前で組んだ腕が、胸部を強調している。
「っ! お前! また胸を触るつもりかっ!?」
「えっ!? い、いや違います違います!」
視線に気づいたミドリさんが警戒感をむき出しに構える。
『また』って事は暴走中に揉んだのか……。
くそっ! 何で覚えてないんだ! これじゃあ揉み損じゃないか!
「ふん。まぁいい。お前に一つ忠告しておこう」
ミドリさんの真剣な表情。
何を告げられるのか、思わず身構える。
「その力――」
力? 暴走した時の事か?
「――やっぱ止めた」
「ええっ!?」
何で止めるの!? 生殺しはセクシーソードだけで十分だよ!?
「冷静に考えたら、なぜ胸を揉まれた挙句助言までくれてやらねばならんのだ」
そう言われると返す言葉もない。
「ほら、さっさと帰れ。人間などにいつまでもいられては迷惑だ」
手で追い払う仕草をする。
「あ、はい……。あ、あの、ミドリさん。ペヌスリン、ありがとうございまし――!?」
言い終わる前に――首を締められた。
「ミルドルドトーリだ! 人の名前を色みたいに略すな!」
「す、すいません……でした……」
舌打ちと共に僕を突き放し、背中を向ける。
「――お前の力、それが何なのか。『何の力』なのか、よく考えるといい」
「え?」
振り向いたときには、既に彼女は歩き出していた。
止まる気配もなく、あっと言う間に距離が離れていく。
「僕の――力?」
一人残された僕は、彼女の言葉の意味を考えていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる