性剣セクシーソード

cure456

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二章

旅の終わり

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 馬車はひたすらに進む。
 途中にムルアラットという小さな町があったが、知り合いに会ってしまったら面白味がないという事で、あえてそっちは通らず、僕達は人気のない裏道を進んでいた。

「二ヶ月前にみんなが戻ってるんだったらさ、もう綺麗になってるよね? ってかアタシ達の家あるのかな?」
 居心地が良いのか、馬車の屋根にうつぶせながらニーヤが言った。
 その隣にはペロ様がちょこんと座っている。

「それはどうでしょうね。多分お社を作るのが先だと思いますし、もしかしたら私達が帰ってくるとは思ってないかもしれませんよ?」
 モミさんの言葉に、ペロ様が口を開く。
「皆で――住む」
「皆でって――お社に?」
 ニーヤの言葉にペロ様が頷いた。

 お社。
 僕の解釈が正しいのなら、神を奉る建物――神社だろう。
 つまりはペロ様の家って事になる。
「お社に皆でねぇ。ジジイが生きてたら怒るだろうなぁ」
「ジジイ?」
「テヘペロ村の村長さんの事です。亡くなってしまいましたけどね」
 村の長をジジイ呼ばわりとか。どんだけフリーダムなんだ。

「決まった時間を除き、基本的にお社は立ち入り禁止なんですよ。それなのに、こっそり泊まって何度も怒られました」
「だってペロ一人じゃ寂しそうじゃない」
「え。ペロ様はずっと一人で暮らしていたの?」
「身の回りのお世話はしますけど、夜は一人ですね」
「それは――ちょっと寂しいですね」
 いくら神とは言え、ペロ様も女の子。
 そしていくら同じ歳だとは言っても、外見は幼女なのだ。
 神社に一人でいる姿を想像したら寂しすぎる。

「でしょ? だから遊びに行ってたのよ」
「せめて静かにしてくれればいいんですが、大抵ニーヤが騒ぎだすんですよね。枕を投げながらお社を走り回ったり、それで見つかってしまうんです」
「ちょっと! それじゃあアタシ一人が悪いみたいじゃない! それを投げ返すんだから二人も同罪でしょ!」
 人が集まり、枕があれば投げつけたくなる。
 そして怒られるまでがワンセット。
 世界は違えど、子供のやる事はあまり変わらないらしい。
 この三人が枕投げをしている光景が、何となく想像できる。

「でもさ――本当にどうなるんだろう。皆死んじゃって、残ってるのはアタシ達と、村を離れてた人達。合わせてもせいぜい十人そこそこでしょ? これから村がどうなっていくのか、どうやって過ごしていけばいいのか、正直分かんないんだよね――」
 少しだけ、ニーヤが不安そうな表情を浮かべる。
 徹頭徹尾前向きで、勇敢な彼女がそんな顔をすると、それはすぐに伝染する。

「ニーヤらしくないな」
 振り払うように、口を開いた。
「村がどうなるかじゃない。村をどうしたいかだよ。どうやって過ごすかじゃない。どうやって過ごしたいか。それさえ間違えなかったら、きっと何があっても大丈夫」
 失ったモノを取り戻す事は出来ない。
 でも、失ったからこそ、新しく創ることだって出来る。
 彼女達が願う未来には、きっと素晴らしい道が開けている。 

「何か――セクシーソードとか言う変な武器持っちゃってるアンタに、マトモな台詞を吐かれると嫌ね」
「ひどくない!? 武器関係ないじゃん!?」
 いや、確かに色モノネタ装備の粋を出ないけど! マトモな事だって言えるよ!?
「いいじゃありませんか。ケンセイさんの言うとおりです。そうですね――私は製薬師になって、沢山の人を癒してあげたいですね」
「モミのお母さんも製薬師だったもんね。そっか、じゃあアタシは何になろうかな――」
「ニーヤは喋るゴリラでいいんじゃないか? 森とか適当に走り回ってたら物珍しくて見物客も沢山来るんじゃない?」
「ふ、ふふっ。そ、それはいいですね。ニーヤにぴったりです」
 お返しとばかりに放った僕の言葉に、モミさんが想像したのかお腹を押さえて笑いを堪える。
 怒ったニーヤが、僕の肩の上に飛び乗って髪の毛を引っ張った。
「誰が喋るゴリラだって~! 訂正しなさい!」
「いたたた! ゴメン! 訂正する! 喋る猿だった!」
「アンタ――マジで殺す!」
 バタバタと揺れる馬車に、ディーナスがいい加減にしろとばかりにいななく。
 この道を行けば、もうテヘペロ村だ。
 僕は小さな不安を抱えたまま、旅の終わりを楽しんだ。
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