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二章
ヒーロー登場
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「これが神の炎! 命の炎! 何て美しいんだ! 儚く散るその瞬間! しかと目に焼き付けましょう!」
再びザフズが大きく跳んだ。だが、不自然にその勢いが消える。
「っ!?」
足元に絡みついたソレに気づいた時にはもう遅く、ザフズは強引にも石壁に叩きつけられた。
「おいおい。一体全体何だってんだ?」
引き寄せた鞭が、彼女の手に収まる。
頭に巻きつけた真っ黒な布をずらし、困惑の表情を浮かべた。
「ミー!」
「うわ燃えてるよ! ソレ熱くないのか?」
予想外の人物の登場に目を丸くしたペロ様だったが、ミーが恐る恐る伸ばした手を見て神火を消した。
「お、消えた。――って! お、お姉様っ!?」
鎖に繋がれたアミルを見つけ、叫ぶ。
当の本人は、訝しげな表情を浮かべていた。
「……誰だあいつは?」
「え。知らないの……?」
「知らぬ」
そんなやりとりも、ミーには聞こえない。
「くっ……。次から次へと……」
立ち上がったザフズを見て、ミーがペロ様に促す。
「おちびちゃんは下がってな」
男なら誰でも憧れる。カッコいい台詞と共に。
「テメェだな……? 俺のお姉様をあんな目にあわせたのは……」
その身体は怒りに震えている。
「うす汚ぇ豚野郎が。その粗末な一物、むしりとって口にぶち込んでやるから覚悟しろ」
「ぶ、豚野郎……だと……! 貴様ああ! 殺してやるぞおおおお!」
今までに無いほど激情したザフズがミーに飛びかかる。
だが、怒りに任せてがむしゃらに振り回した大鎌が捉えられるほど、ミーは遅くない。
「豚は豚らしく――」
両の手から伸びた鞭がザフズの身体を捉える。
「――這いつくばっていろ」
頭の上高く、限界まで伸びた鞭が、勢い良く振り下ろされた。
「どうした豚野郎。もう終わりか? さっきみたいにブヒブヒ鳴いてみろよ」
強い。そして、カッコいい。
神はどうして彼女を女にしたのか小一時間問い詰めたい気分だ。
女――?
「っち、それにしても暑ぃなここ」
無造作に投げ捨てた黒い布に、彼女の素顔が露になる。
その瞬間、認識した。カッコいいけど、ミーも女だ!
「ミー! アイツの目を見るな!」
「何? 目?」
遅かった。いや、僕の言葉が決定打だった。
目を見るなと言われて、素直に目を見る馬鹿がどこにいる?
ここにいる。
ミーはちょっと馬鹿だった。
その視線は、完全に彼女を捉えていた。
「くくく。まさか……女だったとはな……」
ザフズがゆっくりとミーに近づいていく。
対するミーは、足が縫い付けられているかのようにその場から完全に動かない。
「数々の無礼――その身体に刻ぶはっ!?」
全体重を込めたミーの右拳が、ザフズの顔面に叩き込まれた。
「豚が人間様に近づくんじゃねーよ」
「な、何で効いてないの……?」
目を見開いたニーヤの呟きは、自然にこぼれたものだろう。
それくらい、僕達は驚いていた。
「も、もしかしてミーさんは男性だったり?」
確認するようなモミさんの視線に、とりあえず首を横に振った。
僕は揉んだ。確かにこの手で揉んだ。
彼女の胸の膨らみ、その柔らかさをこの手で感じた。
股間にまでは触れてはいないが。それでも女性だと断言できる。
なぜかと言うと、実はと言えば、正直に言えば。
僕は――トップまで触っていたからだ。
胸は誤魔化せても、あの部分だけは誤魔化せない。
慣れ親しんだ男のソレでは決して無かったのだから。
「ふむ――あの娘、何かの特殊体質なのかもしれんな」
アミルまで真顔で言い出す始末。
いや、うん。僕は何となく気づいてるんだ。
特殊性癖なんだ。
そんな最中だった。
「しっかし、マジで暑いな」
ミーの言葉に僕は違和感を覚えた。彼女を見れば、全身に大汗をかいている。
暑くはない。むしろ涼しいくらいだ。
いくら激しい戦闘をしているとしても、あの汗の量は尋常じゃない。
「違う。効いてないんじゃない」
気づいてないんだ。
効いているのに――気づいていない。
「よし、いい加減終わらせるぞ」
倒れこんでいるザフズに近づいた、その時だった。
「――っ!?」
爆発的に放たれた魔力が、ミーの身体を吹き飛ばす。
不意打ちを警戒しないほど馬鹿ではないが、対人戦とは違う。
目に見えない魔力による攻撃には、対処しきれない。
「チッ。油断したぜ」
壁まで吹き飛ばされたが、足で受身をとった。
体勢を立て直し、ザフズの右腕を鞭で捕える。
「お?」
だが、逆にミーの身体が宙を浮いた。
引き寄せたのは――ザフズだ。
相手を捕える鞭は、相手に捕えられていると同じ。
長所は時に、短所足りえる。
「ふっ」
そんな中、彼女は笑っていた。これを狙っていたんだ。
もう片方の手から伸ばした鞭が、ザフズの左腕に絡まる。
両腕に絡んだ鞭は、その動きを封じると同時に、ミーの身体を加速させる。
その様子は、まるでスリングショット。
ミーの膝が、ザフズの顔面に決まった。
「マジ……かよ……」
ミーが焦りの表情を浮かべる。
自身の膝が砕ける程に打った。生半可な威力ではない。
顔の骨どころか、首の骨ごと叩き折れるつもりだった。
だが、ザフズは動かなかった。
そして、彼女の足を捕える。
一瞬だった。
ミーの身体が宙を彷徨い、弧を描き地面に激突するまで。
叫び声も届かないほど、一瞬だった。
「まだ息があるのか。虫けらのくせに」
動きを止めた彼女の身体を、尚も執拗に蹴り続ける。
その光景に、やっと身体が動いた。
手が動く。足が動く。
あいつを――殺してやる。
「なっ!?」
そんな僕の身体を、抱きしめるように止めた人物に、僕の頭は一瞬思考を停止する。
何故止める。どうして僕の邪魔をする。
彼女は――誰だ。
「へぇ、偉いねぇ。レミ」
ザフズの声が耳に響く。
「ご褒美をあげよう」
そして、腹部に鈍い衝撃が走った。
再びザフズが大きく跳んだ。だが、不自然にその勢いが消える。
「っ!?」
足元に絡みついたソレに気づいた時にはもう遅く、ザフズは強引にも石壁に叩きつけられた。
「おいおい。一体全体何だってんだ?」
引き寄せた鞭が、彼女の手に収まる。
頭に巻きつけた真っ黒な布をずらし、困惑の表情を浮かべた。
「ミー!」
「うわ燃えてるよ! ソレ熱くないのか?」
予想外の人物の登場に目を丸くしたペロ様だったが、ミーが恐る恐る伸ばした手を見て神火を消した。
「お、消えた。――って! お、お姉様っ!?」
鎖に繋がれたアミルを見つけ、叫ぶ。
当の本人は、訝しげな表情を浮かべていた。
「……誰だあいつは?」
「え。知らないの……?」
「知らぬ」
そんなやりとりも、ミーには聞こえない。
「くっ……。次から次へと……」
立ち上がったザフズを見て、ミーがペロ様に促す。
「おちびちゃんは下がってな」
男なら誰でも憧れる。カッコいい台詞と共に。
「テメェだな……? 俺のお姉様をあんな目にあわせたのは……」
その身体は怒りに震えている。
「うす汚ぇ豚野郎が。その粗末な一物、むしりとって口にぶち込んでやるから覚悟しろ」
「ぶ、豚野郎……だと……! 貴様ああ! 殺してやるぞおおおお!」
今までに無いほど激情したザフズがミーに飛びかかる。
だが、怒りに任せてがむしゃらに振り回した大鎌が捉えられるほど、ミーは遅くない。
「豚は豚らしく――」
両の手から伸びた鞭がザフズの身体を捉える。
「――這いつくばっていろ」
頭の上高く、限界まで伸びた鞭が、勢い良く振り下ろされた。
「どうした豚野郎。もう終わりか? さっきみたいにブヒブヒ鳴いてみろよ」
強い。そして、カッコいい。
神はどうして彼女を女にしたのか小一時間問い詰めたい気分だ。
女――?
「っち、それにしても暑ぃなここ」
無造作に投げ捨てた黒い布に、彼女の素顔が露になる。
その瞬間、認識した。カッコいいけど、ミーも女だ!
「ミー! アイツの目を見るな!」
「何? 目?」
遅かった。いや、僕の言葉が決定打だった。
目を見るなと言われて、素直に目を見る馬鹿がどこにいる?
ここにいる。
ミーはちょっと馬鹿だった。
その視線は、完全に彼女を捉えていた。
「くくく。まさか……女だったとはな……」
ザフズがゆっくりとミーに近づいていく。
対するミーは、足が縫い付けられているかのようにその場から完全に動かない。
「数々の無礼――その身体に刻ぶはっ!?」
全体重を込めたミーの右拳が、ザフズの顔面に叩き込まれた。
「豚が人間様に近づくんじゃねーよ」
「な、何で効いてないの……?」
目を見開いたニーヤの呟きは、自然にこぼれたものだろう。
それくらい、僕達は驚いていた。
「も、もしかしてミーさんは男性だったり?」
確認するようなモミさんの視線に、とりあえず首を横に振った。
僕は揉んだ。確かにこの手で揉んだ。
彼女の胸の膨らみ、その柔らかさをこの手で感じた。
股間にまでは触れてはいないが。それでも女性だと断言できる。
なぜかと言うと、実はと言えば、正直に言えば。
僕は――トップまで触っていたからだ。
胸は誤魔化せても、あの部分だけは誤魔化せない。
慣れ親しんだ男のソレでは決して無かったのだから。
「ふむ――あの娘、何かの特殊体質なのかもしれんな」
アミルまで真顔で言い出す始末。
いや、うん。僕は何となく気づいてるんだ。
特殊性癖なんだ。
そんな最中だった。
「しっかし、マジで暑いな」
ミーの言葉に僕は違和感を覚えた。彼女を見れば、全身に大汗をかいている。
暑くはない。むしろ涼しいくらいだ。
いくら激しい戦闘をしているとしても、あの汗の量は尋常じゃない。
「違う。効いてないんじゃない」
気づいてないんだ。
効いているのに――気づいていない。
「よし、いい加減終わらせるぞ」
倒れこんでいるザフズに近づいた、その時だった。
「――っ!?」
爆発的に放たれた魔力が、ミーの身体を吹き飛ばす。
不意打ちを警戒しないほど馬鹿ではないが、対人戦とは違う。
目に見えない魔力による攻撃には、対処しきれない。
「チッ。油断したぜ」
壁まで吹き飛ばされたが、足で受身をとった。
体勢を立て直し、ザフズの右腕を鞭で捕える。
「お?」
だが、逆にミーの身体が宙を浮いた。
引き寄せたのは――ザフズだ。
相手を捕える鞭は、相手に捕えられていると同じ。
長所は時に、短所足りえる。
「ふっ」
そんな中、彼女は笑っていた。これを狙っていたんだ。
もう片方の手から伸ばした鞭が、ザフズの左腕に絡まる。
両腕に絡んだ鞭は、その動きを封じると同時に、ミーの身体を加速させる。
その様子は、まるでスリングショット。
ミーの膝が、ザフズの顔面に決まった。
「マジ……かよ……」
ミーが焦りの表情を浮かべる。
自身の膝が砕ける程に打った。生半可な威力ではない。
顔の骨どころか、首の骨ごと叩き折れるつもりだった。
だが、ザフズは動かなかった。
そして、彼女の足を捕える。
一瞬だった。
ミーの身体が宙を彷徨い、弧を描き地面に激突するまで。
叫び声も届かないほど、一瞬だった。
「まだ息があるのか。虫けらのくせに」
動きを止めた彼女の身体を、尚も執拗に蹴り続ける。
その光景に、やっと身体が動いた。
手が動く。足が動く。
あいつを――殺してやる。
「なっ!?」
そんな僕の身体を、抱きしめるように止めた人物に、僕の頭は一瞬思考を停止する。
何故止める。どうして僕の邪魔をする。
彼女は――誰だ。
「へぇ、偉いねぇ。レミ」
ザフズの声が耳に響く。
「ご褒美をあげよう」
そして、腹部に鈍い衝撃が走った。
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