勇者パーティーを離脱したので黒狼さんと旅に出ます。

葵沙良

文字の大きさ
3 / 7

しおりを挟む

    街に戻ってきた更紗は、昼から夜間担当の門番にギルドカードを提示する。

「サラさん、お帰りなさい。無事で何よりです。今日お一人と言うことは、パーティー外れたんですか?」

「テルさん、ただ今です。そうなんです、パーティー外れました。これからレベル上げをしてから、違う街に移ろうかと」

「そうですか。頑張って下さいね」

「はい。それじゃあ」

    テルからギルドカードを受け取った更紗は、そのまま真っ直ぐギルドに向かい、受付カウンターの前に立つ。お昼前のせいなのか、ギルドの受付カウンターには人がいなかった。

「カンナさんただいま」

「サラちゃんお帰りなさい!無事で良かった!」

ニコニコ笑うカンナ顔を見て更紗も微笑むと、依頼の書類を取り出した。

「まだお昼だから、大丈夫です。気にかけてくださって有難うございます。今日の採集の素材買い取りお願いします」

「良いのよ、そのくらい。依頼書を預かるわね。それじゃあ素材をこのカゴに入れて。終わったらギルドカードお願いね」

    カンナの言葉に頷いて、更紗は束ねた薬草と、他の素材を入れていく。カゴが一杯になったところで、投入するのを止める。全て出したら自分用の素材が無くなってしまう。

「今回はこれでお願いします」

    カゴの横にギルドカードを置くと、カンナがカゴとカードを受け取った。

「はい。いつも状態の良い素材を有難うございます。これだと、薬草が5本1束で銅貨10枚。で、20束だから銀貨2枚、シャボンの実20個は銀貨2枚、シャボンの花20枚は銀貨1枚、ココの実は10個……良く見付けたわね。ココの実は、結構見付けるの大変なのよ?これはかなり状態が良いから、1個銀貨1枚で、銀貨10枚ね。全て合わせて銀貨15枚よ」

    ギルドカードを更紗に返したカンナが、小さな巾着をカウンターに置く。
受け取って、更紗はマジックバッグに入れた。

「有難うございます。じゃあ、そろそろ帰ります。あ、そうだ」

    更紗はマジックバッグから小瓶を取り出すと、カンナに手渡した。

「サラちゃん、これは……ポーション?」

「いいえ。ポーションの瓶ですが、中身は髪を洗う液体の石鹸が入ってます。使ってみて感想聞かせてください」

「良いの?有り難う!早速今日使ってみるわね!」

    カンナの喜ぶ顔を見た更紗は手を振ってギルドを後にした。


    これからお昼を食べるかと思った更紗は、屋台の串肉を10本程買って食べながら歩く。これからルトの店を訪れるためだ。

「はふ……っ。美味しい♪」

    串肉のタレが絶品で食が進む。5本をあっという間に食べてしまった。

「残りはルトさんへ差し入れにしよう」

    もうじき自分の武器が出来上がると思うと、少し浮き足立つが、冷静さは欠かしていない。背後に見知った人の気配がする。
    このままではルトの店に迷惑がかかると考えた更紗は、素早く路地裏の小屋の陰に身を潜めた。

「居ない……。失敗か。白神は何か隠している筈なんだけど」

   更紗は呟く声にやっぱり、と思う。そう、元パーティーメンバーの鳥居陣だ。
気配が消えてからも暫く小屋の陰に潜み、様子を窺う。

「何故、鳥居くんが……?」

    失敗と言っていた。この話は、真理亜だけに話したことはあるが、二人だけの秘密にして他のパーティーメンバーには一切話していない。
    何処かで話を聞かれていた可能性を考え、精神を落ち着けるように、深呼吸を繰り返した。


────5分くらい経ってから、複雑な路地裏を迷い無く、すいすいと更紗は歩く。無事にルトの店に着くと、ノックもせずに素早く小屋の中へと入った。
ふう、と大きめの溜め息を吐く。

「お帰り、更紗。何かあった?」

不意に声を掛けられ、ビクンッ!と更紗の肩が跳ねる。

「も、元パーティーメンバーのリーダーが彷徨うろついてて、撒くのにちょっと手間だった。はい、これ差し入れ」

「有り難う。更紗の後を付いてきても、余程の才能が無ければココには簡単にたどり着けないから大丈夫だよ。武器は出来上がってる。奥においで」

    ルトはクスクス笑いながら奥に入っていく。その後ろを追い掛けるように、更紗は付いていった。

   付いていく途中、ルトは差し入れの串肉を頬張りながら歩いていく。
    作業に集中していてお昼を抜いてしまったルトは、尻尾をゆらゆら左右に動かしながら食べている。とても機嫌が良い。


「後は更紗が魔力を流して使用者を固定してしまえば終わりだよ」

    串肉を食べ終わったルトがキッチンへと向かい、カップを二つ持ってきた。

「串肉旨かったよ。少し休憩してから奥の部屋へ案内するから」

「うん。……返事、今しても良い?」

「分かった。取り敢えず座ろうか」

    キッチンの側にあるテーブルの椅子に腰を落ち着けたルトは、更紗を向かいの席へと促した。


「ルトさん、私ね。ルトさんと一緒に旅に出たい」

「良いのかい?勿論、俺は更紗が好きだから嬉しいよ。でも、これは俺の我儘でもあるんだよ?」

「良いの。最初はあんな出会い方だったけど、私もルトさんが好きだし、一緒にいたいって思うから。連れてって」

ふにゃっと笑う更紗を見たルトは小さく笑い、更紗の頭を撫でた。

「分かった。有り難う。そうと決まったらまずは武器を作り上げてしまおうか」

そう言ったルトが席を立ち、更紗の手を然り気無く引いて奥の部屋へと入って行くのだった。



   



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件

言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」 ──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。 だが彼は思った。 「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」 そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら…… 気づけば村が巨大都市になっていた。 農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。 「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」 一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前! 慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが…… 「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」 もはや世界最強の領主となったレオンは、 「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、 今日ものんびり温泉につかるのだった。 ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。 - - - - - - - - - - - - - ただいま後日談の加筆を計画中です。 2025/06/22

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

モブが乙女ゲームの世界に生まれてどうするの?【完結】

いつき
恋愛
リアラは貧しい男爵家に生まれた容姿も普通の女の子だった。 陰険な意地悪をする義母と義妹が来てから家族仲も悪くなり実の父にも煙たがられる日々 だが、彼女は気にも止めず使用人扱いされても挫ける事は無い 何故なら彼女は前世の記憶が有るからだ

なんか修羅場が始まってるんだけどwww

一樹
ファンタジー
とある学校の卒業パーティでの1幕。

処理中です...