勇者パーティーを離脱したので黒狼さんと旅に出ます。

葵沙良

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    更紗が離脱したその日。勇者パーティーの4人は、夕食の為にひとつのテーブルを囲んで座っていた。
    更紗が居ないことに気付いていた真理亜は、しかめっ面だ。その顔に怒りが込められている。

「真理亜。聞きたいことがある」

「何かしら。私の方が聞きたいのだけど?鳥居くん」

ピリピリとした空気に、周囲が緊張に包まれる。

「サラちゃんを離脱と言う形で追い出したのね。鳥居くん。なに考えてるの?」

    鋭い視線で射抜くように視線を向けた真理亜に、そのまま真っ直ぐ視線を向けた青年は鳥居陣だ。

「1年間は一緒に居たじゃないか。期限はもう過ぎているんだ。足手まといは必要無いだろう?」

    本当にこの男は藤高校の生徒会長だったのか疑いたくなるような言葉に、真理亜は溜め息を吐いた。

「はあ……。あなた、何だかこの世界に来てから変わったわよね。そんな無責任な人になるとは思わなかったわ。それと、あなたに話すような事は一つもないから。もしあっても言うつもりもないわ」

    ご馳走さま、と席を立った真理亜は、振り返ることもせずに食堂から出ていった。

「はあ……。陣、お前なにやってんだ?白神が何かしたのか?」

    溜め息混じりに言葉を吐き出した青年の名は、大佐古 大おおさこ だい
焦茶の短髪に黒目のがっしりとした体格で、高校生に見えない精悍な顔立ちをしている。
陣を見据えるが、本人は気にも留めていないようだ。


「そういう訳じゃない。召喚された本来の勇者パーティーは4人だ。1人多いって陛下も言っていた。それに、生きていく術はもう身に付いてる筈だ。充分だと思ってね」

    重要な職業だって言うなら話は別だけど、と続いた言葉に、大は更に深い溜め息を吐いた。

「はあ……。お前は自分が気に入ったヤツ以外どうでも良いんだな」

「当たり前だろう?あんな外見から表情も見えない無感情な女を置いておくのも嫌だね」

「俺と真理亜はこのままパーティーにいて協力はする。その後は離脱するかもしれないからそのつもりで」

    大も席を立ち、真理亜を追うように早足でテーブルを離れて行った。

「なに、あれ…。そんなにあの子と一緒にいたいって言うのかしら」

    呆れ混じりの声を出した、大人びた容姿をしている胡桃は、サラリとした赤みを帯びた黒髪につり目の黒い瞳だ。

「さあね。ま、いなくなってくれたんだ。これから王国の為に頑張ればあいつらの気持ちもまた変わるだろう。明日から2日は休息日だ。デートでもするか?」

「良いの?」

    陣の言葉に目を輝かせた胡桃は、嬉しそうに笑うと抱きついた。
その頭を撫でながら、陣は険しい顔をした。

    離脱を要求した時の、更紗の妙な素直さ。
何かを隠していることは間違いない。更に、この宿も引き払っている。
今日の昼からの自由な時間に宿を回ったが、更紗らしき人物からの予約もなく、行方知れずになった。

    少し落胆気味に歩いていると、ギルドから更紗が出てきた所にたまたま出くわし、宿場街から大きく外れ、市場へと向かっているようだった。気になってそのまま後を付けたのだが……。

「見失うようなヘマはしていないはず。白神はどうやって俺を認識した…?」

小さな声で呟くと、胡桃をそっと起こした。

「どうしたの?」

「何でもない。済まないが先に部屋に戻っていてくれ」

    柔らかく笑った陣を見た胡桃は頷くと、席を立った。

「分かったわ。でも、なるべく早く戻ってきてね?」

「ああ」

     返事を返した陣は、夜の帳が降り始めた町の中へと一歩踏み出した。





    


    
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