6 / 7
6
しおりを挟む更紗が離脱したその日。勇者パーティーの4人は、夕食の為にひとつのテーブルを囲んで座っていた。
更紗が居ないことに気付いていた真理亜は、しかめっ面だ。その顔に怒りが込められている。
「真理亜。聞きたいことがある」
「何かしら。私の方が聞きたいのだけど?鳥居くん」
ピリピリとした空気に、周囲が緊張に包まれる。
「サラちゃんを離脱と言う形で追い出したのね。鳥居くん。なに考えてるの?」
鋭い視線で射抜くように視線を向けた真理亜に、そのまま真っ直ぐ視線を向けた青年は鳥居陣だ。
「1年間は一緒に居たじゃないか。期限はもう過ぎているんだ。足手まといは必要無いだろう?」
本当にこの男は藤高校の生徒会長だったのか疑いたくなるような言葉に、真理亜は溜め息を吐いた。
「はあ……。あなた、何だかこの世界に来てから変わったわよね。そんな無責任な人になるとは思わなかったわ。それと、あなたに話すような事は一つもないから。もしあっても言うつもりもないわ」
ご馳走さま、と席を立った真理亜は、振り返ることもせずに食堂から出ていった。
「はあ……。陣、お前なにやってんだ?白神が何かしたのか?」
溜め息混じりに言葉を吐き出した青年の名は、大佐古 大。
焦茶の短髪に黒目のがっしりとした体格で、高校生に見えない精悍な顔立ちをしている。
陣を見据えるが、本人は気にも留めていないようだ。
「そういう訳じゃない。召喚された本来の勇者パーティーは4人だ。1人多いって陛下も言っていた。それに、生きていく術はもう身に付いてる筈だ。充分だと思ってね」
重要な職業だって言うなら話は別だけど、と続いた言葉に、大は更に深い溜め息を吐いた。
「はあ……。お前は自分が気に入ったヤツ以外どうでも良いんだな」
「当たり前だろう?あんな外見から表情も見えない無感情な女を置いておくのも嫌だね」
「俺と真理亜はこのままパーティーにいて協力はする。その後は離脱するかもしれないからそのつもりで」
大も席を立ち、真理亜を追うように早足でテーブルを離れて行った。
「なに、あれ…。そんなにあの子と一緒にいたいって言うのかしら」
呆れ混じりの声を出した、大人びた容姿をしている胡桃は、サラリとした赤みを帯びた黒髪につり目の黒い瞳だ。
「さあね。ま、いなくなってくれたんだ。これから王国の為に頑張ればあいつらの気持ちもまた変わるだろう。明日から2日は休息日だ。デートでもするか?」
「良いの?」
陣の言葉に目を輝かせた胡桃は、嬉しそうに笑うと抱きついた。
その頭を撫でながら、陣は険しい顔をした。
離脱を要求した時の、更紗の妙な素直さ。
何かを隠していることは間違いない。更に、この宿も引き払っている。
今日の昼からの自由な時間に宿を回ったが、更紗らしき人物からの予約もなく、行方知れずになった。
少し落胆気味に歩いていると、ギルドから更紗が出てきた所にたまたま出くわし、宿場街から大きく外れ、市場へと向かっているようだった。気になってそのまま後を付けたのだが……。
「見失うようなヘマはしていないはず。白神はどうやって俺を認識した…?」
小さな声で呟くと、胡桃をそっと起こした。
「どうしたの?」
「何でもない。済まないが先に部屋に戻っていてくれ」
柔らかく笑った陣を見た胡桃は頷くと、席を立った。
「分かったわ。でも、なるべく早く戻ってきてね?」
「ああ」
返事を返した陣は、夜の帳が降り始めた町の中へと一歩踏み出した。
1
あなたにおすすめの小説
召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件
言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」
──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。
だが彼は思った。
「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」
そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら……
気づけば村が巨大都市になっていた。
農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。
「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」
一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前!
慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが……
「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」
もはや世界最強の領主となったレオンは、
「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、
今日ものんびり温泉につかるのだった。
ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
- - - - - - - - - - - - -
ただいま後日談の加筆を計画中です。
2025/06/22
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
モブが乙女ゲームの世界に生まれてどうするの?【完結】
いつき
恋愛
リアラは貧しい男爵家に生まれた容姿も普通の女の子だった。
陰険な意地悪をする義母と義妹が来てから家族仲も悪くなり実の父にも煙たがられる日々
だが、彼女は気にも止めず使用人扱いされても挫ける事は無い
何故なら彼女は前世の記憶が有るからだ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる