勇者パーティーを離脱したので黒狼さんと旅に出ます。

葵沙良

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    食器を洗い終えた更紗は、居間になっている部屋へと果実水を入れたカップを2つトレーに乗せて向かう。
そろそろルトも作業場から出てくるはずだ。

「ルトさんの話って何だろう?」

小さく呟き、居間に続く扉を開けて入ると、既にルトがが奥のソファに腰かけていた。

「ああ、来たね。更紗、座って」

「うん」

    ルトに促されて対面にあるソファに腰を下ろした更紗は、トレーの上のカップをルトに手渡した。

「有り難う。で、話の前にこれを渡しておくよ」

    ルトがテーブルの上に置いたのは、同じデザインの色違いの細身のバングル。中央にピンクと水色の石がそれぞれ嵌め込まれている。

「これは?」

「これは更紗とお嬢ちゃんを繋ぐものだよ」

「繋ぐ……?」

「ああ。互いの生存が確認できる魔道具だ。これに互いの魔力を込めて交換しておけば、生存の確認が出来る。距離も関係ない。赤い色に近くなると命の危機だ。命の危機に反応が強いと、一度だけ、相手の場所に転移出来る魔法陣も組み込んである。それと、容量は小さいがアイテムボックスの機能も付与した」

「ちょっと待って…!そんな高価なもの貰えないよ!」

更紗が慌てて首を横に振ると、ルトが更紗の横に移動して座り、真剣な眼差しで顔を覗き込んできた。

「そう言うけど。更紗はお嬢ちゃんが心配じゃないのか?」

「それは心配だけど…!」

「だったら受け取って欲しい。更紗達の世界のように、しっかりした通信手段がこの世界には無い。移動だって簡単にはいかないんだ。生存の確認が出来るものを持っていれば、少しは安心だろう?」

    俯く更紗の頭をやんわりと撫でて手を取り、言い聞かせるようにルトはバングルを更紗へと手渡した。

「……ありがとう」

「これくらい、良い。更紗は俺と旅に出ることを決めてくれた。だったら俺は安心して更紗が俺と一緒に旅に出られたら嬉しいから」

「うん…」

「バングルの方のアイテムボックスは無理に使う必要は無いけどな。それと、旅立つ前にお嬢ちゃんと会う日が決まったら教えてくれ」

「分かった」

    嬉しそうに笑って返事をした更紗の頭をくしゃりと撫でたルトも嬉しそうに笑う。
これから色々と準備を整えるまでに約2週間かける。お互いレベルを上げなければならない。

「これからの事を話し合おうか」

「うん」

「まずはレベル上げだな。この辺りの魔物は全て倒せるかい?」

「うーん……。森も奥は行ってないから、全てじゃないけど。ある程度は大丈夫かな」

「森の奥か…。2人以上で行動すれば行けるな。よし!森の奥に行ってみるかい?奥にはこの辺りで採集出来ない素材が結構あるんだ」

「良いの?」

「ああ。ダンジョンは勇者パーティーと鉢合わせる可能性が高いし。ただ、1週間ほど籠ることにはなるけどな。野営の練習も兼ねて」

    必要なものを書き出すかー、とルトは言葉を続けて席を立つと、近くの棚から羊皮紙とペンを持って戻ってきた。

「じゃあ、今から書き出していこう。更紗が必要なものは?」

「必要なものは……食材と色々作ってみたいから、持てるだけの素材」

    ウンウン唸って出した更紗の言葉に、ルトが吹き出した。そのまま笑い続ける。

「なんで笑うの?」

「クックッ…!いや、ごめん、更紗らしいと思ってさ。食材はどんなのが良い?」

    笑いが止まらないルトをジト目で見る更紗に、目の前で手を合わせるが、また笑ってしまう。

「どうせ、制作ばかりですよーだ」

プイッとそっぽを向いて機嫌を損ねてしまった更紗を見たルトが真剣な顔に戻った。

「ごめん。もう笑わないから。真面目に決めていこう?」

「絶対ですよ?」

「うん。で、野営の準備なんだけど……」


    この後は、羊皮紙に必要なものを書き出しながら、最低限の荷物になるようにしていく。
更紗とルトだけなので、必要なものはそれほど多くはない。

「こんなものかな……。大体のものはこの家にあるから、明日は食材を買ってくるか。すぐに出発するかい?」

「そうだね……。早朝の市場なら色々揃えて直ぐに出発出来そうだね」

「じゃあ、そうするか。ところで更紗」

「ん?」

「もう夜なんだけど。宿は?」

「あっ!忘れてた!ルトさんどうしよう!?」

    武器を受け取ってから宿を取りに行く予定にしていた更紗は焦り始める。冷静に考えれば、ルトの家に泊めて貰うと言う事が分かると思うのだが、ルトはあえて指摘しない。

「じゃあ、俺の所に泊まりなよ。部屋は空いてるから」

「えっ!?それは、わる「一緒に旅をするなら、良いと思うけど?」い…」

「大丈夫だよ。明日も早いし、ここに泊まれば早朝の市場に向かう時間も短縮。良くない?」

「う、うん…。じゃあ、お願いします」


    結局、ルトに押し切られる形で泊まることになるのだった。




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