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11話

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 「だ、大丈夫だろうか…」

 2週間後、アンジェリーナの誕生パーティー当日。
公爵家から手渡された服に着替えた俺はプレゼントの箱を持ち公爵家の馬車に乗り込んだ。

 「あの、少々お聞きしてもよろしいでしょうか?」

 「なんでございましょう」

 俺は同乗している今日俺の世話をしてくれるらしいメイドのリコーに今まで疑問に思っていたことを尋ねた。

 「ありがとうございます。なぜ公爵様はこんなに平民である僕に良くしてくれるのでしょうか」

 「それは1メイドの私ではわかりかねます」

 「そ、そうですか…それと公爵様がご用意してくださった服は必ずぴったりと僕のサイズなんですが、なぜサイズがおわかりになられるんですか?両親すら正確なサイズなど知らないと思うんですが……」

 「公爵家ですので」

 「え…」

 「公爵家ですからです」

 「わ、わかりました…ありがとうごいます」

 有無を言わせぬなぞの圧を発しリコーがこれ以上の詮索を拒否した。

 「セイジュ様に私からもご質問してよろしいでしょうか」

 「はい?僕に答えられるのであれば大丈夫です」

 「そうですか、ではなぜ2度も命を懸けお嬢様をお助けになられたんですか?」

 「2度?幼少のころアンジェリーナ様が拐されそうになった時の1度だけですけど?しかも結局は助けるどころか勝手にけがをしてしまいまして……情けないことですが逆に治療費などの援助をいただき助けていただいている状態です……あははは」

 「そうでございますか…しかしなぜそのようなご無茶を?」

 「僕ももうはっきりは覚えてないんですが、ただ目があったのを覚えているんです」

 「目がおあいに?」

 「はい、それで顔を見ると怖がってるとかそういう感じじゃなくて、なんていうか諦めているというか悲しいというか…難しいんですけどなぜかそういう風に見えまして、気づいたら飛び出してました……ははは……」

 「そうでございましたか……ありがとうございます」

 「い、いえ、たいした理由もなく申し訳ありません」

 「いえ、十分なお答えをいただきました。ありがとうございます」

 リコーは先ほどまでずっと張り付けたかのような無表情でどこか冷たさを感じる雰囲気から一転し、柔らかな笑顔で礼をしてきた……めっちゃ美人でめっちゃ可愛い人だと思うと急に緊張し始めパーティーのことも思い出すと生きた心地がしないまま馬車は公爵邸についたようだった。

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 「セイジュ様ようこそお越しいただきました。お嬢様がお待ちですこちらへどうぞ」

 門の前に馬車から降り立つとセルジュがすでに待っていて俺は通いなれた公爵邸の中をあるいた。

 「どうぞ」

 「失礼します。セイジュ様がお越しになられました」

 部屋の前につくとアンジェリーナが自室へと招き入れてくれた。

 「本日はお招きいただきありがとうございます」

 「セイよく来てくれましたわ。あら?その手に持っているものはなんですの?」

 「あ、ああ…ほかの方から頂く品の足元にも及びませんが…その、もしよろしければ受け取っていただければと」

 「まぁ!こちらから無理に誘ったのだからそのようなもの要らないのに」

 「そういうわけには…ここまで良くしていただいておいてさすがに手ぶらというわけには…」

 「相変わらずですわねぇ。ありがとう、あけてみてもいいかしら?」

 「はい、ほんと大したものではなくて…申し訳ないんですが」

 「こういうのは気持ちがこもっていればなんでもいいのですわ…これは何が入っておりますの?」

 俺からのプレゼントをみて二つの小瓶を見せながらアンジェリーナが不思議そうな顔をして訪ねてきた。

 「アンジェリーナ様は湯あみの際、石鹸で髪を洗いますよね」

 「え?ええ、そうね」

 「その2本はそのあとに使うものです」

 「そのあと?どういうことかしら?洗った後これを塗ればいいのかしら?」

 「いえ、髪を洗い終わった後、たらいに湯を張りまずは左の瓶の中身を小さい匙で2杯ほど混ぜて髪全体になじませ洗い流してください。右の瓶は週に2~3回ほど同じようにたらいの湯に溶かしてお使いください」

 「するとどうなるんですの?」

 「えっと、簡単に言うと石鹸は髪の汚れをよく落としてくれますが落としすぎて髪が痛むんです。この2本はそれを極力防ぐために

 「え?そうなのですか?では髪をあらったあとギシギシするのは」

 「落としすぎてしまっているからです。あっ!成分についてはすべて自然の花などから作られていますし、僕自身でも試しましたし、母にもお願いして使ってもらい問題なかったものなのでご安心ください」

 「え?花などから作れるものなのね」

 「はい、もしよろしければ試しに僕の髪を触ってみてくださいますか?」

 「え?…で、でわ…ふぁぁっ?」

 「お嬢様!?」

 「さらさらですわ!ふわふわですわっ!こ、これのおかげですのっ!?」

 「はい。ちなみに両方ともほのかにアンジェリーナ様のお好きなバラの香りをつけてあるので…もしよろしければお試しいただければと…」

 彼女はあくまで公爵家令嬢、わけのわからん平民の俺が作った不確かな効果のもの、しかも毒などの配慮もしなくてはならないはずだしそんなものを使ってくれるわけはないとは思っていたが、髪は女の命!と前世で聞いたことがあったのでこれしか思いつかなかった。

 「セ、セイジュ様、お一つお聞かせ願いますか?」

 「はい、なんでしょうか」

 「先ほど作ったとおっしゃられた共いますが…まさかそちらの品はセイジュ様が?」

 「はい。僕が作りました、材料は父に集めてもらいましたが、材料費は…その治療院からもどってからお手伝いなどをして貯めた分しかなく…恥ずかしながらこれっぽっちしかつくれませんでしたけど…」

 「な、なんと…そ、そうでございましたか…」

 15センチほどの小瓶2つ分を作り終える分しか資金がなく恥ずかしいが、セルジュは驚いているとも呆気にとられているともとれる不思議な表情で頷いていた。

 「セイジュ様申し訳ありませんが1度メイドに使わせてみて問題なしだった場合のみアンジェリーナ様にお使いいただくということでよろしいでしょうか…」

 「なっ!?セルジュ!セイが私の体に悪いものを用意するわけがありませんわっ!!」

 「それはわかっておりますが、規則でございますし、それをすることでハスク様からも許可をいただけますので…ご容赦くださいませ」

 「ぐぬぬぬぬぬ…」

 「アンジェリーナ様、僕もそのほうがいいと思います。テストしたとはいえ、結果を僕しか見てませんしもし何かあったなど大変なことになってしまいます」

 「セイ!あなたが疑われておりますのよ!?」

 「いえ、セルジュさんは疑ってはいないですよ…ただアンジェリーナ様を大事にしておられるだけです、それに僕はアンジェリーナ様がお使いになってくださると思っておりますので大丈夫ですよ」

 「セイ…わかりましたわ…セルジュ!いますぐメイドにこれを確かめさせなさい!」

 「え?しかしパーティーが」

 「早く!でなければパーティーが終わった後、使えないでしょう!」

 「なるほど…わかりました」

 セルジュが深々と一礼し部屋を去っていった。

 「パーティーが始まるまであと少し時間があるの。すこしゆっくりいたしましょう」

 アンジェリーナは笑顔で椅子に座り俺にも椅子をすすめ二人はセルジュが呼びに来るまでお茶を飲んだが、これから始まるパーティーがどんなものでどんなことが起こるのか不安でお茶の味はわからなかった。
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