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10話
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「「 セイ誕生日おめでとう! 」」
「お父さん、お母さんありがとう!」
時間は飛んだが今日は俺の10歳の誕生日だ。
ささやかながらも母は俺の好物をたくさん作ってくれいつもより豪華な食卓を家族で囲んでいた。
「ん?誰か来たか?」
「こんな時間に誰かしらね」
家族団らんで食事をはじめてすぐに家の入り口のドアがノックされ3人で顔を見合わせたが母がたちあがり玄関に向かった。
「へ?いえいえ!そんなっ!」
「おい、セシリーそんなに慌ててどうし…へ?えぇぇ!?セ、セイ!ちょっときてくれ!!」
玄関先で悲鳴に近い困惑した声で俺を呼ぶ父の声に何があったのかと不安になり父の元へ向かった。
「お父さんどうしたの?」
「セイジュ様、夜分遅くに申し訳ございません」
「え?セルジュさん?どうしたんですか?」
焦る両親の前で何かを手渡そうとしている公爵家執事のセルジュが立っていて俺は状況がますます呑み込めず混乱しながらも声をかけた。
「はい。本日はセイジュ様のお誕生日と伺いまして」
「え?はい。そうですが…」
「おめでとうございます。それでこちらをハスク様よりセイジュ様へとお祝いの品をお届けに参ったのでございます」
「へ?…えぇぇぇ!?、いやいや!お気持ちは嬉しいですがただでさえ日ごろからよくして頂いているのに恐れ多くてそのようなものいただけませんよ!」
理由を聞いた俺が盛大に驚いて断りの言葉を述べると俺の両親もうんうんと力強くうなずいていた。
「ふふふっ…これは失礼を…ハンス様がセイジュ様はきっとそうおっしゃられるだろうとおっしゃっておりましてあまりにもそのままでしたのでつい…」
「ハンス様…」
きっと遠い目をしているであろう俺の脳裏にはいつものようにアンジェリーナをからかうようにニヤニヤしているハンスの顔が浮かんでいた。
「あぁ、それともう1つ、こちらはアンジェリーナ様よりお預かりしたものにございます」
「封書?」
「はい、中身は招待状となっておられます」
「招待状ですか?…なんのでしょうか?」
「はい。2週間後に開かれるアンジェリーナ様の10歳になられるお誕生パーティーへの招待状となっておられます」
「「「 へ? 」」」
あまりの突拍子のないことを言われ意味が理解できず俺たち親子は間抜けな声を上げ優しく微笑みこちらを見ているセルジュを凝視したまま固まっていた。
「ご出席いただけますか?」
「いやいやいや!申し訳ありませんが僕なんか呼んでいただける身分ではありませんよっ!」
「そのようなことはございません。ハスク様からも是非にと賜っております」
「えぇぇ!?」
「せっかくのお誘い大変名誉でうれしくは思いますが…我が家ではどうやっても…その…手ぶらというわけにもいきませんし…」
驚いている俺の後ろで申し訳なさそうに父が話し出した。言葉を濁しているが公爵家の令嬢の誕生日パーティーしかもこの国では10歳は社交界にもデビューする年だ。なので10歳の誕生日は社交界にデビューする我が子の顔見世の場となっているそんなところに手ぶらでいけるわけも、ましてや我が家の経済力で用意できるような代物ではたかが知れていてとてもではないが参加はできないと俺でもわかる。
「手ぶらでも構いません。装いもこちらで用意するので是非にとのことにございます」
「こ、このようなすばらしい品を息子の誕生日にいただけただけでどのようにお礼申し上げればいいかわかりかねるところに、さらにそのようなことまでしていただいてまでは流石に!」
父が言った言葉に俺と母も渾身の力で頷き同意を示した。
「ああ、セイジュ様にアンジェリーナ様から言づけを預かっておりました」
「え?な、なんでしょう」
「はい。『わたくしの誘いを断るのは公爵家への不敬ですわっ!』とのことにございます」
「え゛…」
「それではご出席ということでよろしいですかな?」
両手を腰に当て胸を張り言い切るアンジェリーナが容易に想像してげんなりする俺にセルジュが負けを認めろといわんばかりに笑顔で尋ねてきた。
「そ、それでは…親としては情けなく思いますが…重ね重ねのお心遣いに感謝させていただきます」
父が冷や汗をかきながらペコペコとセルジュに申し訳なさそうに頭をさげるとセルジュは満足げに笑顔で頷き帰っていった。
「りょ、料理が冷めちゃったわね」
「大丈夫、お母さんの料理は冷めても美味しいから」
「そ、そうだな」
嵐のような出来事に少し放心していた俺たちだったが母がすこし疲れ悲しそうにつぶやき料理を見ながら座るのを見て俺は父をみると目が合い同じ気持ちなんだとわかると頷きあい空元気をだしあい笑顔を浮かべ料理を食べた。
==================================
前世の記憶が戻ってはいるがなぜか両親などのことは思い出せなかった。たぶん幼馴染2人のことを思い出したのは俺が死ぬ直前のことだったからじゃないかと思う。なので元々セイジュ自身も母を好きだったこともあるんだろうが俺も今の母は大事だと思うし好きだと思う。かなりセイジュの精神に引っ張られているだけなのかもしれないが…。
「ふぅ、せっかく誕生日プレゼントに本をもらったがまったく頭にはいらないな」
俺は今日もらった本をぱたんと閉じ深いため息をついた。そしてアンジェリーナの誕生パーティーのことを考えると頭が痛くなった。
「またコルグもいるだろうし…他にも貴族様だらけ…はぁ~…」
早々たる参加者の中に平民の俺が参加しているところを想像しげんなりする一方だったが、屈託なく俺に接してくれるアンジェリーナの顔を思い出すとやっぱり行かないなんて口が裂けても言えない。
「八方ふさがりだよ…」
俺は逃げ道を立たれ死地に赴く人間の心理をこの時すこしだけ理解した気がした。
「しかも手ぶらでいいって言われたって…そういうわけにもいかないし…かといって高級な品なんて…」
せめて何かプレゼントを持っていかなければと考えるも我が家と俺の懐事情を考えるとめまいがした。
そしてそのめまいのままベッドに倒れこみ眠った。
「お父さん、お母さんありがとう!」
時間は飛んだが今日は俺の10歳の誕生日だ。
ささやかながらも母は俺の好物をたくさん作ってくれいつもより豪華な食卓を家族で囲んでいた。
「ん?誰か来たか?」
「こんな時間に誰かしらね」
家族団らんで食事をはじめてすぐに家の入り口のドアがノックされ3人で顔を見合わせたが母がたちあがり玄関に向かった。
「へ?いえいえ!そんなっ!」
「おい、セシリーそんなに慌ててどうし…へ?えぇぇ!?セ、セイ!ちょっときてくれ!!」
玄関先で悲鳴に近い困惑した声で俺を呼ぶ父の声に何があったのかと不安になり父の元へ向かった。
「お父さんどうしたの?」
「セイジュ様、夜分遅くに申し訳ございません」
「え?セルジュさん?どうしたんですか?」
焦る両親の前で何かを手渡そうとしている公爵家執事のセルジュが立っていて俺は状況がますます呑み込めず混乱しながらも声をかけた。
「はい。本日はセイジュ様のお誕生日と伺いまして」
「え?はい。そうですが…」
「おめでとうございます。それでこちらをハスク様よりセイジュ様へとお祝いの品をお届けに参ったのでございます」
「へ?…えぇぇぇ!?、いやいや!お気持ちは嬉しいですがただでさえ日ごろからよくして頂いているのに恐れ多くてそのようなものいただけませんよ!」
理由を聞いた俺が盛大に驚いて断りの言葉を述べると俺の両親もうんうんと力強くうなずいていた。
「ふふふっ…これは失礼を…ハンス様がセイジュ様はきっとそうおっしゃられるだろうとおっしゃっておりましてあまりにもそのままでしたのでつい…」
「ハンス様…」
きっと遠い目をしているであろう俺の脳裏にはいつものようにアンジェリーナをからかうようにニヤニヤしているハンスの顔が浮かんでいた。
「あぁ、それともう1つ、こちらはアンジェリーナ様よりお預かりしたものにございます」
「封書?」
「はい、中身は招待状となっておられます」
「招待状ですか?…なんのでしょうか?」
「はい。2週間後に開かれるアンジェリーナ様の10歳になられるお誕生パーティーへの招待状となっておられます」
「「「 へ? 」」」
あまりの突拍子のないことを言われ意味が理解できず俺たち親子は間抜けな声を上げ優しく微笑みこちらを見ているセルジュを凝視したまま固まっていた。
「ご出席いただけますか?」
「いやいやいや!申し訳ありませんが僕なんか呼んでいただける身分ではありませんよっ!」
「そのようなことはございません。ハスク様からも是非にと賜っております」
「えぇぇ!?」
「せっかくのお誘い大変名誉でうれしくは思いますが…我が家ではどうやっても…その…手ぶらというわけにもいきませんし…」
驚いている俺の後ろで申し訳なさそうに父が話し出した。言葉を濁しているが公爵家の令嬢の誕生日パーティーしかもこの国では10歳は社交界にもデビューする年だ。なので10歳の誕生日は社交界にデビューする我が子の顔見世の場となっているそんなところに手ぶらでいけるわけも、ましてや我が家の経済力で用意できるような代物ではたかが知れていてとてもではないが参加はできないと俺でもわかる。
「手ぶらでも構いません。装いもこちらで用意するので是非にとのことにございます」
「こ、このようなすばらしい品を息子の誕生日にいただけただけでどのようにお礼申し上げればいいかわかりかねるところに、さらにそのようなことまでしていただいてまでは流石に!」
父が言った言葉に俺と母も渾身の力で頷き同意を示した。
「ああ、セイジュ様にアンジェリーナ様から言づけを預かっておりました」
「え?な、なんでしょう」
「はい。『わたくしの誘いを断るのは公爵家への不敬ですわっ!』とのことにございます」
「え゛…」
「それではご出席ということでよろしいですかな?」
両手を腰に当て胸を張り言い切るアンジェリーナが容易に想像してげんなりする俺にセルジュが負けを認めろといわんばかりに笑顔で尋ねてきた。
「そ、それでは…親としては情けなく思いますが…重ね重ねのお心遣いに感謝させていただきます」
父が冷や汗をかきながらペコペコとセルジュに申し訳なさそうに頭をさげるとセルジュは満足げに笑顔で頷き帰っていった。
「りょ、料理が冷めちゃったわね」
「大丈夫、お母さんの料理は冷めても美味しいから」
「そ、そうだな」
嵐のような出来事に少し放心していた俺たちだったが母がすこし疲れ悲しそうにつぶやき料理を見ながら座るのを見て俺は父をみると目が合い同じ気持ちなんだとわかると頷きあい空元気をだしあい笑顔を浮かべ料理を食べた。
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前世の記憶が戻ってはいるがなぜか両親などのことは思い出せなかった。たぶん幼馴染2人のことを思い出したのは俺が死ぬ直前のことだったからじゃないかと思う。なので元々セイジュ自身も母を好きだったこともあるんだろうが俺も今の母は大事だと思うし好きだと思う。かなりセイジュの精神に引っ張られているだけなのかもしれないが…。
「ふぅ、せっかく誕生日プレゼントに本をもらったがまったく頭にはいらないな」
俺は今日もらった本をぱたんと閉じ深いため息をついた。そしてアンジェリーナの誕生パーティーのことを考えると頭が痛くなった。
「またコルグもいるだろうし…他にも貴族様だらけ…はぁ~…」
早々たる参加者の中に平民の俺が参加しているところを想像しげんなりする一方だったが、屈託なく俺に接してくれるアンジェリーナの顔を思い出すとやっぱり行かないなんて口が裂けても言えない。
「八方ふさがりだよ…」
俺は逃げ道を立たれ死地に赴く人間の心理をこの時すこしだけ理解した気がした。
「しかも手ぶらでいいって言われたって…そういうわけにもいかないし…かといって高級な品なんて…」
せめて何かプレゼントを持っていかなければと考えるも我が家と俺の懐事情を考えるとめまいがした。
そしてそのめまいのままベッドに倒れこみ眠った。
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