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18話
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「モンドどういうことだ?セイは学園に行かないそうではないか」
「はい、私も進めたんですが本人がなぜか頑として…しまいに妻まで反対を…」
「セイの考えが我々にはわからぬが其方の妻はなぜ反対したんだ?」
「それが…妻が申すには…セイと店、それに公爵様のためにも行かせないほうがいいと…」
「どういう意味だ?」
「はい、セイがいままで物をつくってきたのはすべて誰かのためでした。学園で友人や知り合いが増えその子達のためにあの子が何かをしてあげたり、貴族の中ではセイを知っている方々も来ると思いますし、その手の方々がセイを利用しては…と」
「なるほど…一理どころか大いにあり得るな…ハンスやアンジェが常に一緒というわけにもいかんしな」
「はい、なによりあの子は優しい子です…その優しさにつけこまれ体よくつかわれ、心に傷をつくっていまうことを私どもは良しとしたくはないと…思っております」
「ふむ…セイの心が病んでしまっては今後なにも生み出せぬやもしれん…ほかの者たちに与えたものを商品化して売り出すものもいるやもしれん…たしかにお前の妻のいうとおりだ…無理強いはできんな」
「はい…それであちこち見て回りたいというので取引先への同行をゆるせばそれなりに満足してくれるのではないかと思いまして」
「ふむ、行く先々での危険も回避できるであろうし…なにより好き勝手やらかしてしまわぬよう見張りもつけれるな」
「見張りというか…どこか抜けているところがありまして…ふらふらいなくなる可能性の方が大きいかと……」
「ふっ、そうだな……ではこうするのはどうだ?」
ハンスから報告を受けすぐに父のモンドを呼び出したハスクが話し合いをした。
======================================
「珍しいね、お父さんと一緒に呼ばれるなんて」
「あ、ああ…そうだな」
「どうしたの?」
「なんでもない」
旅に出たいと言ってから3日後、俺と父が公爵家に呼び出され理由を知らない俺が父に探りを入れるように尋ねると父はなぜかなにかの勝負でもするのかと思うほどガチガチに緊張していた。
「モンド、セイよくきたな」
「遅くなりましてもうしわけございません」
ハスクの執務室へ通され入室するとそこにはハスクとカリーナ、それにハンスとアンジェリーナそしてエスメラルダ王妃となぜか治療院のモナ先生もいた。
「セイ、ハンスから話は聞いた。私はお前が学園にいきたいのではないかと思って居ったのだが行きたくないそうだな」
「え?…はい。ご厚意は誠にうれしいのですが僕は学園にはいかず幼少からの夢をかなえたいと思っております」
「ふむ…理由は旅をしたいというだけなのか?」
「正直に申し上げますと…旅をしてみたいというのはたしかに一番の理由ですが…」
「かまわん、ここだけの内密にするゆえ正直にいってくれ」
「はい…公爵様からご推薦いただければ確かに学園には通うことはできますが、僕は平民です。学園に通う皆様はそれなりの地位のあるお家柄の方々ばかりです…そのような場所へ僕が入っていっても必ずご迷惑をおかけしてしまいます。それはハンス様やアンジェリーナ様、それにご推薦してくれたハスク様にまでご迷惑をおかけすることになります…これまで多大すぎる御恩がある方々に僕はそんなことしたくありません」
それとゲーム内のシナリオに巻き込まれるとか厄介すぎると内心思いながらも必死に答えた。
「………そうか、そのように思っており言われてしまえば無理強いもできまい…あいわかった」
「お父様!ではセイは旅にでていってしまうのですかっ!?」
「アンジェ落ち着きなさい?」
「でもお母様!」
「おちつけ…ではしばらくの間は父の店の手伝いであちこち回るでいいのだな?」
「はい、父から許可をいただいておりますので旅になれるまではそうしようとおもっております」
「ふむ。なあセイよ」
「はい」
「ここにいる面子でセイの旅について少々話し合ったのだが我々の提案をきいてくれぬか?」
「え?」
「旅を反対するつもりはない。大いに見分を広げ自由を謳歌してほしいと我々も思って居るがことはそう簡単なことではないのだ…どうだ?」
「わ、わかりました」
「うむ、ではまずお前の腕の状態についてだ」
「それは私から説明させていただきます。セイちゃんの腕はだいぶ良くなってきていますが今後も回復する見込みがあるからこれまで通り週に1度治療院へ通ってほしいの」
「え?そうなんですか、わかりました」
「ふむ、次だが」
「お父様わたしがいいます」
「セイ、来年から私は父の仕事を少しづつ手伝っていくことになっているんだけど、まずは簡単なことからということでホルマトロが所有する領地をめぐって顔みせが仕事となるんだ」
「もうお仕事をお手伝いなさるのですか?ハンス様はやはりすごいですね!」
「くっくっく、それはどうもありがとう。それでだ、モンド商会の仕事の合間でもいいから君も一緒にいかないか?我が領地なら比較的安全に旅ができると思うよ」
「え!?そんな大事なご公務のお邪魔になってしまいますよ!」
「いや、気心知れた同じ年頃の子が話し相手にいたほうがいい、ハンスを助けてやってくれ」
「え…で、ではご迷惑でなければよろしくお願いいたします…」
畳みかけるようにモナ先生とハンスに言い切られた形で俺はどんどん了承させられていった。
「ではまとめるぞ?」
「は、はい」
「当面はモンド商会の仕事とハンスの公務の同行、期間は治療院に通うため1週間以内に行って帰ってこれる場所に限るこれでよいな?」
「…はい」
ハスクが話の内容をまとめて提案し俺は有無を言わせぬ場の雰囲気にのまれしぶしぶ返事をした。
「セイちゃん、15歳はまだ子供です。いきなり無理して旅をしてもいい結果が得られるとは思いません。まずは旅に耐えれる体や実際に旅をして気づいたことに対応することに努めるのがよいと思いますわよ?」
「そうですね、あと1年あるので大丈夫だとおもっておりましたが、たしかに実際やってみなければ問題点はでてきませんね!エスメラルダ王妃様ありがとうございます!」
「ふふふっ、いいのよ」
優しく諭すように王妃に言われ学園入学阻止を達成することができたら焦る必要はないなと思い俺は納得した。
「それではセイは遠くにはいかないのですか?」
「しばらくはこの街が基点のままですね」
「アンジェの機嫌も治ってなによりだね」
「もう!お兄様ったら!!」
今日も今日とてアンジェリーナが地団太をふみながら顔を真っ赤にしているのをみんなで見ながら笑っていた。
………ゲームでは入学当初から生粋の悪役令嬢なはずなんだけど…入学までになにか劇的な変化でもあるのかな?と俺は一抹の不安を覚えながらその光景を見ていた。
「はい、私も進めたんですが本人がなぜか頑として…しまいに妻まで反対を…」
「セイの考えが我々にはわからぬが其方の妻はなぜ反対したんだ?」
「それが…妻が申すには…セイと店、それに公爵様のためにも行かせないほうがいいと…」
「どういう意味だ?」
「はい、セイがいままで物をつくってきたのはすべて誰かのためでした。学園で友人や知り合いが増えその子達のためにあの子が何かをしてあげたり、貴族の中ではセイを知っている方々も来ると思いますし、その手の方々がセイを利用しては…と」
「なるほど…一理どころか大いにあり得るな…ハンスやアンジェが常に一緒というわけにもいかんしな」
「はい、なによりあの子は優しい子です…その優しさにつけこまれ体よくつかわれ、心に傷をつくっていまうことを私どもは良しとしたくはないと…思っております」
「ふむ…セイの心が病んでしまっては今後なにも生み出せぬやもしれん…ほかの者たちに与えたものを商品化して売り出すものもいるやもしれん…たしかにお前の妻のいうとおりだ…無理強いはできんな」
「はい…それであちこち見て回りたいというので取引先への同行をゆるせばそれなりに満足してくれるのではないかと思いまして」
「ふむ、行く先々での危険も回避できるであろうし…なにより好き勝手やらかしてしまわぬよう見張りもつけれるな」
「見張りというか…どこか抜けているところがありまして…ふらふらいなくなる可能性の方が大きいかと……」
「ふっ、そうだな……ではこうするのはどうだ?」
ハンスから報告を受けすぐに父のモンドを呼び出したハスクが話し合いをした。
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「珍しいね、お父さんと一緒に呼ばれるなんて」
「あ、ああ…そうだな」
「どうしたの?」
「なんでもない」
旅に出たいと言ってから3日後、俺と父が公爵家に呼び出され理由を知らない俺が父に探りを入れるように尋ねると父はなぜかなにかの勝負でもするのかと思うほどガチガチに緊張していた。
「モンド、セイよくきたな」
「遅くなりましてもうしわけございません」
ハスクの執務室へ通され入室するとそこにはハスクとカリーナ、それにハンスとアンジェリーナそしてエスメラルダ王妃となぜか治療院のモナ先生もいた。
「セイ、ハンスから話は聞いた。私はお前が学園にいきたいのではないかと思って居ったのだが行きたくないそうだな」
「え?…はい。ご厚意は誠にうれしいのですが僕は学園にはいかず幼少からの夢をかなえたいと思っております」
「ふむ…理由は旅をしたいというだけなのか?」
「正直に申し上げますと…旅をしてみたいというのはたしかに一番の理由ですが…」
「かまわん、ここだけの内密にするゆえ正直にいってくれ」
「はい…公爵様からご推薦いただければ確かに学園には通うことはできますが、僕は平民です。学園に通う皆様はそれなりの地位のあるお家柄の方々ばかりです…そのような場所へ僕が入っていっても必ずご迷惑をおかけしてしまいます。それはハンス様やアンジェリーナ様、それにご推薦してくれたハスク様にまでご迷惑をおかけすることになります…これまで多大すぎる御恩がある方々に僕はそんなことしたくありません」
それとゲーム内のシナリオに巻き込まれるとか厄介すぎると内心思いながらも必死に答えた。
「………そうか、そのように思っており言われてしまえば無理強いもできまい…あいわかった」
「お父様!ではセイは旅にでていってしまうのですかっ!?」
「アンジェ落ち着きなさい?」
「でもお母様!」
「おちつけ…ではしばらくの間は父の店の手伝いであちこち回るでいいのだな?」
「はい、父から許可をいただいておりますので旅になれるまではそうしようとおもっております」
「ふむ。なあセイよ」
「はい」
「ここにいる面子でセイの旅について少々話し合ったのだが我々の提案をきいてくれぬか?」
「え?」
「旅を反対するつもりはない。大いに見分を広げ自由を謳歌してほしいと我々も思って居るがことはそう簡単なことではないのだ…どうだ?」
「わ、わかりました」
「うむ、ではまずお前の腕の状態についてだ」
「それは私から説明させていただきます。セイちゃんの腕はだいぶ良くなってきていますが今後も回復する見込みがあるからこれまで通り週に1度治療院へ通ってほしいの」
「え?そうなんですか、わかりました」
「ふむ、次だが」
「お父様わたしがいいます」
「セイ、来年から私は父の仕事を少しづつ手伝っていくことになっているんだけど、まずは簡単なことからということでホルマトロが所有する領地をめぐって顔みせが仕事となるんだ」
「もうお仕事をお手伝いなさるのですか?ハンス様はやはりすごいですね!」
「くっくっく、それはどうもありがとう。それでだ、モンド商会の仕事の合間でもいいから君も一緒にいかないか?我が領地なら比較的安全に旅ができると思うよ」
「え!?そんな大事なご公務のお邪魔になってしまいますよ!」
「いや、気心知れた同じ年頃の子が話し相手にいたほうがいい、ハンスを助けてやってくれ」
「え…で、ではご迷惑でなければよろしくお願いいたします…」
畳みかけるようにモナ先生とハンスに言い切られた形で俺はどんどん了承させられていった。
「ではまとめるぞ?」
「は、はい」
「当面はモンド商会の仕事とハンスの公務の同行、期間は治療院に通うため1週間以内に行って帰ってこれる場所に限るこれでよいな?」
「…はい」
ハスクが話の内容をまとめて提案し俺は有無を言わせぬ場の雰囲気にのまれしぶしぶ返事をした。
「セイちゃん、15歳はまだ子供です。いきなり無理して旅をしてもいい結果が得られるとは思いません。まずは旅に耐えれる体や実際に旅をして気づいたことに対応することに努めるのがよいと思いますわよ?」
「そうですね、あと1年あるので大丈夫だとおもっておりましたが、たしかに実際やってみなければ問題点はでてきませんね!エスメラルダ王妃様ありがとうございます!」
「ふふふっ、いいのよ」
優しく諭すように王妃に言われ学園入学阻止を達成することができたら焦る必要はないなと思い俺は納得した。
「それではセイは遠くにはいかないのですか?」
「しばらくはこの街が基点のままですね」
「アンジェの機嫌も治ってなによりだね」
「もう!お兄様ったら!!」
今日も今日とてアンジェリーナが地団太をふみながら顔を真っ赤にしているのをみんなで見ながら笑っていた。
………ゲームでは入学当初から生粋の悪役令嬢なはずなんだけど…入学までになにか劇的な変化でもあるのかな?と俺は一抹の不安を覚えながらその光景を見ていた。
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