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17話
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「え?アンジェリーナ様はご婚約なさらないのですか?」
「そのようだよ?」
14歳になった俺は自身の誕生日の翌日、公爵家へと招かれハンスとアメリア、そしてふくれっつらのアンジェリーナの相手をすることになった。
「なんですの?セイは私が誰かの婚約者になったほうがよかったのですか?」
「いえ、いいとか悪いとかではなく貴族の方は15歳になられるときにご婚約を発表なさるものなのかと思っていたもので…すみません」
アンジェリーナにギロリと睨まれ冷や汗を吹き出しながら俺は必死に謝罪した。
「セイちゃん、貴族でも上級の貴族ならば生まれてすぐにお相手が決まる方もいらっしゃるの、それこそお家のご都合っていうので時期は特に決まっておりませんのよ」
「そうなんですね…知りませんでした」
貴族って大変なんだなぁと感心しているとハンスは俺を見ながらニヤニヤわらっていた、大概こういう笑顔の時はアンジェリーナか俺をからかってくることをここ数年の付き合いで俺は理解していた。
「ちなみにアンジェの婚約者候補は数名いるんだよ」
「え?そうなんですの!?」
「ああ、うちとのつながりを持ちたいところは意外と多いみたいだ」
「それはそうですわ…あのホルマトロ家ですもの」
驚くアンジェを心底楽しそうに見ているハスクと深いため息をつきこたえたアメリアのあまりにも正反対の反応に俺は驚いていた。
「国内で数十件、国外からはもっときているよ?」
「すごいですねぇ」
「ちなみに国内での最有力といわれているのはコルグだ」
「え゛…死んでもいやですわ……」
「あははははっ!お父様が即断ったけどね!」
「えぇ?第2王子様からのお誘いをお断りして大丈夫なのですか!?」
「あははは!リカルドならばまだしもコルグはないよ!」
「リカルド様は母親の王妃様にそっくりで素敵な方ですものね」
「コルグも母親によく似ているよ」
「えっと…ご兄弟ですよね?」
「母親が違うのさ、リカルドは王妃様のコルグは側室の子なんだよ」
「そうだったんですか…」
「見た目も中身もにてないだろ?」
「失礼ですが、そうですね」
「あはははははっ!」
ぐったりしているアンジェリーナとあたふたする俺の反応を見てハンスは実にいい笑顔を浮かべていた。
「まぁ、コルグとの話がきて一番最初に激高しながらお父様に断らせたのはお母様なんだけどね」
「え!?」
「そもそもお母様と王妃様が幼馴染で生まれたころからの大親友なんだ」
「すごい幼馴染ですね…」
「あっはっはっはっは!それに昔コルグが我が家でやらかしたことを我が公爵家の誰一人忘れたわけではないからね、そんな相手にアンジェを嫁がせるなんてあるわけがないんだよ」
「コルグ様はなにをなさったのですか?」
「それがね?……」
「アメリアお姉さま!あの傲慢王子はセイに大けがをさせたんですわ!」
「え!?セイちゃんに?どういうことですの!?」
ハンスの言葉で当時の出来事を思い出したあんじぇアンジェリーナが激高しながら一部始終を話した。
「というわけですのっ!」
「……うちのセイちゃんに……なんてひどいことを……それはゆるせませんわ……」
興奮気味に話し切ったアンジェリーナが怒りが収まらない様子でどっかりと椅子に座りハーブティーを人のみしているとワナワナと震えながらアメリアが怒りを口にした。
「そう、うちのセイにそういうことをしたからコルグはないんだよ、それにアンジェにまで手を出そうとしたんだそんな暴力男に我が家の姫を嫁がせるわけがないね」
めずらしくハンスがスーッと真顔になり淡々と答え俺は恐怖で固まってしまった。
「ということで王子との縁談さえ断ってしまったアンジェがそれ以下の貴族との婚約はできないというのが実情なのさ」
「そうだったんですか……」
「セイ?君のせいじゃないからね?」
「……はい…申し訳ありません」
俺がどんくさくてぶっ飛ばされすぎたせいで縁談が組めないのかとショックを受けていると察したハンスが笑顔で俺の方をたたいていってくれた。
「はぁ~来年からは毎日コルグにお会いしなければならないと考えるだけで気分が悪いですわ」
「ああ、アンジェリーナ様もコルグ様も学園にご入学なさりますからね」
「ええ、というかセイは来年からどうなさるんですの?」
「そうね、セイちゃんも学園へ?」
「いえ!僕はしがない平民なので学園には入れませんよ」
「ん?お父様がセイが学園に入りたければ公爵家が推薦するといってたけど?」
「い゛!?」
「それに今のモンド商会なら資金面もなにも問題ないと思うけど?」
「いやいや!僕は来年になったら当初の予定どおりですよ!」
俺は手と顔をぶんぶん振って心の限り否定した。ここで学園なんかに入ってしまえば主要キャラと嫌でも接する機会がふえてしまうかもしれない。それは勘弁願いたいからだ。
「当初の予定ってなんですの?学園にはいきませんの?」
「まさか…君…いまでも…」
「お兄さまは知ってらっしゃるの?」
「ああ、たぶんだが、セイは子供のころからの夢をやろうとしているんだよ」
「え!?まさか…本気なのですか?セイ!」
「え?はい。ここ数年ちゃんと準備を進めてましたし…」
「ハンス様?セイちゃんの夢とはなんですの?」
「お姉さま……旅ですわ」
「え……た、旅?」
俺の話を聞き3人とも絶句に近い反応を示し微妙な空気が流れ始めた。
「いきなり一人旅は両親にも止められてしまいまして、仕方ないので当面は父の仕事で品を運ぶ馬車で取引先までですが行くことになりそうです」
「一人旅をなさるおつもりでしたのっ!?」
「え?そうですが…」
なんとか雰囲気をかえようと俺がいうとアメリアが驚愕の表情に変わりさらに空気が微妙になった。
「セイ…君…今の自分の立場を考えてなさすぎだ」
「え?」
「セイちゃん?あなたを欲しいと思っている貴族が、いえ貴族だけではありませんは!そのような方々がたくさんいらっしゃるのよ!?一人旅など危険すぎますわ」
「えぇ!?そんな大げさな、ただの平民の子供ですよ?」
「…セイ、とりあえずお父様に相談しなくてはならないから…旅の準備はその話が決まるまで一旦ストップしてくれ」
「え?ハスク様にご相談なさるほどのことでは…」
「いや、我がホルマトロ家の最重要項目だ、いいね?一旦ストップだ」
「わ、わかりました」
有無をいわせぬ真剣なまなざしでハンスに言われ俺は頷くしかなかったが、その間アンジェリーナは絶望したようにな顔をしアメリアは目を見開いて驚いていたまま硬直していた。
「そのようだよ?」
14歳になった俺は自身の誕生日の翌日、公爵家へと招かれハンスとアメリア、そしてふくれっつらのアンジェリーナの相手をすることになった。
「なんですの?セイは私が誰かの婚約者になったほうがよかったのですか?」
「いえ、いいとか悪いとかではなく貴族の方は15歳になられるときにご婚約を発表なさるものなのかと思っていたもので…すみません」
アンジェリーナにギロリと睨まれ冷や汗を吹き出しながら俺は必死に謝罪した。
「セイちゃん、貴族でも上級の貴族ならば生まれてすぐにお相手が決まる方もいらっしゃるの、それこそお家のご都合っていうので時期は特に決まっておりませんのよ」
「そうなんですね…知りませんでした」
貴族って大変なんだなぁと感心しているとハンスは俺を見ながらニヤニヤわらっていた、大概こういう笑顔の時はアンジェリーナか俺をからかってくることをここ数年の付き合いで俺は理解していた。
「ちなみにアンジェの婚約者候補は数名いるんだよ」
「え?そうなんですの!?」
「ああ、うちとのつながりを持ちたいところは意外と多いみたいだ」
「それはそうですわ…あのホルマトロ家ですもの」
驚くアンジェを心底楽しそうに見ているハスクと深いため息をつきこたえたアメリアのあまりにも正反対の反応に俺は驚いていた。
「国内で数十件、国外からはもっときているよ?」
「すごいですねぇ」
「ちなみに国内での最有力といわれているのはコルグだ」
「え゛…死んでもいやですわ……」
「あははははっ!お父様が即断ったけどね!」
「えぇ?第2王子様からのお誘いをお断りして大丈夫なのですか!?」
「あははは!リカルドならばまだしもコルグはないよ!」
「リカルド様は母親の王妃様にそっくりで素敵な方ですものね」
「コルグも母親によく似ているよ」
「えっと…ご兄弟ですよね?」
「母親が違うのさ、リカルドは王妃様のコルグは側室の子なんだよ」
「そうだったんですか…」
「見た目も中身もにてないだろ?」
「失礼ですが、そうですね」
「あはははははっ!」
ぐったりしているアンジェリーナとあたふたする俺の反応を見てハンスは実にいい笑顔を浮かべていた。
「まぁ、コルグとの話がきて一番最初に激高しながらお父様に断らせたのはお母様なんだけどね」
「え!?」
「そもそもお母様と王妃様が幼馴染で生まれたころからの大親友なんだ」
「すごい幼馴染ですね…」
「あっはっはっはっは!それに昔コルグが我が家でやらかしたことを我が公爵家の誰一人忘れたわけではないからね、そんな相手にアンジェを嫁がせるなんてあるわけがないんだよ」
「コルグ様はなにをなさったのですか?」
「それがね?……」
「アメリアお姉さま!あの傲慢王子はセイに大けがをさせたんですわ!」
「え!?セイちゃんに?どういうことですの!?」
ハンスの言葉で当時の出来事を思い出したあんじぇアンジェリーナが激高しながら一部始終を話した。
「というわけですのっ!」
「……うちのセイちゃんに……なんてひどいことを……それはゆるせませんわ……」
興奮気味に話し切ったアンジェリーナが怒りが収まらない様子でどっかりと椅子に座りハーブティーを人のみしているとワナワナと震えながらアメリアが怒りを口にした。
「そう、うちのセイにそういうことをしたからコルグはないんだよ、それにアンジェにまで手を出そうとしたんだそんな暴力男に我が家の姫を嫁がせるわけがないね」
めずらしくハンスがスーッと真顔になり淡々と答え俺は恐怖で固まってしまった。
「ということで王子との縁談さえ断ってしまったアンジェがそれ以下の貴族との婚約はできないというのが実情なのさ」
「そうだったんですか……」
「セイ?君のせいじゃないからね?」
「……はい…申し訳ありません」
俺がどんくさくてぶっ飛ばされすぎたせいで縁談が組めないのかとショックを受けていると察したハンスが笑顔で俺の方をたたいていってくれた。
「はぁ~来年からは毎日コルグにお会いしなければならないと考えるだけで気分が悪いですわ」
「ああ、アンジェリーナ様もコルグ様も学園にご入学なさりますからね」
「ええ、というかセイは来年からどうなさるんですの?」
「そうね、セイちゃんも学園へ?」
「いえ!僕はしがない平民なので学園には入れませんよ」
「ん?お父様がセイが学園に入りたければ公爵家が推薦するといってたけど?」
「い゛!?」
「それに今のモンド商会なら資金面もなにも問題ないと思うけど?」
「いやいや!僕は来年になったら当初の予定どおりですよ!」
俺は手と顔をぶんぶん振って心の限り否定した。ここで学園なんかに入ってしまえば主要キャラと嫌でも接する機会がふえてしまうかもしれない。それは勘弁願いたいからだ。
「当初の予定ってなんですの?学園にはいきませんの?」
「まさか…君…いまでも…」
「お兄さまは知ってらっしゃるの?」
「ああ、たぶんだが、セイは子供のころからの夢をやろうとしているんだよ」
「え!?まさか…本気なのですか?セイ!」
「え?はい。ここ数年ちゃんと準備を進めてましたし…」
「ハンス様?セイちゃんの夢とはなんですの?」
「お姉さま……旅ですわ」
「え……た、旅?」
俺の話を聞き3人とも絶句に近い反応を示し微妙な空気が流れ始めた。
「いきなり一人旅は両親にも止められてしまいまして、仕方ないので当面は父の仕事で品を運ぶ馬車で取引先までですが行くことになりそうです」
「一人旅をなさるおつもりでしたのっ!?」
「え?そうですが…」
なんとか雰囲気をかえようと俺がいうとアメリアが驚愕の表情に変わりさらに空気が微妙になった。
「セイ…君…今の自分の立場を考えてなさすぎだ」
「え?」
「セイちゃん?あなたを欲しいと思っている貴族が、いえ貴族だけではありませんは!そのような方々がたくさんいらっしゃるのよ!?一人旅など危険すぎますわ」
「えぇ!?そんな大げさな、ただの平民の子供ですよ?」
「…セイ、とりあえずお父様に相談しなくてはならないから…旅の準備はその話が決まるまで一旦ストップしてくれ」
「え?ハスク様にご相談なさるほどのことでは…」
「いや、我がホルマトロ家の最重要項目だ、いいね?一旦ストップだ」
「わ、わかりました」
有無をいわせぬ真剣なまなざしでハンスに言われ俺は頷くしかなかったが、その間アンジェリーナは絶望したようにな顔をしアメリアは目を見開いて驚いていたまま硬直していた。
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