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21話

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 「して?急にどうした」

 「はい。それがセイ様のことで……」

 「ふむ、3か月ほど先とはいえ今回はまだ何も新しいアイディアを出してこぬということか」

 「はい、ハンス様にお気を使われているのか…乗り気ではないのか…そういうことです」

 「やはり…あの子には無理やりはダメか…」

 「どうなさいますか?」

 「セイが何も言ってこぬのであればハンスの時と同じでよい」

 「かしこまりました」

 1週間たったがセイが新たなアイディアを出さず今回は乗り気ではないのではないかと相談に来たアンドレにハスクはため息交じりに答えた。
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 「どう思う?」

 「ああ、それはたぶんイメージがわかないんですよ」
 
 「ふむ」

 「私の時はこの家の会場になった庭もよく知ってましたし、僕のことも知っていたそして5日前にはアメリアのことも見ていましたからね、想像しやすかったんだと思いますよ」

 「なるほどな…城へ行ったこともなくリカルドの相手も知らんではどのようにしたらいいというイメージがわかぬということか」

 「だとおもいますがね…お父様?一つ生意気を言うようですがよろしいですか?」

 「なんだ?申してみろ」

 「あまりにも露骨にセイをお使いになり続けるとアンジェリーナに嫌われてしまいますよ?」

 「ふっ、そうだな。肝に銘じよう」

 ハスクはハンスの最後の言葉の真意に気づかず笑顔で答えた。

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 「セイ大丈夫ですの?」

 「だ、大丈夫です」

 「全然、大丈夫ではなさそうですわ…お兄様やはり帰りましょう?セイが持ちませんわ」

 「私もそうしてあげたいんだがリカルドからのお誘いだからしかたないんだよ、あいつあれでも一応この国の王子だし」

 「ハンス様、要件がお済になられましたら即刻もどりましょう?」

 「もともと長居なんかするつもりはないよ」

 王城の来賓控室で真っ青な顔をしガッチガチに緊張してソファーにも座れず直立不動のセイジュの手を握りやさしく背中をさすり心配しているアンジェリーナを微笑ましく見ながら優雅にお茶を飲むハンスが答えた。

 「急に呼び出してすまなかったな、皆よくきてくれた」

 「ようこそおいでくださいました」

 ノックされドアが開かれるとリカルドとメリダそして見知らぬ同年代の女性がにこやかに入室してきた。

 「ほんとうだよ、私たちも暇ではないんだよ?」

 「そういうな、そもそもお前が言ってきたのが原因であろうよ」

 「どういうことですの?というよりリカルド様、後ろのお方は?」

 「ああ、紹介するよ私の婚約者のソフィアだ」

 「ソフィアと申します。皆様よろしくお願いいたします。」

 「ソフィー様…まさかソフィー様がリカルド様とご婚約なさるとは思いませんでしたわ」
 
 「お久しぶりねアミー様」

 「ん?二人は知り合いかい?」

 「ええ、隣国同士ですから。まぁ私は第3王女だったのでご身分は第1王女のソフィア様のほうがずっとお高いのですけれど親しみやすいお優しい方なので良くしていただいておりました」

 「ふふっ、同じ王女の立場に上も下もありませんよ」

 リカルドの婚約者ソフィアとハンスの婚約者アメリアは幼少期より顔見知りで親しい間柄だった。
そして、俺はそれを知っていてなおかつメリダにも会う機会があるかもしれないので先ほどから嫌な汗が止まらずにいた。現にメリダは俺に視線を向けたままじっと笑顔を浮かべているし完全に嫌な予感しかしていない。

 「ふふっ、セイジュ様またお会いできましたね」

 「リカルド様、メリダ様お招きいただきありがとうございます。ソフィア様お初にお目にかかりますセイジュと申します」

 「ハンス=ホルマトロと妹のアンジェリーナ=ホルマトロです。よろしくお願いいたします」

 「アンジェリーナと申します」

 ジリジリっと微妙に距離を詰めようとしているメリダに俺は一礼すると何かを察してくれたハンスがすぐさまソフィアに挨拶をしてくれけん制してくれた。

 「セイジュ様、お顔がすぐれませんがご気分でも?」

 「セイはこのような場には慣れていないからね。だから本日は悪いが要件を済ませたら即退散させてもらうよ」

 「ああ、セイジュには無理をさせてしまっているとわかっている。セイジュ、母が無理な頼みをして申し訳なかったな」

 「い、いえ!リカルド様のご婚約なんてすごくおめでたい事のお手伝いをさせていただけるのはうれしい限りです」

 「そういってもらえて助かる。すまんな」

 「いっ!?おやめください!精いっぱいできるかぎり頑張りますのでこちらこそよろしくお願いいたします」

 リカルドが笑顔を浮かべ軽く会釈するようにあたまを下げてきたので俺は盛大に取り乱しながらもそれをやめさせた。

 「ハンスがな?手伝えというが実際どのような場所で私がどのような人物と婚約したのかを知らなければイメージがわかんだろうと言ってきたのでな。ゆえに今日はソフィアを紹介し実際の会場や厨房などを見てもらおうと思ったのだ」

 「そ、そうでしたか。お気を使わせてしまって申し訳ありません」

 「それはこちらのセリフだ。では早速で申し訳ないが会場となる場所から案内しよう」

 ソフィアを引き連れ歩き出したリカルドの後に続きハンスとアメリアが後に続いたので俺も後に続いて部屋を出た。

 「セイジュ様?こちらの庭園はお母様と私のお気に入りの場所ですのよ」

 「そ、そうなのですか。きれいな庭園で様々なお花が咲いておられて素敵ですね」

 「ありがとうございます。セイジュ様からお母様がいただいたバラなどもこちらに咲いておりますのよ」

 「そ、そうにございますか…あの、メリダ様…私などに様などお付けになられずに…」

 「あら、ではどのようにお呼びしたらよろしいのかしら」

 「あのセイジュと呼び捨てでかまいませんのでそのようにお呼びくだされば…」

 会場となる場所へ向かうさなか、俺の体調を心配してくれているアンジェリーナが横についてくれているのは心強いが…なぜかメリダも隣にいてあれこれと説明してくれていて俺は二人に挟まれるように歩いていた。

 「メリダ様?セイが困ってしまってますわ」

 「私はセイジュ様と仲良くなりたいだけなのですが…そうだわ私も親しみを込めてアンジェ様同様と呼んでもよろしいかしら?」

 「え?そ、それは構いませんが…」

 「ふふふっ。ありがとうございます!あらためてよろしくお願いいたしますわセイ」

 「こ、こちらこそ…光栄ですよろしくお願いいたします…」

 「メリダ様!セイはまだ気分があまりすぐれないのでそのようにひっつくのはおやめください!」

 「あら?アンジェ様だってひっついているじゃありませんか…それに」

 「私は気分がすぐれないセイに付き添っておりますの!それになんですの?」

 「さきほどアンジェ様同様と言って了承いただきましたもの私も付き添って問題ありませんわ」

 華やかで輝くような満面の笑みで言い切ったメリダとショックを隠せずに固まっているアンジェリーナだったが俺はこの状況で生きた心地がせずなおさら汗を拭きだせ痛む胃と戦いながら必死に歩いた。

 

 
 
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