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50話

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 「なに!?それは本当なのか!!」

 「ええ、アデラとその側近たちが城から…いえ、おそらくこの国から消えました」

 「話をきいても、グラドスの目をかいくぐって逃げおおせたのが信じられん!」

 「王に尋ねたところ王家で後を継ぐもののみ知ることができる秘密の脱出路があるそうで…恐らくそこから城の外へ…」

 「そして国外への脱出経路もすでに準備していたと思われます」

 「あの馬鹿が…まさか国王あやつが手助けしたわけではないだろうな」

 「それは今のところなさそうですね…一番顔を蒼くさせ驚いていたのは国王様ですから」

 ブルリックとダンの報告を聞きハスクが驚きながらも頭を抱えた。

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 「なるほど…ではコルグもろとも消えたということか」

 「ええ、リカルド様も今城で色々と動いておいででしょうね」

 「まんまと逃げられてしまい我がグラドス一生の汚点となってしまいました」

 「いや、王家…しかも王を継ぐものしか知らない通路なんて守りようがないさ」

 「ですね」

 「それで父から皆さまに今後しばらくは更なる身辺の警護にきをつけるようにとのことです」

 「アンジェ達は特にきをつけさせなかればならないな」

 「そうですね、それと」

 「セイジュ様も…」

 「ああ、わかっているよ」

 「それで?そのセイジュ様はどちらに?」

 「くっくっく!女の戦場のど真ん中にいるよ」

 「あぁ~…ご愁傷様」

 スターク、エドワードとアデラとコルグの件をきいたハンスは苦笑しながらもセイジュの身を想像していた。

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 「セイ!これは美味しいですわ!」

 「そうですね!セイ様!これはなんなのですかっ!?」

 「これは生チョコといいます」

 「生チョコ!!」

 「チョコレートに生のものがあるなど私知りませんでした!」

 「マチルダ様!私もです!」

 「メリダ様もマチルダ様も…チョコレートに生などありませんわ……」

 「え?カリン様、しかしですね!生だからこんなにも柔らかいのではないのですか!?」

 セイジュの工房で新作の生チョコを一口食べたアンジェリーナたちが目を見開き興奮のあまり立ち上がりながら生チョコの感想を表現していた。

 「セイジュ様?生チョコの生とはどういった意味なのでしょうか?」

 「あぁそれはですね、朝搾りたてのミルクをいただいて、あそこにある器具にいれてクリーム状のものに加工したものを生クリームと呼んでいまして、それをチョコレートと合わせて出来たお菓子なので」

 「なるほど、生クリームチョコレートだから生チョコなのですね?」

 「はい」

 アンジェリーナたちと同じ学園の制服をまとったマーリンが納得すると笑顔で自分の分の生チョコを口に運んだ。

 「セイ!いるか?あ…皆様おこしになられていらっしゃったのですか」

 「モンド、お邪魔しておりますわ」

 最近は学園帰りに俺の工房に寄るのが日課となっている4人に父も慣れたように挨拶をしていた。

 「お父さんそれで要件は?」

 「おぉ!懐かしい人がお前を訪ねてきたぞ!」

 「え?」

 「セっくん!ひさしぶり!!」

 「えっ!?ま、まさか!マリーちゃん!?」

 「うん!!会いたかったよぉ~!!!」

 「うわっぷ!!」

 「「「「 なっ!!! 」」」」


 突如あらわれた透き通るような水色の髪をした少女マリーが感激したように抱き着いてきて何とか受け止めたセイジュに嬉しそうに笑顔を浮かべているのをみてアンジェリーナたちが驚き立ち上がった。

 「おいおい!マリーちゃん!まずはこちらの方々に挨拶を!」

 「あっ!…叔父様ごめんなさい」

 モンドに焦ったようにとめられ我に返ったマリーがセイジュからはなれ咳ばらいを一つし身をただした。

 「アンジェリーナ様、それに皆様…えっと…こちらは昔隣に住んでいた家の子でマリーと申します。マリー?こちらはホルマトロ公爵家のご令嬢アンジェリーナ様、それとマリアンヌ聖教の教皇様のお孫様のマーリン様、ホマス家のカリン様、グラドス家のマチルダ様だ」

 「これはお見苦しいところをお見せして申し訳ございませんでした。わたしセイジュ様ののマリーと申します。以後よろしくお願いいたします」

 「っ!アンジェリーナ=ホルマトロですわ」

 「マーリンです」

 「カリン=ホマスです」

 「はじめまして!マチルダ=グラドスです!!」

 何かを感じ取ったマリーが幼馴染を強調するように挨拶をするとアンジェリーナ、マーリン、カリンが宣戦布告を受けて立つかのように不敵な笑顔で挨拶をし、マチルダは素直に嬉しそうに挨拶をした。

 「マリーちゃんに会うのは9年ぶりくらいかな?」

 「うん!セっくんに会えないで寂しかったよ!」

 「あははは!ありがとう!それで?またこの街にかえってきたの?」

 「うん!こっちの学園に編入することになったの!」

 「え?学園に通うの?」

 「うん!私は歌い手ディーヴァを目指しててね!それで試験をうけて特待生で学園に通えるようになったの!」

 「うぉ!特待生!?すごいね!!」

 「セっくんのほうがすごいよ!!史上最年少の賢人と王国錬金術師なんだもの!私も負けてられないと思ってがんばったの!」

 「そうなのか…でもすごいね!!」

 「ありがとう!」

 「セイ、それでな?マリーの父と俺は親友でこっちにいる間マリーちゃんを頼まれてな、うちから学園に通うことになったからな」

 「え?そうなの?」

 「なっ!!!」

 「うん!よろしくね!セっくん!」

 「ん?困ったことがあったらいつでも言ってね。僕は仕入れや納品でちょくちょく居ないんだけどね」

 「えぇ!?…そっかぁ…残念だけど仕方ないね」

 「あははは!これからよろしくね!」

 「うん!こちらこそ!」

 アンジェリーナ達はいつもどおりのセイジュを見て安堵の息を吐いたがチラチラと勝ち誇った目線をおくる幼馴染という強敵の出現に確かな脅威を感じていた。 
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