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87話

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 「このあたりはやはり農業地帯なんですね」

 「ええ、当家の領の端ですが寒暖の差が激しいですが結構いいものが取れるのですよ」

 「同じ領内でしかも隣同士の村でそのように気候の差があるのですね」

 「ええ、先ほど通った村は比較的温暖ですからね、山から吹き下ろす風も底を通り過ぎると乾燥するようなのです」

 「なるほど」

 「とりあえず本日はもうすぐいった先に宿を用意していますから気になるようでしたら話を聞き、帰りにでもご案内いたしますよ」

 「え?よろしいのですか?ではお手数をおかけいたしますがよろしくおねがいします」

 マリアンヌ教会の本拠地へと向かうためホマス家の領地をぬけている最中、休憩で立ち寄った村をみてセイジュが興味深そうにしているのをスタークが気づき話しかけていた。

 「ここが国境の街です、本日はここに当家が宿を取りましたのでそちらに向かいましょう」

 スタークの言葉に従い宿泊先へとむかい、その後ホマス家の関係者で街を収めている人物がもてなしてくれた。

 「なるほど…ふむふむ」

 「セイジュ様ずいぶんとこちらの領地がお気になっておられますのね」

 「ええ、色々興味深いですね」

 もてなしを受けた際、いろいろな話を聞いたセイジュは宿泊先の部屋にもどり色々考えながらメモにまとめて行っており訪ねてきたカリンが興味深そうに尋ねてきた。

 「この辺は木工も盛んのようですし良質な炭も焼いているんですね」

 「ええ、このあたりは森が多いので多種多様な植物が自生しておりますわ」

 「そのようですね、いつか色々調べてみたいですね」

 「時間がおとりになられるときにでも一言申していただければいつでも対応させていただきますわ」

 「ありがとうございます」

 多少自分の実家も恩恵をうけれるのではないかという思いを持ちつつもそれよりも嬉しそうに笑うセイジュの顔を見て幸せを感じている自分に多少驚きを覚えながらも胸の奥の暖かい気持ちがここちよくカリンも柔らかな笑顔で答えた。

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 「おお!ようこそおいでくださいました!」

 「教皇様、急な申し出をお受けしていただき感謝いたします」

 「いえいえ、こちらこそ五国があつまる重要な場をお任せいただきありがたくおもっております」

 ホマス家の領をでて十数日、無事にマーリンの祖国でありマリアンヌ教会本拠地へとつくと、教皇をはじめとし教皇派とおもしき司教などが出迎えてくれ、リカルドが代表し教皇へと感謝の意を伝えていた。

 「どうですか?セイジュ様」

 「はぁ~…ものすごく神々しく立派ですね」

 「ふふふ、セイジュ様がステンドグラスをご寄付してくださったおかげで美しい採光をとれて温かみある大聖堂へと変わったんですよ」

 「そういっていただければ嬉しいんですが、これは元々この大聖堂が立派なのと物凄く人々に大事にされているとわかるからではないですかねぇ」

 「ふふ、ありがとうございます」

 マーリンに案内され大聖堂へと足を運んだセイジュが感嘆の声をあげあたりを見渡し、マーリンの言葉に忖度なく答えるのをきき、同行していた司教らも嬉しそうにしていた。

 「ロイヤルガード、パラディンそしてスカラーの皆様が一堂にお越しになり街も活気づいておられますよ」

 「光栄です」

 「あとで教皇様が皆様をご紹介なさりたいと申しておいでなのでよろしければお受けしていただければと思っております」

 「ありがとうございます。謹んでお受けいたします」

 司教の言葉にハンスが答えた。

 「皆様、先にお伝えした通り5国の代表がこの国にお集まりいただくことになり先立ちましてリカルド=ホーネット国王様ならびに補佐役スターク=ホマス様、そしてロイヤルガード、ハンス=ホルマトロ様、パラディン エドワード=グラドス様、スカラーであり5国よりクリエーターをさずかっておりますセイジュ様がお越しになられております」

 『おぉ!!』

 「急な申し出も快くお受けいただき、かつこのような盛大な歓迎をしていただき我ら心より感謝申し上げます」

 代表してリカルドが集まった街の人々や教会関係者に礼をした。

 「さすがロイヤルガード様とパラディン様を輩出なさる国の国王様はご聡明そうですな」

 「ええ、それにお三方もなんと神々しくもご立派ないで立ちのことか」

 「スカラー様はマーリン様とも実に仲睦ましく微笑ましい!」

 「やはり一度婚約を破棄なさったのは西からの危険からマーリン様をお遠ざけなさるため苦渋の決断だったというお話は本当のようですな」

 「ええ!それを国王様はじめロイヤルガード様、パラディン様がたがお守りしてくださるということで正式にご婚約なさったそうですぞ」

 リカルドの挨拶が終わると拍手喝采であり集まった人々もこうふんぎみに色々な声が飛び交った。

 「ご立派な鎧や盾そして槍にございますな」

 「この日のためにセイジュが用意したものにございます。そして今後お認めになった騎士には我が国よりこちらをお納めさせていただきたい」

 「おお!それはありがとうございます」

 少々おおげさに壇上で話し合う教皇とリカルドをみて教皇派のものたちは満面の笑みで拍手をした。

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 「他国の代表の方々も随時こちらの国にご入国なさったと早馬の知らせをうけております」

 「そうですか、では期日通り開催できそうですね」

 「ええ」

 「ところでハンス、セイジュ君たちはどうしたのだ?」

 「マーリン様に案内され教会内を見て回っているが、多分もうそろそろメリダやアンジェそれとマチルダは戻ってくると思うよ」

 「めずらしい書物がいくつもあるとマーリン様がセイジュ様におっしゃられておりました」

 「ええ、それにこちらの建築方法などにも興味を示しておられたみたいですのでマーリン様とカリンもいつまで付いて行けるかというところでしょうね」

 リカルドの問いにハンス、エドワードそしてスタークが苦笑ぎみに答えた。

 「ついて早々に申し訳ございません」

 「いえいえ!セイジュ様には是非ご自由にしてくださっていただきたい」

 「失礼ながら教皇様そのような発言はセイ本人にはなさらぬほうがよろしいですよ?」

 「は?」

 「彼は好き勝手に街にまで抜け出してしまいますよ、そうなれば騒動がおこってしまいますよ」

 「くっくっく!確かにそうですね!馬車の中で色々街を見て興奮なさっていたとカリンがいっておりましたしたね」

 「きょ、教会内のみとするようマーリンには伝えておきまする」

 「ええ、そのほうが良いと思われます」

 教皇はセイジュがあちこちふらふら出歩いてしまうのを想像し汗を盛大に描きながらいい全員が苦笑した。

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 「教皇様!」

 「おじい様!!」

 「ど、どうした?なにをそのように慌てておるのだ?」

 教会内を案内していたマーリンと教皇が盛大に慌てながら部屋へ訪れその後ろには息を切らした他のセイジュの婚約者とアメリアなどが居た。

 「おいおいアンジェ、セイはどうしたんだ?」

 「お兄様そのような場合ではございませんわ!」

 「ハンス様!セイちゃんが!」

 「少し落ち着きなさい、すまないがマーリン様なにがあったのかお教え願いますか」

 「は、はい!実は…………」

 マーリンが代表してセイジュが口にしたことを全員に伝えた。

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 「ということなのです!」

 「なんと…」

 「そ、それでセイはどうしているんだい?」

 「あてがっていただいたお部屋へ戻りなにやら一生懸命書いておりますわ、きっと自分の考えをまとめているのでしょう」

 「そ、そうか……」

 「ええ、セイのことですから明日の朝までには考えをまとめ終えていると思いますわ」

 「うん、そうかアンジェいつもどおりで頼むよ?」

 「お兄様おまかせくださいませ」

 「ハンス様?セイちゃんのお考えがおまとまりになりましたら」

 「ああ、それもわかっているよアメリア」

 慣れた様子のホルマトロ家のやりとりほかの面々はついていけず驚きのまま硬直していた。

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 「さて、セイ説明してもらおうかな?」

 「え?御対談が終わった後でのほうがよろしいのでは?」

 「いや、5国での前の方がよさそうだと思う頼むよ」

 「わかりました、今回大聖堂を見せていただき、その後いくつもの貴重な歴史的資料を拝見させていただいたんですが」

 「ふむ、それで?」

 「えっと簡単に申し上げますと結婚式に追加していただきたいことが1つと環境についてが1つ思いついたという感じなのですが」

 「結婚式なのですが式が始まりお二人が司教様の前に着いたら司祭様からマリアンヌ様からお借りしたという形でティアラを頭にのせてもらうというのを追加していただきたいなと」

 「ほう?それはどういう意味でだい?」

 「古い資料にマリアンヌ様のティアラには豊穣と慈愛があらわされているとありまして、子孫繫栄と末永い幸せをマリアンヌ様が願ってくださるという意味合いで式の間、お借りするという形がいいかなと思っております」

 「セイジュ様とても!とっても素敵です!!おじい様いかがですか!?」

 「ふむ、それは素晴らしいことだとは思うがそのティアラは……」

 「私がガングさんにお願いしてみようと思います。そしてガングさんがデザインしたものをガングさんがお認めになった職人たちでつくり確認して頂ければ時間はかかりますが数は賄えるのではないかと思っておりますし、次のお願いがうまくいけばその費用も賄えるのではないかと思っています」

 想像したマーリンが興奮する中、女性陣も同じように式の様子を想像しうっとりしていたが、セイジュの話を聞き、男性陣は驚きの表情を浮かべていた。

 「セイジュ様その資金のからくりをお教え願えますか」

 「はい。今は暖をとる、家を建てる、なにをするにしても森から木を伐採し材料としております」

 「そうですな」

 「しかし長い目でみると森はどんどん減っていってしまうんです。いつ枯渇するかわかりませんなので、木や植物などを伐採した場所に植えて行けばいいのではないかと思いました」

 「ほ、ほう、さようでございますか」

 「もっと細かくもうしあげると植物がなくなると山の水が減るのと地盤が緩み土砂崩れなどが起こりやすくなりますし、川の水に栄養がなくなっていき魚も減ります、そして土地もどんどん痩せて行ってしまうんですよ、そして森で生活する動物たちも生きる場所が減ってしまうんです」

 「セイ、それは本当かい?」

 「はい、根が張っているから地盤は強くなっていることがわかりましたし、前に植物が枯れてできた土は栄養があるとご説明したと思いますがその土は川で運ばれている部分も多いんです」

 「なるほど…」

 「ですのでその土地土地の植物の苗を育て伐採した場所に植えて行けばいいかなと思いました」

 「ああ、なるほどそしてそれを教会でやってほしいというわけだね」

 「はい、マリアンヌ教会はかなりの広範囲に教会がありますしうってつけかなと、そして人々の豊穣を願っての行動ですので」

 「ふむ、そしてその土地を収めるものがその苗木を教会から買い取って植えてほしいんだね?」

 「はい、いきなりは受け入れられないことと思いますが、実際土壌改良などが成果として現れたら皆さん受け入れてくださるのではないかと思っております」

 「ふむ、教皇様この話も対談で話をしてみてもよろしいか」

 「ええ、そうですね…少々規模が大きく中々こんなんなお話ですので皆様のご意見をお聞きしたいですね」

 その後、教皇やリカルド、スタークが中心となり話し合う内容をとりまとめ始め、周りで話を聞いていた司教などはセイジュの発想などをまじかで目にし驚いていた。

 「はぁ~…ハンス様がおっしゃられた意味が身に染みて理解できました」

 「あはははは!」

 「何のお話ですか?」

 セイジュを自由にする危険にぐったりしながら答えた教皇だったが当の本人は気づきもしなかった。
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