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第4章 小話
リネアでの一幕
しおりを挟むある日の王都にあるギルス邸の昼下がり。
「ぴぃーー!」
「ん?これは?」
だいぶ寒くなってきた王都の空を1匹の小型の飛竜がギルス邸の上空をくるくる回り執事のセバスへ1通の封書を渡しそのまま王城へと飛び立っていった。
コンコン
「失礼いたします」
「ん?セバスか、入れ」
学校建設に向け王都のブレイダー邸にある執務室に執事長のセバスが一通の封書をもち入室した。
「どうしたセバス」
「はい。セナ様よりギルス様に封書が届いておりましたのでお届けに上がりました」
「ほぅ?」
デスクの上の書類から目線をセバスに移したギルスへセバスは封書を手渡し恭しく一礼した。
「何かあったのか…どれどれ…くっほぉっ!」
「どうなさいましたかっ!?」
封書をあけカップを手に紅茶を飲みながら手紙を読み始めたギルスが急にせき込み、セバスが焦りながら近寄った。
「ゲフッ!ゲフッ!城に行かねばならん!セバス準備を!あぁ!それとこの手紙をエミルにも見せてやってくれ!」
「はっ!か、かしこまりました」
急ぎ身支度をはじめたギルスの指示に従い、セバスが急いで登城の準備へと向かった。
「セバス様?お急ぎになられてどうなさいましたか?」
「あぁレイファいいところに来ました。こちらの封書を必ずエミル様にお届けしてください」
「封書?かしこまりました。して?何をお急ぎで?」
「ギルス様が急ぎ登城なさるので、その準備です。では、確実に届けてくださいね?」
「はい」
用件だけを言いセバスが急ぎ馬車などの準備のため去るのを見送ったレイファは、そのままエミルの私室へと向かった。
コンコン
「エミル様 失礼いたします」
「あらレイファ?どうぞ?」
エミルの許可を聞き一礼しながらレイファが入室した。
「どうしたの?何かあったの?」
「はい。セバス様よりこちらをエミル様に渡すよう賜ったのでお持ちしました」
エミルの問いにセバスより預かった封書を手渡した。
「あらなにかしら?…まぁ!セナ様からですわ!……これはまた……ふぅ~……」
「エミル様!?大丈夫ですか!?」
封書がセナからだと喜びながら読み進めたエミルが読み進めると驚き、そして貧血を起こしたように背もたれに寄り掛かった。
「レイファ?あの人は?」
「ギルス様ですか?なにやら至急城へ向かわれるといっておりましたけど?」
「そうですか……」
「何かセナ様の身にあったんですか?」
「いえ、安心しなさい?そういうわけではありません。あとはあの人が城から戻ってきてからの話ですわ」
エミルの質問に答えたレイファが、またセナが無理でもしたのではないかと心配した。
その頃、リネア王城では。
「ゲオルグ陛下!」
「随分騒がしいな?どうしたエルリック?」
王城内の執務室にて各領地よりあがってきた書類に目を通していた国王ゲオルグが慌ただしく入室してきた
宰相エルリックに鋭い目線を向け尋ねた。
「申し訳ございません。ただこちらの物をアディオン様の飛竜が届けてきたので早急にと思いまして」
「ん?アディオンから?嫌な予感しかせんな……」
息を切らしたエルリックの言葉に心底嫌そうな顔をしゲオルグが封書を受け取った。
「アディオン様からの物でしたら、ここまで急ぎません。差出人がジルネイ首相とセナ殿からでしたので」
「なんだと!?それを早くいえ!」
「申し訳ありません」
エルリックから差出人を聞いたゲオルグがまず最初にジルネイ共和国首相リレイの封書を開け読み始めた。
「ふぅ~…なるほど…うちの英雄殿はさっそくかましてくれたようだな…」
リレイからの封書を読み終えたゲオルグが眼がしらを指で挟み疲れたようにつぶやいた。
「陛下?セナ殿がなにか?」
「ん?あぁ…とりあえず話はセナ殿の封書をみてからだ……」
疑問を口にしたエルリックにセナからの封書を開けながらゲオルグが答えた。
「ふふっ……なるほどアディオンが糸をひいていたか……」
「陛下?」
「エルリック。至急学校設立に関わる貴族の招集をしろ」
「かしこまりました!」
不敵に笑うゲオルグにエルリックが尋ねたが、表情を引き締めたゲオルグが貴族の招集をするよう指示を出すとただ事ではないと判断し急いで執務室を後にした。
ドン!
「兄上はいるぞ!」
「はぁ~…ギルス…いかな実弟とはいえ…もう少し…」
「兄上のところにもセナ殿から届いたか?」
勢いよく急に執務室が開き、許可を得る前にギルスが入室し苦言をいうゲオルグを遮るように用件をいってきた。
「はぁ~…まぁいい…届いておるよ…ジルネイの首相からもな…」
「そうか!それで?どうするつもりだ?」
ゲオルグの回答を聞き勝手にどっかりと椅子にすわりギルスが尋ねた。
「今エルリックに学校設立の関係貴族を招集するよう指示したところだ」
「そうか…それで?兄上はどう判断する?」
ゲオルグの早い対応に満足げにうなずいたギルスが国王としての判断を聞いた。
「まずは集まった者共に話をして反応を見てからだな」
「ふむ。それで?兄上個人はどうおもう?」
「人材交流はいい案だと思うが…問題も多いな…ちなみにお前はどうおもっているのだ?」
ギルスの問いに天井を見上げながら渋い顔でゲオルグが答え、目線をギルスに移し尋ねた。
「俺か?俺は賛成だ。うちの領とジルネイは接しているからな。いっそのこと同盟でも組んでくれるとありがたいね」
「同盟など簡単に…いや、まてよ…神皇国も帝国も獣人差別国…うまくいけばまとまるか…」
ギルスが腕を組んで自身の考えを簡単にいうとゲオルグは最初、鼻で笑い飛ばしたが自身の言葉に何か引っかかりを覚えたのか何かを考え始めた。
コンコン
「エルリックです失礼いたします」
「入れ」
考え込んだゲオルグをエルリックのノックが引き戻した。
「どうか?」
「はい。使いの物を出しました。それぞれ王都におられるようであと1~2時間ほどで全員集まるかと」
「わかった。」
「それで?陛下…何があったというんですか?」
「あぁ…セナ殿は無事にジルネイの首都に着きアディオンの手引きで首相と会ったそうだ」
「おぉ~!ジルネイ首相といえばナンバーズの知将!リレイ様ではないですかっ!」
「あ、あぁ。そうだ…な」
セナがリレイと会ったことを聞いたエルリックが興奮気味に言い。ゲオルグが少し引きながら頷いた。
「それで?殿下、セナ様とリレイ様はなんと?」
「あぁ、セナ殿が我が国にできる学校へいずれジルネイ側からも生徒を入れてほしいと言ってきた。ジルネイ側も我が国次第では議会に話を通し将来的には生徒だけではなく人材交流も視野に入れているそうだ」
「な、なんと!?で…我が国はどのように…?」
「それをこれから貴族を集め話をするつもりだ」
エルリックが戸惑いながら訪ねるとゲオルグが答えた。
それから2時間ほどたった王城内作戦会議室では。
「皆急な呼出すまんな」
ゲオルグが円卓を囲うように立っている5名の貴族の顔をみながら笑顔で挨拶した。
「ゲオルグ陛下、このメンツを急に招集して何か問題でも?」
美しい金髪で長身のセイドリックがゲオルグに笑顔で尋ねた。
「あぁ、学校設立については順調だ。ただ…我が国の英雄殿が少々な?」
セイドリックの質問に苦笑をうかべながらゲオルグが答えた。
「セナ様が何か?」
「あ~、それは俺から言おう。セナ殿は今、ジルネイの首都ジュネイにいるそうだ」
「ふむ。当初の予定通り無事ジルネイにお着きになられたんですね」
ゲオルグの言葉にアムートが心配気な顔で尋ねるとギルスが代わりに話し出し無事にセナがジルネイに着いたことを聞いたルイーネが笑顔で旅の無事を喜んだ。
「ん?まぁアディオンもついているから道中の心配はしておらんかったのだが…」
「セナ様はジルネイでなにか問題でも起こしたのですか?」
ギルスが歯切れの悪く話すとマカパインが不思議そうに尋ねた。
「いや、ジルネイの首相と面会し、学校が設立され軌道に乗ったらジルネイ側からの生徒も受け入れてほしいと手紙をよこしてきただけだ」
「へ?」
「は?」
「んん?」
「くっくっく…セナ殿はまた突拍子もないことを…いやぁ退屈させてくれませんねぇ」
「はぁ~楽しんでいるのはお前だけだ…セイドリック…」
ギルスが答えると、ほかの3人は驚きの声をあげ、セイドリックは楽しそうに笑い、ギルスはそれをみて恨めしそうに言った。
「はぁ~、それでだ!ほかの貴族どもに話を通す前に、どのようにするべきか貴殿らの意見を聞こうと思ったのだ」
ゲオルグがあきれたように話を先に進めた。
「俺は受け入れるべきだと思う」
「しかし、ジルネイ側からの要求次第ですが…ここでジルネイとリネアがくっつくとほかの2国の動きがきになりますよね」
「そうだな」
ギルスが賛成をうたうと、ルイーネが帝国と神皇国が気になるとセイドリックを見ながらいうとマカパインも
帝国と隣接しているセイドリックを心配して頷いた。
「ん~…私は賛成ですね」
「ほぅ?よいのか?セイドリックよ」
少しあごに手を当て考えたセイドリックがジルネイとの話に乗り気なのを見てゲオルグが尋ねた。
「先のことを考えればジルネイと手を組むのは悪い話ではないでしょう。なんなら対等な同盟を組むくらいしてもいいかもしれませんよ?」
「それでは!ランスロット領の治安が!」
「それは大丈夫ですよ?我がランスロット家は後れを取るような軟なものなど誰もいません…それに…」
「それに?」
「先に我が国に喧嘩をうってきたのは向こうですから」
ルイーネが心配し声を荒らげると、一瞬獰猛な顔をしたセイドリックが遅れは取らないと自信満々に言ったと
やわらかい笑顔で涼し気に向こうが先に仕掛けてきたと何でもないかのように言い切った。
「あぁ!そうだな!向こうから吹っ掛けてきた喧嘩だったな!遠慮する必要はない!」
「ああ、それに今はパラドイネ、スレイヤー、ランドリーフ、ブレイダーと強力な味方もいるからね」
「それを言われてしまえば私も同盟に賛成と言わざるおえんな」
ギルスが楽しそうにセイドリックの肩をたたきながら言うと、セイドリックは全員一人一人の顔をみて味方がいると答えた。
そして、それを聞いたアムートは腕を組み、にこやかにギルスとセイドリックの話に同調した。
「ならば…余も覚悟をきめよう…我が国はジルネイと完全に平等な同盟を組むことにしたい」
「ならばほかの貴族を黙らせる策を皆で練りましょう」
ゲオルグが覚悟を決めた顔で宣言するとセイドリックが悪だくみした黒い笑顔を浮かべ答えた。
「俺はこんな時、お前が味方で本当によかったとおもうよ」
その笑顔を見たギルスが力なく笑った。
それから1週間後、無事にジルネイとの同盟を組む話をまとめ、封書を用意すると、どこからともなくアディオンの使い龍、ピノが舞い降り、封書を受け取るとジルネイのある南へと猛スピードで飛んで行った。
なお、ギルスはエミルにどのように話をまとめたのか聞かれた際、顔を青くして
「セイドリックのおかげだ」
としか言わなかったそうだ。
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