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第5章 ストラトス帝国編

隠れた才能

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 「じゃぁ僕たちはそろそろ行くよ」

 「くっそ!俺も手伝えるなら手伝いてぇが…足引っ張るわけにはいかねぇし…」

 「ライズは村のみんなをここまで守ってきたんだ。つぎは僕の番なだけだよ」

 「すまねぇな…獲物がこの斧だけじゃ…そもそも無理な話だしな…」

 ライズは片手斧をもち苦々しい顔でセナへと謝罪した。

 「ん?なんだライズしょぼくれて!」

 「あ!ガルハルトさん時間ですか?」

 「あぁ!そろそろ動くぞセナ殿」

 出陣の時間を知らせに来たガルハルトへセナはライズのことを手短に話した。

 「ふむふむ。まぁライズはもともと猟師だからな…なんなら剣をわたすが?」

 「いえ村を守ってるときに敵の剣を使ってみたんですがどうにも俺には使いづらかったんで…気を使わせてすいません」

 「ふむ。そうか」

 「ライズさんって狩りではなにをつかってたんですか?」

 「ん?あぁ罠をしかけたり弓で射ったり、長棒で刺したり、あとは斧かナイフだな」

 「色々なことやってるんですね」

 「獲物によって狩り方がちげぇんだよアリア」

 「そうなんだぁ」

 ガルハルトとライズの会話を聞いていたアリアがライズに尋ね答えを聞くと感心したように頷いていた。

 「ふむ…ライズ殿?この板に手を置いてくれませぬか?」

 「はい?わかりました…これでいいですか?」

 ヤオが懐からA4ほどのサイズの水晶でできたような板を取り出しライズへ促すと、ライズは取り出した場所が胸からだったので顔を赤くし緊張したようにおそるおそる手をのせた。

 「ふむ。もうよろしいです」

 「ヤオさん?それは?」

 「簡易式ではございますが適性をみるための道具にございます」

 「そんなものがあるんですねぇ…それでなぜライズを?」

 「少しきになることがありましてな…ライズ殿がよければお教えいたしますが?」

 「あぁ!俺も知りたいし別に隠すようなこともないんで!お願いします」

 「心得ました」

 ヤオの言葉を聞き、ライズが自身の力を知ることへの緊張をあらわにする中、周りにいる者達も地味に聞き耳を立てていた。

 「まず、狩猟、解体術、投擲、長柄術、斧術、短剣術、弓術、罠術、格闘術、生活魔法、それと魔力は低いですが適性は火でございますな…簡易式では固有のスキルなどはわからぬので申し訳ございません」

 「すごっ!」

 「お主…騎士か冒険者でも食っていけるぞ?」

 ヤオの言葉をききアリアが驚き、ガルハルトが少し呆れながらいった。

 「場数の問題はありますが、冒険者としての実力はB級はあるかと思いますわ」

 「B級!?おれが!?」

 タオが結果をみて伝えるとライズが一番驚いていた。

 「ご自身に合う武器を手に入れて精進なされるがよいかと」

 「自分にあった武器なんて…何があるんだ?考えたこともなかったからなぁ」

 「んー…ヤオさん僕のバッグを」

 「かしこまりました」

 「セナ?なにするの?」

 「ん?僕がつくったのが…いくつか…あったあった!」

 ヤオから受け取った自身のマジックバッグからガチャガチャと色々なものをセナがだしはじめた。

 「なんだ!セナそりゃぁ!」

 「ん?ハルバートっていう斧と槍が合体した武器だよ」

 セナが最後にとりだした3mをこえる初めて見た武器にライズが驚きの声をあげたがガルハルトたちもどうやら初めてみた武器だったらしく興味深そうにみていた。

 「長柄で斧!これがいいよ!ライズ!」

 「斧の反対側のとんがったのは何に使うんだよ」

 「あぁ!これは盾とか鎧、岩とかとりあえず固いものを壊すためのものだよ」

 セナから手渡されたハルバートを軽々片手でもちながらライズが訪ねる様をみてガルハルトたちはわずかに驚いていた。

 「あとは肩当と胸当てが防具ね!あと投げ斧、クナイ…あぁこれは投げることがでるナイフね!それと折り畳み式の弓と小型の矢、それと格闘ができるようの小手とすね当て…こんなとこかな」

 「物々しすぎねぇか?」

 「まぁこのポーチ型のマジックバッグに投げるやつと矢はいれとけば大丈夫でしょ」

 セナがだした武器たちを呆れながらみたライズがいうとセナはウエストポーチ型のバッグと太ももに着けるタイプの小型のバッグをライズへと手渡した。

 「まぁつけるだけつけてみるか!」

 セナの行動は周囲から見ると非常識だったが、免疫のあるライズもある意味非常識な部分があるのでお互い深く考えずに笑顔でライズの装備を整えた。

 「ごっついわりに動いても音がしねぇし軽いし、これいいな!」

 「だろ?それじゃぁライズは街の周辺で僕たちが狩り残した残党を頼むよ」

 「わかった!まかせろ!うっし!いっちょやるかぁ!親友!」

 「うん!後ろは任せたよ!親友!」

 「なんか大丈夫なような気がするね!」

 「ふっふっふやはりただものではございませぬな」

 セナとライズが笑顔で拳をあわせるのをみていたアリアが笑顔でいうと、感心したようにヤオがこたえた。
そして周りで見ていた騎士たちも同じように思っていたのか笑顔と自信を取り戻しブレイダー軍の士気がたかまりをみせた。

 「じゃぁ僕と迅風が先陣をきります!ヤオさんとタオさんはそのあとに!左右からの敵に注意してください!後ろは…うん!気にしなくてもいいです!」

 「御意」

 「かしこまりましたわ」

 「おう!まかせろ!」

 セナが最後にライズをみて力強く言うとヤオタオそしてライズが力強くうなずいた。

 「では!我らもそろそろ行く!頼んだ!」

 「はい!ガルハルトさん達も気を付けて!」

 ガルハルトを見送ったセナはアリアをみた。

 「じゃぁアリアもそろそろ街の中へ」

 「いかないわよ?」

 「へ?」

 「私は…歌う!勝利を祈る歌を歌うよ!」

 「危険だよ!」

 「大丈夫!ね?」

 「グルワァ」

 アリアがウィンクしながらグラニールをなでるとグラニールは、まかせろと言わんばかりに声をあげた。

 「わかったよ…アリア、グラニールも無理はしないようにね」

 しかたなくセナが折れアリアたちに声をかけて迅風へと向かおうとした。

 「あっ!セナ! んちゅ!」

 「ん?なに?っんぐっ!」

 急に声をかけられ再びセナがアリアへ向くとアリアは抱き着いてセナの口へ自身の唇を押し付けた。

 「んーーーー!!っぱ!勝利のおまじないだよ!えへへへへへ!」

 「ぶっはぁ!あ…ありがとう…ございます」

 顔を赤くし照れたように上目づかいでみあげてはにかむアリアに驚きながら照れて顔をあかくしやっとお礼をいったセナがぎこちなく迅風へと跨った。

 「はっ!おあついことで!」

 ライズがセナをみてにやけながらいった。

 「ほぅ?我らの前で…いい度胸でございますなぁ…小娘が…」

 「え?」

 「うふふふふっ…ことが終わりましたら…少々O HA NA SHI が必要のようですわね…ふふ…うふふふふ」

 「ひぃぃっ!たすけ…そんなぁぁ!」

 どす黒いオーラをまとったヤオとタオに恐れをなしたアリアが助けを求め周囲をみるが全員脂汗をかき目をそらした…当然ライズも…しまいに迅風、グラニールまで目をそらすとアリアは絶望をうかべへたりこんだ。

 「じゃぁ!行きましょう」

 セナが気を取り直し声をかけセナたちはギルスたちの元へ向かった。

 「ギルス様、セルジオ様」

 「おぉ!セナ殿準備はできたか?」

 「はい」

 「女神の祝福も受けたしなっ!」

 「ぶふっ!そうだな!」

 「ライズっ!うっさいよ!ガルハルトさんまで!?」

 ニヤ付きながらいうライズに顔を赤くしたセナがうろたえるのをギルスとセルジオが首をかしげみていた。

 「まぁいい。敵は未だこちらを警戒して動いておらん」

 「さきほどセナ様が切り伏せたのをみていたのもありますな」

 ギルスとセルジオが手短に現状をつたえた。

 「じゃぁ…」

 「あぁ!今度はこちらから仕掛ける!やられっぱなしではおられん!」

 「では、手はず通りに!」

 「はい!グラニールがもう一度ブレスを打ち込みます!それを合図に一斉にいきましょう!」

 「うむ!」

 ギルスが獰猛な目つきでニタリと笑いながらいいセナの言葉に力強くうなずいた。

 そしてそれぞれが配置につくとセナが刀を掲げ叫んだ。

 「グラニーール!」

 「グルルルワァーーーーー!!!」

 セナの呼び声に答える様に大気を震わせグラニールが咆哮をあげ飛び上がり口を大きくあけた。

 「退避!またあれがくるぞ!退避ーー!!」

 「グギャァーー!!」

 グラニールを目視した敵兵や魔物がブレスを警戒し慌て始めたが時すでに遅しと言わんばかりにグラニール渾身のブレスが再び敵陣とスタンピードを襲った。

 「よし!突撃!!!」

 ギルスがカラドボルグをかざしギルス・セルジオ軍が進軍を開始した。

 「僕達もいきましょう!」

 「はっ!」

 「おう!」

 セナの声にヤオとタオ、それにライズが答え走り出した。

 「いくよ!迅風!」

 「ブルルル…ヒヒーーーン!」

 バン!

 セナの声に目をカッと見開き後ろ足で立ち上がり鳴き声を響かせ風の魔力を爆発させた迅風が、その名のとおり
一塊の風となりスタンピードへ駆け出した。
 

 
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