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第3章 ―旅情初編―

馴れ合いはしません

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 セナがマウンテンベアーの首を切り飛ばし一息つくと、木の上からライズが声をかけた。

 「お、終わったかぁ?」

 「うん、もう大丈夫だよ」

 セナの返答を聞き、ライズが木から降りてきて、首のなくなったマウンテンベアーをみた。

 「改めてみると…ひと際でけぇな…」

 バサバサバサ

 ライズが驚きながらつぶやいていた時、上空から全身真っ白な梟が枝へととまり、セナ達を見下ろしていた。

 「ライズあれって…」

 「あぁ、間違いねぇ。テレゴノシスだ、滅多にお目にかかれねぇヤツだぜ?」

 「そうなの?」

 ライズの言葉を聞き、セナは驚きながら気にとまっているテレゴノシスへと目線を向けた。

 「ピー」

 テレゴノシスは黙ってセナを見据えた後、一鳴きした。

 「ん?あぁ、ありがとう。おかげで友人が助かったよ、この獲物は君のものだよ?」

 「はぁ?何言ってんだ!仕留めたのはセナだろ!ってか!お前、あれと話せるのかよ!?」

 セナがまるでテレゴノシスと話しているかのように言うと、ライズは驚いてセナへと言葉をかけた。

 「ん?いや?話せないよ。ただ、なんとなくそんな感じかなと思ってね?それに僕はとどめをたまたま刺しただけ、いなくてもあの子がやってたよ」

 苦笑気味にいうセナに、ライズがため息をつきながら呆れたような顔をした。

 「はぁ~、まぁどのみち、俺にはいう権利はねぇ、実際お前にもあいつにも助けられた身だからな」

 「間に合わなくて焦ったよ」

 ライズがマウンテンベアーをあきらめたようにいうと、セナが小さく笑いながらいった。そして、それを黙ってみていたテレゴノシスは、再び一鳴きすると、自身のくちばしの前に風の魔力を集め始めた。

 「ん?何をする気なんだろ?」

 「あぁ?なにがだ?」

 セナが魔力の集まりに気づき疑問を口にしながらテレゴノシスを見ると、ライズもつられるようにそちらをみた。

 「ピーーー!」

 シュッ!ザシュ!!

 すると、テレゴノシスは集まった魔力をマウンテンベアーへと飛ばし、右腕を風の刃で切り落とした。

 「うわっ!」

 「のわっ!す、すげぇ威力だな!」

 急な出来事で二人が驚く中、テレゴノシスは枝から飛び立ち、そして切り落とした右腕を両足でつかむと、勢いよく上空へと飛び立ち、セナ達の上空を何周か旋回すると、一鳴きして飛び去って行った。

 「あっ!いっちゃった!」

 「自分の取り分もって帰ったみてぇだな…」

 あっけにとられた二人が、我に気づき言葉を発したころには、テレゴノシスは見えなくなっていた。

 「あっさりかえっちゃったね、それにしても、すごい鳥だったね」

 「あぁ、もともと人に懐くような代物じゃねぇしな。それよりこいつをしまっちまうぞ?」

 セナの言葉に納得したようにいうライズは、セナからもらったマジックバッグを下すと、マウンテンベアーの頭と体を収納した。

 「これでよし!…なんかやり遂げた感が全開だけどよ?まだ時間もあるし、もうちっと狩りしてから帰ろうぜ?」

 「うん、いいけど、少し休憩をはさんでからにしよう」

 ライズの言葉にセナは同意し、二人は少し場所を移動すると、リズの持たせてくれた朝食を食べ、再び狩りへと向かった。

 そして、日が真上より西に少し傾いたころ、セナ達は森の出口へとたどり着いた。

 「あっ!きたきた!」

 「セナ様~!ライズさぁ~ん!こっちですよ!」

 すると、すでに狩りを終え、エリス達が二人を待っていて、セナ達を見つけたマインとコニーが声をかけた。

 「お疲れ様です、セナ様。お怪我はありませんでしたか?」

 「遅れてすみません。はい、怪我はないです。エリスさんたちも変わりはないですか?」

 笑顔でセナ達を出迎えたエリスの言葉に、セナも柔らかい笑顔を向け答えた。

 「ふっふっふ!それで?お二人の成果はどうだったのですかっ?」

 コニーが、どこか勝ち誇った顔をしながら聞いてきた。

 「ん?あぁ、まぁ、ぼちぼちって感じだな?なぁ?」

 「そうだね。コニーさんたちは?」

 ライズが、ニヤリと一瞬含みを持たせたような笑顔を浮かべた後、なんでもないかのようにセナへと話を振った。

 「ふっふっふ!よくぞ聞いてくれました!私たちの狩った獲物はこれらです!」

 セナの言葉に、バーン!という効果音が聞こえそうなほど胸を張り勝ち誇った顔で、コニーが3人で狩った獲物を出してきた。

 「おぉ~!ビッグボアが2匹と、ソードディアーもあるじゃねぇか。結構いい型だし、やったな!すげぇじゃねぇか!」

 「ふっふっふ!驚いたようですね!私たちが本気を出せばこんなもんですよ!っさぁ!次はセナ様たちの番ですよ!?」

 ライズの感心したような言葉を聞き、さらに胸を張りながらいうコニーに、ライズはセナに目で合図を送った後、まずはセナのバッグから獲物を出させた。

 「じゃぁ、出すね」

 セナはそういい、自身のバッグから数体の動物と、結構な量の川魚をだした。

 「へっ!?」

 セナの取り出した量をみて、コニーがあっけにとられ、間抜けな声をあげた。

 「ビッグボア1体と、ソードディアが2体…どれも我々が狩ったものより少し大きいですね…それに、この大量の魚は…どうやって…?」

 エリスが、獲物を見ながら驚きを隠せない口調でセナへと質問をした。

 「え?あぁ、この魚は、まず川の下流を土魔法でせき止めまして、そこにライズと僕で川上から魚を追い込み、上流側を同じようにせき止めて、あとは雷の電流を川に流して感電させたのを拾って集めたんですよ」

 「楽に魚が取れてよかったよなぁ!?」

 「うん、ただ乱獲をさけないといけないから滅多にやっちゃだめだけどね」

 「そ、そんな使い方…一応、雷属性は上級魔法なんですけどね…」

 「う、うん…さすがセナ様だね…」

 「私、才能の無駄遣いってこういうことなんだって…初めて実感したよ…」

 お気楽に言いあうセナとライズを見ながら、3人はそれぞれ呆れたようにつぶやきあっていた。

 「ま、まぁ魚の分と、大きさははしょうがないとして、動物の数は一緒でしたね!」

 コニーは、負けず嫌いなのか、引きつった笑顔でそういうと、ライズがまってましたと言わんばかりに人の悪い笑顔をむけ、コニーへと自身のバッグを開きながら声をかけた。

 「ん?まぁ、はな!」

 そういいながら、ライズはマウンテンベアーを取り出した。

 「なっ!?でっかっ!なにこれ!?でっかっ!」

 それをみて、コニーが驚いた。

 「へっへっへ!マウンテンベアーだ!どうやら勝負あったようだね!ん?」

 「なんという大物…さすがですねお二人とも、完敗です」

 「あぁ、見事にやられたな」

 勝ち誇った顔をしながらライズがいうと、マインとエリスが答えた。

 「くっ!いたし方ありません…勝負は勝負…素直に負けを認めます…」

 「ふふっふ!勝った!やったぜ!セナ!」

 悔しそうな顔で素直に負けを認めたコニーを見て、ライズが満足げにセナへとハイタッチを求めた。

 「勝ってうれしいけど、どっちもすごいと思うよ?僕一人じゃこんなに狩れてなかったし、ライズもエリスさん達もすごいよ、みんな疲れたでしょ?そろそろ帰ろう?」

 ハイタッチに一応おうじたセナだったが、ライズやエリスたちに、ねぎらいの言葉をかけ、帰りを促した。

 そして、帰り支度をすませ村へと向かう道中、マウンテンベアーとの戦いをライズが興奮しながら、臨場感たっぷりに3人へと聞かせた。
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