44 / 178
3章 冒険者養成校
4
しおりを挟む
あの日から2週間。毎日頑張った。来る日も来る日も基本俺、たまにリキートが薬草を摘み、たまに洗濯しに行き、何より大変だったのはフェリラの勉強だった。筆記もある、とのことであの日から勉強を開始したのだ。
ただ、フェリラはそもそも一部しか文字が書けない! そこから始まった。2週間で間に合うわけないだろ、というのが正直な感想だった。ただ、そこは宿につられた俺たちの強さを発揮。フェリラの回復魔法を無駄遣いしながら、徹夜しつつ詰め込んだ。だ、大丈夫、だよな……?
「あああ、日の光がまぶしい……」
「久しぶりに外出たもんな」
「うん……」
「でもなんとか詰め込み終わった、はずだ!
本当によく頑張った、僕たち」
二人ともだいぶ消耗しているな。俺はまあ、体力はあるのだろう。そこまで疲れ切ってはいない。こんな状態で果たして実技大丈夫なのか、こいつら?
「おお、人がいっぱいいる……」
「そりゃそうだよ。
絶好のチャンスなんだもん」
絶好のチャンス、か。正直俺はリキートについてきただけだから、あまりピンとこない。でも、フェルラもここまで真剣な顔をしているのだ。きっと同じ気持ちなのだろう。
「行こう」
三人でパーティとして受付を済ませる。Gランクのうちにパーティを組むのは珍しいが、でいないことはない。だから、俺たちはすでにその申請をしていた。リーダーはもちろんリキート。毎日依頼をこなさないと追い出される宿だが、毎日俺かリキートが依頼を3人分達成することで、追い出されずに済んだのだ。そして、冒険者養成校はギルドカードで試験の受付をしているため、自然に三人一緒に受付をすることになった。
さて、最初の試験は筆記。これはわかるものもあれば、まったくもってわからないものもある。ひとまずわかるもの、つまり最低限の知識問題は確実にとる。そして、一番大切なのはこれだろう。
フェリラの勉強を見ているとき、思ったことがある。ここを受けるのは、恐らくフェリラのように文字が書けない人も多いのでは? と。そのうえで筆記試験を取り入れているのだ。そこまでは問題の正解数は重視されていないのではないか。
そう考えてからはひたすら文字をかける、理解できる、最低限の知識を持っている、それを示せるようにした。幸いにも俺もリキートももとの出があれだから、文字は一通りかけるし、最低限の知識もある。この大陸、お金も同じなら、文字も一緒。おかげでフェリラに教えることができた。
そして、そのうえでおそらく最も重要な問題。『あなたにとって冒険者とは?』。こういう明確な答えがない問い、あると思ったんだよね。ここをしっかりと回答する。長々とした回答は必要ない。一つ、大切なことを書けばいい。だぶん筆記はそれでどうにかなるだろう。
「ハールって頭いいよね。
本当に最後に答えのない問題出た」
「ハールのおかげで焦らずに解けた!
ありがとう」
「うん、二人ともどうにかなったみたいでよかった。
次は魔力測定か」
さて、どういう風に魔力測定をするのか。これは数人ずつ呼ばれて測定を行っていくらしい。ここに来る人、魔力持っていない人ばかりだから、そんなに時間かからないとかなんとか……。でもそんなことないな、うん。一人一人結構かかっている。
「ね、二人は最後の質問なんて書いたの?」
「うーん?
僕は……端的に言うなら力」
力……。一人で生きていく力を求めて、家を出てこうして冒険者養成校を受けているのだ。確かにぴったり。
「フェリラは?」
「あたしはね、自由。
……ハールは?」
「俺……?」
どうして、あんなことを書いてしまったんだろう。少し、いやかなり後悔している。でも、ふとその言葉が浮かび上がってしまった。そして書いた瞬間に時間が来てしまったんだよな……。
「あたしはさ、あの村であんたたちに拾ってもらった。
そこからばたばたと毎日過ごして、あまり話す時間なかったろ?
だから、あまり二人のこと知らないなって思ったんだ」
だから、教えてくれたら嬉しい。そういうフェリラは真摯に俺に向き合っていて。何となく、この言葉から逃げたくない、ってそう思った。
「憧れ……」
「え?」
「では次の三人、入ってきて」
「ほら、行こう」
よし、ちょうどいいタイミングで呼びだしが来た。さすがにこれ以上聞かれたくなかったから、危なかった……。
「では一人ずつこちらに座って」
指示に従い席に座る。それぞれの前に担当者と思われる人がいた。そして、俺と担当者の間に置かれているもの。これ、もしかしてずっと前にちらりと聞いた、魔力を測るやつ?
「これを使って、ここに血を垂らして」
それにしてもなんだ? この盤は。まあやってみればわかるだろう。ぴっと切って言われた通り盤の中央に血を垂らす。すると、徐々に盤が光出した。その光は徐々に全体に広がっていく。おお、きれい。少しだけギルドカードのことを思い出した。どうしてこうも血を垂らさせたがるのか。
隣を見ると、盤の光り方はそれぞれ違っていた。俺は盤の大半が割と強く、そして一部が弱く光っているが、隣のフェリラは六分の一の部分が光っている。さらに隣のリキートはもっと多くの場所が割と強く光っている。
「こ、これは……」
あれ、顔を見合わせて皆さん、どうしました?
「あの?
どうだったんですか?」
「あ、ああ……。
君たちはパーティを組んでいるんだったか?」
「はい」
いや、そうか、とか言っていないでちゃんと説明してくれないか? 二人とも不審な目で担当者見ている。やっぱりそういう気持ちになるよな。
「えーっと、ハール君、だったか?
君は、その、全属性持ち、だ。
ただ、光属性と闇属性はあまり強くない。
ほとんど使えないだろう」
「……え?」
ぜんぞくせい? だけど特殊属性があまり使えないと。ああ、はい。了解です。なんか中途半端だな。
「ほかの試験は明後日以降。
本日の試験を通っていたら、また呼び出す。
まあ、君たちは大丈夫だと思っていい」
「ありがとうございました」
結局、フェリラは光属性のみ、リキートは基本属性4つという結果になったみたいだ。ま、俺の属性以外はやっぱりか、という感じか。
ただ、フェリラはそもそも一部しか文字が書けない! そこから始まった。2週間で間に合うわけないだろ、というのが正直な感想だった。ただ、そこは宿につられた俺たちの強さを発揮。フェリラの回復魔法を無駄遣いしながら、徹夜しつつ詰め込んだ。だ、大丈夫、だよな……?
「あああ、日の光がまぶしい……」
「久しぶりに外出たもんな」
「うん……」
「でもなんとか詰め込み終わった、はずだ!
本当によく頑張った、僕たち」
二人ともだいぶ消耗しているな。俺はまあ、体力はあるのだろう。そこまで疲れ切ってはいない。こんな状態で果たして実技大丈夫なのか、こいつら?
「おお、人がいっぱいいる……」
「そりゃそうだよ。
絶好のチャンスなんだもん」
絶好のチャンス、か。正直俺はリキートについてきただけだから、あまりピンとこない。でも、フェルラもここまで真剣な顔をしているのだ。きっと同じ気持ちなのだろう。
「行こう」
三人でパーティとして受付を済ませる。Gランクのうちにパーティを組むのは珍しいが、でいないことはない。だから、俺たちはすでにその申請をしていた。リーダーはもちろんリキート。毎日依頼をこなさないと追い出される宿だが、毎日俺かリキートが依頼を3人分達成することで、追い出されずに済んだのだ。そして、冒険者養成校はギルドカードで試験の受付をしているため、自然に三人一緒に受付をすることになった。
さて、最初の試験は筆記。これはわかるものもあれば、まったくもってわからないものもある。ひとまずわかるもの、つまり最低限の知識問題は確実にとる。そして、一番大切なのはこれだろう。
フェリラの勉強を見ているとき、思ったことがある。ここを受けるのは、恐らくフェリラのように文字が書けない人も多いのでは? と。そのうえで筆記試験を取り入れているのだ。そこまでは問題の正解数は重視されていないのではないか。
そう考えてからはひたすら文字をかける、理解できる、最低限の知識を持っている、それを示せるようにした。幸いにも俺もリキートももとの出があれだから、文字は一通りかけるし、最低限の知識もある。この大陸、お金も同じなら、文字も一緒。おかげでフェリラに教えることができた。
そして、そのうえでおそらく最も重要な問題。『あなたにとって冒険者とは?』。こういう明確な答えがない問い、あると思ったんだよね。ここをしっかりと回答する。長々とした回答は必要ない。一つ、大切なことを書けばいい。だぶん筆記はそれでどうにかなるだろう。
「ハールって頭いいよね。
本当に最後に答えのない問題出た」
「ハールのおかげで焦らずに解けた!
ありがとう」
「うん、二人ともどうにかなったみたいでよかった。
次は魔力測定か」
さて、どういう風に魔力測定をするのか。これは数人ずつ呼ばれて測定を行っていくらしい。ここに来る人、魔力持っていない人ばかりだから、そんなに時間かからないとかなんとか……。でもそんなことないな、うん。一人一人結構かかっている。
「ね、二人は最後の質問なんて書いたの?」
「うーん?
僕は……端的に言うなら力」
力……。一人で生きていく力を求めて、家を出てこうして冒険者養成校を受けているのだ。確かにぴったり。
「フェリラは?」
「あたしはね、自由。
……ハールは?」
「俺……?」
どうして、あんなことを書いてしまったんだろう。少し、いやかなり後悔している。でも、ふとその言葉が浮かび上がってしまった。そして書いた瞬間に時間が来てしまったんだよな……。
「あたしはさ、あの村であんたたちに拾ってもらった。
そこからばたばたと毎日過ごして、あまり話す時間なかったろ?
だから、あまり二人のこと知らないなって思ったんだ」
だから、教えてくれたら嬉しい。そういうフェリラは真摯に俺に向き合っていて。何となく、この言葉から逃げたくない、ってそう思った。
「憧れ……」
「え?」
「では次の三人、入ってきて」
「ほら、行こう」
よし、ちょうどいいタイミングで呼びだしが来た。さすがにこれ以上聞かれたくなかったから、危なかった……。
「では一人ずつこちらに座って」
指示に従い席に座る。それぞれの前に担当者と思われる人がいた。そして、俺と担当者の間に置かれているもの。これ、もしかしてずっと前にちらりと聞いた、魔力を測るやつ?
「これを使って、ここに血を垂らして」
それにしてもなんだ? この盤は。まあやってみればわかるだろう。ぴっと切って言われた通り盤の中央に血を垂らす。すると、徐々に盤が光出した。その光は徐々に全体に広がっていく。おお、きれい。少しだけギルドカードのことを思い出した。どうしてこうも血を垂らさせたがるのか。
隣を見ると、盤の光り方はそれぞれ違っていた。俺は盤の大半が割と強く、そして一部が弱く光っているが、隣のフェリラは六分の一の部分が光っている。さらに隣のリキートはもっと多くの場所が割と強く光っている。
「こ、これは……」
あれ、顔を見合わせて皆さん、どうしました?
「あの?
どうだったんですか?」
「あ、ああ……。
君たちはパーティを組んでいるんだったか?」
「はい」
いや、そうか、とか言っていないでちゃんと説明してくれないか? 二人とも不審な目で担当者見ている。やっぱりそういう気持ちになるよな。
「えーっと、ハール君、だったか?
君は、その、全属性持ち、だ。
ただ、光属性と闇属性はあまり強くない。
ほとんど使えないだろう」
「……え?」
ぜんぞくせい? だけど特殊属性があまり使えないと。ああ、はい。了解です。なんか中途半端だな。
「ほかの試験は明後日以降。
本日の試験を通っていたら、また呼び出す。
まあ、君たちは大丈夫だと思っていい」
「ありがとうございました」
結局、フェリラは光属性のみ、リキートは基本属性4つという結果になったみたいだ。ま、俺の属性以外はやっぱりか、という感じか。
20
あなたにおすすめの小説
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す
紅月シン
ファンタジー
七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。
才能限界0。
それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。
レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。
つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。
だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。
その結果として実家の公爵家を追放されたことも。
同日に前世の記憶を思い出したことも。
一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。
その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。
スキル。
そして、自らのスキルである限界突破。
やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。
※小説家になろう様にも投稿しています
知識スキルで異世界らいふ
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ
無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです
竹桜
ファンタジー
無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。
だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。
その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る
伽羅
ファンタジー
三つ子で生まれた銀狐の獣人シリル。一人だけ体が小さく人型に変化しても赤ん坊のままだった。
それでも親子で仲良く暮らしていた獣人の里が人間に襲撃される。
兄達を助ける為に囮になったシリルは逃げる途中で崖から川に転落して流されてしまう。
何とか一命を取り留めたシリルは家族を探す旅に出るのだった…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる